相続財産に宅地がある場合、ある程度の知識がないと評価額を算出することはできません。
ここでは間口の狭い宅地や奥行の長い宅地の評価方法をご説明いたします。
間口の狭い宅地の評価とは?
同じ地域にある土地で面積が同じであれば、通常は同じ価格のはずです。
しかし、土地の形状によっては、せっかく購入しても使い勝手が悪く、有効に利用できないためものもあります。
そのような土地は、同じ地域にあっても人気がなく、価格も低く設定されています。
その典型的な例が、間口の狭い土地(宅地)です。
いくら面積が広くても、間口が狭ければ、建物の設計がやりにくく、間口が広い土地に比べて、利便性が格段に落ちてしまいます。
ところで、「間口が狭い宅地」とは、具体的にどのような土地を指すのでしょうか。
主に、次の2つが考えられます。
まず1つ目は、いわゆる「うなぎの寝床」と呼ばれるような、道路に面した間口に比べて、奥行の長さが極端に長い土地のことです。
元々広かった土地を分筆し、ある程度分けて狭い土地がいくつか出来上がり、その中のいくつかの土地が売却された場合に、残された土地がこのような形状になります。
また、2つ目は、宅地そのものは正方形に近い形状をしていても、その宅地の接している道路が、曲がったり、折れ曲がったりしていることで、道路に接している宅地の部分が、他の土地(宅地、田畑など)の道路以外の宅地に比べて、極端に短い場合です。
間口の長さはどのように計算するのか?
「間口」の長さの求め方をご説明する前に、「間口」とは何を指すのかをご説明いたします。
間口とは、宅地と道路が接している部分の長さのことです。
わかりやすく言うと、道路に面した宅地の端から端までの長さです。
ただ、宅地によっては、きれいな正方形、長方形でない場合があります。
そのような場合の「間口」の求め方から、次のとおりです。
例えば、土地の角の一部を切ったことによって広がった部分については、間口には入れません。
切り取られる前の長さを「間口」の長さとします。
また、接する部分の一部がふさがれた場合には、その部分を間口に入れることもありません。
つまり、間口が一部途切れているような場合には、道路に面している部分だけの長さを合計して、「間口」の長さとします。
また、道路から宅地に向かって小道が伸びている場合には、道路と小道が接する部分を間口としても構いませんし、小道と宅地が接する部分を間口としても、問題ありません。
参考:国税庁 「質疑応答事例 間口距離の求め方」
間口が狭い宅地の評価方法とは
間口が狭い宅地の評価額は、まず「奥行価格補正率」などによる調整を行い、それから「間口狭小補正率」をかけて算定することになります。
奥行価格補正率
「奥行価格補正率」とは、奥行の長さと「地区区分」によって決められている数値のことです。
最大の数値が「1.00」ですが、この場合、奥行の長さが長すぎない、さらに短すぎないために、調整する必要がないことを表しています。
また、宅地がどこの地区にあるかによって、調整する必要の度合いが異なるために、地区を6つの区分で分けています。
その区分は、ビル街、高度商業、繁華街、普通商業・併用住宅、普通住宅、中小工場、大工場の6つです。
なお、「奥行価格補正率」は、以下の「奥行価格補正率表」で確認します。
■奥行価格補正率表(平成30年1月1日以後の相続用)
奥行距離(m) | ビル街 | 高度商業 | 繁華街 | 普通商業 併用住宅 | 普通住宅 | 中小工場 | 大工場 |
4未満 | 0.80 | 0.9 | 0.9 | 0.9 | 0.9 | 0.85 | 0.85 |
4以上 6未満 | 0.92 | 0.92 | 0.92 | 0.92 | 0.9 | 0.9 | |
6以上 8未満 | 0.84 | 0.94 | 0.95 | 0.95 | 0.95 | 0.93 | 0.93 |
8以上 10未満 | 0.88 | 0.96 | 0.97 | 0.97 | 0.97 | 0.95 | 0.95 |
10以上 12未満 | 0.9 | 0.98 | 0.99 | 0.99 | 1 | 0.96 | 0.96 |
12以上 14未満 | 0.91 | 0.99 | 1 | 1 | 0.97 | 0.97 | |
14以上 16未満 | 0.92 | 1 | 0.98 | 0.98 | |||
16以上 20未満 | 0.93 | 0.99 | 0.99 | ||||
20以上 24未満 | 0.94 | 1 | 1 | ||||
24以上 28未満 | 0.95 | 0.97 | |||||
28以上 32未満 | 0.96 | 0.98 | 0.95 | ||||
32以上 36未満 | 0.97 | 0.96 | 0.97 | 0.93 | |||
36以上 40未満 | 0.98 | 0.94 | 0.95 | 0.92 | |||
40以上 44未満 | 0.99 | 0.92 | 0.93 | 0.91 | |||
44以上 48未満 | 1 | 0.9 | 0.91 | 0.9 | |||
48以上 52未満 | 0.99 | 0.88 | 0.89 | 0.89 | |||
52以上 56未満 | 0.98 | 0.87 | 0.88 | 0.88 | |||
56以上 60未満 | 0.97 | 0.86 | 0.87 | 0.87 | |||
60以上 64未満 | 0.96 | 0.85 | 0.86 | 0.86 | 0.99 | ||
64以上 68未満 | 0.95 | 0.84 | 0.85 | 0.85 | 0.98 | ||
68以上 72未満 | 0.94 | 0.83 | 0.84 | 0.84 | 0.97 | ||
72以上 76未満 | 0.93 | 0.82 | 0.83 | 0.83 | 0.96 | ||
76以上 80未満 | 0.92 | 0.81 | 0.82 | ||||
80以上 84未満 | 0.9 | 0.8 | 0.81 | 0.82 | 0.93 | ||
84以上 88未満 | 0.88 | 0.8 | |||||
88以上 92未満 | 0.86 | 0.81 | 0.9 | ||||
92以上 96未満 | 0.99 | 0.84 | |||||
96以上100未満 | 0.97 | 0.82 | |||||
100以上 | 0.95 | 0.8 | 0.8 |
参考:国税庁 「奥行価格補正率表」
例えば、奥行の長さが45メートルの場合、「ビル街」地区の宅地の「奥行価格補正率」は1.00ですから、調整する必要はありません。
しかし、奥行の長さが同じ45メートルでも、宅地が「繁華街」地区にある場合には、「奥行価格補正率」は0.90となり、土地の価格が少し安くなります。
奥行が長ければ、宅地としての利用価値があり、土地の価格も高くなりそうですが、反対に奥行が長すぎれば、かえって使用する際に支障が出ますから、ほとんどの地区の宅地では、ある長さを超えると、「奥行価格補正率」が1.00を割り込み、価格が落ちることになります。
地区区分別でご説明すると、「ビル街」地区にある宅地は、奥行の長さが「44メートル以上92メートル未満」の場合は、「奥行価格補正率」が1.00ですから、土地の価格を調整する必要はありません。
「高度商業」地区にある宅地は、奥行の長さが「14メートル以上48メートル未満」の場合は、「奥行価格補正率」が1.00ですから、土地の価格を調整する必要はありません。
「繁華街」地区にある宅地は、奥行の長さが「12メートル以上28メートル未満」の場合は、「奥行価格補正率」が1.00ですから、土地の価格を調整する必要はありません。
「普通商業・併用住宅」地区にある宅地は、奥行の長さが「12メートル以上32メートル未満」の場合は、「奥行価格補正率」が1.00ですから、土地の価格を調整する必要はありません。
「普通住宅」地区にある宅地は、奥行の長さが「10メートル以上24メートル未満」の場合は、「奥行価格補正率」が1.00ですから、土地の価格を調整する必要はありません。
「中小工場」地区にある宅地は、奥行の長さが「20メートル以上60メートル未満」の場合は、「奥行価格補正率」が1.00ですから、土地の価格を調整する必要はありません。
「大工場」地区にある宅地は、奥行の長さが「20メートル以上」の場合は、「奥行価格補正率」が1.00ですから、土地の価格を調整する必要はありません。
「大工場」地区にある宅地だけ上限がありませんが、これは「大工場」地区という性格上、奥行がいくら長くなっても利用価値が落ちることはない、ということを表しています。
間口狭小補正率
「間口狭小補正率」とは、間口の長さと「地区区分」によって決められている数値のことです。
最大の数値が「1.00」ですが、この場合、間口の長さが短くないために、調整する必要がないことを表しています。
また、宅地がどこの地区にあるかによって、調整する必要の度合いが異なってきますので、地区を6つの区分で分けています。
その区分は、「奥行価格補正率」と同じく、ビル街、高度商業、繁華街、普通商業・併用住宅、普通住宅、中小工場、大工場の6つです。
また、「間口狭小補正率」は、以下の「間口狭小補正率表」で確認します。
■間口狭小補正率表
間口距離(m) | ビル街 | 高度商業 | 繁華街 | 普通商業・併用住宅 | 普通住宅 | 中小工場 | 大工場 |
4未満 | ― | 0.85 | 0.9 | 0.9 | 0.9 | 0.8 | 0.8 |
4以上 6未満 | ― | 0.94 | 1.00 | 0.97 | 0.94 | 0.85 | 0.85 |
6以上 8未満 | ― | 0.97 | 1.00 | 0.97 | 0.9 | 0.9 | |
8以上 10未満 | 0.95 | 1.00 | 1.00 | 0.95 | 0.95 | ||
10以上 16未満 | 0.97 | 1.00 | 0.97 | ||||
16以上 22未満 | 0.98 | 0.98 | |||||
22以上 28未満 | 0.99 | 0.99 | |||||
28以上 | 1.00 | 1.00 |
参考:国税庁 「間口狭小補正率表」
例えば、間口の長さが9メートルの場合、高度商業の宅地の「間口狭小補正率」は1.00ですから、調整する必要はありません。
しかし、間口の長さが同じ9メートルでも、宅地がビル街にある場合には、「間口狭小補正率」は0.95となり、土地の値段が少し安くなります。
間口が長ければ、宅地としての利用価値があり、価格も高くなります。
先程の「奥行価格補正率」の場合、多くの地区では、奥行がある一定の長さを超えれば、1.00を割り込むケースが出てきました。
これは、奥行が長すぎると、かえって使用する際に支障が出るから、というのが理由でした。
しかし、間口の場合には、その性格上、長いという理由で利用価値が落ちることはありませんから、何メートルを超えれば「間口狭小補正率」が1.00を割り込むことはありません。
地区区分別でご説明すると、「ビル街」にある宅地は、奥行の長さが「28メートル以上」の場合は、「間口狭小補正率」が1.00ですから、土地の価格を調整する必要はありません。
「高度商業」にある宅地は、奥行の長さが「8メートル以上」の場合は、「間口狭小補正率」が1.00ですから、土地の価格を調整する必要はありません。
「繁華街」にある宅地は、奥行の長さが「4メートル以上」の場合は、「間口狭小補正率」が1.00ですから、土地の価格を調整する必要はありません。
「普通商業・併用住宅」にある宅地は、奥行の長さが「6メートル以上」の場合は、「間口狭小補正率」が1.00ですから、土地の価格を調整する必要はありません。
「普通住宅」にある宅地は、奥行の長さが「8メートル以上」の場合は、「間口狭小補正率」が1.00ですから、土地の価格を調整する必要はありません。
「中小工場」にある宅地は、奥行の長さが「10メートル以上」の場合は、「間口狭小補正率」が1.00ですから、土地の価格を調整する必要はありません。
「大工場」にある宅地は、奥行の長さが「28メートル以上」の場合は、「間口狭小補正率」が1.00ですから、土地の価格を調整する必要はありません。
具体的な算定式は、次のとおりです。
・路線価×奥行価格補正率=X(小数点以下切り捨て)
・ X×間口狭小補正率=Y(小数点以下切り捨て)
・ Y×地積=宅地の評価額
以上のように、地区区分ごとで、間口距離に応じて「間口狭小補正率」が決まり、間口距離が短いほど、補正率が小さくなります。
奥行が長い宅地の評価方法とは
間口に比べて、奥行が長い宅地の評価額は、まず奥行価格補正率などによる調整を行い、それから「奥行長大補正率」をかけて算定することになります。
「奥行価格補正率」は、先程の「間口が狭い宅地の評価方法とは」の箇所で、ご説明したとおりです。
奥行長大補正率
「奥行価格補正率」とは、奥行の長さと「地区区分」によって決められている数値のことです。
最大の数値が「1.00」ですが、この場合、間口の長さに比べて、奥行の長さ長すぎないために、調整する必要がないことを表しています。
また、宅地がどこの地区にあるかによって、調整する必要の度合いが異なってきますので、地区を6つの区分で分けています。
その区分は、「奥行価格補正率」、「間口狭小補正率」と同じく、ビル街、高度商業、繁華街、普通商業・併用住宅、普通住宅、中小工場、大工場の6つです。
なお、「奥行長大補正率」は、以下の「奥行長大補正率表」で確認します。
■奥行長大補正率表
奥行距離 間口距離 | ビル街 | 高度業 | 繁華街 | 普通商業 併用住宅 | 普通住宅 | 中小工場 | 大工場 |
2以上 3未満 | 1.00 | 1.00 | 0.98 | 1.00 | 1.00 | ||
3以上 4未満 | 0.99 | 0.96 | 0.99 | ||||
4以上 5未満 | 0.98 | 0.94 | 0.98 | ||||
5以上 6未満 | 0.96 | 0.92 | 0.96 | ||||
6以上 7未満 | 0.94 | 0.90 | 0.94 | ||||
7以上 8未満 | 0.92 | 0.92 | |||||
8以上 | 0.90 | 0.90 |
参考:国税庁 「間口狭小補正率表」
・路線価×奥行価格補正率=X(小数点以下切り捨て)
・ X×奥行長大補正率=Y(小数点以下切り捨て)
・ Y×地積=宅地の評価額
例えば、奥行の長さが30メートル、間口の長さが10メートルの場合、「ビル街」地区の宅地の「奥行長大補正率」は1.00ですから、調整する必要はありません。
しかし、奥行の長さが同じ30メートル、間口の長さが10メートルの場合でも、宅地が「繁華街」地区にある場合には、「奥行長大補正率」は0.99となり、土地の値段が少し安くなります。
具体的な算定式は、次のとおりです。
以上のように、地区区分ごとで、「奥行距離/間口距離」に応じて「奥行長大補正率」が決まり、その数値が大きくなるほど、つまり間口に比べて奥行が長いほど、補正率が小さくなります。
間口が狭く、奥行が長い宅地の評価方法とは
間口が狭く、同時に奥行が長い宅地の評価額は、まず奥行価格補正率などによる調整を行い、それから「間口狭小補正率」と「奥行長大補正率」をかけて算定することになります。
具体的な算定式は、次のとおりです。
・路線価×奥行価格補正率=X(小数点以下切り捨て)
・ X×間口狭小補正率×奥行長大補正率=Y(小数点以下切り捨て)
・ Y×地積=宅地の評価額
間口が狭い宅地の計算例
それでは、下記の図を参考に実際に計算してみましょう。
道路 | 155D |
間口 | 6m |
奥行 | 25m |
面積 | 150平方メートル |
種別 | 普通住宅地区 |
【計算】
155,000円×0.97=150,350円
(25mの奥行価格補正率)
150,350円×0.97×0.94=137,089.13円
(6mの間口狭小補正率)(4.16(25/6)の奥行長大補正率)
137,089.13円×150㎡=20,563.369.5円
まとめ
間口が狭い、奥行が長いなどの宅地は、利便性が低いため、評価額が低くなります。
ご説明したように、間口狭小補正率や奥行長大補正率をかけて、価額を調整することになります。
(提供:相続サポートセンター)