配電盤設備を一貫生産する独自のビジネスモデルで高収益企業に成長 業務のデジタル化でさらなる飛躍を狙う 三山製作所(群馬県)

目次

  1. 先代が板金塗装の下請け事業のために1968年に創業 社長を引き受けると上司や先輩従業員が退職 「絶対に潰さない」と意地で昼夜働き業績上向く
  2. 働き詰めでも黒字化できず 先代が残したNC加工機を武器に各種配線盤の一貫生産システムを構築 メーカー宣言するも経営状態や技術力を値踏みされ、受注に苦労
  3. 受注に苦労し「何でもやります」とリスク案件も引き受けるうちに信頼と実績を積む 外注使わずコスト競争力に強み 結果、高収益企業に成長
  4. 設備投資と徹底した標準化でCAD活用の設計業務を高効率化 NC加工機で板金を成形、検査まで一貫生産に強み 工場やサービスエリア、世界遺産設備にも導入
  5. ホームページを刷新して求人活動強化 若者の業界離れ食い止めるため認知度アップを狙う
  6. 今後5年で20人の採用目指す 働き方改革とデジタル化推進で継続的に人材採用 福利厚生も充実
  7. 自社開発した太陽光発電で工場の電力の半分を賄う 2023年にSBT認定を受け、2030年までにCO2を42%削減
中小企業応援サイト 編集部
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赤字経営の株式会社三山製作所を先代から任された大淵純代表取締役は一念発起して下請け事業から配電盤メーカーに転換。少数精鋭で設計から製造、検査までの一貫生産システムを構築し、同社の高圧受変電設備は工場や大型商業施設など幅広い分野に導入されている。いまや業界でも注目される高収益企業だが、将来を見据えてデジタル化による業務効率改善と積極的な人材採用に舵を切り、業界の認知度アップに意欲を燃やす。(TOP写真:送られてくるCADデータをもとにNC加工機で板金を加工する)

先代が板金塗装の下請け事業のために1968年に創業 社長を引き受けると上司や先輩従業員が退職 「絶対に潰さない」と意地で昼夜働き業績上向く

配電盤設備を一貫生産する独自のビジネスモデルで高収益企業に成長 業務のデジタル化でさらなる飛躍を狙う 三山製作所(群馬県)
自社で組立・溶接も行うことで高いコスト競争力と納期短縮を実現

1968年に大淵社長の養父が創業した有限会社三山製作所は当初、板金の加工から塗装・組立までの下請け会社だったが、高度経済成長期の建設ラッシュを追い風に業容を拡大。1974年には株式会社化し、塗装工場、組立工場を増設、さらに電装も行うようになった。大淵社長が三山製作所に入社した1993年には板金工場を新築しNC加工機を導入。一貫生産体制を構築し、コスト低減や納期短縮で競争力を高めたが、下請け主体の事業は採算が悪く経営状態は安定しなかった。

先代が体調を壊して経営の一線から退く時、会社は赤字が続いていたが、上司や先輩たちは「おまえが引き継ぐなら頑張るよ」と言ってくれた。しかし、実際に大淵社長が27歳で社長に就任すると、ほとんどが退職した。大淵社長は「勢いで引き受けたけど、皆、本心は会社が潰れると思っていたようだ」と笑う。新米社長は残った3人の従業員と「絶対に潰してなるものか」と意地になって昼夜なく働いた。

働き詰めでも黒字化できず 先代が残したNC加工機を武器に各種配線盤の一貫生産システムを構築 メーカー宣言するも経営状態や技術力を値踏みされ、受注に苦労

配電盤設備を一貫生産する独自のビジネスモデルで高収益企業に成長 業務のデジタル化でさらなる飛躍を狙う 三山製作所(群馬県)
大淵純社長は 「下請けでは採算性は低い」と判断。脱下請け宣言をして独自製品の開発を強化した

業績は少しずつ上向いてきた。「あと1~2割利益が出れば(黒字経営で)やっていける」(大淵社長)ところまできたが、ゼネコン、サブコンを経由して発注される仕事の採算性は低く収益率向上は容易ではなかった。

起死回生を狙って決断したのが下請けからの脱却だった。社内で「下請けはやめてメーカーとして自立していく」と宣言しても、もちろん簡単に直接注文が来るわけではない。それまでの取引関係はぎくしゃくする上、発注元も経営状態や技術力を値踏みして容易に良い仕事をくれるわけではなかった。

受注に苦労し「何でもやります」とリスク案件も引き受けるうちに信頼と実績を積む 外注使わずコスト競争力に強み 結果、高収益企業に成長

配電盤設備を一貫生産する独自のビジネスモデルで高収益企業に成長 業務のデジタル化でさらなる飛躍を狙う 三山製作所(群馬県)
完成した配電盤が仕様書通りに作られ、要求された機能を使い切っているかを念入りに検査する

「最初は数万円程度のお試しのような仕事をどうにかもらってきて、不眠不休で仕上げた」と大淵社長は振り返る。図面がない既存の設備で他社が手掛けない更新案件も「何でもやります」とリスク覚悟で引き受けて綿密な調査の上製造した新設備を納品して喜ばれたことも少なくない。丁寧な仕事ぶりと板金塗装から検査まで仕上げられる一貫生産の強みで少しずつ信頼と実績を積み上げていった。

2023年の納入実績は高圧受変電装置が271件、制御盤が410件、分電盤520件に上る。「県内に同業が15社あるが、ワンストップで高圧受変電装置を製造できるのは当社含めて2社だけ。先代が残してくれた板金加工設備のおかげでいまのビジネスモデルがある」と大淵社長が自慢するように、外注を使わないコスト競争力と高い収益力で業績は好転した。自社製品を作り始めた2009年2月期に2億円弱だった売上高は、2024年2月期は9億2000万円に大幅増加した。

設備投資と徹底した標準化でCAD活用の設計業務を高効率化 NC加工機で板金を成形、検査まで一貫生産に強み 工場やサービスエリア、世界遺産設備にも導入

配電盤設備を一貫生産する独自のビジネスモデルで高収益企業に成長 業務のデジタル化でさらなる飛躍を狙う 三山製作所(群馬県)
図面素材の標準化でCAD活用の設計業務効率を向上した

高い利益率の秘密は、上流から下流まで設備投資を惜しまず、徹底した標準化による省エネの追求と徹底した効率化を実現したことにある。設計部門は女性を含むわずか2人がCADを操作して標準化された素材を組み合わせて短期間で図面を仕上げ、開発部門に渡す。

「年商9億円規模の設計作業を2人でこなすというと驚かれるが、受変電装置の配線回路はパターン化しているので、上手く保存・再利用すれば大幅に効率化できる」(大淵社長)。顧客の要求や仕様を把握して設計要件を定義すれば、電力容量や回路構成、制御機能に適した部品や機器を選定して仕様を定義してCADで図面を作成できるという。

製造部門は入力された製造データをもとに、「5年で入れ替える」(大淵社長)という大小のNC加工機で板金を成形し、表面処理・塗装を経て、組立・検査部門で最終的な品質管理まで、一つの工場で完結する流れだ。

ここで製造された高圧受変電設備は、大手自動車メーカーや電機メーカーの工場など北海道から九州まで多くの大型施設に設置されている。関東近辺の高速道路の主要サービスエリアにも相次ぎ導入され、栃木県日光市の世界遺産の設備も受注した。

ホームページを刷新して求人活動強化 若者の業界離れ食い止めるため認知度アップを狙う

配電盤設備を一貫生産する独自のビジネスモデルで高収益企業に成長 業務のデジタル化でさらなる飛躍を狙う 三山製作所(群馬県)
高圧受変電設備は大規模設備には不可欠な電気インフラだが、若者の認知度の低さが悩みのタネだ

三山製作所に営業担当はいない。ホームページには「全員がオールラウンダー。お客様の困りごとにも、全員が協力し合って対応します」とある。「いまは注文をさばくので手一杯。新規開拓しても手が回らない」(大淵社長)という事情もある。

キュービクルと呼ばれる主力の高圧受変電設備は、電力会社から送られてくる高圧電量を施設内で使用できる通常電圧に変換する設備。これらの配電盤設備は電気を使うどんな施設でも不可欠な電気インフラだが、通常は屋上や地下、屋外に設置されていて認知度が低く、「配電盤メーカーで働きたいという若者がほとんどいない」のが大淵社長の悩みのタネだ。

ホームページ作成用ツールを2021年から利用しているが、2023年には特に求人に力点を置いて改良した。若者へのアピール度を高める一方、地元の専門学校や工業高校にも求人のあいさつに回り「良い感触を得ている」という。これらの努力の結果、2024年4月に1人入社した。

今後5年で20人の採用目指す 働き方改革とデジタル化推進で継続的に人材採用 福利厚生も充実

配電盤設備を一貫生産する独自のビジネスモデルで高収益企業に成長 業務のデジタル化でさらなる飛躍を狙う 三山製作所(群馬県)
勤怠管理システムや生産管理システムを導入し全社的な業務の効率化を目指す

大淵社長は「まだまだこれから。退職も考えると今後5年で20人くらいは採用したい」とさらに採用活動を強化する方針だ。継続的な人材採用のためには働き方改革やデジタル化による事業効率向上にも積極的に取り組みを続けている。

生産管理システムは2016年、勤怠管理システムは2020年に活用を開始。2021年にはUTM(統合セキュリティ管理装置)によるコンピューターウイルスやサイバー攻撃への備えも強化した。さらに業務管理部門や製造部門の効率化を進める計画でSIベンダーと話を進めている。「CAD図面やNC装置へのデータ伝送までの前工程は自動化と標準化ができたが、これからやることは多い」と大淵社長。

福利厚生面でも、若い従業員向けに男性の育児休暇取得や有給取得の促進を図る一方、育児休業時の全額賃金化も検討している。若手採用には就労環境の改善も不可欠だからだ。

自社開発した太陽光発電で工場の電力の半分を賄う 2023年にSBT認定を受け、2030年までにCO2を42%削減

配電盤設備を一貫生産する独自のビジネスモデルで高収益企業に成長 業務のデジタル化でさらなる飛躍を狙う 三山製作所(群馬県)
大小のNC加工機など設備が増えて本社工場が手狭になってきたため、移転を検討している

同社は2021年から工場の電力の半分を自社開発した太陽光発電で賄っている。グリーンエネルギーの積極的な活用は社会貢献活動の一環だが、業界の認知度向上も狙いの一つだ。SDGs(持続可能な開発目標)の推進に加え、県内では珍しい中小企業向け温室効果ガス排出削減目標(SBT)を策定し2023年10月に認定された。2030年度までに2022年度比でCO2を42%削減する計画だ。

配電盤メーカーとして安定経営を目指して遮二無二突っ走ってきた大淵社長だが、長女がすでに経理部門で働いているほか、長男も板金加工を習得中で後継者の心配はひとまずなくなった。「事業承継の心配はなくなったかな」と頬が緩む。

企業概要

会社名株式会社三山製作所
住所群馬県伊勢崎市宮子町1700番地
HPhttps://miyama-factory.co.jp/
電話0270-25-8059
設立1974年9月
従業員数22人
事業内容 高圧受変電装置、制御盤、分電盤、各種開閉器盤、鉄製キャビネット等の製造、焼付塗装、各種改修工事