竣工書類の素早いデジタル化と長期保存・改ざん防止のための「デジタルマイクロフィルム」を推進 長期保存のため空調管理システム導入 システム・プランニング(神奈川県)

目次

  1. 自分のやりたいことをかなえるために創業 竣工書類の「素早いデジタル化」と「長期保存と改ざん防止方法」に活路
  2. 過去の竣工図面は紙媒体が主流、従来の手間暇かかるA1サイズのスキャニング作業をわずか0.3秒で高品質画像のデジタルデータへ
  3. 竣工書類のデジタル化の利便性と長期保存に対応する「デジタルマイクロフィルム」という新たなデータ保存方法を開発 「JIS Z6018」を取得し、建設業界へ提唱・推進へ
  4. 独自のデジタルマイクロフィルムの最大のメリットは長期保存と信頼性 JIS Z6018(ISO11506)に準拠したデータ保存方法により非改ざん性をもつため、紙原本を廃棄することが可能
  5. 飛躍のきっかけはドイツマイクロボックス社製の最新スキャナーによる紙書類のデジタル化
  6. 市場拡大と新たなビジネスモデルとなる「アーカイブセンター」の構築
中小企業応援サイト 編集部
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建築業界では、竣工書類の長期保存が重要な課題となっている。紙やクラウドによる保存が一般的だが、デジタルデータのクラウド保存やサーバー保存では50年以上の長期保存は未知数だからだ。画像情報システム設計を行うシステム・プランニング株式会社(神奈川県海老名市)の森弘英雄代表取締役は、過去のA1サイズ紙の竣工図面のデジタル化をわずか0.3秒で行い、更にデータ保存方法に長期保存と改ざん防止の有効性を確保するためにJIS Z6018に準拠した「デジタルマイクロフィルム」という独自のデータ保存方法を開発し、普及を進めている。また長期保存と安定した温度、湿度を確保するために高度な空調システムを導入した。(TOP写真:竣工書類のデジタルデータをマイクロフィルムにしたものをルーペで確認する森弘志保取締役事業部長)

自分のやりたいことをかなえるために創業 竣工書類の「素早いデジタル化」と「長期保存と改ざん防止方法」に活路

竣工書類の素早いデジタル化と長期保存・改ざん防止のための「デジタルマイクロフィルム」を推進 長期保存のため空調管理システム導入 システム・プランニング(神奈川県)
A1サイズの図面やA3以下の竣工書類が描画されているデジタルマイクロフィルム

システム・プランニングの森弘英雄社長が開発、普及を進めるデジタルマイクロフィルムは、デジタルデータをコンピューターから直接マイクロフィルムにプロットしたものだ。従来の紙面を撮影した〝アナログ〟のマイクロフィルムと異なり、PDF等のデジタルデータをTIFFデータに変換した後、直接マイクロフィルムに描画する。

森弘社長にとって、「デジタルマイクロフィルム」の開発は、創業以来の夢。森弘社長は22年間、商社や半導体製造装置メーカーなどでサラリーマン生活を送った後、1988年6月にシステム・プランニングを設立した。画像情報機器のシステム設計・製造から販売、保守サービスまで一貫して行う。「独立する際、自分の好きなことをやりたかった。サラリーマン時代は映像を扱う仕事をしていたが、映像は感覚的なものが必要。自分には備わっていないと思った。そこで、静止画の画像処理で世の中に貢献しようと考えた」と語る。

設立当初は、「商品もない、お金もない、技術もない」状況下でのスタート。医療画像管理システムや、X線画像管理システムなどを開発していたが売上は思わしくなかった。決算で3期連続の赤字となった。「銀行の支店長から『これ以上は貸せない』と言われ目が覚めた。そこからが真剣勝負の始まりだった」(森弘社長)。自分のやるべきことは何か?を真剣に考え、他社がまだ手がけていないがこれから必須の画像管理とは…。建築物における竣工書類の敏速なデジタル化とデジタル化したデータの長期保存方法に活路を見出し、会社を成長軌道に乗せたのだった。

過去の竣工図面は紙媒体が主流、従来の手間暇かかるA1サイズのスキャニング作業をわずか0.3秒で高品質画像のデジタルデータへ

竣工書類の素早いデジタル化と長期保存・改ざん防止のための「デジタルマイクロフィルム」を推進 長期保存のため空調管理システム導入 システム・プランニング(神奈川県)
ドイツマイクロボックス社製の高速・高画質カラーブックスキャナーについて説明するシステム・プランニングの森弘英雄社長

竣工書類とは、建築工事完了後に建築業者から施主に提出される文書のこと。工事の完了を証明する書類や、品質確認の検査結果、将来のメンテナンスに役立つ竣工図面や取扱説明書などが含まれる。これらの書類は法的要件を満たし、建物の登記や売買時の手続きを円滑に進めるために必要となる。

過去の竣工図面のサイズがA1の紙であったために、迅速にスキャンしてデジタル化する方法がなかったことと、真正性や証拠性を保つための手段としてデジタルデータに対する信頼性がまだ確立されていないことが、デジタル化が進まない原因だった。

竣工書類の保存には、竣工後の点検や修繕、あるいは突然の不具合に対応するため、書類を探すためのスピードが求められるが、紙では対応するための時間と労力が半端ではなかった。しかも紙の書類は保管スペースの問題や書類によっては劣化のリスクを抱えるほか、管理コストも年々増加しており、対応が求められていた。

このような背景の中で森弘社長が最初に手がけたのが、高速・高画質カラーブックスキャナーだった。森弘社長の要望に合う製品を世界中で探したどり着いたドイツマイクロボックス社の製品だった。スキャンスピードは0.3秒、ファイル保存までのサイクルタイムも2.2秒の速さだ。従来のスキャナーとの大きな違いはA1サイズの製本図面をただめくるだけで高精細カメラが上からスキャンしていく。このことによってデジタル化の障害だった手間がかかる問題をクリアできるようになり、全国のスキャン業者を中心に導入企業が増えていった。

竣工書類のデジタル化の利便性と長期保存に対応する「デジタルマイクロフィルム」という新たなデータ保存方法を開発 「JIS Z6018」を取得し、建設業界へ提唱・推進へ

竣工書類の素早いデジタル化と長期保存・改ざん防止のための「デジタルマイクロフィルム」を推進 長期保存のため空調管理システム導入 システム・プランニング(神奈川県)
紙の竣工書類のデジタル化とデジタルデータの利用方法によって三つの保存方法を提案している(ホームページより)

デジタル化のスキャニングの問題は解決した。データの保管場所として多くの企業が利用しているサーバーやクラウドは、問い合わせ対応時はどこにいても検索できる良さがあり、対応面では非常に優れている。ただし、デジタルの課題は、データの安全性と長期保存性。50年以上の長期保存を前提とする場合には、クラウドサービス提供者が存続する保証もなく、データの真正性を長期間維持できるか不明という問題があった。

以上の状況の中で、「誰もが容易に扱える単純なシステムにこそ価値がある」と森弘社長が着目したのが「デジタルマイクロフィルム」だった。従来のアナログ的なマイクロフィルムではない新たなデータ保存法の開発への挑戦が始まった。その挑戦は、JIS Z6018(ISO11506)取得という形で結実した。JIS Z6018は、イメージデータを長期にわたり安全に保存する規格。結果、紙書類を廃棄できるというお墨付きをもらった。特徴は、省スペース・長期間・法的証拠性。35mmマイクロフィルムで保存するとA4換算の紙と比較して1/350の省スペースで保存できる。

上記の図にあるように、高速・高画質カラーブックスキャナーによりデジタル化したデータを
1.問い合わせ対応等での速やかな検索のため、PDFデータとして保存
2.別途TIFFデータとしてDVDに保存
3.100年以上の長期保存と非改ざん性を持ったデジタルマイクロフィルムで保存
という三つの方法を提案することで「データの活用性」「基本データとして保存」「長期保存と非改ざん性」を手に入れることができる。

独自のデジタルマイクロフィルムの最大のメリットは長期保存と信頼性 JIS Z6018(ISO11506)に準拠したデータ保存方法により非改ざん性をもつため、紙原本を廃棄することが可能

竣工書類の素早いデジタル化と長期保存・改ざん防止のための「デジタルマイクロフィルム」を推進 長期保存のため空調管理システム導入 システム・プランニング(神奈川県)
システム・プランニングが開発した独自のデジタルマイクロフィルム保存方法が世界的にも認められ、JIS Z6018(ISO11506)として認定された(ホームページより)

システム・プランニングが開発したデジタルマイクロフィルムの最も大きい特徴は「非改ざん性と竣工書類の5W1Hの視認性」にある。COMプロットと呼んでいる仕組みだ。一つの竣工書類をインデックスフレームで囲み、施主、協力会社等の5W1Hがあり、実際の竣工書類の後には、改ざん防止のための作成証明と認定証書がある。これは竣工時のままの竣工書類であることを証明している。これにより膨大な紙の竣工書類の廃棄が可能となった。

2006年7月には初めて、デジタルマイクロフィルムシステムを大手建設会社に導入。2007年4月には、「画像情報を100年以上保存するため」(森弘社長)、システム・プランニング本社内にデジタルマイクロフィルムを保管するアーカイブセンターを設置した。さらに2008年4月には、刷新したデジタルマイクロフィルムを第二地銀に導入するなど、着実に普及を進めてきた。

飛躍のきっかけはドイツマイクロボックス社製の最新スキャナーによる紙書類のデジタル化

竣工書類の素早いデジタル化と長期保存・改ざん防止のための「デジタルマイクロフィルム」を推進 長期保存のため空調管理システム導入 システム・プランニング(神奈川県)
高解像デジタルマイクロ装置「ImageCOM」はデジタルデータの長期保存することを可能にした

システム・プランニングにとって飛躍のきっかけとなったのは、2008年にドイツマイクロボックス社の日本総代理店になったことだった。同社の最新鋭の画像スキャナーの輸入販売やシステム開発を行った。そして2013年3月、ドイツマイクロボックス社との共同開発で、デジタルデータを2マイクロメートルのレーザーで直接マイクロフィルムに描画する高解像デジタルマイクロ装置「ImageCOM」(イメージコム)を発売した。

従来の〝アナログ〟のマイクロフィルムでは、一枚一枚の紙を手作業で撮影していたが、この専用装置にセットするだけで、デジタルマイクロフィルムを自動で描画でき、生産性が飛躍的に向上した。竣工書類などの長期保存が課題となる建築業界への市場展開が可能となった。

両社の提携で活躍したのは、森弘志保取締役事業部長だ。志保取締役はドイツマイクロボックス社との交渉を担当し、海外事業の責任者として、森弘社長の貴重な右腕となっている。志保取締役は「クラウドサービスの関係者は『膨大なデータのうち、失われるものはほとんどない』と言いますが、たまたま必要な書類がなくなる、という可能性がないわけではない。多くの企業が『大事なものだけでもマイクロフィルムで残しておきたい』と気づいています」と話す。

竣工書類の素早いデジタル化と長期保存・改ざん防止のための「デジタルマイクロフィルム」を推進 長期保存のため空調管理システム導入 システム・プランニング(神奈川県)
森弘社長と志保取締役

市場拡大と新たなビジネスモデルとなる「アーカイブセンター」の構築

竣工書類の素早いデジタル化と長期保存・改ざん防止のための「デジタルマイクロフィルム」を推進 長期保存のため空調管理システム導入 システム・プランニング(神奈川県)
新設した第3アーカイブセンターの写真 一定の温度・湿度で管理されるアーカイブセンター

システム・プランニングは、デジタルマイクロフィルム技術の提供を通じて新たなビジネスモデルを構築している。その一つは、デジタルマイクロフィルムの長期保存と管理の効率化を図るための施設「アーカイブセンター」だ。システム・プランニング本社内に二つのセンターがあるが、2024年7月に3ヶ所目の施設を稼働させた。アーカイブセンターでは、マイクロフィルムを最適に保管するために温度を20度プラスマイナス1度、湿度を40%以下に保っている。センター内にはフィルムに悪影響を与える化学物質を持ち込まないなど、細心の注意を払っている。森弘社長は「最新のセンターの完成を機に、もっとお客さまを増やしていきたい」と意気込む。

システム・プランニングは、新しいアーカイブセンターの設立により、データの長期保存と管理の効率化を図ることも視野に入れる。デジタルマイクロフィルム技術をさらに進化させ、施主向けの完成図書への活用を計画している。システム・プランニングはこれからも、デジタルマイクロフィルムの普及を通じて、データの長期保存と管理の効率化を推進し、信頼性の高いデータ保存手段を提供することで、さまざまな業界への貢献を目指している。

企業概要

会社名システム・プランニング株式会社
本社神奈川県海老名市国分南1-2-23 2001ビル
HPhttps://www.system-p.com/
電話046-234-5688
設立1988年6月
従業員数27人
事業内容 画像情報機器のシステム設計・製造・販売ならびに導入コンサル、竣工書類の電子化、およびデジタルマイクロフィルム化など