「ECサイトの分析って何から始めればいい?」「自社サイトの具体的な課題は何?」このような疑問や悩みを抱えている方は多いのではないのではないでしょうか。ECサイトの分析が進められなければ、売上向上の機会を逃し続け、競合他社に大きな差をつけられてしまうかもしれません。
本記事では、ECサイトの分析が重要な5つの理由から、分析のポイントや具体的な手順、役立つツールまで、網羅的に解説します。課題を特定し、データに基づく効果的な施策を打つことができるようになるため、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ECサイトで分析が重要な5つの理由
ECサイトの分析により、さまざまなメリットが得られます。ここでは、ECサイトにおいて分析が重要である5つの理由について詳しく解説します。
現状把握と課題の特定
ECサイトの運営では、現状を正しく把握し課題を特定することが非常に重要です。アクセス数やユーザーの行動、購入率などの客観的なデータを収集し、サイトのどの部分に問題があるのか、顧客の購買フローのどこに課題が潜んでいるのかを明らかにできます。
たとえば、カート離脱率が悪化している場合は、購入手続きの簡略化や送料無料の導入などの改善策を検討する必要があります。現状を可視化し課題を特定することは、ECサイトの改善に向けた第一歩といえるでしょう。
顧客理解の深化
ECサイトの分析は、顧客理解を深めるうえでも非常に有効です。流入経路別のユーザー数や、ページ別の離脱率といった情報を把握できます。また、購入商品の傾向分析やデモグラフィック分析も顧客理解に役立ちます。
たとえば、20代女性の購入率が高い商品カテゴリーがあれば、そのカテゴリーに特化した販促施策の実施により、売上アップを見込めるでしょう。
顧客の表面的な行動だけでなく、その裏にある心理や感情(顧客インサイト)の理解をもとに得られた情報を活用すれば、ターゲットに対してより効果的なマーケティング施策を打つことが可能になります。
効率的な改善施策の実行
ECサイトの分析で得られたデータは、具体的な改善施策の立案にも活用できます。たとえば、コンバージョン率を向上させるために、ランディングページのデザイン変更やコピーの改善、広告ターゲティングの見直しなど、課題の本質に迫る施策が打てます。
また、ABテストなどを活用したデータに基づいた客観的な分析により、経験や直感に偏り過ぎることなく、根拠に基づいた戦略も策定できるでしょう。
売上と利益の最大化
ECサイトの分析を通じて得られた情報をもとに、サイトのパフォーマンスを最適化し売上や利益を最大化することこそが、分析の最終目標といえます。
たとえば、リピート購入率を5%向上させることで、売上が10%アップするイメージです。複数の施策に取り組めば、その分、利益を伸ばす確率も上がるでしょう。
分析によって売上と利益の最大化を図ることは、ECサイトの運営において非常に重要な意味を持ちます。
適切なコスト管理
ECサイトの分析は、適切なコスト管理にも役立ちます。実施した施策の結果を詳細に分析し、売上に対する貢献度合いを正確に把握することで、施策に投じたコストが適切であったかどうかの判断が可能になるためです。
たとえば、クリック課金型広告(PPC広告)の費用対効果を分析し、広告費用対効果(ROAS)が低いキーワードを絞り込むことで、無駄なコストを削減できます。
数値で把握できるため、コストに見合う効果が得られなかった施策は改善するか、中断するかの判断を客観的に下せます。
分析のポイント
ECサイトを分析する際には「定量分析」と「定性分析」の2つの視点を持つことが重要です。
定量分析では、売上やコンバージョン率、平均注文額などの数値データを用いて、サイトのパフォーマンスを評価します。
たとえば、商品別の売上データを分析し売れ筋商品を特定することで、該当商品に注力した販促施策を打ち出せるようになります。また、サイト内の導線を分析し、ユーザーが購入に至るまでの障壁を発見することで、ユーザビリティの改善ポイントも明確になるでしょう。
一方の定性分析では、数字だけでは捉えきれない外部要因と、商品の質やサポート対応の質などの内部要因を考慮します。競合サイトの分析や季節変動など、自社サイト内の情報だけでは拾えない要素を探りに行くことで、差別化のヒントが得られます。
ECサイトの分析で特に重要な売上に関する指標(KPI)
ECサイトの運営において、売上に直結する指標(KPI)を正しく理解し、適切に分析することは非常に重要です。各指標の定義から改善方法までを表でまとめたので、参考にしてください。
指標名 | 定義 | 重要性と改善方法 |
訪問者数 | ECサイトを訪れたユーザーの総数 | ・サイトの認知度や集客力を測るうえで重要 ・訪問者数が増加傾向にある場合、マーケティング施策が奏功している可能性がある |
顧客単価 | ユーザー1人あたりの平均購入金額 | ・顧客単価を高めることが、売上向上に直結する ・商品のバリエーションを増やしたり、関連商品をレコメンドしたりすることで、顧客単価のアップを図る |
購入回数 | ECサイトで商品が購入された総回数 | ・サイトの利便性や商品の魅力度を測るうえで重要 ・購入回数が増えない場合は、購入までの導線に問題が生じているか、商品に問題がある可能性がある |
CVR(コンバージョンレート) | ECサイト訪問者のうち、実際に購入に至った割合 | ・CVRを改善することが、売上アップのカギ ・商品ページの説明を充実させたり、支払いオプションを増やしたりすることで、CVRの向上を目指す |
F2転換率 | 初回購入者のうち、2回目以降も購入したユーザーの割合 | ・リピーターを増やすことは、安定した売上確保に不可欠 ・初回購入時のポイント付与やクーポン配布などの施策が有効 |
リピート率 | 一定期間内に2回以上購入したユーザーの割合 | ・顧客ロイヤルティを測るうえで重要な指標 ・定期的なメルマガ配信やSNSでのコミュニケーションを通じて、リピート率の向上につなげる |
LTV(ライフタイムバリュー) | 1人のユーザーが生涯にわたってECサイトに支払う金額 | ・長期的な顧客価値を最大化できているかを測る指標 ・顧客の誕生日に特別割引やプレゼントを提供して、顧客との関係性を強化し、ブランドへの愛着を醸成することが欠かせない |
上記7つの指標は、いずれもECサイトの売上に直結する重要なKPIです。各指標の考え方や設定方法、具体的な事例などについては、以下の記事で網羅的に解説しています。ぜひ、自社ECサイトの売上向上に役立ててください。
分析の具体的な6つの手順
ECサイトを分析する際には、一定の手順に沿って進めることが重要です。ここでは、分析の具体的な6つの手順について詳しく解説します。
手順1|サイト運営に問題がないかモニタリングするKPIを決める
売上高、訪問者数、コンバージョン率など、サイト運営の状況を把握するための主要なKPIを選択します。KPI選択の際は、業界標準や自社の過去データを参考に目標値を設定するとよいでしょう。たとえば、業界平均のコンバージョン率が3%の場合、自社の目標値を4%に設定するなどです。
ただし、KPIは5つ程度に絞り込み、全体像を把握しやすくすることがモニタリングでは重要です。また、モニタリングで異常値が生じた際に、スピード感を持って対応できるよう、KPIの定義について関係者全員で共有しておくことも欠かせません。
手順2|KPIの数値に異常値が生じたら原因と仮説を立てる
選択したKPIの推移をグラフ化し、異常値が生じた時期を特定します。たとえば、先月と比べて今月の売上が30%減少した場合、その原因を具体的に把握しなければなりません。
「競合他社が値下げキャンペーンを実施したため、自社の売上が減少した」といった仮説を立て、優先順位を決めて検証すべき順番を明確にします。
手順3|仮説を立証するデータを収集する
立てた仮説を立証するために、Google Analyticsなどのウェブ解析ツールを活用し、関連するデータを収集します。
たとえば「競合他社が値下げキャンペーンを実施したため、自社の売上が減少した」という仮説を立証するために、競合他社のサイトを調査し、キャンペーンの有無や内容を確認します。また、ヒートマップやセッション録画などのツールを使って、ユーザー行動の詳細な分析も有効です。
さらに、仮説やデータに加えて、ユーザーアンケートやインタビューを実施し、ユーザーの声を直接収集するのも重要です。ユーザーの生の意見を聞くことで、より具体的な課題の発見につながります。
手順4|課題を特定する
収集したデータから課題の根本原因を特定します。複数の仮説が立証された場合は、課題の優先順位を決めることが重要です。
たとえば「競合他社が値下げキャンペーンを実施したことによる売上減少」と「サイトのユーザビリティの低さによるコンバージョン率の低下」という2つの課題が特定された場合、売上に与える影響の大きさを考慮し、優先的に取り組むべき課題を決定します。
データの取りまとめ方法については、フィッシュボーン図1やパレート図2などのフレームワークが有効です。
*1 フィッシュボーンチャート図とは、問題が起こった原因を「なぜ?」と追究し、その答えに対しても「なぜ?」と掘り下げつづける、「なぜなぜ分析」の一種。
*2 パレート図とは、データを項目別に集計・分類して多い順に並べ、棒グラフと累積曲線によってあらわした図のことを指す。
手順5|課題解決に向けた施策を立案し実施する
特定した課題に対して、解決策を複数検討します。たとえば「競合他社が値下げキャンペーンを実施したことによる売上減少」という課題に対しては、「自社でも値下げキャンペーンを実施する」「商品の魅力を高める」「新たな顧客層を開拓する」などの解決策が考えられます。
解決策の実現可能性や効果の大きさを評価し、最適な施策を選択することが重要です。以下の内容を明確にし、関係者間で共有・協力して施策を実施しましょう。
・施策の目的
・手順
・スケジュール
・予算
・担当者
手順6|効果検証を行う
施策実施後は、KPIの推移を継続的にモニタリングします。施策の効果が表れるまでには一定の時間を要するため、適切なタイミングで効果を判断することが重要です。
たとえば、値下げキャンペーンを実施した場合、売上の増加は即座に表れるかもしれませんが、利益率の低下は中長期的に表れる可能性があります。効果が不十分な場合は、原因を分析し、必要に応じて施策を修正します。
効果検証の結果は必ずレポートにまとめ、関係者にフィードバックすることが重要です。得られた知見を次の施策立案に活かすことで、継続的な改善サイクルを回せます。
分析に役立つ5つのツール
ECサイトを分析する際には、さまざまなツールの活用が欠かせません。ここでは、分析に役立つ5つの主要なツールについて詳しく解説します。適切なツールを使いこなすことで、ECサイトの課題を明確にし、売上向上につなげられます。
なお、商品軸で分析できる売上分析ツールも重要です。futureshopのレポート機能は、一般的なツールではあまり見られない顧客軸、商品軸からの売上分析が可能です。以下より詳細をご覧いただけます。
アクセス解析ツール
アクセス解析ツールは、訪問者の行動パターンやユーザー属性などの情報を詳細に分析するためのツールです。代表例としては、Googleアナリティクスが挙げられます。
Googleアナリティクスを使うと、以下のようなデータ収集が可能です。
・アクセス状況(アクセスしたユーザー数、ページの閲覧数)
・ユーザーの訪問回数(セッション数))
・ユーザーの属性(性別、年齢、アクセス時の場所、OSやデバイス)
・ユーザーの行動(流入元、閲覧したページ、滞在時間)
たとえば、スマートフォンからのアクセス割合が高い場合は、スマートフォン向けのサイト最適化が必要だと判断できます。また、特定のページで離脱率が高い場合は、そのページの改善が必要だとわかります。
アクセス解析ツールについてより詳しい内容は以下の記事で解説しているため、ご覧ください。
自然検索流入分析ツール
自然検索流入分析ツールは、ユーザーがどのようにしてサイトに訪れたかを把握し、SEO施策やマーケティング戦略の最適化に役立てるためのツールです。代表例としては、Googleサーチコンソールが挙げられます。
Googleサーチコンソールを使うと、以下のデータ収集が可能です。
・サイトに流入する際に使用したキーワード
・検索エンジンからの自社ECサイトのクリック数
・平均表示順位など
たとえば、流入数の多いキーワードを把握し、そのキーワードに関連するコンテンツを充実させることで、さらなる流入増加が期待できます。また、表示順位が低いキーワードを特定し、SEO施策を強化することで、検索順位を向上させるための施策を打てます。
SEO施策の詳細については、以下の記事をご覧ください。
ヒートマップツール
ヒートマップツールは、ユーザーの行動を視覚的に表示し、サイトの改善に役立つツールです。ヒートマップを見れば、ユーザーがどのページを見たのか、ページをどこまで見たのか、どこをクリックしたのか、どこでタップしたのかなどが一目でわかります。
たとえば、商品ページの「カートに入れる」ボタンのクリック率が低い場合、ボタンの配置や色を変更するなどの改善を試みる価値があります。ユーザーの関心が高い部分や、逆に見られていない部分を把握することで、サイト改善のヒントが得られるでしょう。
A/Bテストツール
A/Bテストツールは、AパターンとBパターンの2つのバリエーションを同時に掲載し、どちらがコンバージョンやクリック率などの数値が高いか比較するためのツールです。広告やランディングページ、メールマガジンなど活用方法は多様です。
たとえば、商品ページのレイアウトや価格設定、ボタンの配置や支払い方法、会員登録ページの入力項目や誘導文などでもA/Bテストを実施できます。
具体的には「今すぐ購入」と「カートに入れる」のどちらのボタン文言がクリック率が高いかなどを検証し、最適なパターンを見つけることで、コンバージョン率の向上につなげられます。
MAツール
MAツールは、主に新規顧客の発掘・育成の自動化ができるツールです。顧客ごとの行動や興味関心にあわせてアプローチできる「One to Oneマーケティング」が可能なため、新規顧客との関係構築に役立ちます。
たとえば、ある商品ページを繰り返し閲覧する顧客に対し「特定のページを3回以上閲覧したタイミングで、10%OFFの割引クーポンをメールで自動送信する」などの施策が打てます。
顧客の興味関心を的確に捉え、最適なタイミングでパーソナライズされたアプローチを自動で行うことで、顧客との関係性を強化し、購入につなげられるでしょう。
そのほか、MAツールの機能や選び方などを以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、あわせてご覧ください。
分析の優先順位に迷った際はfutureshopへご相談ください
ECサイトの分析を進める際、どの指標を重視すべきか、どのツールを使うべきか、どの課題から着手すべきかなど、優先順位の決定に迷うことは少なくありません。特に、分析の経験が豊富でない場合、何から手をつけていいのかわからず、戸惑ってしまうこともあるでしょう。
そんな時は、ぜひfutureshopにご相談ください。futureshopでは、ECサイトに関する無料相談を実施中です。経験豊富なコンサルタントが、貴社のECサイトの現状や課題をヒアリングし、適切な分析の手順やツールの使い方などをアドバイスいたします。
分析の手順やツールを踏まえて、まず何をすべきなのか迷った際には、ぜひ以下よりお気軽にご相談ください。
まとめ
ECサイトの運営において、データ分析は売上向上のためには必須のアプローチです。分析を進める際は、以下6つの手順を踏むことが重要です。
・KPIの設定
・異常値の原因究明
・仮説立案
・データ収集
・課題特定
・施策立案・実行
・効果検証
また、アクセス解析ツールやヒートマップツール、A/Bテストツールなど、目的に応じた分析ツールを適切に選択することも欠かせません。分析の優先順位に迷った際は、futureshopをはじめとする専門家のアドバイスを得ることをおすすめします。
ECサイトの成長に向けて、まずは現状把握のためのKPI設定から始めてみてはいかがでしょうか。