目次
- 2024年3月、清水建設業協会の活動拠点となる新しい事務所ビルが完成 高い耐震性と省エネ性を備える
- 2022年9月に静岡市を襲った台風15号の発生時、協会は700件を超える復旧作業の要請に「協会が一丸となって機動力を持って対応した」
- 協会の理念を継承していく上で、大きな役割を果たしている青年部
- 関心を持つ人が誰でも建設業界の門戸を叩くことができるよう環境を整えていきたい
- 公共工事で豊富な実績、地域に必要とされる建設会社であり続ける
- 労働安全衛生のマネジメント支援システムを導入して安全教育の講習を充実
- 上空からの作業環境の安全確認にドローンを活用
- ホームページを使って若い世代に情報発信
- 現場と基幹業務の両面でICTとデジタル機器の導入を促進して建設業界のイメージをスマートに
- デジタル技術は建設業界に差し込んだ光 地域全体で活用する機運を高める
会員企業の中で、ICTやデジタル機器を活用する動きが活発になっている静岡県静岡市清水区を対象エリアとする一般社団法人清水建設業協会(松浦真明会長)。2回目は創業100年を超える株式会社清水組。役員企業として協会を牽引(けんいん)する一方、リスクマネジメントや情報発信にデジタル技術を活用している。人手不足が業界の課題となる中、若い人材のポテンシャルを拡大する上でデジタル技術が大きな効果を発揮すると考え、蓄積したノウハウを同協会の会員企業に還元していきたいという。(TOP写真:株式会社清水組の工事現場の様子)
2024年3月、清水建設業協会の活動拠点となる新しい事務所ビルが完成 高い耐震性と省エネ性を備える
2024年3月、静岡市清水区庵原町の東名高速道路の南側に広がる産業集積エリアに、一般社団法人清水建設業協会の新しい事務所ビルが完成した。活動の拠点となる鉄骨造2階建ての建物は高い耐震性と省エネ性を備える。1階の事務室では、協会の職員と共に、協会の関係団体、清水地区建設事業協同組合の職員が勤務し、多様な業務をこなしている。2階には防災本部室として活用する会議室を配置している。
同協会は、旧事務所ビルから新事務所ビルの建て替えに併せて新しい複合機を導入した。以前は別々に使っていたプリンターとスキャナーが一つにまとまったことで印刷や紙文書のデジタル化といった事務作業を効率的に進めることができるようになったという。
2022年9月に静岡市を襲った台風15号の発生時、協会は700件を超える復旧作業の要請に「協会が一丸となって機動力を持って対応した」
静岡市が大きな被害を受けた2022年9月の台風15号の発生時、同協会は迅速に災害対策本部を設置した。会員企業は静岡市など官公庁からの要請に基づいて冠水した道路にたまった土砂の撤去などに取り組み、ライフラインの復旧に大きな役割を果たした。FAXや電話で官公庁から寄せられた復旧作業の要請件数は700件を超えた。協会と協同組合が錯綜する情報を整理して、各会員企業に適切に現場を割り振ったおかげで、復旧業務は当初想定したよりも円滑に進んだという。
「社会基盤の維持、災害に強い地域を作っていく上で企業と行政機関の連携は重要です。協会と協同組合の会員企業が、地域の守り手として行政機関と強い信頼関係を築いているからこそ、いざという時のスムーズな連携が可能になります。先人が培ってきた災害時対応の一致団結と機動力という資産をしっかりとこれからの世代に伝えていかなければならないと思っています」と清水地区建設事業協同組合の望月清司専務理事は話した。
協会の理念を継承していく上で、大きな役割を果たしている青年部
世代を越えて同協会の理念を継承していく上で、大きな役割を果たしているのが20代から40代の会員で組織する青年部だ。青年部は、毎年8月に地元で開催される清水港まつりで、桟敷席や本部席、通行止め用バリケードをはじめとする様々な設備の設営、撤収を担当するほか、同協会の親子現場見学会などのイベントも企画している。会員は、青年部時代から共同で様々な企画に取り組むことで、会社の垣根を越えた仲間意識を育んでいる。青年部時代の経験は、会員にとって協会との一体感を醸成する土壌になっているという。
同協会の総務委員長を務める株式会社清水組の清水和明代表取締役も、15年近く青年部の活動に携わったことで、自らの成長の糧となる知識、経験、人脈を養うことができたという。その思いを胸に、同協会の役員として会員企業の拡大に尽力し、近年、創業間もない企業や若手が事業承継した企業の入会が増えていることを心強く思っている。「これから先、協会が地域を担い続けていくには後継者をしっかりと育てていかなければなりません。近年、気候変動が原因と思われる災害が増えている中で、会員企業数を増やすことは地域の安心、安全を守る上で大事な取り組みです。私自身が先輩や仲間から受け取った恩をこれからの世代に還元していきたいと思っています」と清水社長は話した。
関心を持つ人が誰でも建設業界の門戸を叩くことができるよう環境を整えていきたい
清水社長は、人手不足や後継者難といった建設業界が直面する課題に対処するには、デジタル技術の活用が鍵を握ると考えている。「建設業界は専門技術を身につけるまで時間がかかるため、他の業界からの転職は難しいというイメージがありましたが、建設業界向けのICTやデジタル機器の進化のおかげで状況は変わっています。関心を持つ人が誰でも建設業界の門を叩くことができるよう環境を整えていきたいと思っています」と清水社長。
公共工事で豊富な実績、地域に必要とされる建設会社であり続ける
清水組は1919年、石積み工事を手掛ける建設会社として創業した。土木工事や管工事に事業領域を広げ、1979年に株式会社化した。公共分野を中心に河川の砂防工事や道路の補修工事で豊富な実績を積んでいる。
現在54歳の清水社長は2014年、40代半ばで父親から事業を継いで創業から4代目の社長に就任した。「経営者と協会役員両方の務めを果たせているのは、従業員、取引先、協会の会員企業やスタッフの皆様に支えていただいているおかげです。清水区は強い地元愛を持つ人が多い温かみがある地域です。かけがえのないこの地域に貢献し、必要とされる会社であり続けたいと思っています」と清水社長は穏やかな表情で話した。
労働安全衛生のマネジメント支援システムを導入して安全教育の講習を充実
労働災害の発生を防止し、従業員が安全で健康を損なうことなく働けるようにするにはリスクマネジメントを徹底する必要がある。清水組は、現場での事故を防止する上で必要な管理業務や従業員への安全教育にICTを活用している。2021年1月、建設業向けに設計された労働安全衛生のマネジメント支援システムを導入した。
システムは、様々なリスクと関連付けた作業手順書や、事故にはつながらなかったが危険な状況だったことを意味する「ヒヤリハット」の事例、重機、作業員、災害事例などの多彩なイラストを収録している。これらの事例やイラストを活用することでわかりやすい講習用の資料を短時間で作成できる。講習用にCGによるリアルな労災事故の映像を活用することもできる。
「以前は、毎月開催している安全教育講習で使う資料の作成に半日程度時間を取られ、しっかりと内容を理解してもらうための試行錯誤を繰り返していました。システムには映像や事例、イラストが豊富にそろい、直感的に操作して編集できるので、わかりやすい資料を1時間程度で作成することができるようになりました。マンネリを防ぐための工夫も簡単にできるようになったので、講習を受ける従業員の反応も上々です」と清水社長。
上空からの作業環境の安全確認にドローンを活用
建設現場での新技術の導入にも目を向けている。ドローンの技能証明を従業員に取得させた上で、ドローンの活用も始めた。現在は主に上空からの作業環境の安全確認に活用しているが、今後、効率的かつ正確な3次元測量などに用途を拡大し、作業時間の短縮や人員配置の改善につなげていきたいという。
ホームページを使って若い世代に情報発信
2020年1月、人材採用の支援ツールとしてホームページを立ち上げるため、ホームページ作成システムを導入した。会社案内、施工実績、採用情報を掲載し、清水社長がブログの執筆をはじめとする更新業務を担当している。導入したシステムは、編集の専門的な知識や経験がなくても簡単な操作で記事の作成や更新ができるので重宝しているという。ホームページの開設後、採用数は着実に増えている。
「ホームページを立ち上げた最大の理由は、人材を確保する上で若い世代を中心に会社の情報を発信していきたいと考えたからです。若い世代は、求職で関心を持った企業の情報を収集する際、必ずホームページを閲覧します。若い世代にアピールできるように新しいノウハウを身につけて、ホームページをブラッシュアップしていきたいと考えています」と清水社長は抱負を語った。
現場と基幹業務の両面でICTとデジタル機器の導入を促進して建設業界のイメージをスマートに
今後、現場と基幹業務の両面でICTとデジタル機器の導入を促進し、女性従業員の採用にも積極的に取り組んでいきたいという。建設現場の様々なデータの整理や処理、ICT業務を担う専任者の育成にも関心を持っている。「デジタル技術は、新人や未経験者に短期間での技能習得を可能にすると同時にベテランの負担も軽減できる大きなポテンシャルを持っています。デジタル技術の活用を進めることで静岡市清水区の建設業界のイメージがスマートなものになればうれしいですね」と清水社長。
デジタル技術は建設業界に差し込んだ光 地域全体で活用する機運を高める
ICTやデジタル機器の活用ノウハウを蓄積することで、今後、導入を考えている企業に的確なアドバイスを提供できるようにしたいという。「人手不足や資源価格の高騰など建設業界を巡る環境には厳しいものがありますが、デジタル技術のおかげで光が差し込んできたように思います。協会の活動を通じて地域全体でデジタル技術を活用する機運を高めていきたい」と清水社長は意欲的に語った。
建設会社の経営環境の改善、働き手の確保と育成、地震、台風などの災害への対応、地域の活性化に加え、ICTやデジタル機器といった新技術の導入支援に力を入れている清水建設業協会。会員企業は、「地域を守る企業であり続けたい」との思いを胸に、それぞれの企業に合ったICTとデジタル機器の活用をこれからも着実に進めていくに違いない。その成果は同協会にフィードバックされ、より洗練された形で会員企業に還元されるはずだ。
企業概要
会社名 | 株式会社清水組 |
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本社 | 静岡県静岡市清水区小島町432-1-1 |
HP | https://shimizu-gumi1970.com |
電話 | 054-393-2062 |
設立 | 1979年10月(創業1919年3月) |
従業員数 | 20人 |
事業内容 | 土木工事一式、管工事、造園工事・その他 |