目次
- 半世紀にわたって地域の電気設備を支える
- 電気の困りごとに、いつでもどんなことでも対応
- 女性取締役を中心に、全社的なプロジェクトとしてSDGsの取り組みと普及啓発を推進
- 「日頃の事業活動を通じて、地域の人へSDGsを知っていただきたい」
- 会社の取り組みをまとめてSDGs宣言 倉敷市主催イベントで暮らしやすさにつながるスイッチやコンセントの位置と種類を提案するコーナー展示
- 環境に配慮した素材でオリジナル雑貨を制作、販売 オンラインショップも開設
- オリジナル雑貨を飾る会社のイメージキャラクター「ほたちゃん」を通じて企業イメージを発信
- 少数精鋭の小さな会社だからこそ、デジタル化が加速する時代の流れにしっかりと対応
- 素人でも直感的に編集できるホームページ作成システムで定期的に更新 新規依頼や求人応募件数が増える オリジナル雑貨の販売にも大きく寄与
- クラウド型の工程管理システムも導入、損益・進捗状況が把握できる 複合機のスキャン機能を活用して紙文書のデジタル化も進める
- 若い人材に、これまで蓄積した電気設備の技術を伝えていきたい 資格取得のための社内セミナー実施 資格取得費用も会社持ちで支援
岡山県倉敷市に本社を置く有限会社蒲生電気工業所が、SDGs(持続可能な開発目標)の普及啓発とデジタル技術の活用に力を入れている。環境にやさしいオリジナル雑貨のオンライン販売や、人材採用に必要な情報発信に自社運営のホームページを活用。情報共有を通じた働きやすい環境の整備にもICTを活用している。(TOP写真:SDGsの普及啓発を目的に蒲生電気工業所が制作したオリジナル雑貨)
半世紀にわたって地域の電気設備を支える
1973年に創業した蒲生電気工業所は、半世紀にわたって地域の電気設備を支えてきた。地元を中心にビル、マンション、商業施設、公共施設の電気設備や高圧受電設備といった法人向け工事から、住宅のコンセントの取り付け、防犯灯のLED化といった個人向け工事まで幅広く対応している。2014年頃から太陽光発電設備の施工にも力を入れている。
電気の困りごとに、いつでもどんなことでも対応
経営陣と従業員で総勢9人の蒲生電気工業所は、アットホームな雰囲気と円滑なコミュニケーションを大事にしている。電気工事の受注から完成までのすべての工程を自社一貫体制で対応。急な対処が求められる場合は、従業員全員で迅速に対応する体制を整えている。
「電気は生活を送る上で何より大切なものです。小さな会社ですが、技術と実績を積み重ね、努力を惜しまずやってきました。その蓄積を続けることが地域の皆さんからの信頼を維持することにつながると肝に銘じています。電気のことで困った時は、いつでもどんなことでも相談できる。そのような地域の電気屋であり続けたいと思っています」。蒲生誠代表取締役は、蒲生電気工業所が大事にしている思いをこのように話した。困りごとが解決した時に地域の人たちに喜んでもらえることが、何よりの励みになっているという。
女性取締役を中心に、全社的なプロジェクトとしてSDGsの取り組みと普及啓発を推進
「事業活動を通じて地域の将来のために貢献していきたい」。蒲生電気工業所は、このような思いから全社的なプロジェクトとしてSDGs(持続可能な開発目標)の目標達成に向けた取り組みと普及啓発活動に力を入れている。
2020年から開始したプロジェクトの中心になっているのが蒲生社長の次女、水田あゆみ取締役だ。岡山県内の別の企業に勤めていた水田取締役は2018年、幼い頃から「社会で大事な役割を果たしている」と感じていた家業を支えたいという思いで蒲生電気工業所への入社を決意したという。水田取締役が蒲生社長の代わりに経理、広報、ICT導入といった業務を担うことで、ベテラン技術者でもある蒲生社長が現場で作業に従事できる時間が増え、会社にとって大きな戦力アップになったという。
「日頃の事業活動を通じて、地域の人へSDGsを知っていただきたい」
水田取締役がSDGsに強い関心を持ち始めたのは2019年。SDGsの取り組みに力を入れる取引先からその重要性を教えてもらったことがきっかけだったという。「調べてみると世界規模で広がる社会貢献度の高い取り組みであることが実感できました。日頃の事業活動を通じて地域の人にSDGsについて知っていただく意義は大きいと考え、できることから取り組むようにしました」と水田取締役は振り返る。
中小企業がSDGsに積極的に取り組む意義は大きい。企業イメージの向上はもちろん、共通の目的を持つことによって社内に一体感が生まれ、SDGsに積極的な取引先からの評価が高まるといった様々な効果が期待できる。
会社の取り組みをまとめてSDGs宣言 倉敷市主催イベントで暮らしやすさにつながるスイッチやコンセントの位置と種類を提案するコーナー展示
蒲生電気工業所が取り組んでいるLEDの更新工事、太陽光発電設備の設置工事、人々の家庭に安全に電気を送るための配電線工事、全従業員を対象とした定期健康診断、女性が働きやすい環境づくりは、SDGsの目標と親和性が高い。蒲生電気工業所はこれらの取り組みをまとめた上でSDGs宣言を行っている。
2022年9月には、SDGsの啓発を目的に岡山県倉敷市が主催した「高梁川流域SDGsフェスタ」に参加。SDGsの達成目標の中にある住み続けられるまちづくりをテーマに、暮らしやすさにつながるスイッチやコンセントの位置と種類を提案するイベントを企画した。様々なスイッチやコンセントの形をしたパネルを用意して、子どもから高齢者まで幅広い年齢層の参加者が楽しみながら、電気と環境に配慮した生活の大切さを実感できるよう工夫を凝らしたという。20を超える企業やNPOが出展したSDGsフェスタは、SDGsの取り組みや情報発信を進めていく上で大いに参考になったという。
環境に配慮した素材でオリジナル雑貨を制作、販売 オンラインショップも開設
SDGsについて関心を持ってもらうために2022年から環境に配慮した素材で作ったオリジナル雑貨の制作、販売にも取り組んでいる。紙を素材にしたクリアファイル、広島県の平和記念公園の折り鶴を再生した紙を素材にしたミニカード、マスキングテープや木製のフォークなど7種類をラインナップしている。「暮らしに彩りを添えられるよう可愛らしさを意識してデザインしました。これからも新しい雑貨を企画していきます」と水田取締役。販売は本社のほか、協力を申し出てくれた地元の洋菓子店でも行っている。2023年5月には地域の枠を超えて幅広くアピールするためにオンラインショップも開設した。
オリジナル雑貨を飾る会社のイメージキャラクター「ほたちゃん」を通じて企業イメージを発信
クリアファイルやマスキングテープを飾るのが、蛍をモチーフにした蒲生電気工業所のイメージキャラクター「ほたちゃん」だ。「ほたちゃん」は、幼い頃から絵を描くことが好きだった水田取締役が小学校高学年の時に考案したキャラクターで、会社が発行する印刷物などで使用されてきた。「電気を扱う会社のイメージに光を放つ蛍はぴったりだと思ったんです」と水田取締役は「ほたちゃん」が誕生した時の思い出を語った。今回のオリジナル雑貨の制作にあたり、より可愛らしさを感じてもらえるようにデザインをブラッシュアップしたという。思いを込めて制作したオリジナル雑貨はSDGsの普及啓発だけでなく、会社の情報発信にもつながっている。
少数精鋭の小さな会社だからこそ、デジタル化が加速する時代の流れにしっかりと対応
蒲生電気工業所はSDGsの普及啓発とともにICTとデジタル機器の活用にも力を入れている。「ICTとデジタル機器を活用することによって、働きやすい企業にしていきたいと考えています。少数精鋭の小さな会社だからこそ、デジタル化が加速する時代の流れにしっかりと対応していかなければならないと思っています。従業員一人ひとりの負担を減らして、効率的に働けるようにしていきたい。会社の未来を切り開く上で、ICTとデジタル機器は不可欠と思っています」と水田取締役は話す。
素人でも直感的に編集できるホームページ作成システムで定期的に更新 新規依頼や求人応募件数が増える オリジナル雑貨の販売にも大きく寄与
水田取締役が入社して最初に取り組んだのが新規顧客の開拓や人材採用を強化するためにホームページを開設することだった。だが、外部の専門業者にホームページの運営を委託すると費用がかかるだけでなく、更新にも手間がかかってしまう。そこで着目したのが、プログラミング言語や編集の詳しい知識がなくても簡単な操作で情報を更新できる機能を備えたホームページ作成システムだった。
2019年に開設したホームページには業務内容や施工実績、求人の募集要項、SDGsの取り組みを掲載し、発信力を高めるため定期的な更新を心掛けている。「システムはクラウド型なので、自宅など本社以外の場所で空いた時間を使って編集作業ができるのがありがたいですね。直感的に操作できる点も気に入っています」と水田取締役は感想を話した。システムは一回の作業でパソコンとスマートフォン両方のサイトを更新する機能も備えている。ホームページを立ち上げてから新規の依頼や求人への応募件数が増えるなど成果が上がっているという。オリジナル雑貨のPRやオンライン販売にも大きな役割を果たしている。
クラウド型の工程管理システムも導入、損益・進捗状況が把握できる 複合機のスキャン機能を活用して紙文書のデジタル化も進める
2019年1月にはクラウド型の工程管理システムを導入した。それぞれの従業員が担当する現場の工程や進捗状況、損益などをいつでも把握して、担当外の現場との比較もできるので、広い視点で施工管理の仕事をこなす能力を養うことに役立っているという。そのほか、施主への報告書を作成する時間を短縮するために工事写真の管理システムも2022年11月に導入。大型の複合機も導入し、スキャン機能を活用して図面などの紙文書のデジタル化も進めている。
若い人材に、これまで蓄積した電気設備の技術を伝えていきたい 資格取得のための社内セミナー実施 資格取得費用も会社持ちで支援
働く環境を充実するために2018年に倉庫をオフィスにリノベーションして執務スペースを拡大した。若い人材を積極的に採用、育成し、これまで蓄積した電気設備の技術を伝えていきたいという。
蒲生電気工業所は、やる気と意欲次第で年齢に関係なく現場の責任者として活躍する機会を提供している。「従業員一人ひとりが経営者の視点を持つことを大事にしています。若い人材には電気工事士としての技術を早く習得できるように、一人で幅広い役割をこなしてもらうことを重視しています。ICTとデジタル機器を育成にも役立てていきたいと思っています」と蒲生社長。
従業員の技能習得のため、電気工事士、施工管理技士などの資格を取得する費用を会社が負担、資格取得のための社内セミナーを実施するといった支援も行っている。副業を認めた上で、柔軟な働き方ができるように個々の相談に応じている。
SDGsの普及啓発やICT、デジタル機器の活用に力を入れる蒲生電気工業所。デジタル社会を支えるインフラとして需要が高まる電気設備に携わる企業として、地域での役割はこれまで以上に大きくなるはずだ。その中で取り組む新しい企画や人材育成、情報発信活動に注目したい。
企業概要
会社名 | 有限会社蒲生電気工業所 |
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本社 | 岡山県倉敷市茶屋町150-5 |
HP | http://gamou-d.com |
電話 | 086-428-4757 |
設立 | 1989年4月(創業1973年) |
従業員数 | 5人 |
事業内容 | 電気設備工事、空調設備工事、高圧受電工事、道路照明、防犯灯工事(LED化)、コンセント取付・増設、ブレーカー容量変更、照明器具取付・変換(LED化)、漏電改修工事、太陽光発電、オール電化など |