税金
(画像=PIXTA)

新しく個人事業主として事業を開始する際、今までは会社任せだった「税金」について自分で対処することが必要になる。ここでは、個人事業主として支払う必要がある税金について、その内容と計算方法などを整理していく。

目次

  1. 個人事業主は税金を自身で支払わなければならない
  2. 個人事業主が納める税金の種類
    1. 所得税(国税)
    2. 消費税(国税)
    3. 個人事業税(地方税)
    4. 住民税(地方税)
  3. 個人事業主の所得税の計算方法
    1. 個人事業主の所得税を計算
    2. 控除される所得税も
    3. 青色申告で節税可能?
    4. 住民税
    5. 消費税
    6. 個人事業税
  4. 個人事業主と法人の違い
    1. 税金面での違い
    2. 税金だけでは比較できない
    3. 開業時にかかる費用の違い
  5. 個人事業主が支払わなければならない税金は把握しておこう

個人事業主は税金を自身で支払わなければならない

サラリーマンと個人事業主で税金について大きく異なる点は、「個人事業主は確定申告をしなければいけない」ことだ。

会社勤めのときは給料から源泉徴収で税金が控除され、確定申告の代わりに年末調整を行って1年間の税金を精算していた。しかし、個人事業主は自分の収入に対し、各税金で定めた方法に基づいて税金の申告を行い、納税しなければならない。必要となる税金は、所得税・消費税・個人事業税・住民税などが挙げられる。

個人事業主が納める税金の種類

個人事業主が納める必要がある税金について、以下でその種類と内容について説明していく。

所得税(国税)

個人が利益を得た際に納める国への税金で、その性質から9種類(利子・配当・不動産・事業・給与・譲渡・一時・雑所・山林)に分かれている。これらを合算して所得額を計算し、それに所得税税率をかけて算出する。所得の種類によって、所得額の計算方法や損益通算(所得同士で黒字と赤字を相殺すること)の規定が異なっているため注意が必要だ。個人事業主は基本的に事業所得に該当する場合が大半であると思われるが、事業の種類や形態によっては他の所得(不動産所得、雑所得など)に該当するケースもあり得るため、その点にも留意する必要がある。

消費税(国税)

消費税は基本的に「最終消費者が購入する際に消費税を負担する」という考え方で課税されているが、日本では消費者が直接納付する方法をとっていない。そのため、各事業者が事業における消費税の収支差額(売り先から受け取った消費税と事業に関して買い先に支払った消費税の差額)を納付することで、消費者に直接課税するのと同じ効果を発生させている。このような背景から、個人事業主についても、事業に関して発生した消費税の申告・納付義務があるのだ。

個人事業税(地方税)

個人事業主の所得に対して課税される税金で、現在70の業種において個人事業税が設定されている。ほぼすべての業種が対象となるが、業種によっては税率が3%~5%と差がある。不動産賃貸業・駐車業に関しては、規模によって個人事業税の課税対象になるかどうかが決定する。

参考:https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/zei/1170306367409.html

住民税(地方税)

住民税は、事業主個人として住所を有する地方自治体(都道府県・市町村)に納付する税金だ。課税方法は所得額に対して課税される所得割と、住所がある人に対して一律に課税される均等割の2種類がある。

参考: http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/1110882988423/index.html

個人事業主の所得税の計算方法

上記では、個人事業主が考慮しておく必要がある税金についてまとめて紹介した。ここからは、具体的にどのような計算をする必要があるのか、各税金についての計算方法の概略を紹介していく。

個人事業主の所得税を計算

今回は「個人事業主の所得は事業所得のみ」と仮定した上で、税金の計算方法を紹介していく。

まず、「事業による収入-事業にかかる仕入・原価・経費=事業」に関する収益を算出する。次に、事業所得に関する控除(青色申告控除)を控除し、控除前所得額を算出する。そこから、所得控除(基礎控除・扶養控除・配偶者控除・社会保険料控除・生命保険料控除など)を控除したものが、課税所得金額を計算する。

さらに、課税所得額に対して所得税の税率(所得額に応じて5%~45%の累進課税、以下の速算表で計算するとよい)をかけて、所得税額を算出する。その所得税額から源泉所得税を控除したものが、納付税額だ。

【速算表】
所得額×所得額に対応した税率-控除額=所得税額

課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円を超え 330万円以下10%97,500円
330万円を超え 695万円以下20%427,500円
695万円を超え 900万円以下23%636,000円
900万円を超え 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

参考: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

控除される所得税も

所得税の計算にあたっては、上記の流れの他に計算した所得税額から税額控除できる特別なものも存在するため、合わせて計算することが必要だ。

代表的なものとしては、住宅ローン利用者に対する「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除」があるが、それ以外についても多様な控除項目がある。そのため、自分が対象となるかどうか、対象とするためにどのような手続きが必要かなどを事前に検討しておくとよい。詳しい内容については、以下のリンクから確認されたい。

国税庁タックスアンサー: https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/1200.htm

青色申告で節税可能?

上記でも簡単に紹介したが、「青色申告」というものが存在している。これは、一定の経理処理を行って経理資料を整備しておくことを条件として、税金に関して毎年優遇したり (青色申告特別控除)、過去の損失を翌年度以降も一定期間所得と相殺できたり(繰越控除)する仕組みだ。青色申告特別控除は、経理の記帳レベルに応じて65万円と10万円に分かれている。

節税対策として簡単かつ有効な手段なため、個人事業主が事業を行うにあたり、必ず対応しておきたい内容だ。しかし、申告前に事前の届出が必要な点、必要な手続き(必要な帳簿の作成・保存および期限内申告)を行っていないと取り消される場合がある点においては留意が必要となる。

住民税

住民税のうち所得割は、基本的に上記の国税に対する確定申告内容をもとに計算されるものだ。ただし、一部控除等については国税と取り扱いが異なるものがあるため、注意が必要とされる。

均等割は各人に均等に課されるものではあるが、所得額・扶養親族の人数などが一定の条件に該当する人は免除される。

消費税

消費税は、原則的には消費税の対象となる売上額(課税売上)に対する消費税額から課税売上を獲得するために使った仕入(課税仕入)に対し、かかった消費税を減じた(仕入税額控除)差額を納付する、という仕組みで計算される。しかし、消費税がかからない取引を控除するなど、場合によっては非常に複雑な計算が必要になる税金だ。そのため、資本金・売上高などが小規模な事業者に対しては、特例が設けられている。

まず、一定の基準に該当する法人・個人事業者は、開業後1年間は基準期間内の課税売上高がないため、消費税の課税が免除される。その後も、課税売上高が1,000万円以下の場合には免税事業者となり、消費税の納付義務はない。

また、課税売上高5,000万円以下の事業者に対しては「簡易課税」という仕組みが設けられ、実際の支出額にかかわらず、課税売上高の一定割合を、みなし仕入として控除した上で消費税額を計算する仕組みが認められている。この簡易課税制度を利用する場合には、課税期間開始前に事前に税務署への届出が必要だ。

その他、消費税に関しては大規模な設備投資を伴う場合など最初から原則課税を選択するほうが還付を受けられるといったメリットがあるケースも考えられるため、事前に税理士などに相談することも重要である。

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm

個人事業税

基本的に、上記の国税に対する確定申告内容をもとに計算される。一部控除などについては、国税と取り扱いが異なるものがあるため注意したい。青色申告特別控除は適用されないが、その代わり、事業主控除290万円および事業専従者(15歳以上の親族で事業従事しているもの)控除を行った上で、各事業種別に応じた税率をかけて算出される。

個人事業主と法人の違い

個人事業主と法人は事業を行っているという点では同じだが、税金などの観点ではどのような違いがあるのだろうか。下記の通り、税金面・税金面以外・必要経費などの観点から比較してみる。

税金面での違い

所得税には「累進課税」という仕組みがあり、所得額が高額になるほど税負担が増加する。一方で、法人税は税率が2段階になっているため、一定以上の利益が出ている場合には、法人のほうが税金面では有利に働きやすい。また、法人の場合には役員報酬・給与を利用した所得分散効果や給与所得控除、法人でしか損金経理が認められない支出(役員保険など)を組み合わせることにより、個人事業主に比べて所得をコントロールしやすい側面もあるため、多額の利益が出ている場合において税金面では法人が有利になるケースが多い。

また、法人の場合には各自治体に支払う法人住民税に均等割(資本額・従業員数に基づいて課税される一定額の税金)があるため、それも計算に入れて検討することが必要だ。

税金だけでは比較できない

事業をする際に、法人と個人事業で損得を比較する場合には、税金以外のことも検討しておきたい。例えば、法人は比較的経理処理が複雑になり、毎期において決算書の作成が求められる。事業主自身に税務知識が乏しい場合には、税理士に会計処理・税務処理を依頼する場合が大半であり、そのコストを考える必要もある。

また、法人の場合には社会保険(厚生年金)への加入が原則必須となるため、給与を支払っている人(社長を含む)に対して、保険料の約半額を会社が負担しなければならない。それ以外にも、法人には定期的な登記にかかる費用や、税金以外にもランニングでの経費がかかることも計算に入れることが重要だ。

その一方、法人化することで対外的な信用の向上につながったり、従業員を採用する際にイメージ上で有利になったり、比較的大手と取引しやすくなるなど、コスト以外の要因もあるため、事業の状況を総合的に勘案して決定するとよいだろう。

開業時にかかる費用の違い

開業時にかかる費用として、個人事業主の場合には税務署や関係各所に事業開始届を提出すれば活動を開始できるため、特別な費用などはほとんどない。法人として開業する場合には法人登記にかかる費用・定款作成にかかる費用などが必要となるため、留意したい。

個人事業主が支払わなければならない税金は把握しておこう

以上のように、個人事業主になる場合には、税金などの面において自らで考えて対処していかなければならない。個人事業主として支払わないといけない税金をしっかり把握して、事前に対処しておくことが求められる。場合によっては、税理士と顧問契約を締結することも検討すべきだ。

文・THE OWNER編集部

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