近年、オンラインショップの普及に伴い、家具・インテリアのECサイト市場も著しい成長を遂げています。自宅にいながら理想の空間づくりができる便利さがECサイトの注目を集める理由です。
しかし、ECサイト運営には実店舗とは異なる課題があり、それらを克服するための戦略が求められています。
本記事では、家具・インテリアECサイトの最新の市場動向を分析し、直面する課題と、それらを乗り越えるポイントや成功事例を解説します。家具EC業界の今後の展望と、成功への鍵を探っていきましょう。
目次
家具ECの市場動向
日本のBtoC-EC市場規模は、2022年には13兆9,997億円に達し、前年比5.37%増加しました。 EC化率は9.13%と前年より0.35%上昇しており、実店舗からECへのシフトが進んでいます。
家具・インテリアを含む「雑貨、家具、インテリア」のカテゴリーは、物販系分野の中で「食品、飲料、酒類」に次ぐ2番目の市場規模を誇ります。
しかし、巣ごもり需要の一巡感や物価高騰の影響により、市場規模の伸び率自体は緩やかです。
家具は、物理的にサイズが大きいので、売り場確保や在庫管理の問題を考えるとECとの相性がよいです。今後、市場規模を拡大するにはECの新たな切り口が必要となります。
例えば、オンライン接客やショールーミング化店舗、ECで購入した商品の店頭受け取りなど、実店舗とECを融合させることで、利便性を向上させる取り組みがすでに進んでいます。
市場動向から読み取ると、家具ECは今後も成長すると予想されるでしょう。ネット通販の利用に抵抗感が少ない現代で、共働き世帯の増加や単身世帯の増加など、ライフスタイルの変化に伴い、家具・インテリアの購入手段としてECを利用する人が増えていることが理由です。
また、VR技術やメタバースなどの新たなテクノロジーの進化によって、家具・インテリアECはさらに進化を遂げる可能性があります。 例えば、VR空間上に仮想的なショールームを設け、消費者が実際に部屋に家具を配置した様子を疑似体験できるサービスなどです。AIによる新時代の商品提案により、新規需要の発掘に期待できます。
出典:令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書|経済産業省
家具EC市場の課題
家具・インテリアのECサイト市場は成長を続けていますが、特有の課題にも直面しています。大型で重量のある商品を扱う特性上、通常のECサイトとは異なる問題があります。
顧客満足度や収益性に影響を与えるので、まず課題と向き合わないといけません。具体的に以下の課題について解説します。
・在庫と品質管理の課題
・物価高騰によるコストの課題
これらの課題にどのように対応していくかが重要です。
在庫と品質管理の課題
家具・インテリアECサイトにおける在庫と品質管理には以下の課題があります。
・商品数の分だけ在庫スペースの確保が必要
・大型家具はスペースを多く占める
・長期保管が必要な場合、品質劣化の可能性
・倉庫の湿度や温度による商品劣化リスク
・小型家具はピックアップや発送の作業が煩雑
課題をみると、最適な在庫状態に保つために徹底した管理が必要だとわかります。
品質管理においては、厳格な品質チェック体制のもと、家具・インテリアの材質に適した環境で在庫を保管しないといけません。過剰在庫や欠品リスクにも注意しながら、品質が保たれた商品を回転率に合わせて保管する管理体制が必要です。
物価高騰によるコストの課題
近年の物価高騰は、家具・インテリアEC市場にも大きな影響を与えています。原材料費の上昇により、商品の仕入れコストが増加し、利益率の低下を招いています。
また、物流・輸送費や倉庫維持費などの運営コストも上昇傾向にあり、特に海外製の家具を輸入する業者にとっては負担が大きいです。
コスト増加を顧客に転嫁すれば価格競争力を維持できません。しかし、顧客に転嫁しなければ利益が縮小するので運営そのものに影響が及びます。
この課題に対し、生産性の向上、代替材料の探索、サプライチェーンの最適化などの対策が必要です。
成果につなげるための3つのポイント
家具・インテリアEC市場で成功をするためには、課題を克服し、顧客ニーズに的確に応える戦略が必要です。他社と差別化を図り、自社独自の成長を実現するには、以下のポイントを押さえておく必要があります。
・実店舗とECの垣根をなくす「OMO」に取り組む
・AR技術を活用し顧客へ商品のイメージを身近に感じてもらう
・商品ラインナップを充実させる
これらを効果的に実践し導入することで、家具ECの競争力を高め、事業拡大につなげられるでしょう。
実店舗とECの垣根をなくす「OMO」に取り組む
家具・インテリアECサイトが成果を上げるためには、実店舗とオンラインの垣根をなくす「OMO(Online Merges with Offline)」戦略が必要です。
OMOは、オンラインとオフラインの統合を目指し、顧客体験をサポートするマーケティング手法です。具体的には、オンラインで商品を確認し、実店舗で実際に触れて購入するというシームレスな体験です。
家具・インテリアECでOMOに取り組むと、顧客はオンラインで商品を比較・検討し、実店舗でサイズ感や材質を確かめてから購入するといった行動が可能となります。顧客の購買行動の変化に合わせ、オンラインとオフラインを融合させたサービスを提供することが、家具ECの成功に欠かせないといえるでしょう。
futureshopでは、OMOに関する支援施策が充実しています。家具ECでOMOを検討中の方は、ECプラットフォームの「futureshop」をチェックしてみてください。
OMOの施策例について詳しく知るなら以下の記事も読んでみてください。
AR技術を活用し顧客へ商品のイメージを身近に感じてもらう
家具・インテリアECサイトが、AR(拡張現実)技術を活用すると、顧客に商品のイメージをより感じてもらうことができます。例えば、ARを使って顧客が自宅で家具を試し置きできるサービスです。
AR技術により、顧客は購入前に家具が自分の部屋にどのようにフィットするかを視覚的に確認でき、サイズやデザインの不一致による返品を減らすことができます。さらに、ARを活用した商品紹介は、消費者にとって直感的で魅力的な購入体験となり、購買意欲を高める効果にもつながります。
商品ラインナップを充実させる
家具・インテリアECサイトの利点を活かして、商品ラインナップを充実させることは、顧客のニーズに応えて購入ハードルを下げるための重要なポイントです。
顧客の購買傾向やトレンドを分析し、人気のある商品や新しいカテゴリーを追加して、興味を引き続けるサイトにしましょう。商品ラインナップを増やすと同時に、検索機能も充実させて、目的別・種類別などのさまざまな観点から顧客が欲しい家具を見つけやすくする工夫が必要です。
多くの顧客に好まれる商品を置くと、既存顧客のリピート購入を促進できます。サイト固有のブランド性を保ちながら、独自性のある商品を提供することで、競争の激しいEC市場での差別化を図ることができるでしょう。
インテリアECサイトを作るときのポイント
インテリアECサイトの成功には、ユーザビリティと商品管理の両面から適切な設計が不可欠です。効果的なサイト構築により、顧客満足度向上や売上増加が期待できます。ここでは、インテリアECサイトを作る際の重要なポイントについて、カテゴリ分類、コンテンツの充実、そして送料設定の柔軟性という3つの観点から解説します。
カテゴリが分けやすいか
インテリアECサイトでは、商品カテゴリの適切な分類が極めて重要です。ユーザーが目的の商品を迅速かつ簡単に見つけられるよう、直感的で分かりやすいカテゴリ構造を設計することが求められます。
例えば、「リビング」「ダイニング」「寝室」といった部屋別の分類や、「テーブル」「椅子」「照明」などの家具タイプ別の分類を組み合わせることで、ユーザーの多様なニーズに対応できます。
さらに、「北欧風」「和モダン」といったスタイル別のカテゴリを設けることで、特定のインテリアテイストを求めるユーザーにも配慮できます。また、カテゴリ設計の際は、将来の商品拡大にも柔軟に対応できる拡張性を持たせることが大切です。
コンテンツの充実
インテリアECサイトにおいて、豊富で質の高いコンテンツは顧客の信頼を獲得し、購買決定を後押しする重要な要素です。
商品詳細ページでは、高解像度の商品画像や360度ビュー、実際の使用シーンを想像しやすい室内での設置イメージなど、視覚的な情報を充実させることが重要です。
さらに、素材、サイズ、カラーバリエーションなどの詳細なスペック情報や、お手入れ方法、組み立て手順といった実用的な情報も提供しましょう。また、ユーザーレビューや評価システムを導入することで、実際の購入者の声を通じて商品の魅力や使用感を伝えることができます。
加えて、インテリアコーディネートのヒントやトレンド情報、DIYアイデアなどの役立つ記事やブログを定期的に更新することで、サイトの価値を高め、リピーターの獲得にもつながります。
送料設定が柔軟に対応できるか
インテリアECサイトでは、商品の大きさや重量が多様であるため、送料設定の柔軟性が非常に重要です。顧客満足度を高めつつ、ビジネスの収益性も確保するためには、適切な送料システムの構築が不可欠です。
例えば、商品の重量や容積に応じた段階的な送料設定や、一定金額以上の購入で送料無料といったプロモーションの実施が考えられます。また、家具の組み立てやセッティングサービスなど、付加価値のあるオプションサービスと組み合わせた送料設定も効果的です。
地域によって異なる配送コストにも対応できるよう、都道府県別や離島への送料設定機能も必要でしょう。さらに、複数商品の同時購入時における送料の最適化や、eco梱包オプションの提供など、顧客のニーズに合わせた柔軟な対応が可能なシステムを構築することが重要です。
代表的な家具のECサイト3選
家具・インテリアEC市場の拡大に伴い、多くの業者が参入し、それぞれ特色あるサービスを展開しています。ここでは、フューチャーショップをご利用いただいている家具ECサイトを3サイトご紹介します。
・大川家具ドットコム通販
・マナベインテリアハーツ公式通販
・インテリアショップvanilla
これらの家具ECサイトの事例を通じて、市場での差別化や顧客満足度向上のヒントを探りましょう。
大川家具ドットコム通販
サイト名 | 大川家具ドットコム通販 |
URL | https://www.coordinatekagu.jp/ |
運営 | 株式会社大川家具ドットコム |
「大川家具ドットコム」は、九州・大川産の高品質な家具を中心に取り扱う通販サイトです。
自然素材や低ホルムアルデヒドの製品が多く、特に子供やペットがいる家庭向けに安全性が高い家具を提供しています。また、サイズオーダーが可能で、個別に部屋に合った家具を注文でき、家具職人による手作り家具や、設置サービスも特徴です。
マナベインテリアハーツ公式通販
サイト名 | マナベインテリアハーツ公式通販 |
URL | https://net-shop.manacs.com/ |
運営 | 株式会社マナベインテリアハーツ |
「マナベインテリアハーツ」は、幅広い家具やインテリア用品を提供するオンラインショップです。
特に、オリジナルブランドの商品や北欧・モダンスタイルの家具が豊富です。価格設定は比較的リーズナブルで、送料無料のアイテムも多く揃っています。カスタマイズ可能な家具や、生活用品、寝具、カーテンなど、日常生活に必要なアイテムを幅広く取り扱っています。
インテリアショップvanilla
サイト名 | インテリアショップvanilla |
URL | https://vanilla-kagu.com/ |
運営 | 有限会社 NON VERSUS |
「vanilla」は、ミッドセンチュリーデザインを中心にした家具やインテリアを取り扱うショップです。
イームズやカリモク60などのデザイナーズブランドが豊富に揃っており、バニラオリジナルの家具や小物も展開しています。北欧デザインを好むインテリア好きにとって魅力的な商品ラインナップが特徴です。また、オリジナルブランド「826STANDARD」も展開しており、個性的なアイテムが見つかります。
まとめ
この記事では、家具・インテリアECサイトの課題と、成果につなげるポイントを市場動向から解説しました。代表的な家具ECサイトについては、企業の工夫や戦略でOMOを活用し成功しているとわかりました。
家具・インテリアは、在庫や品質管理の課題を徹底すれば、ECと相性がよい分野です。AR技術や3Dイメージによってオンラインでの家具の購入に抵抗がなくなり、商品ラインナップの多さもあって、家具ECは顧客満足度が高くなります。
家具の配送を前提とせずに、実店舗で商品を確認したり、オンラインで注文した商品を受け取ったりできることもメリットです。オンラインとオフラインを組み合わせて、OMOに取り組んでいる家具ECが成功しやすいでしょう。
SaaS型ECサイト構築プラットフォームの「futureshop」を利用すれば、OMO導入により実店舗とオンラインの両方を顧客に提供できます。家具ECで効率的にビジネス展開するためにもぜひチェックしてください。