ECサイトにおけるLTVの重要性を解説!向上させるためのポイントも紹介!

EC事業を成長させるうえでLTVは重要です。しかし、重要性を感じながらも具体的な内容を把握できていない方もいるのではないでしょうか。LTVが低いままでは、新規顧客獲得コストが高騰し、事業の収益性が悪化してしまいます。

本記事では、LTVの重要性や向上させるためにおさえておくべきポイントなどを解説します。データに基づいた意思決定と効果的なマーケティング施策を打てるようになるため、ぜひ最後までご覧ください。

目次

  1. ECサイトにおけるLTVとは
  2. ECサイトに関するLTVの計算方法
  3. LTVが重要といわれる3つの理由
    1. 広告費を効率化させるため
    2. 経営指標として活用できるため
    3. 新規顧客の獲得が難しくなっているため
  4. LTVが下がる要因
  5. LTVを向上させるために押さえておくべきポイント
    1. コホート分析で得られるLTVの評価
    2. 顧客体験を改善する
  6. まとめ

ECサイトにおけるLTVとは

ECサイトにおけるLTV(Life Time Value)とは、1人のユーザーがそのECサイトに対して生涯で支払う金額のことを指します。LTVは顧客生涯価値とも呼ばれ、企業にとって非常に重要な指標の1つです。

たとえば、ある顧客が月に1回5千円ずつの買い物を続けるとします。1年間だと7万円で、3年間自社ECサイトを利用し続けてもらえればLTVは21万円となります。

LTVは顧客一人ひとりがもたらす長期的な売上を表す指標のため、企業経営やマーケティング施策を考えるうえで欠かせません。なぜなら、新規顧客の獲得コストと比較して、既存顧客のLTVを高めることが利益につながるためです。

LTVを向上させるためには、購入頻度や客単価を上げる施策、リピート率を高めるための顧客体験の改善など、さまざまな取り組みが求められるでしょう。

ECサイトに関するLTVの計算方法

ECサイトにおけるLTVを計算する方法には、複数のパターンが存在します。たとえば、以下のような計算式が代表的です。

・LTV = 顧客の平均購入単価 × 平均購入回数
・LTV = 顧客の平均購入単価 × 購入頻度 × 平均契約期間

ECサイト運営者の立場で考えると、LTVを計算する主な目的は、販促費用(広告費用を含む)に対するROAS(広告の費用対効果)の試算になることが多くあります。つまり、販促にかけたコストに対して、どれだけの売上を獲得できたかを知るための手段がLTVの算出とも言えます。

そのため、ECサイト運営者がLTVを計算する際は、売上からコストを引いた利益ベースではなく、売上の金額でLTVを計算するほうが一般的です。

売上ベースのLTV計算式の具体例を挙げると、ある顧客の平均購入単価が1万円で、平均購入回数が年間4回とした場合、その顧客のLTVは1万円 × 4回 = 4万円と計算できます。

また、月額課金型のサービスであれば、平均購入単価 × 購入頻度 × 平均契約期間でLTVを算出できます。たとえば、月額5千円のサービスを利用する顧客が、平均で2年間契約を継続するなら、LTVは5千円 × 12ヶ月 × 2年 = 12万円となります。

LTVが重要といわれる3つの理由

ECサイトにおいてLTVが重要視される理由は、主に以下の3つです。それぞれ詳しく解説します。

・広告費を効率化させるため
・経営指標として活用できるため
・新規顧客の獲得が難しくなっているため

広告費を効率化させるため

EC事業では、新規顧客を集めるために広告費が必要不可欠です。しかし、新規獲得時点の売り上げだけで広告費を計算すると費用対効果が合いづらくなってきます。LTVを把握することで、顧客1人当たりの生涯価値が分かるため、その価値に見合った適切な広告費を設定できます。

具体的には、顧客獲得コスト(CPA)とLTVを比較することが重要です。CPAがLTVを上回っていては、いくら顧客を獲得しても赤字になってしまいます。一方、LTVがCPAを十分に上回っていれば、広告費を投じる価値があると判断できます。

ざっくりとした計算ですが、減価率25%の商品を販売するのであれば、CPAはLTVの1/3でギリギリ利益が出るラインです。たとえば、LTVが5万円の場合、CPAは1万5千円以下に抑える必要があります。

LTVを売り上げベースで出す理由は広告・販促の効果を正しく計測するためです。LTVを利益ベースで出すと変動費が計算式に含まれてしまうため、LTVを高めるために広告を削減しようという流れに進みやすく、販促が打てなくなります。その結果売り上げが先細りになってしまうという悪循環が起こってしまうため、注意しましょう。

経営指標として活用できるため

LTVは、マーケティング指標としてだけでなく、企業全体の経営指標としても非常に有用です。具体的には、LTVが高い商品カテゴリーに注力したり、広告投資の配分を調整したりと、経営判断に活かせます。

また、LTVは部門横断的な指標としても役立ちます。たとえば、商品開発部門ではLTVを高める施策として、リピート購入を促すような商品が設計できます。財務部門では、LTVをもとにした予算配分や投資対効果の算出が可能です。

LTVは売上や利益といった財務指標だけでなく、顧客満足度や loyalty(ロイヤルティ)など、非財務的な指標とも密接に関わります。LTVを軸にした経営判断は、顧客基盤の強化と持続的な事業成長の両立につながるでしょう。

新規顧客の獲得が難しくなっているため

近年のEC業界では、新規顧客の獲得がますます難しくなっています。実際、新規顧客を得るコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかるという「1:5の法則」もあるほどです。

背景にあるのは、IT技術の発達によるEC参入障壁の低下と競争の激化があります。経済産業省の発表によれば、日本国内のBtoC-EC市場は2013年の11兆1千億円から、2022年には22兆7千億円にまで拡大しました。しかし、物販系分野のBtoCのEC化率は9.13%と、まだ伸び代が大きいことから、今後も競争が激しくなると予想されます。

こうした状況下では、新規顧客の獲得に注力するだけでは限界があります。むしろ、LTVを高め既存顧客との関係性を強化してリピート購入を促すほうに重きをおくことが重要です。

具体的には、購買履歴に基づくパーソナライズド提案や、ポイント還元などの特典付与が有効でしょう。定期購入プランを設けることで、顧客のロイヤルティを高める施策も考えられます。

参考:経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」P7・P51

LTVが下がる要因

ECサイトのLTV(ライフタイムバリュー)が下がる要因は、大きく分けて3つあります。リピート率の低下、客単価の低下、そして購入頻度の減少です。

まず、リピート率の低下は、初回購入者が2回目以降の購入に至らないことを意味します。新規顧客を獲得しても、リピート購入につながらなければLTVは伸びません。リピート率が低い場合、顧客満足度やロイヤルティの低さが原因と考えられます。

次に、客単価の低下は、1回の購入あたりの金額が減少することを指します。激しい価格競争に巻き込まれたり、商品の価値が低下したりすれば、客単価は下がってしまうでしょう。売上を維持するために、安売りに頼らざるを得なくなると、LTVに悪影響を及ぼします。

最後に、購入頻度の減少は、顧客の人生全体において自社サイトで購入する回数が減ることを意味します。競合他社のサイトやブランドに顧客が流出すれば、当然購入頻度は下がるでしょう。顧客のニーズや嗜好の変化に対応できないことが、購入頻度減少の一因となります。

これら3つの要因は、相互に関連しています。たとえば、リピート率が低下すれば、購入頻度も減少します。客単価が下がれば、売上を維持するために新規顧客の獲得に注力せざるを得ず、結果としてリピート率が低下する可能性があります。

したがって、LTVを高く維持するには、これらの要因に対して総合的にアプローチする必要があります。顧客満足度の向上や商品価値の訴求、差別化戦略の推進など、多面的な施策が求められるでしょう。LTVの低下は、ECサイトの持続的な成長を脅かす重大な課題だといえます。

LTVを向上させるために押さえておくべきポイント

LTVを上げるためには、タイミング(時間)とコンテンツの2つが重要です。具体例としては、コホート分析やRFM分析があります。

RFM分析は、Recency(最新購入日)・Frequency(購入頻度)・Monetary(購入金額)の3つの指標を用いて顧客をセグメント化する手法です。高価値顧客の特徴を明らかにし、ターゲットを絞ったマーケティング施策を展開できます。

ここからは、コホート分析について深堀して紹介します。

コホート分析で得られるLTVの評価

コホート分析とは、特定の共通因子をもつグループ(コホート)を時系列で追跡し、その行動や意識の変化を分析する手法です。

もともとは心理学や社会学で用いられていましたが、現在ではWebマーケティングやECサイトの顧客分析にも広く活用されています。

主な3つの評価について、それぞれ解説します。

時間軸の変化

コホート分析を用いることで、顧客のLTVを時間軸で追跡し、その変化を可視化できます。具体的な手順は、以下のとおりです。

  1. 顧客を初回購入時期に基づいてグループ化する
  2. 各コホートのLTVを時系列でグラフ化する
  3. 横軸に経過時間、縦軸にLTVをとり、各コホートのLTVの推移を把握する

作成したグラフから読み取れる情報は、リピート購入が多く発生するタイミングや、LTVが横ばいになるタイミングです。たとえば、初回購入後3ヶ月目にLTVが急上昇する傾向があれば、そのタイミングでリピート購入を促進する施策を打つことが効果的だと考えられます。

したがって、コホート分析を用いて時間軸の変化を追跡することで、顧客のライフサイクルに合わせたマーケティング施策を立案できるでしょう。

施策の効果測定

コホート分析を用いることで、マーケティング施策やプロモーションの効果を評価できます。

たとえば、新規顧客向けのウェルカムクーポンを配布したコホートと、配布していないコホートのLTVを比較してみましょう。もしウェルカムクーポンを配布したコホートのLTVが有意に高ければ、そのクーポンが新規顧客の定着率やリピート率の向上に寄与していると考えられます。

施策の効果が確認できれば、そのノウハウを活かして次の施策を立案し、実行、評価するサイクルを回せます。コホート分析を活用することで、マーケティング施策の効果を定量的に測定し、より効果的な施策立案へつなげることが可能です。

顧客体験を改善する

LTVを向上させるもう一つの施策として、顧客体験の改善が挙げられます。特に、カスタマーサポートの強化とパーソナライズされたサービスの提供が効果的だと考えられます。

カスタマーサポートの強化には、チャットボットの導入やFAQの充実化が有効です。24時間365日対応のチャットボットを設置することで、顧客の問い合わせにいつでも迅速に対応できるようになります。また、よくある質問をFAQにまとめることで、顧客の自助努力を促し、問い合わせ数を減らせるでしょう。

パーソナライズされたサービスの代表的な事例としては、Amazonの推奨商品機能が挙げられます。Amazonでは、顧客の閲覧履歴や購入履歴をもとに、おすすめの商品を提案しています。レコメンデーション機能を導入することで、顧客一人ひとりに最適化された購買体験の提供が可能です。

顧客体験の改善策を組み合わせることで、顧客のロイヤルティを高め、LTVの向上につなげることが可能となるでしょう。

まとめ

ECサイトでは、LTVを高めることが持続的な成長に不可欠です。LTVを向上させるためには、タイミングとコンテンツの2つが重要であり、コホート分析やRFM分析といった手法が有効です。

特にコホート分析では、時間軸の変化、施策の効果測定、顧客獲得コストとの比較が可能であり、データに基づいた意思決定ができます。さらに、カスタマーサポートの強化やパーソナライズされたサービスの提供など、顧客体験の改善にも取り組むことが求められます。

自社ECサイトのLTVを高めるために、まずはコホート分析を導入し、顧客の購買行動を可視化することから始めてみてはいかがでしょうか。

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