アパレル製品の多種多様な加工・仕上げを行う 「攻めの一手」でホームページ発信へ クリーク(群馬県)

目次

  1. 2010年に独立。個人事業主として1人でスタート
  2. 店頭に並べる商品にするための重要な仕事を一手に引き受け、衣類の保管と発送業務も行う
  3. 群馬県は、養蚕農家が多かったため縫製関連企業が多い 県内外の売上比率は半々 婦人服の加工・仕上げが80%占める
  4. 単価下落、海外製品流入が続くアパレル産業。商品入れ替え期間も短期化
  5. ホームページで自社の品質アピールへ アパレル以外も視野に
中小企業応援サイト 編集部
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繊維・縫製産業が盛んな群馬県で、アパレル製品の加工・仕上げを主力とする株式会社クリーク(太田市)。アパレル産業の停滞を受けながらも、「攻めの一手」(小川篤代表取締役)で事業継続を図っている。県外の顧客も開拓し、アパレル製品の全国発送業務も展開する。加工・仕上げの品質をアピールするため、ホームページを活用して、顧客拡大を狙っている。(本社工場内での完成品の出荷作業)

2010年に独立。個人事業主として1人でスタート

アパレル製品の多種多様な加工・仕上げを行う 「攻めの一手」でホームページ発信へ クリーク(群馬県)
「がむしゃらに働いてきた」と話す小川篤代表取締役

小川篤代表取締役は、自動車メーカー勤務、大手アパレルメーカー物流拠点勤務を経て、アパレル製品加工会社の役員として現場の指導や新規の顧客開拓など、実質的に企業を切り盛りしていた。

「いつかは自分の会社を持ちたい」と考えており、40代に達した時「これがラストチャンス」ととらえ、アパレル製品の最終仕上げの会社を2010年に設立した。前職のアパレル製品加工会社の経営者の理解のもと、アパレル製品加工会社で信頼を得た顧客を譲り受けた。

独立後は個人事業主として1人でスタート。営業から現場作業までをこなし、「がむしゃらに働いた」(小川社長)ことで、事業が軌道に乗った。この結果、2012年には法人化し、株式会社クリークを設立した。

店頭に並べる商品にするための重要な仕事を一手に引き受け、衣類の保管と発送業務も行う

アパレル製品の加工・仕上げといっても幅広い。アイロンプレスによるしわ伸ばし、ネーム(タグ)交換、工業用ミシンを使ったネーム入れ、デザインのためのプリント、製品のたたみや袋入れなど、完成品として小売の流通経路に乗載せるための最終工程を担う。

同社の強みは、完成品として仕上げるこれらの工程を1社で引き受ける点だ。例えば、アイロンがけでは、素材によって当て布をしたり、風を送って仕上がり具合を調整したりする。

アパレル業界でいう、汚れやほつれなどがあるB品の場合は、汚れ落とし、ミシンによる縫い直しなどまで行う。B品は、特に海外製で多いが、汚れは用途別の溶剤を使って落とすほか、縫い直しはベテランのミシン作業員が担当し、「B品を、小売店に出せるA品に仕上げる」(小川社長)ことが強みという。

工場内には、消費者が着用するため絶対安全であることが求められる。針などの金属類の混入を防ぐ金属探知機で最終製品チェックを行う。

アパレル製品の多種多様な加工・仕上げを行う 「攻めの一手」でホームページ発信へ クリーク(群馬県)
針などの金属類の混入を防ぐ金属探知機

店頭に並ぶ時に、製品の特徴によって異なる質感やボリューム感を確保するため、アイロン台、蒸気でしわを伸ばす蒸気ボイラー、しわ取り仕上げ機を使用して一枚一枚熟練の職人の手によって仕上げられる。

アパレル製品の多種多様な加工・仕上げを行う 「攻めの一手」でホームページ発信へ クリーク(群馬県)
質感やボリューム感を確保するためのアイロン

B品を縫い直してA品にするための工業用ミシンなどの設備が並ぶ。

アパレル製品の多種多様な加工・仕上げを行う 「攻めの一手」でホームページ発信へ クリーク(群馬県)
極力B品を出さないため、工業用ミシンは必須

このほか、工場のスペースを利用して、製品の保管だけでなく、要望に応じて全国への発送業務も展開する。発送業務の売上比率は2割程度という。

群馬県は、養蚕農家が多かったため縫製関連企業が多い 県内外の売上比率は半々 婦人服の加工・仕上げが80%占める

群馬県はかつて、養蚕農家が多かったことなどから繊維関連産業が盛んで、生糸生産などで明治から昭和にかけて県の経済発展に寄与してきた。2014年には生糸生産などの富岡製糸場が世界遺産に登録されたことも記憶に新しい。

現在でも、桐生市、太田市、足利市、館林市などには「個人企業が多い」(小川社長)ながらも、織物やニットなどの縫製関連企業が多く、関連業界からの紹介で加工や仕上げの依頼が多いなど、立地条件には恵まれている。

しかし、これら地元関連の仕事はロットが小さいことから、関連業界からの紹介などを受けて県外にも営業の輪を広げ、現在では県内と県外の売上比率は半分ずつ。輸入品が7~8割を占める。製品別では、婦人服が約8割を占めるという。アパレル加工や仕上げ業者は個人企業が多く、高齢化による廃業も多いため、まだ55歳と若い小川社長の会社に対して今後も加工依頼などが見込める。

単価下落、海外製品流入が続くアパレル産業。商品入れ替え期間も短期化

ただ、アパレル産業をめぐる環境は厳しい。経済産業省によると、国内のアパレル供給点数は1990年の約20億点から、2022年には37.3億点と1.8倍に拡大。一方で、衣料品市場は消費者の低価格志向、カジュアル化などで単価下落が続き、国内の衣料品市場は2019年の約11兆円から、2021年には8.6兆円に縮小したとしている。特に婦人用ブラウス、セーター、ワンピースの小売価格の下落が顕著で、1999年を100として、2022年には40前後にとどまっている。

単価下落のもう一つの要因は、海外製品の流入だ。日本繊維輸入組合によると、2023年の衣類・同付属品の輸入額は約4兆5,900億円で、10年前の2014年比で約5,000億円増加。このうち、中国からの輸入は全体の半分以上を占める。

中国などでの海外生産のコスト増もあるが、縫製業の海外展開の結果、国内に関連産業が少なくなったほか、コスト面でも見合わないことから、「国内生産には戻れない状況」(小川社長)だ。

こうした環境変化は、クリークの事業にも影響を及ぼしている。特に、コロナ禍により、取引先の大手が廃業。加えて、気候変動の影響もある。具体的には、婦人服は春夏秋冬でそれぞれ新商品が発売されていたが、春と秋の気候が短くなり、「春物、秋物が売れなくなっている」(小川社長)という。これまでも端境期に入ると仕事量が減るなどの波があったが、商品入れ替え期間が長くなったことで、「波の振幅が大きくなっている」ことが悩みの種だ。

ホームページで自社の品質アピールへ アパレル以外も視野に

アパレル製品の多種多様な加工・仕上げを行う 「攻めの一手」でホームページ発信へ クリーク(群馬県)
アパレル製品のたたみ・梱包作業

厳しい環境下でも、小川社長は「数をこなしていくしかない」と前向きだ。複合機を入れ替えてデータ管理、メール送信などに活用してきた。現在検討しているのがホームページの開設だ。これを利用すれば、アパレルの加工から仕上げまで可能な態勢をとり、これまで築いてきた経験と品質、技術を全国に発信できるため、「真剣に導入を検討している」。

一方で、何でも手掛けるという小川社長らしく、アパレル以外でも、プラスチックや金属の加工や検査なども視野に入れている。

実は、小川社長の長女が同社で働き、父親が創業した会社を継承する覚悟だという。次の代も事業を継続していくため、「現場の作業から経営までやってきた気持ちは一生変わらない。これからも頑張る」と、意気軒高だ。

アパレル製品の多種多様な加工・仕上げを行う 「攻めの一手」でホームページ発信へ クリーク(群馬県)
クリークの本社工場

企業概要

会社名株式会社クリーク
本社群馬県太田市藪塚町1524-7
電話0277-46-8770
設立2010年
従業員数6人(パート含む)
事業内容アパレル製品の加工・仕上げ