「こころ動かす脱炭素。」をコンセプトにした第一回「デカボアワード(Decarbo Award)」が、アースデーでもある4月22日に開催。「デカボ=脱炭素化(Decarbonization)」に向けたビジネスの成果や生活者の共感を生み出した取り組みを行う企業やサービスを表彰した。
デカボアワードは、ビジネスの成果や生活者の共感を生み出したデカボの取り組みを表彰し、生活者が主体的に参加できるデカボアクションのさらなる盛り上がりを目指すべくEarth hacksが主催した。同社とZ世代とのコミュニティ「デカボアンバサダー」たちによるレコメンドを受け、日本全国のデカボの取り組みの中から2つの部門にふさわしいと思われる7社を選定した。
ノミネート企業はHamee、ピープルポート、東京チェンソーズ、Red Yellow And Green、鈴廣かまぼこ、コアレックス信栄、京都紋付の7社。審査員は総合地球環境学研究所教授の浅利美鈴氏、社会起業家でありボーダレス・ジャパン代表取締役の田口一成氏、IDEAS FOR GOOD共同編集長の富山恵梨香氏、グランドレベル代表取締役の田中元子氏、Earth hacksチーフデカボオフィサー(CDO)のトラウデン直美氏の5名。
審査の結果、「デカボを通じて、自社ビジネスおよび社会にインパクトを残すことに成功した取り組み」を表彰するビジネスインパクト部門はピープルポートが受賞した。同社は企業から廃棄されるパソコンを回収、整備して再生させ「エシカルパソコンZERO PC」として販売するリユース事業を展開している。回収品の買取金を子どもの教育支援を行うNPOに寄付しているほか、整備の仕事には難民を雇用するなど「誰もが自分らしく生きられる社会」を目指している。
トラウデン直美氏は、「審査員の意見が一致した」と受賞のポイントを総評。「脱炭素のポイントだけではなく、難民雇用や半導体が不足している中でのアプローチなど総合的に選んだ。再利用されているため低価格帯で購入できるとして、大学生のみなさんにも求められていることも聞いた。多感な時期に、この製品からエシカルについての学びも得られるのは素敵だし、理にかなったシステムだと感じた」と同社の取り組みを評価した。
田中元子氏も「デカボアワードでありつつ、デカボ以外の取り組みにも共感した」と同社を高評価。「『新品で最先端のPCが最も素晴らしい』という固定概念から解放され、『自分にはこのくらいのスペックがむしろいい』、『この取り組みをしている企業のPCだから共感して使おう』など新しい価値観を生み出してくれると思った」とまとめた。
ピープルポート エシカルパソコン/ZERO PC事業部長の藤井優花氏は、受賞に際して「高校生や大学生の方が初めてのPCに選んでもらえることが増えて嬉しく思っている。『そんなに高スペックでなくてもいい』として自分にフィットするPCに『ZERO PC』として提案していきたい。そこから脱炭素や多様な人々との共生に向けて一歩一歩歩んでいきたい」と喜びと今後の抱負を語っていた。
「生活者のニーズをとらえたアイデアで、すすんで行動したくなるあたらしいアクションを生み出しているデカボの取り組み」を表彰するソーシャルインサイト部門には、鈴廣かまぼこが選ばれた。1865年に創業した同社は、箱根・小田原を拠点にかまぼこづくりから地球の未来と健康への貢献を目指し事業を展開。「魚のいのちをいただきながら商いをする責任」を問い続け、食の資源循環モデルの取り組みや小田原の土地を活かした再生可能エネルギーの取り組みにも注力している。
浅利美鈴氏は「海と陸地をつなぐ視点が素晴らしい。地域で脱炭素を広げてドミノ式に日本中に広げるべく熱心な取り組みを行っている。これからもみんなを巻き込んで活動を続けていってほしい」とエールを送った。
田口一成氏も「こういう会社が増えてほしいという審査員全員の意見だった。一つの事業でどれだけ多方面に社会的影響を及ぼすのか、負担を減らせるのかという観点であらゆる企業がSDGs目標に取り組むべきタイミングにきている。そしてそれを消費者が見ることで商品や企業を選んでいく。それを象徴するケースだと思って選ばせてもらった」と、他企業のロールモデルとしての期待も込めていた。
鈴廣かまぼこ 企画開発部広報担当の奥村真貴子氏は「たくさんの魚や水、エネルギーなど貴重でありがたいものを使ってかまぼこづくりをしている責任を常日頃考えてここまでやってきた。このような食と資源を幅広く考えながら持続可能なものづくりをこれからもしていきたい」とコメントした。
当初はビジネスインパクト部門とソーシャルインサイト部門の2部門のみの表彰であったが、急遽予定にはない審査員特別賞として東京チェンソーズが受賞した。同社は東京の最西端にある檜原村から「林業をもっと自由に!」をスローガンに、柔軟な発想で森の価値を最大化し、森と街の共生を目指す林業会社だ。1本の木の根っこから枝・葉までを販売する“1本まるごと販売”を通じて従来の木の価値観を変える事業を展開している。
田口一成氏は、同社について「絶対に何かしらの形で選ばれるべきだという話になった。山の難しい問題に対してみんなが価値と思っていないことに価値を与えて、消費者を巻き込み、新たな林業を作っていくポジティブな試みは私たちに勇気を与えてくれる。継続して取り組んでいくことで新たな希望が生まれてくるだろう。みんなで応援すべきであるし、ぜひ1つの形で残しておきたいとして審査員特別賞にさせてもらった」と審査員特別賞受賞の背景を語った。
トラウデン直美氏も「木は自然のものなので無駄にしないことが難しい分野。そこに“1本まるごと”という、自然の作るユニークネスを楽しむコンセプトがとても素敵だと思った。木の温かみや形、年輪の模様を愛おしいと思うのでそこに価値を見出す人がもっと増えていき、『それどこの?』、『どこで手に入るんだろう』、『木をまるごと使うからこうなるんだ』と楽しい会話が日常に生まれたらいいなと思った」とコメントを寄せていた。
東京チェンソーズ執行役員の吉田尚樹氏は「林業は、1つの企業が解決策を出すことですべてが解決するわけではない課題の大きな業界。特に森林課題はこの50年間蓄積された問題がたくさんあり、打破することが難しい。どうやれば木材以外のいろいろな意味で森の価値を高めていけるのか、可視化して伝えていけるのかと、一歩一歩やっていけば少しずつでも課題解決できると信じて楽しく面白くやっている。これを機に皆さんも山に遊びに来てもらいたい」と喜びのコメントをした。
最後には、Earth hacks代表取締役社長CEOの関根澄人氏がアワードを通して「改めて電力を減らしていく時代の流れではあるが、世の中が暗くなるかといえばそうではない。今回、皆さんの活動を聞いていて活力や違ったエネルギーで世の中はいくらでも明るくできると再確認した。そして、そういう活動を世の中に見える化してサポートしていきたいとさらに強く思うことができた」と笑顔でアワードを総評した。
当日、アワードが行われた室町三井ホール&カンファレンスの会場横ではノミネート各社だけでなく、Earth hacksパートナー企業による展示イベントも同時開催。実際に製品を目で見て触り、試食や担当者とのコミュニケーションを通じて各社のデカボに向けた取り組みをより深く知る貴重な機会となっていた。