![JOHNAN株式会社](https://cdn.the-owner.jp/600/400/FtKkxvgIQwBBBzNGhjqpfCCDovTTEDXz/a9a8d313-a87f-4d2c-851c-18c7a118033a.png)
その後、JOHNAN株式会社にて、国内外の企業との資本提携や新規事業投資、組織文化改革に従事。
ODM(受託開発)・EMS(受託製造)型のビジネスモデルから「ものづくりプラットフォーム」型のビジネスモデルへの変革を主導している。
2010年6月代表取締役社長兼CEOに就任。
近年のものづくりの多様化と変化に対応するべくビジネスモデルを変革し、ものづくりの上流から下流に至る、お客さまのお困りごとを解決する「ものづくりプラットフォーム企業」として多彩な事業を展開している。
創業からこれまでの事業変遷
―― まずは、創業から現在にいたるまでの事業の変遷についてお聞かせください。
山本 弊社は1962年に私の祖父、山本松雄が祖母と共に宇治市で創業しました。当時は電子部品の下請け業務をしており、国内大手家電メーカーの製品に対するコンデンサーのはんだ付けなどをおこなっていました。いわば、家内工業のような形で、電子プリント基板に関わる仕事に携わっていました。
その後、国内大手家電メーカーが国内外で家電事業を拡大するにつれて、弊社も事業を拡大し、半導体製造の一部や、家電製品の製造にも参入しました。事業の幅が広がる中で、はんだ付けから部品組み立て、さらには最終製品にいたるユニット製造まで手がけるようになりました。
―― 非常に幅広い事業展開ですね。特に転換期となった時期はありますか?
山本 1990年代までは順調に拡大していましたが、バブル崩壊後、日本の製造業全体が大きな変化を迎えました。私たちも経営方針を見直し、収益性の高い事業分野にシフトする必要がありました。そうした背景から、直接投資や企業買収などを通じて医療機器や自動化機器の分野に参入し、事業ポートフォリオの組み替えを進めてきました。
代替わりの経緯・背景
―― 山本社長が事業を継がれるまでの経緯についても教えていただけますか?
山本 私自身、幼少期から家業を継いでくれという強い期待はありませんでした。両親も「やりたいことをやりなさい」と言ってくれていましたので、学校の教師や教会の牧師を目指していた時期もありました。しかし、20歳頃になると、社会に直接かかわる事業会社で挑戦したいという気持ちが芽生え、中小企業の経営に興味を持つようになりました。
東京でコンサルティング会社に勤めていた頃、祖父の余命が限られていることを知り、自主自立した中小企業へと成長しようと挑戦するJOHNANで、私も何らかの一役を担いたいと思うにいたったことが、私が事業承継に臨んだ契機となりました。
―― ご自身の思いから戻られたのですね。事業承継の際、困難な点はありましたか?
山本 もちろん、事業を継いだ直後に想定外でかつ多様な困難に直面しました。特に、経営の実務に関する未経験の課題が多く、リーダーシップを発揮する難しさを感じました。しかし、承継前に起因する過去の問題の責任も引き受ける覚悟をして、他責にすることなく自ら解決策を模索しながら、少しずつ経験を積んでいきました。
ぶつかった壁と乗り越え方
―― 経営の中で一番大変だった壁はどのようなものでしょうか?
山本 リーマンショック前後の時期に、私にとってもっとも大きな壁に直面しました。当時は、収益性や成長性から事業を評価することで、また可能な限り雇用を確保することを判断の軸とすることで、精一杯でした。その反省に立って、私はビジョンの軸を打ち立てることの必要性を痛感し、この会社は何のために存在し、ものづくりを通してどのような社会を実現することに寄与する会社なのかというビジョンの軸を描くこととし、その軸づくりに邁進しました。
―― その軸が現在の経営方針にも影響を与えているのでしょうか?
山本 そうですね。現在はJOHNANらしさを定義し、2050年を見据えたビジョンを掲げ、そのビジョンに基づいた経営をおこなっています。この長期的な視点でのビジョンが、収益性や成長性に加えて、事業の評価や投資判断の軸となっています。
今後の経営・事業の展望
―― では、2050年を見据えたビジョンに基づく今後の展望について詳しくお聞かせください。
山本 2050年を見据えたビジョンでは、「一人ひとりの希望を実装してまわる」と謳っています。従来の大量生産大量消費の時代から、個々のニーズに応じたカスタマイズ製品やサービスを提供することが今後の鍵になると考えています。これにより、顧客が製品の製造プロセスに直接関わり、自らの希望を反映させることで、より価値のある製品を作り上げることが可能になります。いうなれば、「ものづくりプラットフォーム」を構築することが今後の展望です。
具体的には、成長産業である自動車、医療機器、半導体分野における新製品や製造ラインの開発を進めるお客さまに対して、開発や製造の支援をおこなうことで、ものづくりのお困りごとに対応するプラットフォームを構築していきます。特筆すべきは、自動車産業や医療機器、半導体製造分野における技術の進化に対応し、製造プロセスの効率化やカスタマイズを進めていくこと、また、修理サービスやCT装置を使った製品検査サービスを拡充し、ものづくりの上流から下流までのお困りごとに対応できる体制を整えていることです。製品の持続可能性や品質の向上にも貢献していきたいと思っています。
全国の経営者へ
―― 最後に、全国の経営者の方々に向けて、何かアドバイスをいただけますでしょうか?
山本 私もまだまだ学び続けている立場なので、偉そうなことは言えませんが、まずは経営者として「自分が本当にやりたいこと・やるべきことは何か」を問い続け見出すことが大切だと思います。経営は、収益性や成長性に加えて、社会に対して会社が貢献すると覚悟するビジョンを実現するために、時には厳しい決断を迫られることがありますが、常に自分と会社の存在意義を見失わないようにすることが重要です。あと、心身の健康を増進させましょう。
また、一度やると決めたら、最低でも3年間は粉骨砕身で取り組みましょう。短期間で結果を出すのは難しいですが、粘り強く取り組むことが成功への道だと感じています。
- 氏名
- 山本 光世(やまもと みつよ)
- 会社名
- JOHNAN株式会社
- 役職
- 代表取締役