2026年に開場100年を迎える名門ゴルフ場 デジタル活用で会員サービスの充実を図り、伝統と格式を未来へ伝える 宝塚ゴルフ倶楽部(兵庫県)

目次

  1. 美しい景観と戦略性に富んだ新旧2つのゴルフコースを備える
  2. 多様な機能を持ったクラブハウス ゴルフ場の歴史を振り返るコーナーもある
  3. ゴルフ場の運営を総勢200人が支える
  4. コストの上昇や人手不足に対応する上でICTとデジタル機器の活用が鍵を握る
  5. 開場100周年の準備に向けてプロダクションプリンターを導入
  6. オフィス業務からノベルティグッズの制作まで幅広くICTを活用
  7. 外注していたノベルティ用クリアファイル制作を内製化 外注していた時は納期が2週間以上かかっていたが今では数分、コストも大幅削減
  8. 改正電子帳簿保存法に対応するためクラウド型の証憑電子保存サービスを活用
  9. ゴルフ場全体での各カートの位置をリアルタイムで可視化できる「ゴルフカートの運行管理システム」の導入を検討
  10. 子どもや若者へのゴルフの普及活動に力を注ぐ
  11. デジタル技術を活用して時代の変化に対応、伝統と格式を守り続ける
中小企業応援サイト 編集部
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1900年代から1930年代にかけて「阪神間モダニズム」と呼ばれるハイセンスな都市文化を花開かせ、現在も住宅地として高い人気を誇る兵庫県南東部の阪神エリア。その中の「歌劇と温泉のまち」、宝塚市に、日本ゴルフの黎明期から地域の生活文化の形成に大きな役割を果たしてきた名門ゴルフ場がある。2026年に開場100周年を迎える宝塚ゴルフ倶楽部だ。運営を担う一般社団法人宝塚ゴルフ倶楽部は、伝統と格式を守りながら会員一人ひとりに寄り添ったもてなしをより一層充実させるため、ICTやデジタル機器を使った業務効率化に力を入れている。(トップ画像:宝塚ゴルフ倶楽部が、印刷作業の効率化と多様化を目的に導入したプロダクションプリンター)

美しい景観と戦略性に富んだ新旧2つのゴルフコースを備える

宝塚ゴルフ倶楽部のゴルフ場は、阪急今津線沿線の住宅街の近くに広がる。美しい景観と戦略性に富んだ新旧二つのゴルフコース(36ホール)を備え、総敷地面積は160万平方メートルにのぼる。設立は日本ゴルフの黎明期にあたる大正15年(1926年)。全国のゴルフ場の中でも宝塚ゴルフ倶楽部のように歴史を持つゴルフ場は、設立時にゴルフの振興という社会的役割を担っていたこともあり、現在は非営利の一般社団法人が運営するケースが多いという。

多様な機能を持ったクラブハウス ゴルフ場の歴史を振り返るコーナーもある

2026年に開場100年を迎える名門ゴルフ場 デジタル活用で会員サービスの充実を図り、伝統と格式を未来へ伝える 宝塚ゴルフ倶楽部(兵庫県)
クラブハウス1階のエントランスホール
2026年に開場100年を迎える名門ゴルフ場 デジタル活用で会員サービスの充実を図り、伝統と格式を未来へ伝える 宝塚ゴルフ倶楽部(兵庫県)
エントランスホールに設置されているデジタルサイネージ
2026年に開場100年を迎える名門ゴルフ場 デジタル活用で会員サービスの充実を図り、伝統と格式を未来へ伝える 宝塚ゴルフ倶楽部(兵庫県)
オリジナルグッズなどを販売しているショップ

鉄筋コンクリート造2階建てのクラブハウス1階には、エントランスホール、オリジナルグッズなどを販売するショップ、事務所、ロッカールームを配置。落ち着いた雰囲気で広々としたエントランスホールにはデジタルサイネージを設置し、会員に様々な情報を発信している。2階には、レストラン、バー、ラウンジを配置し、趣のある暖炉のあるコーナーや写真や年表で100年近いゴルフ場の歴史を振り返るコーナーを設けている。

2026年に開場100年を迎える名門ゴルフ場 デジタル活用で会員サービスの充実を図り、伝統と格式を未来へ伝える 宝塚ゴルフ倶楽部(兵庫県)
クラブハウス2階に設けられているゴルフ場の歴史を紹介するコーナー

ゴルフ場の運営を総勢200人が支える

2026年に開場100年を迎える名門ゴルフ場 デジタル活用で会員サービスの充実を図り、伝統と格式を未来へ伝える 宝塚ゴルフ倶楽部(兵庫県)
一般社団法人宝塚ゴルフ倶楽部の小堂剛裕支配人

ゴルフ場の会員権を所有する個人は1,400人、法人は300社にのぼる。企画、会計、受付などの事務、コース管理、キャディーの手配、クラブハウス管理といったゴルフ場の運営に必要な業務は一般社団法人の140人の職員が担っている。運営を外部委託しているレストランなどのスタッフも含めると総勢約200人が日々の業務に携わっているという。

「ゴルフ場の主役である会員の皆様に、ゴルフを楽しんでいただき、受け継いできたエチケットやマナーといった倶楽部の財産を大事にしていただく上で、職員、スタッフ一人ひとりが大きな役割を担っていることを肝に銘じながら仕事に取り組んでいます」。一般社団法人宝塚ゴルフ倶楽部の運営を統括する小堂剛裕支配人は、落ち着いた口調で仕事への思いを語った。

コストの上昇や人手不足に対応する上でICTとデジタル機器の活用が鍵を握る

コースのメンテナンスに必要な資材費、外部委託費といった様々なコストの上昇や今後の人手不足に対応する上で、職員一人ひとりの生産性向上は、宝塚ゴルフ倶楽部にとってなにより大きなテーマになっているという。今後の鍵を握る重要な取り組みと考えているのがICT、デジタル機器のプラスアルファの活用だ。

「数十年にわたって導入してきた予約システムや会員情報の管理システム、勤怠管理システムに加え、会員の皆様のお役に立つ新しいデジタル機器やICTを活用していくつもりです。ミスのない効率的な事務作業を実現する上でシステムは現状でも大きな役割を果たしてくれていますが、更に先を見据えてゴルフ場運営のDXを進めていかなければならないと考えています」と小堂支配人は話した。

開場100周年の準備に向けてプロダクションプリンターを導入

2026年に開場100年を迎える名門ゴルフ場 デジタル活用で会員サービスの充実を図り、伝統と格式を未来へ伝える 宝塚ゴルフ倶楽部(兵庫県)
宝塚ゴルフ倶楽部の100周年記念のロゴマーク

宝塚ゴルフ倶楽部は、2026年に開場100周年を迎える。同年10月には新旧二つのコースで日本女子オープンゴルフ選手権が開催されることが決まっており、現在、コースのセッティングを着々と進めている。それ以外にも様々な記念イベントや、帽子、キャディーバックといった記念グッズの制作を企画している。

100周年に向けて様々な準備を進めるにあたり、印刷作業の効率化と印刷物の品質向上を図るため、2023年8月に導入したのが、FAX、コピー、スキャナー機能と高度な印刷機能を備えたプロダクションプリンターだ。

オフィス業務からノベルティグッズの制作まで幅広くICTを活用

2026年に開場100年を迎える名門ゴルフ場 デジタル活用で会員サービスの充実を図り、伝統と格式を未来へ伝える 宝塚ゴルフ倶楽部(兵庫県)
総務部の花戸美秀子係長

プロダクションプリンターは、オフィス業務からノベルティグッズの制作まで幅広い用途に使うことができる。宝塚ゴルフ倶楽部が導入した機種は、1分あたり最大80枚の印刷が可能。連続印刷時も高画質を保つ安定性を備え、通常の用紙だけでなくPET素材、耐水紙、不織布、クリアファイルなど幅広い素材に対応できる。用紙の質感に合わせて、印刷画像の光沢度を調整できる機能や、はがきから最大1.2メートルの長尺用紙まで幅広いサイズで印刷できる機能も備えている。

「プロダクションプリンターは少量多品種の印刷に大きな効果を発揮しています。記念大会などのノベルティグッズのラインナップの拡充に活用していきたいと考えています。今後、会員の皆様へのサービスを充実させていく上で本当に頼りになる存在です」と総務部の花戸美秀子係長は話した。

外注していたノベルティ用クリアファイル制作を内製化 外注していた時は納期が2週間以上かかっていたが今では数分、コストも大幅削減

2026年に開場100年を迎える名門ゴルフ場 デジタル活用で会員サービスの充実を図り、伝統と格式を未来へ伝える 宝塚ゴルフ倶楽部(兵庫県)
パソコンでノベルティとして配布するクリアファイルをデザインする様子
2026年に開場100年を迎える名門ゴルフ場 デジタル活用で会員サービスの充実を図り、伝統と格式を未来へ伝える 宝塚ゴルフ倶楽部(兵庫県)
クリアファイルを印刷する様子

最近作成したのが、毎年6月にゴルフ場の敷地内を流れる逆瀬川上流で開催する「ホタル鑑賞の夕べ」で参加者に配布するクリアファイルだ。「以前は外部の業者に制作を発注していたので、費用がかかる上に納入まで2週間から1ヶ月程度待たなければなりませんでした。プロダクションプリンターを導入したことで、パソコンでデザインを作成すれば数分で必要な枚数を印刷できるようになったので、クリアファイルの制作コストの削減と制作期間の短縮を一度に実現することができました」と花戸係長は説明した。

改正電子帳簿保存法に対応するためクラウド型の証憑電子保存サービスを活用

2026年に開場100年を迎える名門ゴルフ場 デジタル活用で会員サービスの充実を図り、伝統と格式を未来へ伝える 宝塚ゴルフ倶楽部(兵庫県)
クラウド型の証憑電子保存サービスを活用する様子

文書管理の面でもデジタル化に取り組んでいる。2022年1月に改正された電子帳簿保存法に沿った電子データの保存体制を確立するため、クラウド型の証憑電子保存サービスを活用している。

「電子帳簿保存法の改正に伴って紙書類で受け取った証憑は紙のまま保存できますが、メールなどを通じて電子データで受け取った証憑については電子で保存しなければならなくなりました。サービスのおかげで、証憑のデータをクラウドにアップロードして取引先名、取引金額、取引日を入力すれば法律に準拠した形で電子保存できるので、法律の改正前に想定していたよりスムーズに対応できています」と小堂支配人。

コースやクラブハウスの維持、管理に必要な資材、物品、作業の調達に対して委託先から届く請求書は現在のところ、9割が紙文書。現状では電子データで送られてくる請求書は少ないが、今後の社会のデジタル化に対応するため、しっかりと準備していきたいという。更なる業務のデジタル化を進めるため、会員向けの請求書発行や決裁の電子化などにも目を向けている。

ゴルフ場全体での各カートの位置をリアルタイムで可視化できる「ゴルフカートの運行管理システム」の導入を検討

全国のゴルフ場でプレーのセルフ化が進む中で、宝塚ゴルフ倶楽部は完全キャディー制を存続している。現在、プレー中のキャディーとの連絡は無線機を使って行っているが、サービスの更なる向上を図るため、GPS(全地球測位システム)技術を活用したゴルフカートの運行管理システムの導入を検討している。

システムはゴルフカートに設置されるナビゲーション端末とカートを管理する基地局用端末によって構成され、ゴルファーとゴルフコースの管理者に様々な情報をリアルタイムで提供する機能を備えている。ゴルフ場全体での各カートの位置をリアルタイムで可視化できるので、これまで以上に円滑なプレーの進行管理が可能になるという。キャディーのスコア記入などの作業の効率化やゴルファーへの機動的な情報提供など様々な効果も期待できる。

子どもや若者へのゴルフの普及活動に力を注ぐ

数多くのゴルファーを育ててきた宝塚ゴルフ倶楽部は、社会貢献の一環として子どもや若者へのゴルフの普及活動に力を入れている。宝塚市内の小学校に出向いて、米国発祥の初心者向けゴルフ、「スナッグゴルフ」を体験してもらっているほか、宝塚ゴルフ倶楽部を会場にスナッグゴルフを体験してもらう企画も行っている。「次世代の人たちにゴルフを通じてスポーツの楽しさやマナー、エチケットの大切さを知っていただきながら世代間交流も進めていきたい」と小堂支配人は微笑んだ。

デジタル技術を活用して時代の変化に対応、伝統と格式を守り続ける

2026年に開場100年を迎える名門ゴルフ場 デジタル活用で会員サービスの充実を図り、伝統と格式を未来へ伝える 宝塚ゴルフ倶楽部(兵庫県)
宝塚ゴルフ倶楽部のクラブハウスの外観

100年にわたり、日本のゴルフの普及を支え、地域の生活文化の形成に大きな役割を果たしてきた宝塚ゴルフ倶楽部。デジタル技術の活用に象徴されるように時代の変化に対応し、次世代に目を向けている。だからこそ伝統と格式を守り続けることができるのだと強く感じた。

企業概要

法人名一般社団法人宝塚ゴルフ倶楽部
本社兵庫県宝塚市蔵人字深谷1391-1
HPhttps://www.takarazuka-gc.or.jp
電話0797-71-2251
設立2013年4月(開場:1926年8月)
従業員数140人
事業内容ゴルフ場の運営