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群馬県スキー連盟はスノースポーツの普及を目的に、群馬県でのスキー、スノーボードの競技大会の運営と選手・指導者の育成などの教育事業を展開している。上部団体である公益財団法人全日本スキー連盟(SAJ)に加盟するスキー連盟は、47都道府県にくまなく設置されている。その一つである群馬県スキー連盟は積雪地の利点を生かし、独自に競技大会を開催するほか、教育事業の一環として県内の15ヶ所のスキー場に公認スキー学校を設置し、運営するなどの活動も手掛ける。一方、団体運営業務の効率化に向けてペーパーレス化を進めるほか、個人情報を多数扱う事情から情報セキュリティの強化に取り組んでいる。(TOP写真:「GUNMA SKI TEAM」の公式ワッペンや協賛企業のワッペンを貼り付けた競技大会で大会関係者が着用するウェア)
事業は教育と競技の二本柱 会員登録者は約1,900人 公式ワッペンの販売・バナー広告協賛を募る等を実施、選手の強化費の一部に充てている
群馬県スキー連盟は県内に数多くのスキー場があり、スノースポーツが盛んなことから1930年5月の設立と長い歴史を持つ。全日本スキー連盟へも1935年4月に加盟している。団体の組織には総務、教育、競技の3本部があり、事業としては教育と競技の二つの柱で活動している。
このほか、大会運営や選手強化に向けた協賛企業や寄付を募る業務も担っている。2024年2月末から3月はじめに全日本スキー連盟の主催により群馬県片品村のスノーパーク尾瀬戸倉で開催した「第21回全日本スノーボード技術選手権大会」では、群馬県スキー連盟は大会主管として県内に本社を置く物流企業などや関係企業の協賛を取り付けた。またスキーウェアに貼る「GUNMA SKI TEAM」の公式ワッペンなどを販売し、選手強化費の一部に充てている。
現在の一般会員登録数はスキー、スノーボードを合わせて約1,900人を数える。このほか県内各地のスキークラブなど37の所属団体で構成されている。一般会員に登録できるのは基本的に小学生からで、会員は様々な教育事業ならびに県内外の競技大会、さらに国民スポーツ大会(旧国民体育大会)などの全国規模の大会へ参加でき、優秀な競技実績を上げれば上部団体の全日本スキー連盟を通じてオリンピックへの出場機会も得られる。
競技環境の悪化や少子化が重なり、競技力の減退に危機感 リフト券の割引で会員登録メリットの見える化を図る
近年は会員登録数の減少傾向が続いている。過去何度かあったスキーブーム、さらに1998年開催の長野冬季オリンピックで競技種目に採用されたことからスノーボードの人気が盛り上がった時期と比較すると、「最盛期の会員登録数は今の倍だった」と群馬県スキー連盟の大坪哲副会長とは振り返る。
さらに大坪副会長が危惧しているのは団体の組織力というよりも競技者数の減退で、「競技人口が急激に減っており、ピーク時に比べて競技者数は単純に見て10分の1に落ちている。少子化も重なって、かつては高校生の会員が200人程度登録していたのが、今では25人程度にまで激減している。教育事業の方は競技ほど極端には減っていないものの、やはり減少傾向にある」という。
大坪副会長は元教師で、アルベールビル冬季オリンピック(1992年)とリレハンメル冬季オリンピック(1994年)のスキー・ノルディック複合団体でそれぞれ金メダルを獲得した荻原健司氏(現長野市長)が教え子だったことを考えると、選手育成の重要性を強く認識しており、昨今の競技人口の減少を憂えている。
また、スノースポーツの用具にしても大坪副会長は、「べらぼうに高くなっていて価格は2年前の1.5~2倍。選手用だとスキー板は20万円から35万円近く、靴も15万円ぐらいでなかなか手が届かない水準になっている」と競技環境が悪化している現状を嘆く。
とはいえ、会員の減少傾向に手をこまねいているわけにはいかない。このため、群馬県スキー連盟は片品村と「かたしな地区」にある5つのスキー場と協力し、2021/2022シーズンから会員証を提示するとリフト券の料金を1,000円割引することを打ち出した。会員登録料は3,000円であり、シーズン中に3日間リフトを利用すれば元が取れるという計算になる。大坪副会長は「どんなメリットがあるかを見える化していかないと、なかなか会員登録をしてくれない」とリフト券割引購入制度を導入した狙いを話す。
過多な書類作成業務を複合機の文字データ変換ソフトの導入で改善 紙の書類はもちろんPDFもExcelやWordに変換できる
一方で、群馬県スキー連盟は現在、団体運営業務の効率化に取り組んでいる。業務上の課題は書類作成の業務が多く、従来はFAXや書類をベースにパソコンで打ち直す作業に多くの時間が割かれてきた。事務局は大坪副会長が事務局長を兼ね、実質1人で切り盛りしており、デジタル化による業務効率化が不可欠だった。
とりわけ課題だったのは、上部団体の全日本スキー連盟から送られてくる書類だ。ペーパーレス化の流れを反映して、編集加工できないPDFファイルであるため、それを群馬県スキー連盟としての書式に書き換える必要があった。PDFを読み込み編集できるソフトはあるものの、より機能性が高く、スキャンした文書やPDFファイルを文字データに変換する機能(OCR)を持った複合機向けのソフトがあると紹介され、2022年に複合機の更新と合わせてこのソフトをインストールした。
この結果、紙の書類はもちろん、PDFファイルのデータをExcelやWordに簡単に変換でき、文書作成の作業効率が大幅に改善した。さらに、群馬県スキー連盟の業務だけでなく、所属団体のスキークラブなどからも「全日本スキー連盟からの書類を参考にしたいので、データ化してほしい」といった要望も頻繁にあるという。実際、新しくスキー学校の校則を作る際、いくつかある既存のスキー学校の校則を参考にして作成するような作業にはこのソフトが大きく役に立っているという。
個人情報の取り扱いが多くセキュリティ対策を強化 紙媒体を完全ペーパーレス化し、ホームページに移管
全日本スキー連盟を含めて書類の扱いが極めて多いことに加え、一般会員や所属団体の個人情報の取り扱いも非常に多く、情報漏洩(ろうえい)に神経質にならざるを得ない。その意味で、全日本スキー連盟からは加盟団体に対してセキュリティの強化が求められ、群馬県スキー連盟も複合機更新から半年後に総合脅威管理システムを導入し、併せて事務所のネットワーク外でもウイルス感染を防止するソフトも組み合わせた。従来は一般のウイルス対策ソフトだけで対応してきた。大坪副会長は「とにかく、個人情報を本当に多く扱っているから、セキュリティ面で特に神経をとがらせている」と語る。
いっぽう、群馬県スキー連盟は毎年、紙媒体で発刊してきた「スキー年鑑」や競技大会・研修会・講習会・検定会の要項など発信する情報をすべてホームページでの掲載に移管し、完全ペーパーレス化に踏み切ることを2024年6月の定時総会で決定した。
上部団体の全日本スキー連盟は大会や研修会の要項をデータ化し、会員登録や大会参加の申し込みもパソコン・スマートフォンからホームページ上でできるようにしている。要項を閲覧してQRコードを読み込めば、参加料の支払方法まで進める。群馬県スキー連盟も同様の手法を採り入れ、2024年からホームページで実施する方針としている。
一般競技団体を巡っては近年、組織運営の適正なガバナンスを確保する観点などから法人格の取得に取り組むことが求められてきている。実際、近隣の長野県や新潟県のスキー連盟は公益財団法人として法人格を取得しており、群馬県スキー連盟にとっても法人化が検討課題に浮上している。しかし群馬県の場合、設置している公認のスキー学校は民間の団体やスキー場が運営しているなど、民間と連携したさまざまな活動にも取り組んでいるため、法人化した場合は民間の連携分までの経理・税務面の処理をすることになるが、現状の事務局体制では難しい。そこで、法人化に向けた検討は保留しつつ、二本柱の競技と教育の事業に集中し、業務を効率化する取組みを行っている。
企業概要
会社名 | 群馬県スキー連盟 |
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住所 | 群馬県前橋市住吉町2-10-11 梅沢ビル2F |
HP | http://ski-gunma.jp/ |
電話 | 027-231-1966 |
設立 | 1930年5月 |
事業内容 | スノースポーツの普及に向けた教育事業、大会運営などの競技事業 |