BIM対応型を含めた複数のCADシステムを使い分け 施主目線の理想の家づくりにICTを積極活用 田中建築設計工房(香川県)

目次

  1. コンセプトは、家族の幸せを守る家づくり 光や風を効果的に取り入れる
  2. 木造住宅から鉄筋コンクリートの建物まで幅広く対応
  3. 事業領域を拡大し、不動産事業やマンションのリノベーションも手掛ける
  4. 2018年から翌年にかけてBIM対応型の3D-CADシステムを複数導入 設計作業の効率が格段に向上した
  5. 3Dパースの作成に便利なCADシステムを施主へのプレゼンテーション用に新たに導入
  6. NASを活用して現場から本社の情報にアクセス 業務の属人化の軽減や社内の連携強化にも効果
  7. ホームページは貴重な戦力 営業活動と人材募集の両面で活用
  8. AIをはじめとする技術の進化をビジネスチャンスにつなげる
中小企業応援サイト 編集部
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コンピューター上で設計段階の情報をもとに建物を3Dモデルとして再現し、一連の建築業務を効率化する技術として注目を集めているBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)。BIM対応型を含めた複数のCADシステムを、品質の高い家づくりや施主との円滑なコミュニケーションに活用している建築会社が香川県丸亀市にある。2010年設立の株式会社田中建築設計工房だ。細部にこだわった施主にとっての理想の家づくりにICTを役立てている。(TOP写真:BIM対応型のCADシステムを活用して設計に取り組む様子)

コンセプトは、家族の幸せを守る家づくり 光や風を効果的に取り入れる

BIM対応型を含めた複数のCADシステムを使い分け 施主目線の理想の家づくりにICTを積極活用 田中建築設計工房(香川県)
田中建築設計工房のロゴマーク

田中建築設計工房は、香川県のほぼ中央に位置する丸亀市綾歌町の自然豊かなエリアに本社を構えている。高低差のある土地の特徴を生かしたあか抜けした建物だ。「本社にはショールームの役割も持たせています。お客様に断熱効果などの機能を含めた過ごしやすさを実際に体験していただけたらと思っています」と取材に応じた田中哲夫代表取締役は話した。

BIM対応型を含めた複数のCADシステムを使い分け 施主目線の理想の家づくりにICTを積極活用 田中建築設計工房(香川県)
田中建築設計工房の応接スペース

田中建築設計工房は、「たなけん工房」の愛称で地域から親しまれている。大事にしている設計コンセプトは、家族の幸せを守る家づくり。光や風を効果的に取り入れるとともに、土地の形状や周囲の景観に調和させることを重視している。「デッドスペースが残らない空間づくり、快適さを実感できる間(ま)の取り方を大事にしています。住宅はお客様にとって人生で一番大きな買い物です。予算や周辺環境などにも配慮しながらお客様の要望にできる限り応えることを心掛けています」と田中社長。

木造住宅から鉄筋コンクリートの建物まで幅広く対応

BIM対応型を含めた複数のCADシステムを使い分け 施主目線の理想の家づくりにICTを積極活用 田中建築設計工房(香川県)
田中建築設計工房の田中哲夫代表取締役

田中社長は、木造住宅から鉄筋コンクリートの建物まで幅広く対応できる「現場を熟知した設計士」として評価されている。地元の公用施設や有名ホテルなどの建設に関わった実績を持つ。環境に優しいネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の普及にも力を入れている。「高い断熱性能や耐震性能を備えた住宅を求める声は大きくなっています。お客様の住宅に対する高い要求水準にしっかりと応えていきたい」と田中社長は話した。

2010年、44歳の時に田中建築設計工房を設立した田中社長は、建設と建築の分野で多種多様な経験を積んできた。最初に香川県内の建設会社に就職し、現場監督の仕事を8年担当した後、大手ゼネコンと取引のある設計事務所に転職。ゼネコンなどから引き受ける施工図作成の仕事で実績を積んだ後、引退を決めた事務所の経営者から事業を引き継ぐ形で独立した。「建設、建築の分野で自分の可能性を追求したいという思いを若い頃から抱いていました」と話す田中社長。会社員時代から、自らの設計能力を向上させるための研鑽(けんさん)に日々取り組んでいたという。

事業領域を拡大し、不動産事業やマンションのリノベーションも手掛ける

田中建築設計工房の設立後は、施工図作成に加え、会社員時代の現場監督の経験を生かして住宅建築やリフォームにも事業領域を拡大。2022年には顧客の家づくりだけでなく土地探しもサポートすることを考えて不動産事業部を立ち上げた。新規事業としてマンションのリノベーションにも乗り出している。

2018年から翌年にかけてBIM対応型の3D-CADシステムを複数導入 設計作業の効率が格段に向上した

BIM対応型を含めた複数のCADシステムを使い分け 施主目線の理想の家づくりにICTを積極活用 田中建築設計工房(香川県)
事業領域の拡大や進化する3D-CADについて明るく語る田中社長

田中建築設計工房は、建物をコンピューター上の3D空間で構築して、設計、施工、維持管理などに活用するBIMに関心を持っている。2018年から翌年にかけて、海外のCADメーカーが開発した複数のBIM対応型の3D-CADシステムを相次いで導入した。ひとつは大手ゼネコンから受注している施工図の作成、もうひとつは新築住宅の設計に使っているという。

BIM対応型の3D-CADシステムは、3Dの建築モデルから平面図、立面図、断面図といった図面や画像を自動生成する機能を備える。すべてのデータが連動しているので、3Dモデルに入れた修正を関連付けた図面全体に反映させることができる。使いこなすことで修正だけでなく、部材の干渉チェックや構造解析の作業も効率化できる。

「3D-CADの導入で設計作業の効率は格段に高まりました。手書きで図面を作っていた頃と比較すると、隔世の感がありますね。新築住宅はお客様一人ひとりの要望を反映した一点ものなのできめ細かな対応が必要です。ICTを活用することで、対応能力に更なる磨きをかけていきたいと思っています」と田中社長は話した。

3Dパースの作成に便利なCADシステムを施主へのプレゼンテーション用に新たに導入

BIM対応型を含めた複数のCADシステムを使い分け 施主目線の理想の家づくりにICTを積極活用 田中建築設計工房(香川県)
CADシステムを使って建物の日当たりをシミュレーションする様子

2023年には、2D-CADのデータから建物の3Dパースを自動生成できるCADシステムを新たに導入した。主に、施主と住宅の設計や施工についての打ち合わせする際に活用している。プレゼンテーション用資料作成の支援機能が充実しており、BIM対応型の3D-CADシステムよりも簡単な操作で、パースを作成できるという。設計データから住宅の耐震性、断熱性、エネルギー性能、快適性などをチェックできる機能も備えている。

「住宅の外観、内観だけでなく水平方向での透視、上部からの鳥瞰、動線を想定したウォークスルー、拡大、縮小といった様々な視点から3Dモデルを表示できるので、お客様と住宅についてのイメージや情報を共有し、家づくりを共同作業として進めていく上で素晴らしい効果を発揮してくれています」と田中社長。建築作業に入る前に、季節や時間帯ごとの日当たりや窓の位置に合わせた眺望のシミュレーションもできるので、施主の要望を最大限、家づくりに反映できるという。「建築分野の経験が浅い人でも、ソフトウェアを使うことでベテラン並みの空間把握能力を持つことができます。今後、新しい人材を採用し、育成する際にも活用していきたいと思っています」と田中社長は話した。

NASを活用して現場から本社の情報にアクセス 業務の属人化の軽減や社内の連携強化にも効果

田中建築設計工房は、設計業務以外でもICTを活用している。大容量のNAS(ネットワーク接続型ストレージ)を導入し、設計図や3Dパースなど様々な資料を保存している。通信環境が整っていれば、現場に出ていてもパソコンやスマートフォンなどの端末から本社のストレージにアクセスできるので、必要な資料をすぐに確認することができるという。ストレージを通じて情報の共有もできるので、業務の属人化の軽減や連携強化につながっているという。

ホームページは貴重な戦力 営業活動と人材募集の両面で活用

BIM対応型を含めた複数のCADシステムを使い分け 施主目線の理想の家づくりにICTを積極活用 田中建築設計工房(香川県)
田中建築設計工房のホームページ

ホームページでは、会社概要、業務内容、住まいの相談会といったイベント情報、不動産の物件情報を発信し、採用ページも設けて人材の募集も行っている。多くの人に関心を持ってもらえるようにブログの更新やSNSでの情報発信にも力を入れている。少数精鋭の体制において、ホームページは営業活動と人材募集の両面で大きな役割を果たしてくれているという。

AIをはじめとする技術の進化をビジネスチャンスにつなげる

BIM対応型を含めた複数のCADシステムを使い分け 施主目線の理想の家づくりにICTを積極活用 田中建築設計工房(香川県)
田中建築設計工房の本社の外観

「デジタル技術は物理的な距離を短縮し、生産性も高めてくれる、中小企業にとって本当に頼りになる存在です。今後、事業の領域を四国以外に広げていく時に、大きな効果を発揮してくれることを楽しみにしています。企業の存続は、同じことを継続するだけでは難しい時代になっています。AIをはじめとする技術の進化をビジネスにしっかりとつなげていきたい」と田中社長は意欲を見せた。ICTを活用して新しい事業に積極的に取り組んでいる田中建築設計工房。柔軟で前向きな経営姿勢が新しい可能性を引き出している。

企業概要

会社名株式会社田中建築設計工房
本社香川県丸亀市綾歌町富熊17番地
HPhttps://tanaken-kobo.jp
電話0877-86-1877
設立2010年1月
従業員数4人
事業内容 新築住宅の設計・施工、増・改築(リフォーム)の設計・施工、生産設計図(施工図)作成