融資
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融資の保証料(信用保証料)とは、中小企業や個人事業主が金融機関から融資を受ける際、公的機関である信用保証協会に保証人になってもらうための費用である。融資の保証を受けることにより、連帯保証人や担保なしでも融資を受けることができる。この記事では、融資の保証の概要や利用条件、保証料の計算方法、勘定科目と仕訳方法について解説する。

融資の保証料(信用保証料)とは?

融資の保証料(信用保証料)とは、中小企業が銀行などの金融機関から事業資金の融資を受ける際、信用保証協会に保証人となってもらうための費用である。融資の返済ができなくなった場合は信用保証協会が代わりに返済(代位弁済)するために、保証人や担保を用意できなくても融資を受けられる。

信用保証協会とは

信用保証協会は、中小企業・小規模事業者の金融円滑化を目的とし、信用保証協会法にもとづいて設立された公的機関である。各都道府県にあり、東京には東京信用保証協会が、大阪には大阪信用保証協会がある。

融資の保証を利用するメリット

融資の保証(信用保証)を利用するメリットは、融資を受けることが容易になることだ。たとえ企業が倒産しても、保証協会が代位弁済するために、銀行は資金を確実に回収できる。そのため融資枠の拡大を見込め、長期(20年など)の借り入れもできるようになる。

法人の場合、法人の代表者以外の連帯保証人は原則として必要ない。個人事業主の場合は連帯保証人も不要で、担保がなくても利用できる。

融資の保証制度の仕組み

融資の保証制度(信用保証制度)の仕組みは、以下のとおりだ。

  1. 融資を受ける際
    融資を受けるにあたっては、信用保証協会に対して保証の申し込みを行う。申し込みを受けると、信用保証協会は企業の事業内容や経営状況などの審査を行い、保証することになると、金融機関に保証の承諾を行う。保証料率は後述のとおり、企業の業績や信用リスクによって9段階に区分されている。保証料の支払いは原則として一括前払いとなるが、分割払いもできる。

  2. 返済できなくなった場合
    借入金を返済できなくなった場合は、信用保証協会が金融機関に対して代わりに返済(代位弁済)する。ただし、代位弁済が行われたからといって、債務が消えるわけではない。債権は、金融機関から信用保証協会へ移る。したがって代位弁済の後は、信用保証協会に対して返済することになる。

融資の保証を利用するための条件

融資の保証を利用するための企業規模、業種、区域や業歴などの条件を見てみよう。

1. 企業規模

信用保証制度は、中小企業・小規模事業者の金融円滑化を目的としたものだ。したがって、一定の規模以下の場合にのみ利用できる。具体的には、資本金または常時使用する従業員数のいずれかが、下の表にあてはまる企業である。

業種資本金従業員数
製造業等3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業・飲食業5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
医療法人等300人以下

ただし政令特例業種については、下表のとおり条件が異なる。

業種資本金従業員数
ゴム製品製造業
(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業ならびに工業用ベルト製造業を除く)
3億円以下900人以下
ソフトウエア業、情報処理サービス業3億円以下300人以下
宿泊業(旅館業を除く)、娯楽業5,000万円以下100人以下
旅館業5,001万円以下200人以下

※1 個人事業主の場合には、従業員数のみが当てはまればよい
※2 「製造業等」とは、以下のような業種である
建設業(測量業、地質調査業、水路測量業を含む)、不動産業(建売業、不動産賃貸業、貸家業、貸間業、不動産代理業・仲介業、不動産管理業)、運送業、倉庫業、印刷業、出版業、ガス供給業、保険媒介代理業(生命保険、損害保険等)、土石採取業、木材伐採業、鉱業

2. 業種

ほとんどの業種で融資の保証を利用できる。ただし農林、漁業、風俗関連業、金融業、宗教法人、非営利団体(NPOを除く)などは利用できない。

参考:東京信用保証協会『信用対象外業種』

許認可や届出などが必要となる業種については、融資の保証を受けようとする事業について、許認可などを受けていることが条件になる。

3. 区域・業歴

原則として、各信用保証協会の管轄区域において事業実態があることが条件になる。信用保証協会によっては、業歴が要件として定められていることもある。

4. その他の条件

そのほか、以下に当てはまる場合は融資の保証を受けることができない。

・信用保証協会に対して代位弁済の債務が残っている
・銀行取引停止処分を受けている
・破産、民事再生、会社更生などの手続きをしている
・金融機関からの融資で延滞などの債務不履行がある
・確定申告をしていない
・事業実態や内容、資金使途、返済能力などを判断するための資料を提示しない
・粉飾決算や融通手形操作を行っている
・税金を滞納し完納の見通しが立たない
など

出典:東京信用保証協会『ご利用いただける中小企業とは』

融資保証料の保証料率について

融資保証料の基本料率や割引制度、保証料率がどのように決まるかについて見てみよう

融資保証料の基本料率

融資保証料の基本料率は、下の表のとおり9つに区分されている。

料率区分123456789
基本料率1.901.751.551.351.151.000.800.600.45

実際に適用される保証料率は、融資額や担保の有無などによっても変わる。信用保証協会によっては、保証料率を引き下げた融資を行っていることもある。

融資保証料の割引制度

融資の保証料は、以下の場合は割引が適用されることがある。

・担保を提供した場合
・会計参与を設置している旨の登記事項証明書を提出した場合
・公認会計士または監査法人の監査を受けたことを示す監査報告書のコピーを提出した場合

融資保証料はどのようにして決まるか

信用保証協会による融資の保証料は、

・保証資格 …規模や業種などの各要件が適合しているか
・資金使途 …借り入れの目的や必要性、効果など
・返済能力 …資金繰りや資金調達力、財務諸表など
・経営者 …経営者の経営力、経営意欲、信頼性など
・その他 …技術力、将来性など

を総合的・多角的に検討し決められるとされている。そのほか、審査にあたっては「中小企業信用リスク情報データベース(CRD)」が利用される。

CRDは、中小企業庁が中心となり、中小企業金融の円滑化を図ることを目的として2001年3月に創設された「一般社団法人CRD協会」によって運営される、中小企業に関する日本最大のデータベースだ。約180の金融機関が会員となり、約300万の中小企業データが保存されている。CRDを利用することで、財務要因を中心とした中小企業の経営状況を評価することができる。

CRDを利用した信用リスク評価が保証料率の決定に利用される理由は、以下のとおりだ。

  1. 全国一律の尺度であること
  2. すべての保証協会が利用していること
  3. 信用保証制度の利用者すべてをカバーしているため、精度が高いこと
  4. 運営主体が中立的な組織であり、公平・公正な指標であること

出典:東京信用保証協会『信用保証料率の体系』

融資保証料の計算方法と計算例

信用保証協会による融資の保証料の計算方法と、計算例を見てみよう。融資の保証料は、貸付金額と信用保証料率、保証期間、借入金の返済方法によって変わる。ここでは、

貸付金額 1,200万円
保証料率 年1.15%
保証期間 24ヵ月

の場合について見ていくことにする。

1. 返済方法が満期一括返済の場合

借入金の返済方法が満期一括返済の場合、保証料率の計算方法は以下のようになる。

保証料率 = 貸付金額 × 保証料率 × 保証期間(月数)/ 12

「12」で割るのは、保証料率が年率であるのに対し、保証期間が月数で指定されるためだ。実際に計算してみると、

1,200万円(貸付金額)× 1.15%(保証料率)× 24ヵ月(保証期間)/ 12

で、保証料は24万6,000円になる。

2. 返済方法が均等分割返済の場合

借入金の返済方法が分割返済の場合は、「分割返済回数別係数」を用いて計算される。これは、借入金の残高が時間の経過とともに減っていくため、その分の保証料を割引するためのものだ。均等分割返済の場合は、分割返済回数別係数は下の表のとおりとなる。

分割返済回数均等分割係数
2回以上6回以下0.7
7回以上12回以下0.65
13回以上24回以下0.6
25回以上0.55

均等分割返済の場合の保証料率の計算方法は、以下のようになる。

保証料率 = 貸付金額 × 保証料率 × 保証期間 / 12 × 均等分割係数

上の例で、24ヵ月の保証期間のすべてにわたって均等分割払いを行えば支払回数は24回、したがって均等分割係数は「0.6」となる。これを上の式に当てはめて計算すると、

1,200万円(貸付金額)× 1.15%(保証料率)× 24ヵ月(保証期間)/12 × 0.6(均等分割係数)

で、結果は「16万5,600円」になる。

3. 返済方法に据置期間を設ける場合

借入金の返済にあたり、一定の据置期間が設けられ、その後に均等分割払いをする場合は、据置期間と分割払いの期間に分け、それぞれの保証料を計算した後、それらを合計する。据置期間部分の計算方法は上記の「満期一括返済」と同様、分割払い部分の計算方法は、上記の「均等分割払い」と同様だ。

据置期間が「6ヵ月」の場合、据置期間部分の保証料は、

1,200万円(貸付金額)× 1.15%(保証料率)× 6ヵ月(保証期間)/ 12

で計算され、結果は「6万9,000円」になる。

残りの18ヵ月を分割払い期間とする場合、均等分割係数は上の表から「0.6」となる。したがって、分割払い期間の保証料は、

1,200万円(貸付金額)× 1.15% × 18ヵ月(保証期間)/ 12 × 0.6(均等分割係数)

で計算され、結果は「12万4,200円」になる。

したがって、保証料の総額は、

6万9,000円(据置期間部分の保証料)+ 12万4,200円(分割払い部分の保証料)

で計算され、結果は「19万3,200円」となる。

融資保証料の支払い方法

信用保証協会による融資保証料の支払い方法は、原則として一括前払いだ。ただし、保証協会が承認した場合は、分割払いもできる。

保証料を分割払いした場合の支払額の割合は、下の表のようになる。

出典:東京信用保証協会『信用保証料の分割支払』

出典:東京信用保証協会『信用保証料の分割支払』

繰り上げ返済の場合の返戻金

借入金の繰り上げ返済を行った場合は、保証期間が短縮されることになるため、保証料の返戻金が発生することがある。返戻金の計算方法を見てみよう

先ほどの例、

貸付金額 1,200万円
保証料率 年1.15%
保証期間 24ヵ月

をここでも利用することにする。満期一括返済で融資を受けた場合、当初支払う信用保証料は「24万6,000円」だった。

たとえば、融資が4月15日に行われ、完済したのが「183日後」の10月15日だったとする。保証が行われない「未経過期間」はこの場合、

730日(保証期間24ヵ月)- 183日(完済までの期間)

で「547日」となる(うるう年でない場合)。単純に保証期間が短縮された分だけ保証料が割り引かれるとすれば、繰り上げ返済した場合の返戻金は、

24万6,000円(当初保証料)× 547日(未経過期間)/ 730日(当初保証期間)

で計算され、「18万4,332円」となりそうなものである。

しかし、信用保証協会における保証料は「年区分」で扱われるため、貸付日から1年経過後の翌年4月15日までの期間については、90%のみが返戻されることになる。

10月15日から翌年4月15日までの分の保証料を計算すると、「18万4,332円」から後半1年分の保証料を差し引いたものとなるから、

18万4,332円(547日分の保証料)- (後半365日分の保証料)
=18万4,332円 - 24万6,000円(当初保証料)× 365日 / 730日(当初保証期間)
=18万4,332円 - 12万1,989円

で計算され、「6万2,343円」となる。この期間の返戻金は90%なので、

6万2,343円 × 90%

で計算され、「5万6,109円」。

したがって、完済日から1年後までの返戻金「5万6,109円」と、そのあと1年分の返戻金「12万1,989円」の合計「17万8,098円」が、この場合の返戻金の総額となる。

融資保証料の勘定科目や仕訳の方法

融資保証料を計上する際の勘定科目や、仕訳の方法を見てみよう。

融資保証料の勘定科目

融資保証料の勘定科目は、「支払保証料」などとするのが適切だ。ただし、使用している会計システムによっては、「支払保証料」が初期設定で登録されていないこともある。その場合は、営業外費用の非課税取引として支払保証料を登録する。

「勘定科目をあまり増やしたくない」場合、すでに登録されている勘定科目である「支払手数料」や「支払利息」などで代用できないかと考えるかもしれない。しかし、それは適切ではない。

「支払手数料」が適切ではない理由は、第一に支払手数料は販管費となり、支払保証料の営業外費用とは区分が異なるからだ。第二に、支払手数料は初期設定では「課税取引」として登録されていることが多いため、支払保証料を入力するたびに非課税取引に変更しなくてはならないからだ。

「支払利息」が適切ではない理由は、信用保証料は支払利息とは異なるものだからだ。支払利息は、税務申告する際に調整をしなければならない箇所が多い。したがって、信用保証料を支払利息と混ぜてしまうと、税務申告の際に支払利息から信用手数料を控除する必要があり、事務が煩雑になってしまう。

融資保証料の仕訳方法

融資保証料は、一括前払いが一般的だ。そのため、仕訳の際も全額を計上したくなるかもしれない。しかし、それは誤りだ。

信用保証料は、保証期間のすべてにおいてその効果が継続するものだ。したがって、一括して計上するのでなく、当期の分のみを計上する必要がある。

貸付金額 1,200万円
保証料率 年1.15%
保証期間 24ヵ月

再び、上記の例を利用することにしよう。

満期一括払いで返済し、保証料は総額で「24万6,000円」だ。

融資を4月15日に受け、3月末決算だったとする。すると、貸付日から3月末日までの日数は、うるう年ではないとして「350日」となる。したがって、当期の分の保証料は、

24万6,000円(保証料総額)× 350日 / 750日(保証期間24ヵ月)

で計算され、「11万4,800円」となる。

これを仕分けする際は、以下のように、まず融資実行時に保証料の総額を「長期前払費用」として仕訳したうえで、期末決算の整理仕訳で、長期前払費用から支払保証料へ、当期分のみを振り替える。

・融資実行時の仕訳

借方金額貸方金額
長期前払費用246,000円現金預金246,000円

・仕訳決算時の整理仕訳

借方金額貸方金額
支払保証料114,800円長期前払費用114,800円

同様に、翌年度分の保証料は、

24万6,000円(保証料) × 365日(1年) / 750日(保証期間24ヵ月)

で「11万9,720円」となるから、整理仕訳は以下のようになる。

借方金額貸方金額
支払保証料119,720円長期前払費用119,720円

翌々年の保証料は、

24万6,000円 - 11万4,800円(1年目保証料)- 11万9,720円(2年目保証料)

で「1万1,480円」となるから、整理仕訳は以下のようになる。

借方金額貸方金額
支払保証料11,480円長期前払費用11,480円

融資の保証は積極的に活用しよう

融資の保証は、中小企業や個人事業主の金融を円滑にする目的で設けられているものである。ほとんどの業種で利用できるため、積極的に利用して事業に役立てていくべきだ。

保証料を仕訳する際は、初年度に全額を計上しないなどの注意点がある。間違った仕訳をせず、正しく計上するようにしよう。

文・THE OWNER編集部