目次
- 電力供給に欠かせない変圧器を守る金属製ケースを半世紀にわたって製造
- 最初からペーパーレスありきで取り組んだわけではなかった
- 物心ついたころから鉄工所の仕事を身近に感じて育った 一つひとつの思い出が社長としての仕事をこなす原動力に
- バックオフィス業務を効率的にこなすため費用対効果と使いやすさを重視して事務機器や業務支援システムを導入
- 時間に追われながらも対応できているのは、ICTのおかげ
- 会計システムで経理の業務を効率化
- 複合機のスキャン機能を使って紙資料のデジタル化を進める
- 取引先のために過去20年以上の図面や資料を保管
- CADを活用して金属製ケースの製造に必要な展開図を自社作成
- ICTやデジタル機器を活用して時間を生み出す
香川県三豊市の亀野鉄工有限会社は、2014年から段階的なバックオフィス業務のデジタル化を通じてオフィスのペーパーレス化に取り組んでいる。2022年9月に父親から事業を承継した永田幸代表取締役は、バックオフィス業務だけでなく営業、運送、製造現場のサポートと幅広い業務に取り組む時間を捻出するため、更なるデジタル機器とICTの活用に目を向けている。(TOP写真:亀野鉄工の永田幸代表取締役)
電力供給に欠かせない変圧器を守る金属製ケースを半世紀にわたって製造
1974年に創業し、1990年に法人化した亀野鉄工有限会社は、地域に密着した鉄工会社だ。創業以来一貫して、電力供給を保つ上で重要な変圧器用金属ケースの製造に取り組んできた。オーダーメイドで年間百数十台の金属ケースを生産。様々な溶接技術の中でも難度が高いアーク溶接を得意としている。
発電所から送られてきた高電圧の電気を家庭や事業所で使いやすい低電圧に変換する変圧器は、屋外で長期間使用されるため、内部の機器を守る金属ケースには高い耐久性と品質が要求される。亀野鉄工は半世紀にわたって持ち前の技術力で取引先からの高い要求水準に応えてきた。地域の同業者からの視察も積極的に受け入れている。
最初からペーパーレスありきで取り組んだわけではなかった
香川県三豊市内の幹線道路沿いにある亀野鉄工の本社オフィスは、パソコンを設置したデスク、キャビネット、複合機を機能的に配置している。整然としたオフィスのレイアウトは、2014年から段階的に推進してきたペーパーレス化の賜物だが、最初からペーパーレスありきで取り組んだわけではないという。「経理や給与計算、受発注といったバックオフィス業務を効率化するためにICTやデジタル機器の活用を進めたことが、ペーパーレス化につながっていったんです」。永田社長は、柔らかな笑顔を見せてそう語った。
物心ついたころから鉄工所の仕事を身近に感じて育った 一つひとつの思い出が社長としての仕事をこなす原動力に
永田社長は、物心ついた頃から鉄工所の仕事を身近に感じて育ったという。「幼い頃、本社のオフィスはお気に入りの場所の一つでした。会話であふれるにぎやかな雰囲気が大好きだったんです」と永田社長は懐かしそうに話した。父親がトラックに金属ケースを積んで納品先に向かう時は、よく一緒についていったという。「今は自らトラックのハンドルを握って納品先に赴いています」と永田社長。子どもの頃からの思い出の一つひとつが、プレイングマネージャーとして管理から現場まで幅広い業務をこなす上での原動力になっているという。
バックオフィス業務を効率的にこなすため費用対効果と使いやすさを重視して事務機器や業務支援システムを導入
2004年ごろ、父親を支えるために亀野鉄工で仕事をすることを選んだのも自然な流れだったという。入社以来、経理、給与計算、受発注といったバックオフィス業務を一手に担い、無駄を省いて効率的に仕事をこなすことを心掛けてきた。事務機器や業務支援システムの情報を積極的に収集し、費用対効果と自分にとっての使いやすさを重視して導入を図ってきたという。
会社を継いでほしいという父親の思いを受けて、社長職に就くことを早くから意識していたが、実際に就任が決まった後の重圧は、想像以上のものがあったという。バックオフィス業務に加え、取引先との商談や製造現場のサポート、採用活動など取り組まなければならない仕事も増えた。将来を見据えた経営理念の策定にも取り組みたいと思っており、時間はいくらあっても足りない状態という。
時間に追われながらも対応できているのは、ICTのおかげ
永田社長は2014年から注文書や品質証明関係の書類をエクセルで作成して、パソコンにデータで保存するようにしている。「書類を紙に手書きで作成していた時は作業に時間と手間がかかるだけでなく、保存場所も確保しなければなりませんでした。必要な書類を探す時も一苦労でしたが、データ化することで検索機能を使ってすぐに見つけることができるようになりました。社長になって時間に追われながらもなんとか対応できているのは、ICTを活用したこれまでの業務改善の取り組みのおかげです。過去の自分自身に助けてもらっているように思います」と永田社長は話した。
会計システムで経理の業務を効率化
2019年には、それまで使用していた表計算システムを、新しい会計システムに入れ替えた。会計システムは、伝票の数字を入力するだけで総勘定元帳、試算表、決算書の作成や会計の記録書類を出力できる機能を備えている。事前に仕訳が設定されており簡単に記帳できるので、会計の関連業務を短時間で済ませることができるという。「毎日、空いた時間を使って作業ができるので仕事が溜まることがなくなりました。気持ちに余裕を持って取り組めることがミスの減少にもつながっています」と永田社長。
複合機のスキャン機能を使って紙資料のデジタル化を進める
同時期にスキャン機能を備えた複合機も導入した。図面など現場で使用する紙資料のデジタル化も進めており、今後、更なる社内情報の共有化に大きな効果が期待できる。ICTとデジタル機器によって生み出したペーパーレス化は、業務効率化やスペースの有効活用だけでなく用紙や印刷のコスト削減にもつながっている。
取引先のために過去20年以上の図面や資料を保管
社内業務についてはペーパーレス化を進める一方、取引先から受け取った変圧器用金属ケースの図面については、打ち合わせの過程で修正点を書き込んだ紙書類も含めて全て残すようにしている。取引先から既に廃棄してしまった過去の図面や資料が必要になった時、相談が寄せられることがあり、そのような時に提供できるよう過去20年以上の紙書類をキャビネットで保管している。これらの紙書類のデジタル化も実施していきたいという。
CADを活用して金属製ケースの製造に必要な展開図を自社作成
亀野鉄工は、変圧器の製造会社からの依頼に応じて、図面を忠実に再現した金属ケースを世に送り出している。取引先から送られてくる図面を基にした金属ケースの展開図を作成するために2019年からCADを活用している。
CADを導入するまで、展開図の作成は外部に委託していたが、修正が必要になった際に機動的に対応できないという課題があった。CADを導入して自社で展開図の作成が可能になったことで、修正の際に迅速に対応できるようになっただけでなく、ミスの発見もしやすくなったという。CADの活用に対する知識とノウハウの蓄積も会社の大きな財産になっている。
ICTやデジタル機器を活用して時間を生み出す
永田社長は、ソフトウェアなどをネットワーク経由で利用するクラウドサービスにも関心を持っている。打ち合わせや商談などで社外に出ることが増えており、外回り中に、パソコンやスマートフォンなどの端末から会社のデータベースにアクセスできるようにしたいという。「いつでもどこからでも必要なデータを確認できるようになれば、外出中に取引先から問い合わせがあっても迅速に対応できますし、事務処理もこなせます。これまで以上に時間を有効活用するために引き続きICTやデジタル機器を活用していきます」と永田社長は話した。
生産体制の拡充や蓄積した技術を活用した新製品の開発にも目を向けている。「父親が築いてきた技術と信頼を受け継いで伝えていくための体制をしっかりと固めていきたいと思っています。亀野鉄工について広く知っていただくための情報発信にも積極的に取り組んでいきたい」と永田社長は力強く語った。幼い頃から愛着を持っている会社を発展させていくために、日々全力で取り組みたいという思いは強い。進化するデジタル技術がその思いを支えてくれるに違いない。
企業概要
会社名 | 亀野鉄工有限会社 |
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本社 | 香川県三豊市豊中町笠田笠岡2474 |
電話 | 0875-62-5391 |
設立 | 1990年4月(創業1974年) |
従業員数 | 4人 |
事業内容 | 変圧器用金属ケース製造 |