ラガーマンが率いる福祉施設は重度障がい児も率先して受け入れる頼もしい存在 カラー複合機を駆使してオリジナル教材作りも ASSIST BASE(アシストベース) (群馬県)

目次

  1. 株式会社が経営していた放課後等デイサービス、生活介護、学童クラブの福祉3事業を引き継ぎ、一般社団法人を設立
  2. 放課後等デイサービス「未来フレンズ」、生活介護「ミライフ」、学童クラブ「未来」発足 他の施設で断られた人も積極的に引き受ける
  3. 細井代表理事はラグビー強豪校で活躍したラガーマン 持ち前の敵陣突破力で難局を乗り切ってきた コーチ業と施設管理者にやりがいの共通点も
  4. 上原理事は児童福祉のプロ 事務作業に追われることなく「純粋に子どもたちと遊びたい」と正規職員からパート職員に転じた経験も
  5. 職員約20人のチームワークは万全 事業拡張へさらに支援レベルの向上を目指す
  6. 「障がい児は視覚情報が重要」とカラー複合機で教材づくり 万一に備えてAEDも常備
  7. 事業拡張に伴い、事務作業の効率化は必須 成人と子どもの両方の障がい者支援事業に使えるソフトの導入を模索
中小企業応援サイト 編集部
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群馬県藤岡市にある一般社団法人ASSIST BASE(アシストベース)は、放課後等デイサービス「未来フレンズ」、生活介護「ミライフ」、学童クラブ「未来」の福祉3事業を運営している。国体チームの選手経験もあるラガーマンが率いるチームワークの良さを生かし、重度心身障がい児・者や医療的ケア児・者らを率先して引き受けるなど、地域の利用者や保護者らにとって大いに頼りになる存在だ。カラー複合機を駆使してオリジナル教材を作り、万一に備えてAED(自動体外式除細動器)を備えるなどICTも活用。今後は、さらに福祉の裾野を広げていくため、事務作業の効率化に向けて、支援計画・記録・請求ソフトの導入も検討していく方針だ。(TOP写真:カラー複合機でコピーしたイラストをラミネート加工した教材。一つひとつ手作りする)

株式会社が経営していた放課後等デイサービス、生活介護、学童クラブの福祉3事業を引き継ぎ、一般社団法人を設立

ラガーマンが率いる福祉施設は重度障がい児も率先して受け入れる頼もしい存在 カラー複合機を駆使してオリジナル教材作りも ASSIST BASE(アシストベース) (群馬県)
立ち上げ当初の事を語る細井代表理事と上原理事

ASSIST BASEが設立されたのは2023年2月。それまでは株式会社組織で放課後等デイサービスなどの3事業を運営していたが、経営者が手を引くことになり、従業員だった細井悠平代表理事と上原美香理事が中心となって一般社団法人を設立するとともに、施設や職員、利用者、それに事業の名称もそのまま引き継いだ。このためASSIST BASEとして本格的に稼働を始めたのは春休み明けの2023年4月1日のことだ。

細井代表は「私たちとしては、職員と利用者さんの居場所を守りたいという一心で法人を立ち上げました」と当時の心境を語る。上原理事も「法人の設立登記申請を行政書士に依頼せずに自分たちで書類を作り、公証役場や法務局にも行きました」と設立当時を振り返る。

放課後等デイサービス「未来フレンズ」、生活介護「ミライフ」、学童クラブ「未来」発足 他の施設で断られた人も積極的に引き受ける

ラガーマンが率いる福祉施設は重度障がい児も率先して受け入れる頼もしい存在 カラー複合機を駆使してオリジナル教材作りも ASSIST BASE(アシストベース) (群馬県)
ASSIST BASEの事務室と放課後等デイサービス「未来フレンズ」が入るビル。右に見える住宅が生活介護「ミライフ」

放課後等デイサービスは小中学、高校に就学する障がい児を対象に、授業の終了後や休業日に、生活能力の向上に必要な訓練や、社会との交流の促進などの便宜を供与する施設だ。ASSIST BASEが運営する放課後等デイサービス「未来フレンズ」は県道沿いの2階建てビルの1階にあり、2024年1月時点で34人が利用している。ビルの2階は事務室だ。

一方、生活介護は通所による障がい者支援施設で、常に介護を必要とする人に対し、入浴・排せつ・食事などの介助に始まり、家事や生活上の相談、創作的活動・生産活動の機会の提供、身体機能や生活能力の向上に必要な援助などを行う。ASSIST BASEの生活介護「ミライフ」は、放課後等デイサービス「未来フレンズ」と同じ敷地内にある平屋の住宅で、同時点で5人が利用。学童クラブ(放課後児童健全育成事業)はおおむね10歳未満の小学生で、保護者が就労や疾病などで放課後に家庭にいない子どもを対象に、遊びや生活を支援する。ASSIST BASEの学童クラブ「未来」は、他の2施設とは少し離れた場所にあり、同時点で約30人が利用している。

ASSIST BASEの特徴は、放課後等デイサービスで小学生から高校生まで幅広い年齢の子どもが利用していることと、市内の特別支援学校に通っている重度の障がい児や医療的ケア児が多いことだ。気管切開を受けて胃ろうカテーテルで栄養を摂取している子どもや、言語障がいのため体当たりすることでしかコミュニケーションが取れない子どもなどがいる。他の施設で受け入れを断られた子どもや、自分からそれらの施設に行きたがらない子どもを児童福祉相談員を通じて紹介されることが多く、そうした子どもを積極的に引き受けているからだ。「他の施設に断られた子に対し、逆に私たちは何を準備できるだろうかと考えるようにしているので、絶対にお断りするようなことはありません」と細井代表は断言する。

ラガーマンが率いる福祉施設は重度障がい児も率先して受け入れる頼もしい存在 カラー複合機を駆使してオリジナル教材作りも ASSIST BASE(アシストベース) (群馬県)
放課後等デイサービス「未来フレンズ」の室内
ラガーマンが率いる福祉施設は重度障がい児も率先して受け入れる頼もしい存在 カラー複合機を駆使してオリジナル教材作りも ASSIST BASE(アシストベース) (群馬県)
生活介護「ミライフ」の室内

長期休暇などのイベントの際には3つの事業の利用者たちが全員で一緒に活動するのも、ASSIST BASEならではの特徴だ。2023年の夏休みにはバスで長野県長野市にある「OYAKI FARM(おやきファーム)」に行き、おやき作り体験を楽しんだ。冬休みには茨城県大洗町の「アクアワールド茨城県大洗水族館」を見学。2024年正月は餅つき大会でにぎわった。

ラガーマンが率いる福祉施設は重度障がい児も率先して受け入れる頼もしい存在 カラー複合機を駆使してオリジナル教材作りも ASSIST BASE(アシストベース) (群馬県)
2023年の夏休みはバスで長野県長野市にある「OYAKI FARM(おやきファーム)」を体験
ラガーマンが率いる福祉施設は重度障がい児も率先して受け入れる頼もしい存在 カラー複合機を駆使してオリジナル教材作りも ASSIST BASE(アシストベース) (群馬県)
2023年の冬休みには茨城県大洗町の「アクアワールド茨城県大洗水族館」を見学

細井代表理事はラグビー強豪校で活躍したラガーマン 持ち前の敵陣突破力で難局を乗り切ってきた コーチ業と施設管理者にやりがいの共通点も

ラガーマンが率いる福祉施設は重度障がい児も率先して受け入れる頼もしい存在 カラー複合機を駆使してオリジナル教材作りも ASSIST BASE(アシストベース) (群馬県)
国体チームの選手にも選ばれたラガーマンの細井悠平代表理事

細井代表は明和県央高校(高崎市)から帝京大学と、ラグビー強豪校で活躍したラガーマン。現在も地元の社会人チームに所属しており、国体チームの選手にも選ばれてきたが、2022年に試合でけがをしたのを機に同チームのコーチに回っている。ポジションは体力とスピードの両方を備え、敵陣突破力が求められるアウトサイドセンター。その持ち前の突破力で、福祉施設経営の肩代わりという難局を乗り越え、ラグビーで培ったチームワークの精神を発揮して事業を運営している。

もともと高校のラグビーコーチを経て東京でサラリーマンをしていたが、高校の先輩に誘われて高崎市にある放課後等デイサービスの運営会社に就職。そこで、障がいを持つ子どもたちにかみつかれたり、つねられたりしたながら「すごく楽しいな」と感じ、子どもたちの卒業時など節目ごとにその成長ぶりを見て、この仕事にやりがいを感じるようになったという。

ラグビーコーチと福祉施設の管理者との共通点について、こう語る。「ラグビーというのは結構ルールが難しくて、戦略も一度では覚えられなかったりするので、高校生だと監督の言うことをなかなか理解できない子もいます。それをコーチとして、どう理解してもらえるように伝えるべきか考えたり、チームが目指しているものを全員で共有するにはどうすべきかと考えたりするのが好きでした。その結果トライが取れて、試合に勝てるとすごく嬉しいし、やりがいを感じます。今の仕事も、学校の先生や保護者さんの言っていることを子どもが理解できるように、私たちがどう助けてあげられるかと考えて実行し、実際に理解してもらえると私たちの存在意義を発揮できたなと感じます。試合でも勉強でも集中すべき時は集中してもらい、勝ちたいと思う気持ちを強く持ってもらうというのも共通していますね」

上原理事は児童福祉のプロ 事務作業に追われることなく「純粋に子どもたちと遊びたい」と正規職員からパート職員に転じた経験も

ラガーマンが率いる福祉施設は重度障がい児も率先して受け入れる頼もしい存在 カラー複合機を駆使してオリジナル教材作りも ASSIST BASE(アシストベース) (群馬県)
福祉のプロで“現場大好き人間“の上原美香理事

放課後等デイサービス「未来フレンズ」の児童発達支援管理責任者と生活介護「ミライフ」のサービス管理責任者を兼務する上原理事は、福祉系の専門大学を卒業して、主に重度の障がい児施設で勤務してきたこの道のプロだ。当初、埼玉県の施設に正規職員として勤めていたが、次第に事務作業が増えてきて子どもたちと接する時間が少なくなったことが辛くなり、「純粋に子どもたちと遊びたいと思って」群馬県の施設にパート職員として転職したという根っからの“現場大好き人間”だ。

上原理事は今の仕事のやりがいについてこう語る。「小学校1、2年生くらいだと一日中大声で泣いていたりする子がいるのですが、その子を抱っこしてあげると、全身をこわばらせていた力がふっと抜けたりします。そんな時に『安心してくれているんだな、彼らにとって私が安全な場所になれているんだな』と感じます。発語のない子だと、彼らの言わんとしていることが汲み取れているか不安はあるのですが、彼らの力が抜けて気持ちが一瞬落ち着いた時などに『少しは汲み取れたのかな、気持ちが通じ合えたのかな』と、やりがいを感じます。彼らがこのまま成長できるように、どんどん支援してあげたいと思うことが多いですね」

職員約20人のチームワークは万全 事業拡張へさらに支援レベルの向上を目指す

ASSIST BASEの職員は保育士、児童指導員、看護師などを含めて全部で約20人。細井代表は「私たち役員はまだ30代半ばなので、私の母をはじめ年上の職員さんもいるのですが、すごく信頼して頼ってもらえているので、チームワークがすごく確立できているなと感じています」と話す。将来的に支援の輪をさらに広げるために、中度の医療的ケア児や心身障がい児のための放課後等デイサービスと、障がい者が生まれ育った土地で生活していくためのグループホームを新たに立ち上げる計画だと明かし、そのために「個々の職員の支援のレベルを、さらに高みを目指して上げていってもらいたいと思います」と話した。

ラガーマンが率いる福祉施設は重度障がい児も率先して受け入れる頼もしい存在 カラー複合機を駆使してオリジナル教材作りも ASSIST BASE(アシストベース) (群馬県)
事務室で放課後等デイサービスの準備をする職員ら。冬季のユニフォームは動きやすいパーカーだ

「障がい児は視覚情報が重要」とカラー複合機で教材づくり 万一に備えてAEDも常備

ラガーマンが率いる福祉施設は重度障がい児も率先して受け入れる頼もしい存在 カラー複合機を駆使してオリジナル教材作りも ASSIST BASE(アシストベース) (群馬県)
設立後、いの一番に導入したカラー複合機

今後、事業を拡張していくうえでICTの活用は避けて通れないと考えている。設立間もない2023年11月にカラー複合機を導入したのは、主に教材を作るためだ。市販の絵本やイラスト集などをコビーして切り抜き、一つひとつラミネート加工をする。手を傷つけないようにラミネートフィルムの角を丸く仕上げる。職員らで話し合って、利用者に最適と思われる教材を手作りするのだ。

「障がいを持つ子というのは〝視覚優位〟といって目から入る情報が重要なので、モノクロではなくカラーでしっかりと明確に見えるものを提示するように気をつけているのです」と、上原理事はカラー複合機をいの一番に導入した理由を指摘。そのほかに、福祉関係の事務作業は紙ベースでのやりとりが多いので、紙の資料をカラー複合機でスキャンして、メールに添付するのに使うことも多いそうだ。

ラガーマンが率いる福祉施設は重度障がい児も率先して受け入れる頼もしい存在 カラー複合機を駆使してオリジナル教材作りも ASSIST BASE(アシストベース) (群馬県)
個々の利用者に適した教材を職員らで相談して制作する

AEDもカラー複合機と同時期に、事務室と学童クラブ「未来」に1台ずつ計2台導入した。「医療的ケアの子などはサチュレーション(動脈血酸素飽和度)が急に下がることがあります。そういう時に、もちろん救急搬送や保護者への連絡はするのですが、何か安心できるものが欲しいということで、入れさせてもらいました」(上原理事)

小児用と成人用のモード切り替えスイッチ付の機種で、契約しているシステム会社がカラー複合機と同様にリモートコントロールで電池や部品などを定期的に点検し、必要に応じて交換する仕組みなので、万一の時にも安心だ。ASSIST BASEには看護師のほかに、日本赤十字社の赤十字ボランティアとして外部機関でAEDの講習会を行っている職員がいて、ASSIST BASEの職員全員に使い方を教えているという。

ラガーマンが率いる福祉施設は重度障がい児も率先して受け入れる頼もしい存在 カラー複合機を駆使してオリジナル教材作りも ASSIST BASE(アシストベース) (群馬県)
事務室に常備しているAED(右のオレンジ色の機器)。職員全員が使い方の講習を受けている

事業拡張に伴い、事務作業の効率化は必須 成人と子どもの両方の障がい者支援事業に使えるソフトの導入を模索

現在、導入を検討しているのは利用者個別の支援計画や活動記録、国保連への請求業務などを一括してできるソフトだ。「請求業務は簡易的なソフトを使っているのですが、記録や連絡書などは全部紙ベースの手書きなので結構な負担になっていて、いずれキャパオーバーになるのは目に見えています」と上原理事。

ただ、障がい者施設は総合支援法や障害者福祉法の規定に基づいて運営しているのに対し、障がい児施設は児童福祉法に基づくので、ソフトに入力する内容も微妙に異なる。このため一つのソフトで放課後等デイサービスと生活介護の両方の事務処理をこなすのは難しいのだそうだ。一括利用が可能なソフトもあるにはあるが、手が届かないほどに高額だという。今後、システム会社と相談しながら、国のIT導入補助金の活用も視野に入れてより最適なソフトを探し、導入を検討してく方針だ。

企業概要

法人名一般社団法人ASSIST BASE
住所群馬県藤岡市藤岡1757-1
電話0274-50-4720
設立2023年2月
従業員数約20人
事業内容放課後等デイサービス、生活介護、学童クラブの運営