本社移転、多様な働き方を実現するため、レイアウトからインフラ配線まで工夫したオフィスを実現 ワンド(神奈川県)

目次

  1. 疲れない椅子や使いやすいロッカーを採用、「途方に暮れた」移転作業を順調に終了
  2. 事務エリアに「アイランド型」と「フリーアドレス型」を導入、コミュニケーション活性化を期待 椅子に多色を採用、自社製品のこだわりをオフィスにも生かす
  3. 「Webブース」と「集中スペース」を採用、従業員の「個」を大切にする
  4. 従業員同士の自由なコミュニケーションのための「場」と支援機器の提供
  5. 次なる目標は「従業員同士が切磋琢磨して成長する企業」
中小企業応援サイト 編集部
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2024年5月の本社移転に伴い、念願だった多様な働き方を支援するオフィスを実現した企業がある。住宅設備メーカーのワンド株式会社(神奈川県海老名市)だ。1960年代後半に建築された本社が手狭になり、駅直結の高層オフィスビルへの移転を決意。空間デザインから什器の選定、オフィスインフラの配線までワンストップで対応できるサービスを活用し、従業員の創造性と満足度を向上させるオフィスづくりができたという。(TOP写真:事務エリアでは、「アイランド型」と「フリーアドレス型」の二つのレイアウトを採用した)

疲れない椅子や使いやすいロッカーを採用、「途方に暮れた」移転作業を順調に終了

本社移転、多様な働き方を実現するため、レイアウトからインフラ配線まで工夫したオフィスを実現 ワンド(神奈川県)
高橋登社長(中央)と歓談する中沢哲明さん(右)、品野有香さん(左)

2023年8月、神奈川県綾瀬市のワンドの本社の社長室。高橋登代表取締役社長は、手狭になった執務スペース問題を解消するために本社機能を海老名駅直結の高層オフィスビルに移転することを決めた。綾瀬市の本社は交通の便が悪く、採用活動が難しかった。大手メーカーでさえ、求人のために都心にオフィスを移転するケースもある。高橋社長は、交通の便の良い海老名駅なら、求人にもメリットがあると考えた。期限は翌年のゴールデンウィークまでの約9ヶ月間。オフィス移転の詳細は、常務取締役兼経理部長の中沢哲明さんと経理部の品野有香さんに任された。

「何をどうしたらいいのか、と途方に暮れた」と言う中沢さん。期限に間に合わせるため、移転作業のすべてを一括して相談できるパートナー会社を複数の会社の中から探した。新たなオフィスは、現代の多様化した働き方に合わせて、「時間」と「場所」にとらわれない環境を構築できること、働く人の創造性と満足度の向上だけでなく、SDGs(持続可能な開発目標)やサステナビリティ経営の推進など、経営戦略を具現化できる事務所づくりに貢献できることを条件とした。

最終的に課題のヒアリングからレイアウト設計、移転計画、各種工事や機器購入・配置、アフターフォローに至る一連のプロセスや、デジタルサービスを活用した、創造的でスマートな働く場をトータルでサポートしてくれるところに魅力を感じた一社に依頼した。それによりプロジェクトを円滑に進めることができただけでなく、経営戦略を具現化できると確信が持てた。

働きやすいオフィス環境にしたいと考えていた中沢さん。長時間座っても疲れない椅子をはじめ、従業員のロッカー、電話機に至るまで、従業員が使いやすい製品を採用したかった。そこで、業務用家具や事務用品メーカーのショールームを訪問し、特に集中スペースやポータブルバッテリー、360度カメラ等が気に入り「こちらの要望や悩みをパートナー会社の担当者に聞いてもらい、図面を引き、さらに提案をもらった」(中沢さん)。「レイアウトの設計が確定する直前の1週間でも、何度も何度も修正した」(品野さん)。ワンドとパートナー会社の担当者とのやり取りは数十回にも及び、作業を順調に終えることができた。

事務エリアに「アイランド型」と「フリーアドレス型」を導入、コミュニケーション活性化を期待 椅子に多色を採用、自社製品のこだわりをオフィスにも生かす

本社移転、多様な働き方を実現するため、レイアウトからインフラ配線まで工夫したオフィスを実現 ワンド(神奈川県)
本社移転作業について語る高橋登社長

ワンドが新本社に選んだ「ViNA GARDENS OFFICE」は、JR線、小田急線、相鉄線が乗り入れる海老名駅と自由通路により直結する14階建てのビル。基準階フロア面積約550坪(約1840平方)は、神奈川県央地区では最大となる規模だ。周囲に高い建物が少なく、11階のワンド本社の窓からは迫力ある丹沢山系の山々や、季節によって彩りを変化させる豊かな自然が広がる。

ワンドはさまざまな工夫を凝らし、多様な働き方を支援するオフィスにした。事務エリアでは、営業職向けにフリーアドレスを採用。事務職向けには机の配置を縦横に配置し、導線をあえて複雑にすることで同僚に接する機会が増え、コミュニケーションの活性化を期待した。椅子の色にもこだわった。執務エリアでは、青、黄、緑の3色、経理エリアではネイビーを採用した。エリア全体が明るい雰囲気となるような色使いを考えて選定したという。(TOP写真参照)

また、新オフィスの受付には高橋社長のアイデアでキッチンメーカーの遊び心から受付用電話機の台には社内製品であるキッチンを採用した。

本社移転、多様な働き方を実現するため、レイアウトからインフラ配線まで工夫したオフィスを実現 ワンド(神奈川県)
キッチンの上に受付の電話を設置

ワンドが製造・販売するキッチンの扉は7色のラインナップがある。シンプルで清潔感があり生活になじむものから、高級感と重厚感のある落ち着いた色まで、部屋の間取りやフローリング、壁紙などの色と合わせた空間を創出できるようにしている。色ひとつとってみても、住設メーカーとしてのこだわりが自社のオフィス空間の選定に生かされている。

「Webブース」と「集中スペース」を採用、従業員の「個」を大切にする

本社移転、多様な働き方を実現するため、レイアウトからインフラ配線まで工夫したオフィスを実現 ワンド(神奈川県)
防音性に優れ、外の雑音も入りづらい「Webブース」の個室
本社移転、多様な働き方を実現するため、レイアウトからインフラ配線まで工夫したオフィスを実現 ワンド(神奈川県)
「集中したい」という営業担当者の要望を実現した「集中スペース」

従業員の「個」を大切にするために導入したのは、オンライン時代に対応した「Webブース」(2席)と「集中スペース」(3席)だ。Webブースは防音性に優れ、外の雑音も入りづらい個室を設置。Web会議の会話が周囲に聞こえるとまわりの人の集中力低下につながり、会議中のマイクに周囲の雑音が入ると会議の相手に迷惑がかかるため、自席でのWeb会議はなるべく避けたかったからだ。実際はWeb会議のほか、まわりの人に迷惑にならないように電話をかけたい従業員も利用している。

集中スペースの見た目は〝マンガ喫茶〟のようだ。見積書や打ち合わせ用の資料をパソコンで作る際に集中して仕事ができる場所が欲しい、という営業担当者を満足させている。

従業員同士の自由なコミュニケーションのための「場」と支援機器の提供

本社移転、多様な働き方を実現するため、レイアウトからインフラ配線まで工夫したオフィスを実現 ワンド(神奈川県)
従業員が休憩時間などに使うリフレッシュスペース。自席でランチを食べる従業員が減ったという

テレビや冷蔵庫、電子レンジが置かれている「リフレッシュスペース」ではランチを食べることができ、従業員がリラックスしながら休憩時間を過ごしている。従業員同士の自由なコミュニケーションの場としても活用されている。

ほかにも、可搬型蓄電池と充電器を設置。従業員がパソコンの電源などとして利用するだけでなく、オフィス内の配線がすっきりし、景観の向上や断線、火災発生の予防につながると期待されている。会議用360度カメラは、Web会議中に起こる「誰が話しているのかわからない」「声が聞こえない」などのトラブルを解決する。高橋社長は「ワークスペースとしての環境を整えられた」と満足している。

本社移転、多様な働き方を実現するため、レイアウトからインフラ配線まで工夫したオフィスを実現 ワンド(神奈川県)
ポータブルバッテリー
本社移転、多様な働き方を実現するため、レイアウトからインフラ配線まで工夫したオフィスを実現 ワンド(神奈川県)
Web会議での活躍が期待される会議用360度カメラ(中央に設置)

次なる目標は「従業員同士が切磋琢磨して成長する企業」

高橋社長が提案した「多様な働き方を支援する職場環境」は実現できた。次なる目標は、「従業員同士が切磋琢磨して成長する企業」だ。そのためにも、「従業員が主体性を持って自分の価値を自分らしく出せる職場環境をつくりたい」と高橋社長は考える。

従来から社員が挙げる入社理由は「社長や社員が明るく、雰囲気が良さそう」「急な休みでもサポートし合える社内システムがあり安心できた」とのこと。職場環境のソフト面はすでに整っている。新本社オフィスでハード面がそろうことで従業員のエンゲージメントが高まれば、目標の実現はそう遠くないだろう。

企業概要

会社名ワンド株式会社
本社神奈川県海老名市めぐみ町2番2号 ViNA GARDENS OFFICE11階
HPhttps://onedo.jp/
電話046-232-6160
設立1963年5月
従業員数77人(2024年5月現在)
事業内容流し台及び住宅向け木製キャビネットの製造販売