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相続財産に宅地がある場合、ある程度の知識がないと評価額を算出することはできません。

ここでは道路に面している宅地について、1つの道路に面している場合の評価方法と2つの道路に面している場合の評価方法をご説明いたします。

1つの道路に面する宅地の評価方法

まず、1つの道路に面する宅地の評価方法をご説明します。

よく耳にする「路線価」というものは、その道路に面する標準的な宅地の「1㎡当たり」の価額です。

ただし、その宅地の奥行きの距離が長かったり、短かったりするような場合は、実際に利用しにくいので、価値が落ちますから、補正率で価格を調整することになります。

具体的には、次のような算定式になります。

・路線価×奥行価格補正率=A(小数点以下は切り捨て)

・A×地積=評価額

上の式では、宅地の正面の道路につけられた路線価に対して、宅地の奥行距離に応じた「奥行価格補正率」をかけて、路線価を調整し、Aの数値を求めます。

参考:国税庁 「奥行価格補正率表」

そして、そのAに地積(土地の面積)をかけて、評価額を算出します。

例えば、路線価が「170(170,000円)」、奥行が6m、120㎡の宅地があったとします。

10mの奥行価格補正率は、「0.95」ですから、1㎡当たりの価格は、次のようになります。

170,000×0.95=161,500(円)

そして、地積が120㎡ですから、この宅地の評価額は、次のようになります。

161,500×120=19,380,000(円)

宅地の形が完全な正方形、あるいは長方形であれば、奥行距離は道路から宅地の一番奥までを測ることで算定できます。

しかし、決して宅地は正方形、長方形ではありません。

むしろ、いびつな形をした宅地が少なくありません。

そこで、奥行距離を算定する場合には、一般的に宅地の面積を道路に接する部分の距離(間口)で割って距離を算出し、その距離と「想定整形地の奥行距離」とを比較して短い方を奥行距離とします。

上記で説明した「想定整形地」とは、宅地の正面の道路から垂直に線を引き、宅地全体を囲む四角形のことを言います。

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つまり、いびつな形の宅地と同じ面積である四角形に宅地を想定したものです。

そして、想定整形地の奥行距離は、その四角形の奥行を三角スケールで測って算出します。

評価する宅地の奥行距離を算出したら、「奥行価格補正率表」を見て、その宅地の「奥行価格補正率」を確認します。

この「奥行価格補正率表」では、「ビル街」、「高度商業」、「繁華街」、「普通商業・併用住宅」、「普通住宅」、「中小企業」、「大工場」という地区区分によって分けられています。

したがって、同じ奥行距離でも地区区分によって「奥行価格補正率」が異なりますから、算定する宅地がどの地区に該当するか確認する必要があります。

なお、路線価図には、先程ご説明した7つの地区区分を以下のような形で表示しています。

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引用元:国税庁 「【参考6】路線価図の説明」

ところで、地区区分を表示している形は、基本的に全体が白色ですが、上下左右の一部や全体が斜線、黒塗りで表されていることがあります。

この上下左右は東西南北を表し、斜線や黒塗りは、適用を限定する場合に用います。

斜線は、その方角にはその地区区分を適用しないことを表し、黒塗りは、その方角は「道路沿いのみ」にその地区区分を適用することを表します。

例えば、普通商業・併用住宅地区(〇)の場合、表示方法とその意味は、次のとおりです。

・道路を中心として、北側・南側の全地域がこの地区区分
・道路を中心として、斜線のない南側の全地域がこの地区区分
・道路沿いのみの地域がこの地区区分
・奥にある土地がこの地区区分
・道路を中心として黒塗り側(北側)の道路沿いと反対側(南側)の全地域がこの地区区分
・道路を中心として黒塗り側(北側)の道路沿いのみの地域がこの地区区分
・斜線側(南側)には適用しない

ただし、上記で示したものはあくまでも地区区分の適用範囲の指示であって、路線価の適用範囲には影響を与えません。

以下の図によって、ご説明します。

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上記の「「宅地A」が面する道路(86E)の地区区分は、「普通商業・併用住宅地区(〇)」ですが、〇の右側(道路の東側の地域)には斜線があり、その地区区分を適用しないということを表しています。

また、Aの上(北側)にある道路(84E)の〇に下(南側)にも斜線があります。

したがって、Aの地区区分は、下(南側)にある道路(72E)や右(東側)にある道路(82E)の無印を適用して「普通住宅地区」になりますから、その補正率を使用することになります。

ただし、この場合には、路線価は宅地Aが面する道路(86E)の「86,000円」を使って評価することになります。

「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」において、それぞれの項目には次の事項を記入します。

(1)「国税局名、税務署・年分・ページ番号」

国税局名は、「財産評価基準書・路線価・評価倍率表」のトップページで土地が所在する都道府県名を探します。

税務署・年分・ページ番号は、路線価図の右上に記載されています。

(2)「所在地番など」

住居表示が所在地番と違う場合は、居住表示をカッコ書きにします。

(3)「地目」

該当する地目に〇印を付けます。

地積を記入し、最下段にも転記します。

(4)「路線価」

路線価を「正面」の欄に記入し、「1-路線に面する宅地(正面路線価)」に転記します。

(5)「間口距離、奥行距離」

間口距離と奥行距離を記入します。

(6)「利用区分、地区区分」

利用区分は、自用地に〇印を付けます。

自宅や敷地や駐車場などの利用区分は、自用地です。

地区区分は、路線価の〇や◇、無印などの図形を確認します。

(7)「奥行価格補正率」

奥行価格補正率を記入します。

(8)「1㎡当たりの価額」

正面路線価に奥行補正率をかけて、「1㎡当たりの価額」を算定します。

最下段の「自用地1平方メートル当たりの価額」欄に転記し、カッコ内に(A)と記入します。

(9)「総額」

自用地1平方メートル当たりの価額に地積をかけて、価額を算出します。

2つの道路に面する宅地の評価方法

1つの道路に面するよりも、2つの道路に面した宅地の方が、利便性が高まるため、利用価値が高くなります。

そのため、評価を行う際には、調整することになります。

具体的な方法としては、「側方路線影響加算率」と「二方路線影響加算率」を使って算定した額を加算することになります。

宅地に面する道路が2つ以上ある場合には、「路線価×奥行価格補正率」で算出した1㎡当たりの価額が、最も高い道路が「正面道路」ということになります。

つまり、最も路線価の高い道路が「正面」になるのではありません。

「奥行補正率」は、正面は正面の道路から、側方は側方の道路から、裏面は裏面の道路から、それぞれ垂直に測定した奥行距離に応じて決まるからです。

路線価の差が小さい場合、間口や奥行距離が極端に長かったり短かったりした場合には、逆転することがありますから、注意が必要です。

「正面道路」を決める方法について、下の図を使ってご説明します。

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この宅地は「普通住宅地区」で、「168D」の奥行は6mですから、奥行価格補正率は「0.95」です。

したがって、1㎡当たりの価額は、次のとおりです。

(1) 168,000×0.95=159,600(円)

一方の「162D」の奥行は25mですから、奥行価格補正率は、「1.00」です。

したがって、1㎡当たりの価額は、次のとおりです。

(2) 162,000×1.00=162,000(円)

(2)の金額が高いので、162,000(円)の道路が正面、168,000(円)の道路が側方ということになります。

この場合、(1)と(2)の金額は異なりましたが、もし同額の場合には、道路に接する距離の長い方が、「正面道路」となります。

「正面道路」が決まったら、次に2つの道路に接する宅地の評価を行います。

まず、次の2つの数値を算出します。

①正面の路線価×正面の奥行価格補正率(小数点以下は切り捨て)
②側方の路線価×側方の奥行価格補正×側方路線影響加算率

そして、この①と②を加えた金額(小数点以下切り捨て)に宅地の面積(地積)をかけて、評価額を算定します。

先程の図の数値を当てはめると、次のようになります。

①162,000×1.00=162,000(円)
②168,000×0.95×0.02=3,192(円)

地積は、「6×25」ですから、150(㎡)です。

したがって、評価額は次のようになります。

(162,000+3,192)×150=24,778,800(円)

なお、先程計算に用いた「側方路線影響加算率」というのは、「側方路線影響加算率表」で確認します。

■側方路線影響加算率表

地区区分加算率
角地の場合準角地の場合
ビル街0.070.03
高度商業、繁華街0.10.05
普通商業・併用住宅0.080.04
普通住宅、中小工場0.030.02
大工場0.020.01

(国税庁ホームページ「付表2側方路線影響加算率表」 より作成)

宅地が2つの道路に面している場合に、角地にあるのか準角地にあるのかによって、異なります。

ここでいう角地とは、2つの路線が交差する場所に宅地がある場合を言い、準角地とは、折れ曲がる1つの路線の内側に宅地がある場合を言います。

先程の宅地は、正面と側面に道路がある場合でしたが、次に正面と裏面に道路がある宅地の評価額の算定方法を以下の図を例にして、ご説明します。

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まず、次の2つの数値を算出します。

①正面の路線価×正面の奥行価格補正率(小数点以下は切り捨て)
②裏面の路線価×側方の奥行価格補正×二方路線影響加算率

そして、この①と②を加えた金額(小数点以下切り捨て)に宅地の面積(地積)をかけて、評価額を算定します。

上の図の数値を当てはめると、次のようになります。

①167,000×1.00=167,000(円)
②152,000×1.00×0.02=3,040(円)

地積は、「10×14.5」ですから、145(㎡)です。

したがって、評価額は次のようになります。

(167,000+3,040)×145=24,655,800(円)

なお、先ほど計算に用いた「二方路線影響加算率」というのは、「二方路線影響加算率表」で確認します。

地区区分ごとに数値が決まっています。

■二方路線影響加算率表

地区区分加算率
ビル街0.03
高度商業、繁華街地区0.07
普通商業・併用住宅0.05
普通住宅、中小工場
大工場
0.02

(国税庁ホームページ「付表2側方路線影響加算率表」より作成)

また、宅地が側方道路や裏面道路の一部にしか接していない場合には、道路にかかっている部分だけを路線価にプラスすることになります。

つまり、次のように分数をかけて調整することになります。

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①167,000×1.00=167,000(円)
②102,000×1.00×0.08×16/24=5,440(円)

地積は、「22×24」ですから、528(㎡)です。

したがって、評価額は次のようになります。

(167,000+5,440)×528=91,048,320(円)

なお、宅地が3つ以上の道路に面している宅地の評価額も、今までご説明した2つの方法を応用して、算定します。

つまり、側方路線影響加算率、二方路線影響加算率を使って、算出した金額を順番に加算していきます。

「正面道路」の決めた方も、先程のご説明と同じです。

なお、「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」には、「1 一路線に面する宅地」から「4 四路線に面する宅地」まで、AからDに記入することができます。

「正面」→「側方」「側方」「裏面(二方)」の順番で加算していき、最後に地積をかけて評価額を算定します。

私道の評価額

宅地の評価額とは直接関係ありませんが、ここで、私道の評価額の算定方法について、触れておきます。

固定資産税が非課税の私道でも、相続税は利用の度合いに応じて、評価することになります。

私道、つまり個人所有の道路を近くの住人が通行している場合、その道路に相続税は課税されません。

ただし、特定の人だけが通行している私道は30%相当額で、また、所有者だけが通行している私道は100%で評価します。

つまり、近所の不特定多数の人が簡便的に通り抜けできる私道は非課税、行き止まりの私道は30%か100%課税されると理解してきましょう。

まとめ

複数の道路に挟まれた評価には、知識が必要です。

利便性の高い宅地は、評価額も上がるということになります。
(提供:相続サポートセンター