ドローンの本格活用による現場改革とICTによる業務改革を推進し、健康経営にも先駆的な役割で地域の老舗建設会社としての責務を果たす 国際建設(山梨県)

目次

  1. 満鉄引揚者が創業 本社を東京から山梨県に移転し地域密着の老舗建築業として業容拡大 特殊工事で県外にもシェア伸ばす
  2. 「自分が後継者になるしかない」と考えて入社 厳しさを増す事業環境の中で技術力向上、コスト競争力強化へ走り出す
  3. 「現場のICT化に取り組まないと後れを取る」 幹部の進言に社長が決断 ICTの徹底活用による現場の事業改革に本腰
  4. 測量専用ドローンを駆使し3次元地形データ生成 各種機器を組み合わせて高精度化と生産性向上を実現
  5. ドローン搭載型レーザー観測機器導入で測量作業の完全内製化と活用拡大目指す ICT建機へのデータ入力など内製化 業務効率化にも相次ぎソリューション導入
  6. 従業員の健康第一を推進し、日本で500社しか選ばれない健康経営のブライト500に4年連続で選ばれる快挙を達成 新卒採用にも効果
  7. 業績は回復基調 売上高50億円も視野 改正建築基準法施行を追い風に木質建築にも取り組む
中小企業応援サイト 編集部
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甲信越を中心に首都圏でも事業展開する国際建設株式会社は、老舗の中堅建設会社として民間、公共を問わず建築事業や土木事業で数多くの実績を積み上げてきた。2024年問題に直面する建設業にあって、ドローンを活用した現場撮影や測量などICT化による業務改革を実施。さらにレーザー計測など本格的な建設DX導入による次世代型建設業のあり方を推進する。同時に、日本で500社しか選ばれない健康経営のブライト500に、4年連続で選ばれる快挙を成し遂げた。(TOP写真:工事河川土木工事。ドローンの本格活用で測量の精度向上と負担軽減を実現した)

満鉄引揚者が創業 本社を東京から山梨県に移転し地域密着の老舗建築業として業容拡大 特殊工事で県外にもシェア伸ばす

ドローンの本格活用による現場改革とICTによる業務改革を推進し、健康経営にも先駆的な役割で地域の老舗建設会社としての責務を果たす 国際建設(山梨県)
3次元設計DATAの作成の内製化(山梨県を中心に土木工事で数多くの実績がある)

国際建設の創業は終戦間もない1947年。満州鉄道から引き揚げてきた鉄道工事経験者が集まり、当初は東京・神田で会社を興した。1949年には建設業として登録し、現在の佐々木幸一代表取締役社長の祖父にあたる主殿(とのも)氏が社長に就任した。

枕木交換など鉄道関連土木を皮切りに、道路河川土木や住宅建築など業容を拡大。1950年には本社を、空襲の影響が残る東京から山梨県甲府市に移転し、同県を中心に地域密着で建設事業を展開してきた。

技術開発にも積極的に取り組み、コンクリートの弱点である引張強度を高めるためにあらかじめ加圧施工するプレストレスト・コンクリートの活用や、非開削で管路を施工する管推進工法など特殊工事でも強みを発揮し、県外の受注獲得にも貢献した。現在は河川の氾濫(はんらん)災害対策に伴う大規模土木工事や道路網の強靭(きょうじん)化対策、公共建築や民間建築の耐震補強など国土強靭化に向けた各種工事も広く請け負っている。

「自分が後継者になるしかない」と考えて入社 厳しさを増す事業環境の中で技術力向上、コスト競争力強化へ走り出す

ドローンの本格活用による現場改革とICTによる業務改革を推進し、健康経営にも先駆的な役割で地域の老舗建設会社としての責務を果たす 国際建設(山梨県)
「母の体調を心配して経営を引き継ぐつもりで入社したが、その後母の体調は持ち直した」と笑う佐々木幸一社長

佐々木社長の就任は1999年。当初は事業を引き継ぐつもりはなかったため、他の建設会社に勤めていた。しかし、祖父から経営を任されていた母親の体調が心配になり、「自分が後継者になるしかない」と覚悟を決めて1989年に国際建設に入社。「母親の体調が持ち直した」ことを幸いに10年間、現場や経営を学び、満を持しての社長就任となった。

「社員は、非常にまじめで、近道をしない、手を抜かない堅実さ」(佐々木社長)で信頼を積み上げてきた。ただ、特殊工事など同社が先行していた強みも次第に同業にキャッチアップされ、地元優先の入札基準の変更など厳しさを増す事業環境の中で、技術力やコスト面の競争力向上も急務となってきた。

「現場のICT化に取り組まないと後れを取る」 幹部の進言に社長が決断 ICTの徹底活用による現場の事業改革に本腰

佐々木社長は、名軍師として名高い戦国武将の黒田官兵衛が嫡男、長政に遺した「草履方々(ぞうりかたがた)、木履方々(ぼくりかたがた)」という言葉の通り、中途半端な状態でもいざという時には駆け出さなければならないという信念で全社的な業務改革に取り組み始めている。

高度経済成長以降も増大する需要を吸収してきた建設・土木事業はいま、人手不足に加えて非効率な就労環境の改善が進まず、多くの事業者が2024年問題に対応しきれず奮闘が続いている。国際建設では、国土交通省が進める建設現場の生産性向上を目指す「i-Construction」に沿って、2018年から現場のICT化を本格的に検討してきた。

ドローンの本格活用による現場改革とICTによる業務改革を推進し、健康経営にも先駆的な役割で地域の老舗建設会社としての責務を果たす 国際建設(山梨県)
左からICT施工推進役の依田真一土木工事部次長、全社の健康経営を推進する小林玲夫取締役、ICT施工を進言した深澤英雄取締役

「いま現場のICT化に本気で取り組まないと、業界に後れを取ってしまいます」。土木本部担当の深澤英雄取締役からの進言を受けた佐々木社長は当初、人手不足の現場に穴を空けてまでICT担当を置くことをためらった。

しかし、深澤取締役はICTの急速な進展状況、ドローン活用による現場の業務改革の必要性や導入効果などを資料に基づいて力説。佐々木社長は「(建設業界も)長く培った仕事力にDXを新たな仕事の軸として加え、経営の柱として行きたい。」と実感し、ICT化による現場改革にゴーサインを出した。

測量専用ドローンを駆使し3次元地形データ生成 各種機器を組み合わせて高精度化と生産性向上を実現

まず取り組んだのが、河川土木工事における測量の精度と作業効率を向上させるためのドローンや自動追尾式観測機器、GNSS(衛星測位システム)機材、関連ソフトウェアなどの導入だ。2020年末までには主要機器がそろい、ICT活用による測量作業の変革が始まった。

撮影用ドローンは早くから利用していたが、新たに測量専用のドローンを導入。短時間で広範囲な測量データの収集が可能になり、写真のデータを点群データ処理化して3次元地形データを生成。パソコン画面で現場の地形を再現できるようになった。

また、自動追尾式観測機器により、従来2~3人必要だった測量作業が1人で可能になったのも大きな負担軽減だ。広域測量では相当な時間と労力が必要だったが、衛星利用の測量によって広範囲の基準点設置作業を内製化。効率化とコスト削減を実現した。

ドローンの本格活用による現場改革とICTによる業務改革を推進し、健康経営にも先駆的な役割で地域の老舗建設会社としての責務を果たす 国際建設(山梨県)
土木工事(自動追尾機による出来形観測) 自動追尾機の活用により、2~3人がかりだった作業は1人で操作可能になった

「ドローン測定から3次元データを起こして設計に活用する施工は発注者からも求められるようになってきた」(依田真一工事部次長)が、国際建設ではさらに進化させて生産性向上を追求している。

ドローン搭載型レーザー観測機器導入で測量作業の完全内製化と活用拡大目指す ICT建機へのデータ入力など内製化 業務効率化にも相次ぎソリューション導入

ドローンの本格活用による現場改革とICTによる業務改革を推進し、健康経営にも先駆的な役割で地域の老舗建設会社としての責務を果たす 国際建設(山梨県)
各種システムのクラウド化を進め、業務データの一元管理とBCP対策を講じている

河川の水面下や森林などドローンでは直接捉えることのできない箇所の計測にはレーザー観測機器をリースで活用しているが、地上観測式では障害物の影響を受けやすく頻繁な移動が必要なため作業効率が低下していた。今後はドローン搭載型レーザー観測機器の導入を検討しており、測量作業の完全内製化と活用範囲の拡大を目指す。

現在、ICT建機を使用した現場施工は、数社の協力会社に発注しており、自社でICT建機は保有していない。ICTデータ活用の施工時には必要に応じてICT建機を調達しているが、現場でのデータ入力や機器の初期設定などの内製化を今後実施していく計画だ。

2024年問題を見据えた時間外労働短縮など労務環境改善への取り組みも継続的に進めてきた。施工関連情報を一元管理する施工管理システムを2024年からクラウド化、写真や図面など工事データをクラウド保存するデータバンク、インターネット環境での土木積算機能など業務全体を網羅するICTソリューションを導入。遅れていた勤怠管理システムも2024年初めに稼働した。

従業員の健康第一を推進し、日本で500社しか選ばれない健康経営のブライト500に4年連続で選ばれる快挙を達成 新卒採用にも効果

ドローンの本格活用による現場改革とICTによる業務改革を推進し、健康経営にも先駆的な役割で地域の老舗建設会社としての責務を果たす 国際建設(山梨県)
2024年3月11日に「健康経営優良法人(中小企業部門(ブライト500))」に4年連続で選ばれた

健康経営の推進については徹底しており、毎月の安全衛生委員会で健康経営推進策の達成状況を確認。今では健康診断受診率100%、再診受診率100%となった。社内食堂では、健康経営の一環として減塩・低カロリーのおかずを用意。また定期的に「血管年齢」の測定(血管の老化による様々な疾患の可能性の把握)や「ベジチェック」(1日の野菜摂取レベル・推定野菜摂取量の把握)を通じて健康管理の意識を高めている。また、勤怠管理システムの導入で勤務状況を素早く把握し、一部の従業員が時間超過等で無理をすることがないように管理を行っている。更に、自社だけでなく、糖尿病と慢性腎臓病の早期発見と早期治療の重要性を訴える活動の支援も行っている。

その成果が国からも認められ、2024年3月11日に、健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定法人の中で、「健康経営優良法人の中でも優れた企業」であり、かつ、「地域において、健康経営の発信を行っている企業」として優良な上位500法人に4年連続で認定された。

長年続けてきた健康経営や環境配慮、建設業としては最優先の安全管理、SDGsの推進等のおかげで、2024年4月には土木部門2人、建築部門1人、事務部門2人が入社するなど成果も出始めた。来春も同様のペースで採用を続けていく方針で、「将来は土木、建築どちらでもOKというシームレスな技術者を育てたい」(佐々木社長)。育ったあかつきには賃金2倍を目標に引き上げていく考えだと言う。

業績は回復基調 売上高50億円も視野 改正建築基準法施行を追い風に木質建築にも取り組む

ドローンの本格活用による現場改革とICTによる業務改革を推進し、健康経営にも先駆的な役割で地域の老舗建設会社としての責務を果たす 国際建設(山梨県)
本社:「2025年問題」も追い風に、新たな事業展開にも意欲的だ

無借金の堅実経営を続けるが、資材高騰などの影響で前期の売上高は減少した。今期は価格転嫁や受注増で大幅増収を予想。順調な人材採用とICTソリューションによる先進建設業への変革を前提に「来期以降には売上高50億円をクリアして、海外市場にも目を向けたい」と意気込む。

2025年4月には改正建築基準法・改正建築物省エネ法が施行され、木造構造計算が必要となる規模の引き上げなど高い耐震機能が求められるが、脱炭素化社会への試金石といえる木質建築にも積極的に取り組む方針。業界でいわれる「2025年問題」も同社にとっては追い風となりそうだ。

企業概要

会社名国際建設株式会社
住所山梨県甲府市塩部4丁目15番5号
HPhttps://www.kokusai-co.com/
電話055-251-2111
設立1947年10月
従業員数51人
事業内容 交通並びに国土建設に関する調査、計画、測量、設計請負、土木、建築、水道、その他工事請負など