ブルガリアやトルコ、ギリシャなど様々な地域で古くから食されている伝統食品のヨーグルト。その歴史は紀元前数千年にまでさかのぼり、革袋などに保存しておいた乳の中に乳酸菌が偶然混ざり、発酵したことで生まれたといわれている。自然の素材から作られるナチュラルな食品であることに加え、乳酸菌の健康作用にも期待できることから、安全で体に良い食品として日本でも広く認知されている。最近では、免疫力アップや内臓脂肪減少など機能性を強化した商品が次々に登場してきている。その中で今年3月、米国食品医薬品局(以下、FDA)がヨーグルトについて2型糖尿病リスクの軽減効果があるとして、「限定的健康強調表示」を認めることが発表され、ヨーグルトの新たな機能性に注目が集まっている。
今回のFDAの発表によると、ヨーグルトに2型糖尿病リスクを減らす可能性があることが認められ、乳製品メーカーは、ヨーグルト製品に「ヨーグルトを定期的に摂取すると2型糖尿病の発症リスクが低下する可能性がある」といった表示を行うことが可能になるという。該当する表示は、特定の商品ではなくヨーグルト全般が対象で、砂糖や脂肪の含有量に関係なく表示できるようになるとのこと。また、FDAでは、最もレベルの高い「健康強調表示」を容認するにはエビデンスが足りないことから、それに準じる「限定的健康強調表示」として、但し書き付きで表示を認めている。
具体的には、糖尿病のリスクを低減させる可能性があるヨーグルトの最低摂取量を「1週間当たり2カップ(3食分)」とし、これに基づき、商品への「限定的健康強調表示」として2パターンの表示案を示した。1つ目が「1週間に少なくとも2カップ(3食分)のヨーグルトを定期的に食べると、2型糖尿病のリスクが軽減される可能性があります。限定的ですが、このことを支持する知見があると、FDAは結論づけています」というもの。2つ目が「限定的な科学的証拠によりますが、少なくとも週に2カップ(3食分)のヨーグルトを定期的に食べると、2型糖尿病のリスクが軽減される可能性があります」という表示となる。
一方で、砂糖を多く含む商品については、糖尿病のリスクを高めるおそれがあるため、「米国成人の3人に1人が糖尿病予備軍である中、砂糖を多く含むヨーグルトにも表示を行うかどうかについては、各乳製品メーカーで慎重に検討してほしい」と呼びかけている。
今回の発表を受け、米国乳製品メーカーなどから構成される国際乳製品協会(IDFA)の科学・規制問題担当者は、「ヨーグルトの定期的な摂取は公衆衛生にも大きな利益をもたらす。乳製品が健康に良いと実証する研究は増えており、FDAによる今回の決定は、2025年の食事ガイドライン諮問委員会でも綿密に検討されるべき」と述べている。
現在、日本で販売されている特定保健用食品(トクホ)・機能性表示食品のヨーグルトでは、「腸内環境の改善」「便通の改善」「整腸作用」「免疫力の強化」「内臓脂肪の減少」「血圧の低下」「認知機能の維持」「尿酸値の上昇抑制」「胃の負担軽減」などの健康機能が表示されている。今回FDAが発表した「限定的健康強調表示」は、米国における制度だが、日本でも同様の表示が認められれば、ヨーグルトの新たな機能性として「2型糖尿病のリスク低減」が加わることとなる。
糖尿病は、日本でも患者数が急増しており、予備軍を含めると2000万人以上といわれている。ヨーグルトの定期的な摂取が2型糖尿病のリスクを軽減できるという機能性表示は、昨今の健康志向の高まりにともなう伝統食品の見直しや食品のナチュラル回帰などの動きをさらに加速させることも考えられる。FDAの発表を受けて、今後の日本国内での動向に注目される。