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株式会社アテンドは、神奈川県横浜市で船舶用塗料の専門で塗料業界の中で存在感を放つ。設立以来30年近く続けてきた実績に基づく確かな提案力が強み。とりわけ特化してきたタグボート向け塗料については造船所や船主会社などの取引先から定評があり、船舶用塗料の業界で独自の地位を確保している。一方、2019年に事業承継して以降の新体制下ではSDGsに対応した環境対応型の新規事業に進出。業務面では旧来の紙文化、手書き文化を一掃し、ペーパーレス化を進め、オフィスのレイアウトも一新。事業・業務両面での刷新に取り組んでいる。(TOP写真:アテンドのホームページ)
東京湾を中心に全国で造船所や船主会社に営業活動を展開 タグボートに特化した強みで知名度浸透し、安定した事業も実現
アテンドは、現在の川島竜彦代表取締役社長の母方の伯父が塗料代理店から独立し、東京湾を中心に全国に顧客を持つ船舶用塗料代理店として1995年8月に立ち上げた。伯父が在籍していた塗料代理店は船舶用をはじめ建築用や橋梁(きょうりょう)向けなど総合的に手掛けており、そのうち船舶用塗料の分野を引き受け、起業した格好だ。
事業としては主に大手塗料メーカーの船舶用塗料子会社3社の代理店として、日本を代表する大手造船所や地元の中小造船所を取引先に抱える。このほか船主会社、船舶関連会社にも納品している。
塗料メーカーの代理店制度によって営業活動には一定の制約はあるものの、アテンドは船舶用塗料一本に絞った専門性と、船舶の種類をタグボートに特化することによって、事業の大きな強みとしてきた。
川島社長は「タグボードの業界でアテンドの名前は広く浸透している。例えば、船主会社が地方に売船した場合、それをたどって営業に出向き、知名度のおかげでスムーズに新たな取引先となったこともある」と語る。
船舶用塗料の需要は新造船のほか修繕にもあり、とりわけタグボートは頻繁に使われるため船舶用塗料は1年半から2年程度で必ず塗り替えなければならない。自動車に例えれば車検整備と同じように、定期的な需要がある程度見込める。この点を川島社長は「造船所からは毎月のようにオーダーがあり、それが基盤になる。例えば、20隻、30隻を保有している取引先なら月に1~2隻の塗り替えが必要になり、そこに塗料を提供する。その意味で、取り扱いの数字は読みやすく、非常に安定した売上が確保できる」と説明する。
ただ川島社長は、船舶用塗料についても現状に甘んじることなく、新規取引先の開拓に挑もうとしている。川島社長は「タグボードとは違った種類の船舶にも広げないといけない」と考えアプローチを始めている。
SDGsの考え方に共鳴し、新規事業でCO2削減に貢献できる燃料触媒の販売を開始 船舶用塗料に次ぐ第二の柱へ
川島社長自身は2009年にアテンドに初の若手社員として入社した。2019年には社長に就任し、創設者の伯父から2023年末までにアテンドの全株式を買い取り、2024年からは名実ともにオーナー社長として全面的に「新生アテンド」の経営を担うことになった。
川島社長は、強みを生かした今までの安定した事業に安住してはいない。「現状のまま船舶用塗料だけで事業を継続していけるかには危うさもある」と考え、新規事業として炭素系液体燃料活性触媒「TT EX PRO」の販売を2024年初頭に始めた。
ガソリンなどの燃料に加えることで燃焼性能が向上し、トルク増加と燃費向上が見込め、燃料コストおよび二酸化炭素(CO2)削減にも大きく貢献する製品で、国土交通省が新技術に関わる情報の共有及び提供を目的に整備した「NETIS(新技術情報システム)」に登録されている。
取り組んだ背景には、燃費向上による低コスト化と同時に、世界的に取り組む必要のある地球温暖化対策が主軸のSDGsへの貢献が大きい。「取引先が限られる船舶用塗料と違って、車両を持つ運輸会社など燃料を使う不特定多数の顧客獲得が狙え、さらにSDGsを推進する自社及び取引先にとって重要な環境商材でもある。船舶用塗料に次ぐ二本柱に育っていければ」と川島社長は新規事業に期待を寄せる。
アテンドは川島社長が就任して以降、創設時からの従業員が退き、世代交代が進んだ。従業員にとって将来性の持てる会社であるためにも「常に新しい顧客を見つけることと、船舶用塗料以外に当社が扱える商品を探そう」と訴えてきた。その姿勢が新規事業進出、さらに新たな顧客開拓への動きにつながっている。
業務のペーパーレス化を推進し、事務所のレイアウトも一新して、次の飛躍への準備
アテンドは2024年初めにペーパーレス化を中心に業務の刷新に取り組み始めた。次の飛躍(DX)のためには、デジタル化による情報環境の整備を行う事と、地球温暖化対策に沿った行動(SDGs)という考えもあって業務のペーパーレス化を本気で考えていた。ちょうどその時期に、たまたま友人がいるシステム支援会社の展示会があり、そこでさまざまな業務改善ツールを紹介されたことがきっかけだった。
川島社長は業務刷新の狙いを「紙の書類を延々と探す無駄な作業をしてほしくないし、したくない。とにかく紙や手書きを全部なくすことを最終目標」と語る。そうした経緯もあって、「バックオフィス系のシステム改善をシステム支援会社に全部任せることに踏み切った」。このため、複合機を更新し名刺管理のクラウドアプリを入れ、無線LANも導入するなどオフィスのレイアウトも一新した。業務刷新への熱意がうかがえる。
Microsoft 365の導入により、外出中の業務情報閲覧と従業員同士のコミュニケーションが進んだ
アテンドが現状、業務面で最も改善したかったのは「お客様への対応のスピードアップのため、価格表などの資料関係を会社の外からでも確認できるようにしたい」(川島社長)ということだった。この課題に対し、Microsoft 365の導入により様々な情報共有が可能になった。まず、パソコンとスマートフォンのメールを同期させることで、外出先でも簡単にメールを確認できるように。また、社員全体でメールを共有することが可能となり、情報の伝達がよりスムーズになった。
さらに、スケジュールを共有することで、予定調整の手間が減り、会議の予定も立てやすくなった。そしてTeamsのチャット機能を活用することで、従業員同士の連絡が迅速に行えるようになり、業務が円滑化されただけでなく、社員間に一体感が生まれ、会社全体に活力が出てきた。
川島社長は「これまでなら外出中に、事務所内でしか確認できないことを取引先などから尋ねられると『会社に戻ってから対応します』と答えるよりなかったのが、外出中でもクラウド上で閲覧し対応できるようになった」と話す。これによって「明らかにお客様の満足度が向上し商談がスムーズに進むようになった」と効果を実感したそうだ。
次の課題は取引先との受発注システムの整備 業界全体として取り組むテーマでもあり積極的に対応する
業務刷新面で川島社長が今後の課題に据えているのは「現在、一番のネックになっている受発注システムの整備で、これが解決できれば紙ベースで対応してきたところが大幅に減ってくる」と見る。現在利用しているシステムはクラウド型ではないため、新型コロナウイルス禍にあっても事務所に出向き発注作業に当たらなければいけなかった。川島社長は「今後、データ保存がクラウド化されていけば、外出先での作業が可能になり、更なる業務効率化が期待できる」と言う。
ただ、新たな受発注システムの整備に向けては解決しなければならない課題もある。現在、仕入れ先の塗料メーカー、納入する取引先とアテンドの受発注は連動しておらず、塗料メーカーとは連動できるところを検討している。メインのメーカーは3社あり、1社に偏った形にはできない。川島社長は「本来ならメーカー、取引先、当社が同じフォーマットを使って受発注をしていこうという話を進めなければならない。仮にそうしたシステムができ当社が導入し、業界に広がるようなら業界全体の利益につながるのでは」と訴える。
川島社長は、事業間取引の電子化(EDI)は、業界全体で取り組むべき課題と捉えている。RPAやバーコードの活用による連携も視野に入れて積極的に対応していきたい意向だ。
環境問題への対応と顧客の信頼、それを支える従業員のモチベーションを基本に新たな企業成長のスタートを切った
新体制に移行したアテンドは船舶用塗料での新規顧客の開拓、さらにSDGs対応という環境対応商品を発掘した。それが事業として継続的に成長するには、永年築いた顧客への提案力と顧客に寄り添う姿勢、そして従業員のモチベーションが必要。
川島社長の「まず楽しく進めることが基本です。その上で従業員が働きやすい環境を整えることをモットーにしています」という話は、企業として大切な従業員と一体となって成長を目指すという姿勢だ。既にアテンドは成長路線に乗りつつある。今後に期待したい。
企業概要
会社名 | 株式会社アテンド |
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住所 | 神奈川県横浜市金沢区鳥浜町12-11カジタビル3F |
HP | https://www.attendpaint.com/ |
電話 | 045-776-2491 |
設立 | 1995年8月 |
従業員数 | 4人 |
事業内容 | 船舶専用塗料の卸売販売 |