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“相続税対策は何をすればよいのか?”

自分が死んだ後の準備ということで気が進まず、後回しにされる方も多いのが相続税対策です。

また、大事なのは相続税の納付は期限(相続が発生してから10ヶ月)までに現金で納付しなければならない点です。

もし相続の対象となる財産の多くが土地や建物などの不動産である場合には、相続税を現金で納付しなくてはならないために先祖代々の土地を売却しなくてはならない…というようなケースも多く見てきました。

ここでは年間相続税申告1000件以上を行っている相続専門の相続サポートセンターの税理士が、経験と実績に基づき、実際に活用できる相続税対策について解説させていただきます。

この記事の監修者 税理士 古尾谷裕昭

まずは相続税を計算!
節税対策が必要か確認しよう

まずは相続税の基本的な計算方法を理解しておきましょう。

相続税は遺産の総額に基づいて計算していきますが、相続はプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産額をプラスの財産額から差し引くことができます。この遺産の総額から誰でも控除ができる基礎控除額を差し引いた金額が課税対象金額となり、税率を乗じて相続税が計算されます。

(遺産の総額-基礎控除額)×税率-控除額

※遺産の総額が基礎控除額に満たない場合には相続税はかかりません。

相続税の基礎控除は法定相続人の人数により下記の算式で計算します。

基礎控除=3,000万円+(法定相続人の数×600万円)

具体的に相続税がどれくらいかかるか?を把握していただくために、簡単に相続税を試算できる相続税計算シミューレーションをご用意しています。相続税計算ガイド|5分で計算できる相続税シミュレーション【2020年度対応】を是非ご活用ください。

相続税が大幅に減額される
“特例”と“税額控除”を知っておこう

相続税の計算を行うときには、利用できる特例税額控除をフル活用して少しでも相続税の負担が小さくなるようにしなくてはなりません。

実際に相続税の計算と申告納付を行う際には税理士などの専門家に相談するのが適切ですが、ここでは代表的な2つの特例と税額控除(1 小規模宅地の特例と、2 相続税の配偶者控除)について大まかな内容を理解しておきましょう。

小規模宅地の特例

小規模宅地の特例は、相続財産に宅地(住宅等を建てるために使っている土地)が含まれている場合に、その土地の相続財産としての評価額を最大80%減額(土地を住宅として使っているか、賃貸アパートなどのために使っているかによって上下します)してもらえる方法です。

相続財産の評価額が下がれば下がるほど、相続税の負担も小さくなりますから、遺産の多くが宅地であるというような場合にはこの方法を使うことで相続税の金額を大幅に小さくできる可能性があります。

小規模宅地等の特例が適用できる土地は①自宅(被相続人の居住の用に供されていた宅地等)、②会社の土地(特定事業用宅地)、③人に貸して土地代を得る(貸付事業用宅地)の3つに分けられます。

なお、小規模宅地等の特例は土地の種類に応じて適用できる限度面積と減額割合が下記のように定められています。

◼︎小規模宅地等の特例 減額割合

宅地区分限度面積減額割合
自宅
(被相続人の居住の用に供されていた宅地等)
330m280%減額
会社、個人商店等の事業用の宅地
(特定事業用宅地)
400m280%減額
アパート、駐車場など貸付事業用の宅地
(被相続人の居住の用に供されていた宅地等)
200m250%減額

上記の減額をうけるためには、土地の利用状況等の一定要件に該当しなければなりません。

この特例を適用できるか、適用できないかで土地評価額が大幅に変わり、相続税に非常に大きなインパクトを与えるのが、この小規模宅地等の特例です。

相続対策として、現在所有している土地が、

  • 小規模宅地等の特例要件を満たしているか?
  • 要件を満たしていない場合には、利用状況等の変更により要件を満たせるか?

を確認してみてください。

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相続税の配偶者控除

配偶者が相続人となる場合には、法律上決まっている割合の範囲内(法定相続分といいます)でその配偶者が相続財産を相続する場合には、相続税がかかりません。

また、遺言書等によって法定相続分よりも多い金額の財産を相続する場合であっても、最大1億6千万円までの相続財産であれば相続税は非課税となります。

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極端なことをいえば、配偶者が10億円を相続しても、100億円を相続しても、法定相続分の範囲内であれば非課税になります。

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相続税対策のポイントは3つ

相続対策を考えるうえでのポイントは、
①相続財産自体を減らす、②相続財産の評価額を下げる、③納税資金を確保する、
の3点です。

まず「①相続財産自体を減らす」は、相続する財産が少なくなれば相続税も少なくなるからです。
ただ、だからといって散財しても意味がありません。
もっとも簡単かつ確実な方法は、生きているうちに相続人に贈与する方法です。

「②相続財産の評価額を下げる」は相続財産の評価額はその財産の種類によって変わる点を活用します。
一般的に、不動産の相続税評価額は取引金額の8割程度になることから、現金等の不動産への転化による節税方法を紹介します。

最後に「③納税資金を確保する」については、②のように、現金や預金を不動産などに変えるのは相続財産の評価額を下げるのには有効ですが、現金や預金の残高を減らすこととなるため、いざ相続が発生した際に相続税が支払えないことにもなりかねないのです。
相続財産の評価額を下げるのは重要ですが、現金や預金を確保しておくのも忘れてはなりません。

それでは具体的な節税対策を見ていきましょう。

【対策1】生前贈与によって課税対象となる相続財産を分配しておく(①相続財産自体を減らす)

相続税は亡くなった時点での相続財産の評価額合計に対して課税されます。
亡くなった人が所有していた相続財産の金額が大きければ大きいほど相続税の負担も大きくなるということですから、できる限りこの相続財産の合計額を小さくしておくことが節税対策の基本となります。
具体的には、生前に被相続人となる人の家族等に対して財産を分け与えておくのが有効です(これを生前贈与といいます)。
ただし、国側も相続税の取り分が少なくならないようにするために、生前に行われた贈与に関しては贈与税という形で課税する仕組みを設けています。

【対策1-1】暦年贈与で大幅節税 毎年コツコツ110万円

「毎年、少しずつ贈与すれば贈与税はかからない」というのは多くの人が一度くらい耳にしたことがあるのではないでしょうか。
これは「暦年贈与」と呼ばれる方法ですが、贈与税には受贈者(もらう人)1人あたりの基礎控除、年間110万円までの非課税枠があります。

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これを上手に使えば少しずつ相続財産を減らしていくことができ、かつ贈与税も回避できるということになります。
1年の間であってもたとえば5人の相続人に110万円ずつ贈与すれば、年間550万円ずつ相続財産を圧縮できるわけです。
相続人が多い場合には、それほど相続開始までの猶予がない人でも割と早いペースで相続税対策を進めることができます。

◼︎暦年課税非課税枠の活用2パターン

贈与税の非課税枠110万円以内で毎年贈与を行っていくパターンと、非課税枠110万円を超えるまとまった金額の贈与を毎年行っていくパターンとを比較してみましょう。

◼︎Aパターン 年間110万円を贈与した場合

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10年続けた場合、一括贈与時(1年で1100万円の贈与)と比べて207万円の節税

◼︎Bパターン 年間400万円を贈与した場合

10年続けた場合、一括贈与時(1年で4000万円の贈与)と比べて1195万円の節税

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年間110万円と400万円を比較すると、非課税枠内に収まっているAの方が得のように思えます。しかし、最終的な贈与総額が大きくなるほどBの方が節税効果が高くなります。推定被相続人の年齢が高齢の場合、110万円づつの毎年の贈与では移転できる金額が少なくなってしまい節税効果も薄くなるため、110万円を超える贈与も節税策として一つの選択肢になります。

◼︎暦年贈与の注意点

ただ、相続開始前の3年以内になされた贈与は「相続財産に持ち戻す」ということになっているため、生前贈与で相続税対策をするのであれば早く始めるに越したことはありません。

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暦年贈与のメリットと活用法|連年贈与には気をつけて!

【対策1-2】相続時精算課税制度 合計2,500万円までの財産を非課税で贈与しよう

贈与税は本来お金を渡すつど納める必要がありますが、税務署に申告を行い相続時精算課税制度を選択すると相続が発生するまでその贈与税の納付をまってもらうことができます。
一定の要件を満たせば合計2,500万円までの財産を非課税で贈与できるという制度です。

子供に不動産を贈与したい、起業するので資金を出してあげたいなど、生前に一度に多くの財産を移したい人には適した方法です。
将来的に値上がりが確実だったり、賃料収入が見込めたりする不動産がある人は贈与時の税金負担を回避することができ、早めに子供に財産を移転することで大きなメリットを享受できます。
ただ、気をつけたいのは相続の時に相続時精算課税を使って贈与した財産を相続財産の中に戻して計算しなければならないということです(すでに納めた贈与税の分は差し引くことができます)。

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相続時に相続財産に持ち戻さなければならない点については、持ち戻す金額を贈与時の価額としているので、値上がり確実な財産であれば贈与時と相続時の差額によって節税することが可能になるわけです。
また、元々それらの財産を考慮しても相続税がかからない範囲の人(相続税の基礎控除範囲内に収まっている人)であれば、組戻しを行っても基礎控除以下となり、贈与税、相続税と非課税のメリットを受けられることになります。

ただし、気をつけなければならないことが2点あります。

◼︎注意点1 選択届出書を提出して、贈与税の申告を行う

相続時精算課税を選んだ場合は、最初に適用を受ける確定申告の際に「選択届出書」を提出し、贈与があった翌年には申告をするようにしなくてはなりません。

◼︎注意点2 暦年課税と相続時精算課税はどちらかしか選べない

暦年課税と相続時精算課税はそれらのうちどちらかしか使うことができません。
つまり、いったん相続時精算課税を選択してしまうと、暦年課税に戻すことができないため、最初に利用の判断をする際はくれぐれも慎重に行わなくてはならないということです。

◼︎暦年課税と相続時精算課税の違い

暦年課税相続時精算課税
贈与者制限なし60歳以上の父母、祖父母
受贈者20歳以上の子ども、孫
非課税枠年間110万円累計2,500万円
税率累進税率(10~55%)一律20%
相続が発生した場合相続前3年以内の贈与財産は相続税の対象贈与財産はすべて相続税の対象

もし相続時精算課税を選ぶと暦年課税による贈与税の基礎控除が使えなくなりますから、少額の贈与を行った場合でもすべて申告が必要になるという煩わしさがあることも覚悟しなければなりません。

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【対策1-3】 結婚、子育て資金の一括贈与 1,000万円までは贈与税は非課税となります

20歳〜49歳までの子に対して1,000万円までの結婚、出産、子育てに関するお金を渡した場合、そのお金に関する贈与税は非課税となります。
制度のしくみは贈与契約を結んだ上で金融機関の専用口座に預金されます。贈与金は結婚・子育て資金口座の開設等を行った上で該当口座で保管します。結婚・子育て目的の支出はすべて非課税となります。ただし、その支出を証明する領収書等を金融機関に提出しなければなりません。
また、受贈者が50歳になる前に贈与者が死亡した場合、残額すべてが相続税の対象になるので注意が必要です。
贈与の特例は暦年課税や相続時精算課税以外にもあります。

20歳〜49歳までの子に対して1,000万円までの結婚、出産、子育てに関するお金を渡した場合、そのお金に関する贈与税は非課税となります。

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結婚に際して支払われる資金 ※結婚資金等は300万円が上限

  • 挙式費用、衣装代などの婚礼費用(婚姻の日の1年前の日以後に支払われるもの)
  • 新居(賃貸)の家賃・敷金・引越費用(一定の期間内に支払われるもの)

妊娠、出産および育児に要する資金

  • 不妊治療、妊婦検診に要する費用
  • 分娩費、産後ケアなどに要する費用
  • 子の医療費、幼稚園・保育園の保育料など

【対策1-4】妊娠、出産および育児に要する資金1,500万円までであれば贈与税が非課税に

30歳未満の子や孫に対して教育のために使うお金を渡した場合、1,500万円までであれば贈与税が非課税となります。

この特例を使用する際は、贈与者と受贈者のあいだで贈与契約を結び、金融機関経由で「教育資金非課税申告書」を税務署に提出した上で、受贈者名義の口座に預金する必要があります。

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学校等に対して直接支払われる資金

  • 入学金、授業料、入園料、施設設備費または入学試験の検定料など
  • 学用品の購入費や修学旅行費、給食費など学校等における教育に伴い必要な費用など

学校等以外に対して直接支払われる資金(上限500万円)

  • 学習塾やそろばんなど教育サービスに関する使用料など
  • スポーツや文化芸術に関する活動、その他教養の向上のための活動に関わる指導への対価など

【対策1-5】住宅取得等資金贈与の特例 最大3,000万円まで贈与税が非課税となります

マイホームを購入するために両親から資金援助を受けた場合、最大3,000万円まで贈与税が非課税となります。

資金を渡す側の親族に年齢制限はありませんが、適用期限は平成33年12月31日までとなりますので注意が必要です。

非課税限度額

契約時期良質な住宅一般住宅
2016年1月〜2020年3月1,200万円
(3,000万円)
700万円
(2,500万円)
2020年4月〜2021年3月1,000万円
(1,500万円)
500万円
(1,000万円)
2021年4月〜2021年12月800万円
(1,200万円)
300万円
(700万円)

※カッコ内の金額は消費税10%適用後の限度額。増税後、非課税限度額が大幅に引き上げられる予定。
※「良質な住宅」とは省エネや耐震などの基準を満たした住宅用家屋のこと

受贈者のおもな要件

  • 贈与者の直系卑属(子・孫など)であること
  • 20歳以上であること
  • 贈与を受けたときに日本国内に住所を有していること
  • 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること

対象になる住宅のおもな要件

  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに家屋の新築・取得またはその増改築等の対価に充て、住宅を取得し住んでいること(または住むことが確実であること)
  • 登記簿上の床面積が50㎡以上240㎡以下で、かつ床面積の2分の1以上が受贈者の居住用であること
  • 中古住宅の場合は以下のいずれかを満たすこと
     ・25年以内に建築された耐火建築物
     ・耐火建築物以外は20年以内に建築されたもの
     ・一定の耐震基準を満たしていること

残額→課税財産

非課税制度の適用外となった残額は課税財産として贈与税の対象だが、「暦年課税」か「相続時精算課税」の控除が適用可能

【対策1-6】早いほど非課税枠アップ!最大3,000万円が非課税

子どもや孫(20歳以上が条件)に対し、住宅を取得するための資金としてお金を贈与した場合、最大で3,000万円までが非課税となります。

延長される可能性もありますが、現行では2021年12月までが期限。契約時期が早いほど非課税の上限も大きいので、住宅取得に関心がある人は早めの決断をしましょう。

住宅取得等資金贈与教育資金の贈与結婚・子育て資金の贈与
おもな使途マイホームの新築費用、中古住宅の購入費用、増築費用など入園料、授業料、学用品費、通学定期券代、留学渡航費など挙式費用、新居費用、出産費用、不妊治療費、子の医療費、子の保育費など
受贈者子・孫・曽孫(合計所得2,000万円以下)30歳未満の子・孫・曽孫20歳以上50歳未満の子・孫・曽孫
非課税枠このページの項目参照受贈者1人につき1,500万円受贈者1人につき1,000万円
相続税とは無関係。ただし、相続開始前3年以内の贈与は、贈与時の時価を相続税に加算相続税との関係相続税の計算時に贈与税を清算。精算時の贈与財産は贈与時の時価で評価される相続時精算課税
適用期限2021年12月まで2019年3月31日まで2019年3月31日まで
契約終了時の残額使い残した分を贈与税として課税使い残した分を贈与税として課税
契約期間中に贈与者が死亡した際の相続税課税なし課税なし残額を相続税に加算する

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【対策1-7】おしどり贈与(贈与税の配偶者控除)

おしどり贈与とは、20年以上連れ添った配偶者に対して住宅または住宅取得資金を贈与した場合に、2000万円までは贈与税がかからないという税法の特例です。

このおしどり贈与は、今回の民法改正で取り扱いが大きく変わりました。

これまでおしどり贈与を使って贈与された自宅は、遺産分割の際には、配偶者が先に財産の一部をもらっていたもの(特別受益といいます)として取り扱われるのが原則でした。

つまり、自宅をおしどり贈与されていた場合、配偶者が遺産分割でもらえる財産はかなり目減りしてしまっていたのです。

これでは相続後の配偶者の生活保障にならないということで、おしどり贈与を使って贈与された自宅は、基本的には遺産分割の際に考慮しなくて済むようになりました。

イメージしやすいように事例で見てみましょう。

たとえば、

前妻との間に子がいる夫がいて、後妻が結婚20年以上経ったのち自宅のおしどり贈与を受けた

とします。

この状況で夫が亡くなると、後妻と前妻の子の双方に相続権が発生します。

改正前の法律では、生前すでに贈与を受けていた自宅についても、前妻の子に取り分が認められていました。

改正後、おしどり贈与を受けた自宅については、遺産分割協議のテーブルに乗らなくなり、基本的に亡くなった時点での相続財産についてのみ、分割協議をすればよくなりました。

節税として使える代表的なケースは、相続で取得した自宅不動産を売却したり買い替えたりする可能性がある場合です。

長期保有の不動産を売却した場合、売却益に対して約20%の所得税等がかかります。

ただしその不動産が自宅の場合、特例により売却益から3000万円控除できます。

これを夫婦共有の不動産にしておくと、控除額が2人分で最大6000万円となります。

通常、不動産の転売でここまで値上がりするケースは少ないですが、親の不動産を相続した場合などの昔から保有しているときは活用できる可能性もあります。

おしどり贈与は節税対策ではなく、相続争いが起こらないようにするための対策と理解して活用するのがよいでしょう

【対策2】養子縁組を活用した相続税対策(②相続財産の評価額を下げる)

「相続人の基礎控除はひとりにつき600万円」「生命保険金の非課税枠はひとりにつき500万円」「死亡退職金の非課税枠はひとりにつき500万円」などの規定から、一般的に相続においては法定相続人の数が増えるほど節税効果が高くなります。

このため、相続人が少ない場合は養子縁組によって法定相続人を増やすという方法も可能です。

ただし、民法上では養子縁組の人数に上限はありませんが、相続税法上では制限が設けられているので注意してください。

実子がいない場合は養子ふたりまで、実子がいる場合は養子ひとりまでが法定相続人の対象です。

しかし、税務署から「明らかに節税対策としての養子縁組」と判断されると、その養子は法定相続人として認められないことも。

養子縁組による節税対策を検討する際は、本当に有効なのかを吟味する必要があるでしょう。

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【対策3】盛大な葬儀による相続税対策(②相続財産の評価額を下げる)

節税&故人のために失礼のない葬儀を

第2章では被相続人が亡くなった際に必要な手続き・やるべきことなどを紹介しましたが、このなかで節税対策となるのが葬儀です。

相続税には債務控除という制度があり、これは被相続人が債務を残して死亡した場合、その債務を遺産の総額から差し引くことができる制度です。

葬儀費用も控除対象となるので、債務及び葬式費用の明細書を忘れずに提出しましょう。

葬儀の規模が大きくなれば、その分だけ葬儀費用もかかり、債務控除の額も多くなります。

小規模な葬儀大規模な葬儀
葬儀費用
債務控除の額も
少なくなる

債務控除の額も
多くなる
香典の総額
葬儀費用を賄う額も
少なくなる

葬儀費用を賄う額も
多くなる
相続税対策
節税効果

節税効果

また、節税目的だけでなく、故人を見送るため、また故人が生前にお世話になった人たちに失礼がないよう、しっかりとした葬儀を執り行う必要もあります。

葬儀費用として認められるのは、お通夜や告別式の費用、火葬費用、住職に支払う費用など。香典返しや初七日などの法事の費用は対象外なので注意しましょう。

【対策4】不動産への転化を検討しよう(②相続財産の評価額を下げる)

相続が見込まれる財産を現金のままで持っておくと当然その金額で税務上も評価されます。

しかし、現金がある人がそれを不動産に換えることによって、資産価値自体はそれほど落とすことなく相続税課税にあたっての評価額を下げることができるのです。

具体的に土地と建物の評価方法と時価に対する割合は下記のとおりです。
節税対策の基本は、いかにして相続財産の評価額を小さくし、相続税を安くするかです。
現金資産の評価額は100%なので、現金や預金はそのままの額で評価されてしまいます。
しかし、現金資産を不動産資産に変えることで、大きな節税効果が期待できます。

◼︎土地

自用地賃貸貸付地
評価方法路線価(公示地価のおおむね80%)
or 倍率方式
自用地の評価額×(1‐借地権割合×借家権割合)
時価に対する割合8割程度6~7割

◼︎建物

家屋(自用)賃家
評価方法固定資産税評価額家屋の評価額×(1‐借家権割合×賃貸割合)
時価に対する割合建築費の6割程度建築費の4割程度

現金から不動産へ転化した際の評価減事例

◼︎事例1 現金で建物と土地を購入した場合

現金を建物に変更すると、評価額は建築費の約60%となり、土地ならば公示価格の約80%に抑えられます。

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◼︎事例2 更地に賃貸住宅を建築した場合

賃貸住宅の敷地及び建物は貸家建付地・貸家の評価減が適用でき、敷地は条件を満たせば小規模宅地等の特例を利用できます。
このため地主タイプの資産家には、大幅に相続税の負担を下げられる方法として活用されることが多いです。
ただし、賃貸用の建物を所有する場合は、入居者の確保など賃貸ビジネスで赤字にならないよう気をつける必要もあります。

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【対策5】土地の評価額を下げよう(②相続財産の評価額を下げる)

相続税法においては、土地は「路線価方式」か「倍率方式」で評価額を決めるのが原則となっています。路線価図では千円単位で記載されており、例えば1,000千円と記載されていた場合は、1平方メートルあたり100万円で評価をしますという意味です。

土地の評価額は「路線価×土地の面積」です。先ほどの土地が100平方メートルだったら、1000千円×100平方メートル=1億円と求められます。

ただ、同じ面積の土地であっても、その地形などによって利用価値が下がり、評価額が下がる場合があります。

【対策5-1】「奥行価格補正率」「側方路線影響加算率」

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極端な奥行きがあって使いにくい土地などの場合は評価が下がり、2方向が道路に面している角地などは評価が上がると考えられます。そのような場合は、各種の「補正率」を使って評価額が加減されます。補正率には「奥行価格補正率」「側方路線影響加算率」などがあります。

その他不正形地には「かげ地割合」による評価減を適用することができます。

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【対策5-2】広大地評価(地積規模の大きな宅地の評価)

また、広い土地はそのままでは利用方法が限定されるため、売却時に単価が下がることを加味して評価額を計算することが認められています。

地積規模の大きな宅地の評価額を計算する際には、規模格差と呼ばれる割合を使用します。

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規模格差補正率の計算式は以下のようになっています。

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Ⓑ及びⒸは、その土地の所在する場所と地積の大きさに応じて定められています。

例として、三大都市圏にある800㎡の土地(路線価40万円・他の補正なし)の評価額は以下のようになります。

三大都市圏に所在する宅地

地積
500㎡以上1,000㎡未満0.9525
1,000㎡以上3,000㎡未満0.975
3,000㎡以上5,000㎡未満0.85225
5,000㎡以上0.8475

三大都市圏以外の地域に所在する宅地

地積
1,000㎡以上3,000㎡未満0.9100
3,000㎡以上5,000㎡未満0.85250
5,000㎡以上0.8500

◼︎(1)規模格差補正率の計算

(800㎡×0.95+25)÷800㎡×0.8=0.785 → 0.78(小数点以下第2位未満切捨)

◼︎(2)地積規模の大きな宅地の評価額

400,000円×0.78×800㎡=2億4,960万円

減額を考慮せずに計算した場合の評価額は、400,000円×800㎡=320,000,000円となります

したがって、3億2,000万円-2億4,960万円=7,040万円の評価減となります

【対策6】生命保険に加入しよう(③納税資金を確保する)

被相続人が相続人を受取人にした生命保険に加入することは、節税+納税資金の準備としても効果的です。

「500万円×法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)の数」までは相続税の課税財産の計算において「非課税」という扱いになっています。

生命保険には下記の算式で計算した非課税枠が設けられています。

非課税枠=「500万円×法定相続人の数」

つまり、死亡保険金は「500万円×法定相続人の数」を超えた額から課税対象になってきます。

相続時における生命保険の課税対象金額=
死亡保険金-(500万円×法定相続人の数)

生命保険金の控除を使う目的で加入するのであれば、相続人が死亡保険金を受け取れるように契約する必要があるのです。
例えば、夫が契約者になる場合は、被保険者も夫とし、保険金の受取人は相続人となる妻や子どもを指定します。
「現金」という資産を、「保険」という相続税の節税効果の高い資産へと、1度に変えることのできる方法として「一時払い終身保険に加入する方法」があげられます。

相続人が妻と子ども2人だった場合

相続人が3人いる場合には、生命保険の非課税枠は500万円×3人=1,500万円となります。

生命保険を利用した節税は上記の不動産建設などよりも手軽にできる方法ですので、ぜひ有効に利用したいものです。

また、もし不動産を誰かに相続させると兄弟の間でのバランスが悪くなる場合においても生命保険は効果的です。

取り分が少なくなってしまう相続人については死亡保険金を受け取らせることで不公平感をなくし、相続争いを避けるという使い方もできるのです。

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【対策7】相続対策は二次相続まで考慮して準備しよう(相続発生後でも節税できる)

夫、妻ともに財産を所有している場合、夫が亡くなった後にすぐ妻が亡くなる…というような形で相次いで相続が生じる可能性があります(この2回目の相続のことを「二次相続」と呼びます)

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この場合、この夫婦の子供などの遺族は、1回目と2回目のそれぞれの相続で相続税を負担しなくてはならない可能性がありますから、相続対策は二次相続までを含めたトータルで準備することが大切になります。

配偶者は相続時に配偶者控除という形で大幅に相続税の負担額を小さくすることができますから、1回目の相続で亡くなった方がいくら財産を相続するかを調整することにより、トータルで考えた場合の相続税の負担額は小さくできる可能性があります。

ケース1  法定相続分で分割

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ケース2 配偶者控除を最大限に活用する分割

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ケース3 二次相続の税額をゼロにする分割

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上記ケースは配偶者控除を活用した二次相続まで踏まえた対策です。
残された配偶者は、相続財産の1/2まで相続するか、又は1億6千万円まで相続するのであれば、相続税がかかることなく相続することができます。(※相続人が配偶者と子供の場合)
一次相続では遺産分割は配偶者ができるだけ多く受けとるようにする方が、節税になると言えます。
しかし、二次相続では既に配偶者がお亡くなりになられていますから、配偶者控除が使えませんし、法定相続人も1人減ります。
配偶者控除を活用し、一次相続で税負担を極力少なくするよりも、次の相続を考えて事前に子供たちに一定額を相続させることで、一次相続と二次相続トータルで相続税が少なくなります
二次相続対策のキモは、次の相続が発生する時点での財産を予想することです。
配偶者の収入や生活費、年齢や健康状態、これからできる節税など考慮すべき要素が多く、複雑に絡み合います。

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【対策8】遺言を残そう(争続対策)

遺言書を残す意味は1つではありません。

もちろん、相続人の間での紛争を防止することが最大の効果といえますが、税務的な面でもとても意味があることなのです。

もし、遺言書がない場合は相続人の間で遺産分割協議をして相続財産の配分を決めなければなりませんが、この手続きに非常に時間がかかることがあります。

ただ、相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10カ月であり、もしそこまでに遺産分割協議が終わっていないととりあえず法定相続分(民法で定められた相続分)で相続したと仮定して相続税申告をすることになります。

この場合では、「配偶者の税額軽減」「小規模宅地等の特例」といった相続税の負担を大幅に軽減する特例が使えないことになってしまいます。

被相続人(亡くなった人)が生前に税理士とよく打ち合わせをして、こういった特例の利用や二次相続(配偶者のどちらか後に亡くなった方の相続)まで考えた上で相続財産を配分した遺言書を書いておけば、相続人の負担を大幅に軽くすることができるのです。

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【対策9】認知症対策(その他)

相続税対策でしばしば問題となるのは、推定被相続人が認知症を発症してしまうケースです。

というのも、生前贈与や遺言などの対策は、当人同士の意思に基づくことが原則だからです。

もしも被相続人が認知症を発症して判断能力を失えば、そこからは暦年贈与を行うこともできないのです。

このような事態に備え、被相続人に法的代理人を立てる成年後見制度がありますが、近年、家族信託として認知されてきた民事信託の利用が増えています。

民事信託とは、営利を目的とせずに家族や親族が被相続人(委託者)に変わって財産を管理できる仕組みで、投資信託とは異なり信託業法の適用を受けないほか、金銭以外の不動産などを管理することもできます。

遺言書や成年後見制度よりも効力・自由度に優れているので、ぜひ検討してみましょう。

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相続税対策というと、非常に広範囲で、すべきことも多種にわたりますが、上記3つの柱を念頭におくことで、いま何を重点的にすべき相続税対策がわかります。

まず「相続税がいくらくらいかかるのか?」を知ることからすべてが始まります。
「まだ俺が元気なうちに死んだ後のことを考えるとは、けしからん!」と言った声や、「親が元気なのに死後のことを考えるのは気が進まない」といった声はよく耳にします。

しかしリアルな相続税の金額を知ると、考え方が変わるかもしれません。
生涯をかけて築いた財産だからこそ、大事な家族のために残してあげたいと思うものです 。
それも生きた一つの証になります。
また、相続税には基礎控除や、各種いろいろな控除が設けられていますので、場合によっては相続税が0になって税金対策が必要ないこともあります。

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相続税の金額がわかった後は、次は「誰がどの財産を相続するか」です。
このテーマは「相続税を安くする」と「相続争いにしない」という2面から考える必要があります。
税金面でよくある失敗として、「次の相続を考えているか?」という点を見落としていることがあります。(二次相続対策と言います)
たとえばご主人の相続対策を考える中で、配偶者に認められている「配偶者控除」を最大限利用して、奥様にたくさんの財産を相続してもらい、ご主人の相続税対策をした場合。
たしかに配偶者控除を使うことで、ご主人の相続は税金が減りますが、将来の奥様の相続のときには多額の相続税が出る、というケースがあります。
相続税は、ご主人と奥様の2回の相続を念頭に置くことが基本です。
このように税金面を考えて「誰に何を相続させるか」を決めていきます。
また税金だけではなく、各相続人の感情面や貢献面などを考慮して、遺産争いにならないように決めることも重要な視点です。
相続専門の税理士、行政書士、司法書士が過去の事例のノウハウなどを交えながら、皆さまの個別の事情に一番適した解決策を一緒にかんがえさせていただきます。
遺言書を作る、家族信託を利用すると言った手法もご提案させていただきます。
そして、最後に相続税そのものを節税することを考えます。
相続税の節税の例としては、下記のような対策が考えられます。

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このように節税対策はたくさんありますが、「どれだけお金を使い、どれだけお金を残したいか」などケースバイケースで正解は変わります。

相続専門の税理士が、ご要望を聞きながら、相続税や生活費を考慮して一緒に考えさせていただきます。

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