IT業界におけるM&Aの目的
1.人材獲得を目的としたM&A
M&Aをする目的の一つとして、人材獲得があります。 採用コスト、教育コストを考えた時に、一人ひとり採用し育てていくよりも、M&Aをするケースがあります。
これは採用費や教育費といった金銭面というよりは、時間的コストを省く意味で有効です。 M&A実行後にすぐに案件を受けられるようになり、売上や利益をスケールさせる事ができます。
2.取引先獲得を目的としたM&A
安定した収益を上げる為、売上を拡大する為に、大手企業と取引がしたい場合、営業で口座を開くことは容易ではありません。
エンジニアだけでなく、営業人材の採用や教育はより難しいと言っても過言ではないでしょう。 そのような状況で、既に大手企業と取引のある企業とM&Aを実行する事で、大手企業との取引を開始し、アップセルやクロスセルといった相乗効果も見込めます。
3.事業領域を広げる為のM&A
ソフトウェア受託開発やSESといった業態が多い業界ですが、人が増えたとしても利益率まで上げる事はなかなか容易ではないでしょう。 更なる利益を追求すると、SaaSやクラウド等の自社プロダクトを獲得する事や、上流工程を捌けるコンサルティング事業を始める等が挙げられます。
人材獲得に近いイメージはありますが、ノウハウがない領域を一から始めるには多大なコストを要します。 そこで、事業を買収する事で会社としての軸を増やす目的でM&Aを実施するケースもあります。 勿論、これら以外にも企業によって目的は様々です。
それでは、譲渡企業にとってのメリットはどんな事が挙げられるでしょう。
譲渡企業にとってのメリット
1.信用、採用力の向上
大手企業の信用や資本を活用し、より大きな案件の獲得や採用力の向上といったメリットが挙げられます。大手企業と取引をするには信用が必要で、口座貸しといった手法もあるくらいです。求職者も知っている会社と知らない会社では応募のしやすさが違います。
2.従業員の将来の為
前述したように、待遇を改善する事が難しい環境下では従業員に還元したくてもできない事がよくあります。 大手企業の傘下に入る事で、より上流の案件を受注でき、単価を上げていく事で従業員に還元する事ができます。
受託開発やSESだけでなく、親会社のプロダクトの開発や導入支援、サポートの仕事を受ける事で、エンジニアが新たなスキルを習得する事も可能です。 今後、生成AIの台頭により、ヒトがコードを書けなくても良い時代がやってきます。 いずれ需要がなくなってしまう人材にならないよう、将来も稼ぎ続けられる人材になる事は大きなメリットです。
3.企業の成長を加速
スタートアップやベンチャー企業では、画期的なプロダクトやサービスを保有していても、それを広めていく資金力やノウハウがない事が多いです。 資金調達をして、優秀な人材を獲得できれば良いですが、全ての会社ができるわけではありません。
そのような状況で、大手企業と組む事で、一気に取引先を拡大する事も、製品やサービスを強化する事も可能になります。