目次
- 静岡市清水区を対象エリアに100年以上の歴史を誇る清水建設業協会
- 地域のインフラを支える企業として役立つため、先を見据えてICTの活用に目を向ける
- 橋本社長は、清水建設業協会の副会長を務める。まちづくりや地域活性化への思いは強い
- 2022年9月に台風で受けた被害からの復旧に清水建設業協会は大きな役割を果たした
- ICTやデジタル機器の活用を会員企業に推奨したい
- ホームページは建設業許可票に匹敵する会社の看板
- 公開画面に近い状態で、簡単な操作で記事の更新ができる 採用情報も積極的に発信
- システムを導入して従業員の給与計算を自動化 従業員はスマートフォンから給与明細の確認が可能に
- 蓄積したICT活用のノウハウを協会にフィードバックすることを目指す
地域のまちづくり、自然災害に対する防災・減災対策、災害発生時の復旧、社会インフラの整備・更新に大きな役割を担っている建設業界は、人手不足や企業数の減少に直面している。その状況下、静岡県静岡市清水区を対象エリアとする一般社団法人清水建設業協会が、着実に会員企業数を拡大しながら、業務のデジタル化を進めている。地域を支えながら先を見据えてデジタル化に取り組む同協会の会員企業の取り組みを2回に分けて追う。1回目はガス本管の埋設を主力事業とする株式会社橋本組。情報発信と業務効率化でICTを積極的に活用している。(TOP写真:ホームページ作成システムで編集作業を行う様子)
静岡市清水区を対象エリアに100年以上の歴史を誇る清水建設業協会
清水港や三保の松原、日本平といった景勝地で知られる静岡市清水区。1918年設立で106年の歴史を有する一般社団法人清水建設業協会(松浦真明会長)は、同区の建設会社48社で構成。会長と2人の副会長の下、安全、環境・災害対策、総務の三つの常設委員会、20代から40代の会員による青年部を設けている。数年前から新会員の募集活動に力を入れ、会員企業数は10社以上増加している。同協会は、会員企業で構成する土木工事業、特定建設業の許可を取得した関連団体、清水地区建設事業協同組合と連携して、行政機関との連携、災害発生時の復旧活動、労働災害防止のための安全講習会、安全パトロールに取り組んでいる。「地域あんしん住まい応援隊」、「小さな親切運動クリーン作戦」「インターンシップ制度」といった社会貢献活動にも尽力している。
地域のインフラを支える企業として役立つため、先を見据えてICTの活用に目を向ける
国土交通省が2016年から建設現場でICTを導入するi-Constructionを提唱し、建設業界でDXに向けた動きが活発になる中、同協会でもICTやデジタル機器の活用に目を向ける会員企業が増えている。その中の1社が橋本組だ。地域を代表するエネルギー企業、静岡ガスから受注するガス本管の埋設工事を中心に、地域のインフラ整備に携わっている。「創業から50年以上お世話になっている地域の皆様からの信用と信頼を大切にしながら、安全第一に取り組んでいます。暮らしに欠かせないライフラインを支える縁の下の力持ちとして、これからも地域のお役に立てるよう頑張っていきたい。ICTのような新しい技術も積極的に使っていきたいと思っています」と橋本組の橋本久明代表取締役社長は明るい表情で話した。
高度経済成長期に敷設したガス供給用の鋼管を耐震性や耐腐食性に優れたポリエチレン管に付け替える工事の依頼が近年増加している。ポリエチレン管への付け替えは今後も受注が期待できることから、先を見据えて社内体制の強化に取り組んでいる。低炭素社会の実現に向けた水素の活用といった新しい潮流にも目を配りながら、ガス管の新しい素材や埋設技術の情報収集にも力を入れている。
橋本社長は、清水建設業協会の副会長を務める。まちづくりや地域活性化への思いは強い
2012年に親族から事業を承継した現在54歳の橋本社長は、2015年から同協会の副会長を務めている。20代後半で青年部に所属し、30代は総務委員会で活躍した。生まれ育った地域のまちづくりや活性化に貢献したいという思いは強く、自社の業務と同じ熱量で同協会の公的な活動に携わっているという。「協会の活動を通じて同業他社の経営者との間で培ったネットワークは、橋本組にとって大きな財産になっています。自社の経営に取り組むだけでは得られない広い視野と考え方を養うことができました」と橋本社長。
2022年9月に台風で受けた被害からの復旧に清水建設業協会は大きな役割を果たした
台風や地震といった災害の発生時、迅速に復旧、復興を進める上で各地の建設業協会は大きな役割を担っている。2022年9月に静岡県が台風15号の直撃を受け、清水区に大きな被害が発生した際、同協会は静岡市などの官公庁と連携し、会員企業が道路や港湾の復旧に従事する上での司令塔としての役割を務めた。橋本組も本社や所有する重機が水浸しになるなど大きな被害を受けたが、橋本社長は、同協会の副会長として復旧活動に最優先で取り組んだ。
「建設業界はまちづくりに大きな役割と責任を担っています。国、静岡県、静岡市に地域にとって伝えるべきことを伝えていくには、企業がまとまることが重要です。そのためには人同士がつながらなければなりません。地域の将来のために、協会の活動を通じて得ることができた知識や経験を若い経営者や経営幹部に伝えることにも力を入れていきたいと考えています」と橋本社長は話した。
ICTやデジタル機器の活用を会員企業に推奨したい
橋本社長は、建設業界の業務効率化を図る上で鍵を握るICTやデジタル機器の活用を同協会の会員企業に推奨していきたいと考えている。会員企業から相談を受けた時に具体的なアドバイスができるように取引先のネットワークを通じてデジタル技術についての情報を積極的に集めるようにしているという。
ホームページは建設業許可票に匹敵する会社の看板
橋本組では従来、会計システムなど主に基幹業務の分野でデジタル技術を活用してきた。その一方で、2021年8月、ホームページを立ち上げるために企業向けホームページ作成システムを導入したことをきっかけに、デジタル技術を活用した情報発信にも力を入れている。「橋本組の事業モデルは企業間取引が中心です。ホームページは一般消費者向けの営業ツールというイメージが強かったこともあって、以前はそれほど強い必要性を感じていませんでした。しかし、スマートフォンが普及してインターネットを通じた情報収集は、社会で当たり前の行動になりました。ホームページが建設業許可票と同じように会社の看板として必要不可欠な存在になっていることを実感し、以前の考えを根本から改めました」と橋本社長。
公開画面に近い状態で、簡単な操作で記事の更新ができる 採用情報も積極的に発信
導入したホームページ作成システムは、公開画面に近い状態で、簡単な操作で記事の作成や更新、写真の配置ができる。メールや身近な文書作成ソフト、表計算ソフトを扱った経験があれば、編集の専門的な知識や経験がなくてもホームページを運営できるという。パソコン向けのレイアウトや文字・画像の大きさを、スマートフォン向けに自動で最適化する機能も備えている。「中小企業にとって外部委託の手間やコストをかけずに、自社でパソコンとスマートフォンに対応したホームページを運営できるのは本当にありがたい」と橋本社長はうれしそうに話した。
ホームページでは、会社概要、沿革のほか、工事現場での取り組みや所有する重機の画像を掲載している。採用情報の充実も図り、専用ページで募集職種や給与、賞与、待遇などの情報、応募フォーム、仕事のイメージをつかんでもらうための1日あたりのスケジュールを掲載している。ホームページを通じた採用への問い合わせも増えているという。
「ホームページの存在は、会社への信頼感の醸成につながっていることを実感しています。検索エンジンを利用して手間をかけることなく会社の情報を提供できるので本当に助かります。会社のありのままの様子を感じ取っていただけたらうれしいですね」と橋本社長。
橋本組は2022年の台風15号で被害を受けて以降、日々の業務をこなしながら、本社の修復や新しい重機の購入、災害に備えた複数拠点化など会社の体制を整えることに追われていた。そのため、ホームページの更新を頻繁に行えない状況が続いていたが、最近は落ち着いてきたこともあり、若い人材に建設の仕事の魅力を伝えるため、より積極的に情報を発信していきたいという。
システムを導入して従業員の給与計算を自動化 従業員はスマートフォンから給与明細の確認が可能に
2024年6月には支給金額、社会保険、雇用保険などの数字を自動計算し、明細入力が簡単にできる機能を持った給与計算システムを導入した。システムは年末調整業務などを効率化する機能も備えている。システムを導入するまで従業員の給与の計算は、出退勤時にアルコールチェックを行った際の記録を活用して表計算ソフトで行っていたが、入力と確認に毎月、数時間要していたという。「給与の計算は間違いがあってはならないので神経を使います。自動計算してくれるシステムのおかげで時間の節約だけでなくプレッシャーを感じていた作業を減らすことができました」(橋本社長)
従業員はスマートフォンからシステムにアクセスすることで、それぞれの給与明細を確認することができる。毎月、従業員の給与明細は、紙に印刷して封入した上で手渡ししていたが、デジタル化によって一連の業務を省くことができるようになった。従業員にとっても毎月の給与明細の保存と管理がしやすくなった。給与という身近な面からデジタル化を進めることで、業務全体のデジタル化への意識を高める効果も期待できるという。
蓄積したICT活用のノウハウを協会にフィードバックすることを目指す
給与計算と連動した勤怠管理システムや、同区内のサテライトオフィスと社内データを共有できるシステムにも関心を向けている。「建設業界の働き方改革を進めていく上でもICTやデジタル機器は必要不可欠です。活用することによって蓄積したノウハウを、共存共栄の精神で協会にもフィードバックするようにしていきたい」と橋本社長は力強く語った。
企業概要
会社名 | 株式会社橋本組 |
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本社 | 静岡県静岡市清水区下野緑町2番25号 |
HP | https://hashimoto-gumi1.co.jp |
電話 | 054-366-5257 |
設立 | 1970年12月 |
従業員数 | 16人 |
事業内容 | 土木工事業、とび・土木工事業、管工事業、舗装工事業 |