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ハンプティーダンプティーのホームページには次のような一文が掲載されている。
ハンプティーダンプティーは、こう言いました。
『毎年、誕生日は一度しかない…でも誕生日じゃない日は、364日もあるんだよ。』
『何でもない日バンザイ!!』
皆さんも、経験したことはないですか?
何でもない日に、思いがけずもらったプレゼントって
記憶に残るし、すごく嬉しかったことって。
プレゼントする方も、なんだか気恥しいけど、相手が喜んでくれた笑顔を見て
幸せな気持ちになったこと。
群馬県下の前橋や伊勢崎、高崎を中心に、近隣県の栃木や茨城、そして神奈川、愛知、京都などへも店舗網を広げて、ちょっと気になる季節ごとのグッズや生活用品を販売しているショップが「ハンプティーダンプティー」だ。フランチャイズで広島など西日本にも展開している。運営している株式会社ハンプティーダンプティーはコロナ禍を乗り越え、情報の一元化と情報活用やコミュニケーションの強化などを通して、各店舗の売上向上を図っている。(TOP画像:ハンプティーダンプティーのホームページより)
ひと工夫した生活雑貨や贈っても贈られても嬉しくなるアイテムを販売してファンを獲得してきたハンプティーダンプティー
「ハンプティーダンプティー」というショップにまだ行ったことがない人でも、ハンプティーダンプティーという言葉には聞き覚えがあるだろう。元は英国の伝承童謡(マザー・グース)の中に登場する卵のような形をしたキャラクターで、ルイス・キャロルの童話『鏡の国のアリス』の中で、アリスを相手に誕生日でも何でもない日にプレゼントをもらったことを喜んでみせる。そうしたストーリーをベースに、特別な日でなくても贈ったり贈られたりして楽しくなれる品物が並ぶショップとして、「ハンプティーダンプティー」は誕生した。
前橋市青柳町にある本店に行くと、童話に出てくるような石造り風の外壁と、卵のようなものが置かれた塔を持った外観に出迎えられ、おとぎ話の中へと足を踏み入れるような気分でショップへと入っていける。そして店舗内には、生活雑貨もあればキッチン用品もあり、文房具類もありファッション用品もあって、買おうと思っていたもの以外のカテゴリーの品物も見て回ることができる。
季節に合わせたコーナーもあって、梅雨を前にした時期にはちょっと気になる雨具が並び、本格的な夏を迎える前にはキャンプ用品、といった具合に、行けば確実に新しいものが見つけられるショップとなっている。このことは、季節に合わせてタイミングよくさまざまな種類の商品を仕入れて並べる必要があることを意味している。「ニーズに合った変化を見せていかなければ、やはり飽きられてしまいます」と店舗運営部リーダーの篠原大樹氏は、同社が置かれた状況を説明する。
導入したクラウドシステムによりアイテムの売れ行き状況をよりきめ細かく把握、さらにマーチャンダイジングの緻密さによって差別化を行い利益率アップをねらう
家具ショップが生活雑貨も扱うようになったりと、業態の差が縮まっている中で、「商品のセレクトや切り替えに気を配って、飽きられない店作りをしていく必要があります」(篠原リーダー)。
大切になるのが、適正な在庫管理であり、ショップでの販売力だ。「普通に回転しているアイテムだけで2万点くらいあります。あまり動かず倉庫に置いてあるアイテムも含めると4万点くらいになるでしょうか」(篠原リーダー)。同社ではそれを、販売・仕入・在庫管理システムを使って管理しており、数量についての把握はできているという。
ただ、「販売計画の策定自体が、他の会社に比べて少し弱いと感じています。来年の夏にどのようなトレンドが来るのかを想定し、どれくらいの期間でどれくらい売れるのかを考えるマーチャンダイジングの部分を緻密にすれば、粗利の改善につながります」(篠原リーダー)。
仕入れたものの売れ行きが悪ければ、セールを行って売り切る必要がある。利益が下がるだけでなく、「いつもセールを行っている店というイメージを持たれて、ブランドの価値が下がってしまいます」(篠原リーダー)。そうならないためにも、クラウド化した販売・仕入・在庫管理システムのデータを活用し、売れ行きを見極めてマーチャンダイジングに反映させるような仕組みを作っていく。「いずれAIが仕入のアドバイスをしてくれるようになるかもしれませんが、今はデータを分析して発注にフィードバックすることを心がけています」(篠原リーダー)
店舗が独自に発注を行っている状況も改善していく。「今は本部が5割で店舗が5割といった感じで、販売する商品を発注しています。このこと自体は、お店が販売する商品について責任を意識するようになるメリットがありますが、本部の計画と合わないところが出てくる可能性もあります」(篠原リーダー)。そのためには本部がしっかりとした販売計画を策定し、成果が売れ行きで証明されれば「本部に対する信頼が生まれます。データという強力な武器を持ち、説得できるだけの材料と実績を積み重ねることが重要です」(篠原リーダー)。
本部からの連絡をメールによる配信からクラウドへのアクセスに切り替え必要な情報を見つけやすくした
本部機能の拡充とも重なる施策として、店舗との連絡をメールでのやりとりから、本部側に置いたサーバーに店舗側からアクセスしてもらう方式に2023年の秋頃から切り替えた。「店舗のノートパソコンからサーバーにアクセスして、本部がまとめた商品に関する情報や連絡事項などを見てもらうようにしました。店頭に貼って商品の良さや世界観を伝えるPOPのデータも保管してあります」と店舗運営部システム担当の竹内飛翔氏は話す。
「メールで配信していた時は、店舗がそれぞれにパソコンの中にデータを保管していましたが、管理できていなくて必要な情報を探すのに手間取ることがありました。本部のサーバーにカテゴリーごとにフォルダに分けて置いておくことで、必要なデータをすぐに見つけられるようになりました」(竹内氏)。基本的には毎日午後4時以降に閲覧するよう連絡して、アクセスすれば翌日からの店舗運営に必要となるデータを入手できる。その分、本部の方でも午後4時までにデータを取りまとめてサーバーにアップしておく必要があるが、こうしたやりとりを通してお互いのコミュニケーションも増えていき、信頼感も醸成されていく。
緊急の指示については、2021年頃に導入したコミュニケーションツール(LINE WORKS)を活用して、2023年から担当者に向けた情報発信を行うようにした。「社内のやりとりについても、個人で入れたツールは使わず、こちらを使うようにルールを決めました」(竹内氏)。コミュニケーションを確保しつつ情報の漏洩(ろうえい)にも配慮した施策と言えそうだ。
オンラインショップでのアプローチにも力を入れる
流通の世界で実店舗と並んで大きな販売窓口となっているオンラインショップについても、強化・拡充を進めている。トップにその時々に行っている特集の紹介を並べ、バラエティーに富んだ商品展開をアピールしている。ただ商品を並べるだけでなく、社員が写真を撮って使い勝手を見せるようなこともして、より身近に感じる雰囲気を醸し出している。「気をつけているのは、買おうとしても在庫切れになっている状況を作らないことです」(篠原リーダー)。本社や倉庫に保管しているオンラインショップ用の在庫だけでなく、店頭にある在庫も含めて検索できるようになれば、欲しい人を逃さないですむようになる。そうした仕組みの構築も進めている。
ポイントカードを改善して顧客属性の把握に努め、新紙幣への対応やキャッシュレスへの対応も行い利用者の利便性を高める
課題としては、ポイントカードシステムの改善。「スタンプ式だったものをデジタルに変えたところまでは進めましたが、誰でも作れるカードをバーコードで読み取る方式で、顧客の属性は一切入っていません。これがしっかりと属性把握できるようになれば、顧客へのサービス向上も行えますし、データを元にしたマーチャンダイジングも行いやすくなります」(篠原リーダー)。2024年7月から発行された新紙幣への対応も、機械の導入が間に合わず、全店でいっせいには行えなかった。キャッシュレスにも対応しているが、現金対応もまだまだ必要なことから、秋以降に順次切り替えを進めていく。
コロナ禍の中で売上が下がったことや、それ以前からの店舗網拡大が要因となって、「ハンプティーダンプティー」の経営は2020年頃から厳しさを増していたが、2024年3月に経営権が創業者から事業再生・再編を専門とした投資会社に移り、新しい体制の中で再スタートを切った。店舗の再編を続ける一方で効率化によって収益力を高め、雇用も確保しながら次の段階へと向かおうとしている。これまでに取り組んできたシステムの改善や、これから導入していくICTの技術が大きな役割を発揮しそうだ。
企業概要
会社名 | 株式会社ハンプティーダンプティー |
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本社 | 群馬県前橋市青柳町198 2F |
HP | https://www.humpty-dumpty.jp/ |
電話 | 027-233-8233 |
設立 | 1982年 |
従業員数 | 450人 |
事業内容 | 生活雑貨などの小売 |