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大手自動車メーカー系列の部品卸会社を脱サラし、いわゆる「一人不動産会社」を起業、「不動産という生涯に数回あるかないかの大きなお買い物のお手伝いを通してお客様、そして地域に貢献したい」と、新たな挑戦に意欲を燃やす経営者がいる。群馬県高崎市の高崎環状線沿いのビルに2024年4月、店舗兼事務所をオープンしたばかりの株式会社ミネギシ不動産の峰岸格也(まさや)代表取締役だ。開業にあたっては、まずシステム支援会社に相談、複合機に届いたFAXをスマートフォンに転送できるようにするなど、デジタル武装を徹底することで、一人でも日々の業務をスピーディーにこなしていけるようにした。(TOP写真:高崎市の都市計画図の前に立つ峰岸格也代表取締役)
群馬県外への転勤を避けたいと起業を決意。宅建士資格を持っていたことが不動産業選択の決め手に
起業にあたって不動産業を選んだのは、たまたま不動産業に必須の宅地建物取引士の資格を持っていたことが大きい。大学を卒業して2年ほど群馬県伊勢崎市の不動産会社で働いた際に取得したのだそうだ。もう一つ、峰岸社長の父親が群馬県渋川市で1、2位の規模を争う不動産会社を経営していたことも影響した。「父の背中を見て育ち、自分は父と同じ仕事は絶対にやらないと思っていたはずなのですが、潜在意識の中では、父の後を追いかけてみようかなという気持ちがあったようです」(峰岸社長)。
貯金と退職金をすべて注ぎ込み、地元金融機関から自己資金の3分の1ほどの融資も受けて2023年11月に会社を設立。テナントビルを探して店舗兼事務所を構え、群馬県庁に宅建業の免許を申請・取得する一方、公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証)に加盟。不動産情報交換や不動産業務ソリューションなどの不動産業務支援プラットフォームを提供する会社と契約するなど準備を進め、2024年4月のオープンに漕ぎつけた。
一人で数々の業務を効率良くこなすため、システム支援会社に電話してデジタル化を相談
この間にデジタル武装も進めた。まず、インターネットで見つけた高崎市内のシステム支援会社に電話して、相談した。「行きあたりばったりで電話し、『私一人で小さな不動産屋を始めようと思うんですけど、そういう場合に役立つシステムを入れてもらえませんか』と聞いたんです。本来なら断っても良さそうな案件だと思うのですが、(現在の担当者や担当者の上司が)すごく親身になって、ゼロから悩みを聞いてくれました」(峰岸社長)
パソコンや複合機を導入し、主要なクラウドサービスと連携するシステムを構築するとともに、独自のドメインも取得して、不動産業務支援プラットフォームに連携するホームページを制作した。ホームページの枠組みはプラットフォームの会社が提供してくれるので、システム支援会社の担当者と相談しながら、峰岸社長が一人でコツコツと制作。物件情報だけでなく、不動産関連の用語集やお役立ち情報を数多く盛り込んで、地域での専門性をアピールした。「あまり『ザ・不動産屋』みたいなホームページにしたくなかったのです。一般の方は不動産に詳しくないと思うので、そこをサポートできるようにしたかった」と峰岸社長は話す。
ホームページ、インスタ、LINEを相次ぎ開設し、デジタル媒体をフル活用
ホームページのトップ画面に表示されるメッセージの一つに「不動産にはドラマがあふれてる。」という言葉がある。「夢を膨らませて、家族で住まわれる家を買われたり、逆に相続で大変な思いをされたりと、不動産にはドラマがあります。そこをお手伝いして、相続で悩まれた方も当社に相談して良かったといってもらえるようにしたい」。峰岸社長のそんな思いが込められている。2024年7月には「LINE公式アカウントはじめました」という告知が加わった。「若い人は不動産屋に電話するのに抵抗があると思うので、LINEでも問い合わせてもらえるようにしました」(峰岸社長)
ホームページの日々のアクセス数などの情報はプラットフォーム会社が常時教えてくれるが、更新が途絶えると目に見えてアクセス数が落ちるので、頻繁に更新することを心がけている。このほか、インスタグラムは開業とほぼ同時にオープン。約1,000人のフォロワーがいる。従業員がいないぶん、デジタル媒体をフル活用していく考えだ。
パソコンに届いたメールや複合機に届いたFAXをスマートフォンに転送し、外出先で素早く応答
一方、パソコンや複合機とMicrosoft 365のクラウドサービスを連携したシステムも日常的に活用している。峰岸社長は外出時にスマートフォンでパソコンのメールや共有ファイルを確認することが多く。特に複合機に届いたFAXをスマートフォンに転送する機能が役に立っているという。「メールやFAXをスマホで受けて、お客様にすぐに返信したり、電話したりできます。お客様を待たせず、不安にさせずに仕事ができるので、システム支援会社には本当に感謝しています」
開業当初は、不動産取引の商談に用いる「図面」の帯替えアプリも導入した。図面というのは間取りなどの物件情報を記載した紙で、不動産会社同士で共有しているので、パソコンからダウンロードして顧客に見せる際に、下の部分(帯)に自社の社名や住所などを入れる必要がある。その作業を複合機で簡単にできるアプリだ。
同業者や関連業者と幅広くコミュニケーション。セミナーの主催も
不動産業者は物件情報が命。とくに同業者とのコミュニケーションは欠かせない。峰岸社長は会社を設立すると同時に、積極的に動いた。「1日1軒は不動産業者に挨拶に行こうと決めて、高崎市内の同業者はほぼ伺わせていただきました」。全宅保証とその傘下の県の宅建協会が実施する勉強会やゴルフコンペにはすべからく参加してきた。勉強会は東京での開催が多いため、Teamsを使ってオンライン参加することが多い。同業者との情報交換にもTeamsを使うという。
同業者だけでなく、複数のハウスメーカーやライフプランナー、フィナンシャルプランナーらとも積極的に交流し、相互に連携していく仕組みも築いた。
デイサービス施設を建築する土地をあっせん、社会の役に立てていると実感
開業後、最初に成立した商談は、融資を受けた金融機関の紹介だった。複数のデイサービス施設を展開している法人に新しい同施設を建築する土地をあっせんした。「デイサービスってまさに社会に貢献している事業じゃないですか。そういうお客様とお取引させていただいて、不動産業者として自信がつきましたし、自分も社会の役に立てているという気持ちになり、やりがいを感じました」
今後も、従業員を雇う考えはなく、「一人不動産会社」として、売買と仲介業務を中心に展開していく計画。ただ、それだけだと収入が不安定になるので、アパートやマンションを1棟買いしての賃貸事業や、土地を購入しての分譲事業に乗り出していくことも考えている。
不動産業界経験40年の父親は週に3回ほどミネギシ不動産を訪れ、適宜アドバイスしてくれる。峰岸社長は「いざ一緒の仕事をしてみると、やっぱりすごいなと思います」と語り、父親の口癖である「とにかくスピードだ」という言葉を胸に刻んでいる。
企業概要
会社名 | 株式会社ミネギシ不動産 |
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本社 | 群馬県高崎市下小鳥町67-10 ラパンスクエア 2A |
HP | https://www.mine-re.co.jp |
電話 | 027-381-6668 |
設立 | 2023年11月 |
従業員数 | 34人 |
事業内容 | 不動産売買、不動産仲介 |