日本のIT業界の構造問題
上記のようにIT人材が不足している為、経験やスキルのあるエンジニアは会社に所属せずとも、フリーランスとして独立し、案件を豊富に受注する事ができます。
そして独立後、案件が豊富にあり人材を獲得し法人化していく事で、中小IT企業が増えていきます。 その結果、4次請け、5次請けといった多重下請け構造を招いています。
新興IT企業でも、営業力や高いスキル、経験によって直請けや2次請けといった形で案件を受注できるようになり単価も上がっていきます。 ただし、創業者を含め1人や2人、そういったスキルがあったとしても、プライム案件のような大きな案件を回していく事は困難です。
その結果「優秀な人材を採用したくても人が集まらない」というスパイラルに陥っているのだと思います。 スキルや経験のあるエンジニアが個々で力を発揮するのではなく、集団となって力を結集した方が、品質やサービスレベルの強化だけではなく、新たなテクノロジーの開発や発展を後押ししていくと考えます。
人材不足の弊害が多重下請け構造を招き、会社の発展、延いては日本のIT業界発展の妨げになっているのではないでしょうか。
日本のIT業界の発展
日本は高度経済成長を遂げ、世界的にもアメリカに継ぐ先進国でした。 しかし、バブル崩壊後、「失われた30年」と言われるように、経済は停滞しています。
人口の減少が大きな要因の一つであることは言わずもがなですが、日本はデジタル革命への対応が他国と比べて遅れを取っていると言わざるを得ないでしょう。 1990年代にマイクロソフトが台頭すると、Amazon、Google、Facebook(現メタ)、Appleがライフスタイルを一変させ、プラットフォーマーとしてアメリカ企業が地位を築きました。 この間、日本は成長投資ではなく守りの姿勢になり、今では世界だけでなくアジアの中でも影を潜めているように思います。
このままいけば「失われた40年」と言われる時代が来るかもしれません。 しかし、現在日本では物価が上昇し、大企業では賃上げが続いています。
大企業だけが発展しても、日本の99%以上を占める中小企業も発展しなければ、国として大きな発展は見込めません。
日本が再び世界と渡り合っていくためには、力を結集していかなければなりません。 そのためにはどうすべきなのか、その答えの一つが大手企業の資本を活用する事だと思います。
何十年も経営してきた会社を手放すという事は、家族を手放す程の辛い決断かもしれません。 上場を目指すスタートアップやベンチャーが大手企業の傘下に入る事は、夢を諦めてしまう事かもしれません。
しかし、会社を発展させる、発展のスピードを加速させる、従業員の待遇を良くする等、ポジティブな要素も多くあるという事は間違いありません。 会社を譲渡したからと言って、退任しなければならないわけではなく、株式は譲渡されるもののオーナーご自身は継続勤務するケースも少なくありません。
中堅、中小企業が結集し、大手企業へと成長していく会社もあります。 勿論、大手企業と組む事で、事業上のシナジーや企業文化としての相性等、考慮すべきポイントは多く、ここを疎かにしてしまってはネガティブな要素の方が上回ってしまいます。
日本のIT業界を再編していく上で、M&Aは有効な手段の一つですが、このようにメリット、デメリットをよく把握した上で決断していく必要があります。