自然素材と伝統工法で、健康にこだわり、心地よい住まいづくり 顧客の住まい情報管理でアフターフォローも万全 林藤ハウジング(群馬県)

目次

  1. 住宅の高断熱・高気密化と化学物質による健康障害について研究 化学物質を極力減らした家づくりに取り組む
  2. 群馬県産の無垢材、漆喰など自然素材を使用。つなぎ材には海藻、接着剤には飯粒という徹底ぶり
  3. 社長自ら大工仕事を習得。仕事を「楽しい、面白い」と思う職人が残る
  4. 古民家再生にも力。豊かなデザイン性で多くのコンクール入賞歴誇る
  5. 家の完成はゴールではなくスタート。顧客との付き合いは生涯続く 顧客管理ソフトでアフターフォローを一段と充実へ
中小企業応援サイト 編集部
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群馬県前橋市にある住宅設計・施工会社、株式会社林藤(りんどう)ハウジングは化学物質を極限まで減らした「健やかな住まい」づくりが特徴だ。無垢(むく)材や漆喰(しっくい)といった自然素材の使用を徹底するだけでなく、デザイン性も融合することで現代人のセンスやライフスタイルに合う高付加価値の住宅を提供。伝統工法の技能を生かした古民家再生にも力を入れている。顧客との関係を家が完成したら終わりではなく、「一生のお付き合い」と位置づけているだけに、アフターフォローにも熱心。近年は顧客管理ソフトを活用して、アフターフォローを一段と充実させていこうとしている。(TOP写真:本社社屋2階にあるモデルルーム。無垢材や漆喰などの自然素材とナチュラルモダンのデザイン性が融合)

住宅の高断熱・高気密化と化学物質による健康障害について研究 化学物質を極力減らした家づくりに取り組む

自然素材と伝統工法で、健康にこだわり、心地よい住まいづくり 顧客の住まい情報管理でアフターフォローも万全 林藤ハウジング(群馬県)
化学物質による健康障害について研究するようになったきっかけを語る林慧次郎代表取締役

「今から35、36年前のことですが、新しい家に住むと体調が悪くなるとか、気分が悪くなる、動悸がするという話をよく聞くようになり、色々と調べてみると、新建材に含まれる化学物質が人間にとても悪いことをするということがわかってきたのです」。林藤ハウジングの創業者で代表取締役の林慧次郎氏は、新築住宅と化学物質の関係に気づいたきっかけをこう振り返る。「シックハウス症候群」という言葉が生まれるはるか前のことだ。

戦後のモノ不足の中、合板や集成材といった新建材が住宅に幅広く使われるようになる一方、高断熱・高気密化のための技術も進化した。そのため、新建材に使われている接着剤や溶剤塗料などから放出されるホルムアルデヒドや揮発性有機化合物が、そこに住む人々の健康障害を引き起こすようになった。「昔の家は隙間風でどんどん空気が入れ替わるのですが、今の家は気密性が高いので、余計に化学物質過敏症になりやすいのです」(林社長)

当時、一級建築士事務所を経営していた林社長は関連する文献を調査するだけでなく、大学教授ら専門家と一緒に1989年から数回にわたり欧州見学ツアーに参加。高断熱・高気密でありながら自然素材を使うことで健康への悪影響を及ぼさないように工夫されている現地の住宅を調査・研究した。1991年に林藤ハウジングを設立して、設計事務所と工務店の両方の機能を兼ね備えた「アーキテクト・ビルダー」として事業を拡張すると、それらの知見をもとにシックハウス症候群を考慮した家づくりに徹するようになる。

群馬県産の無垢材、漆喰など自然素材を使用。つなぎ材には海藻、接着剤には飯粒という徹底ぶり

自然素材と伝統工法で、健康にこだわり、心地よい住まいづくり 顧客の住まい情報管理でアフターフォローも万全 林藤ハウジング(群馬県)
家具の接着剤には続飯(そくい)を使用

柱や梁(はり)には群馬県産の無垢材、壁には漆喰や珪藻土を用いるなど自然素材にとことんこだわった家だ。漆喰のつなぎ材として海藻のツノマタを煮出して使い、家具の接合部分には昔ながらの続飯(そくい)を使うという徹底ぶり。続飯というのは飯粒を練って作る糊だ。「ご飯はすぐに乾燥して固くなりますから、器にタオルをかけて乾燥しないように気をつけながら使わないといけません」。ちなみに林社長は『日本で実践するバウビオロギー(建築生物学)』という共著書の中で、こうした〝自然派住宅〟について論じている。

やがて1990年代後半から日本でもシックハウス症候群が社会問題となり、2003年に改正建築基準法施行により、シックハウス対策規制が導入された。その中で、ホルムアルデヒドの発散量が1時間に1平方メートル当たり100万分の5グラム以下の建材については制限なしに使え、発散量がそれ以上の建材は使用面積を制限するという基準が設けられた。このうち制限なしに使える建材はJISやJASの表示記号を「F☆☆☆☆(エフ・フォースター)」とした。

ただ、林社長は「国がお墨付きを与えたので、エフ・フォースターの建材さえ使っていれば問題ないという意識が設計屋さんにも建築屋さんにも蔓延(まんえん)してしまった」と懸念する。化学物質の許容量は人によって異なるので、基準値をクリアすることで満足するのではなく、化学物質を極力使わないようにするべきだと考えているのだ。実際に規制が導入された後でも、住宅展示場にあるハウスメーカーのモデルハウスには入れないという化学物質過敏症の人が、林藤ハウジングを訪ねてくるという。

社長自ら大工仕事を習得。仕事を「楽しい、面白い」と思う職人が残る

自然素材を使った家づくりに欠かせないのが伝統工法であり、材木を手刻みで加工する大工職人をはじめ、左官職人、建具職人らの技能だ。林社長は一級建築士という、いわゆる〝設計屋〟でありながら、会社設立後間もない頃に、大工仕事も習ったそうだ。「同い年で親切な大工さんがいて、道具の使い方からロープの縛り方まで手取り足取り教えてくれました。私も釘袋を腰に下げてげんのうを持ち、地下足袋を履いて一緒に働き、新築住宅を2、3棟建てました」と笑う。

そうした経験から「私たちの仕事は『楽しい、面白い』と感じられる人でないと無理だと思います」と断言する。工場で量産されるプレカット材が相手の仕事とは異なり、とにかく手間がかかるので、大工仕事が好きな人でないと続けられない。林藤ハウジングが契約してきた大工職人の中でも、「『こんなに難しい仕事をさせるんかい』と言いながらも、ニコッとしながらやるような人が今も残っています」と話す。「私自身、大工、左官、建具屋がいちばん面白い仕事だと思います」と語る。

自社が手掛けた物件ではない住宅のリフォームを頼まれた場合に、屋根などふだんは気づきにくい施工箇所で、「こんなお粗末なやり方があるんだ」と驚くことも多いという。そのたびに林社長は、自社の職人に「『人に見られても恥ずかしくない仕事をしよう』『後で他の職人が見た時にすごい人が手掛けたんだなと思われるような仕事をしよう』と話しています」という。

古民家再生にも力。豊かなデザイン性で多くのコンクール入賞歴誇る

自然素材と伝統工法で、健康にこだわり、心地よい住まいづくり 顧客の住まい情報管理でアフターフォローも万全 林藤ハウジング(群馬県)
照明を随所に配置し、吹き抜けや天窓で採光性や通風を確保することで、「暗い」というイメージがある古民家をモダンで明るいイメージに再生=ホームぺージより

こうした伝統工法の技能を活かして、2011年から古民家再生の取り組みをスタートした。古民家を再構築するには調査能力や伝統工法に基づいた施工力に加え、高断熱・高気密化技術など高い総合力が求められるが、林社長は「古民家鑑定士が慎重に調査し、分析・診断した上で、適切な技術をもって再構築すれば、生まれ変わる古民家がたくさんあります」と話す。

新築住宅にしろ古民家再生にしろ、林藤ハウジングが自然素材とともに重視しているのがデザイン性だ。自然素材の家をいっそう上質で付加価値の高い空間とするため、現代人のセンスやライフスタイルに合った高感度なナチュラルモダンを常に追求しているのだという。その結果として、群馬県などが主催する「ぐんまの家」設計・建設コンクールや「ふるさと木の家」建設コンクールなどで多数の受賞歴を誇る。

林藤ハウジングは協力会社と組織する「りんどう会」で森林保護のボランティア活動も行っている。毎年2、3回、約30人が参加して群馬県高山村の村有林の下刈りや除伐を行っているのだ。林社長は「群馬の木を使っているので森を大切にしたいと思い、15、16年前から始めました。森は手入れする人がいないと自然に傷んでしまいますから、『山に恩返ししよう』と提案したら(協力会社の)皆さんが賛同してくれました。無料奉仕ですが、皆さん楽しみながらやっています」と話す。

現在、社員大工の1人を含めて6人の大工職人と契約。年間に新築3棟、古民家再生3棟のペースで施工。新築住宅の場合は耐震等級3相当、断熱性能G3相当といずれも最高レベルの性能を実現するのが基本方針だ。それぞれ「相当」がつくのは、住宅証明評価書を取得するには数十万円の費用がかかるので、顧客によっては取得しない人もいるためだ。

家の完成はゴールではなくスタート。顧客との付き合いは生涯続く 顧客管理ソフトでアフターフォローを一段と充実へ

自然素材と伝統工法で、健康にこだわり、心地よい住まいづくり 顧客の住まい情報管理でアフターフォローも万全 林藤ハウジング(群馬県)
顧客管理ソフトを導入、アフターフォローを一段と充実へ

家づくりのこだわりだけでなく、林藤ハウジングは顧客との関係にもこだわる。家の完成はゴールではなくスタートであり、顧客との関係は生涯続くものと考えて、顧客との付き合いを大切にしているのだ。現在、約350件の顧客を管理しており、毎年暮れにはお客様とのコミニュケーションを計りながらカレンダーを配っているそうだ。一軒一軒訪ねて手渡すのを基本としているという。

顧客管理のためのリストは、従来は林社長がノートに手書きで書いていたが、2022年6月に顧客管理ソフトを導入、パソコンで管理するようになった。建築会社の顧客管理用に特化したソフトで、施工当時の担当者・下請業者、契約金などの情報のほか、リフォーム履歴や入金・修理履歴などの項目も追加できる。住宅の写真や地図も含めて一つの画面に1件の顧客の基本情報をすべて収められるので一覧性も抜群だ。林社長は「照明や冷蔵庫などの家財道具も含めて記録し、きちんとお客さんを管理することが大切です。何と言っても家をつくった人がいちばんの相談相手になれますからね」と、今後の同ソフトの威力発揮に期待する。

林社長が一級建築士の資格を取得した1970年代当時は計算尺で構造計算を行っていた時代。CAD/CAM(コンピューター支援による設計・製造)もまだ世に出たばかりの頃だ。このため林社長自身は今でも手書きで設計図を製作する。「鳥瞰図なら30分くらいで書きます。パソコンより早いと思います」と話す。ただ、社内では従来から建築CAD/CAMソフトを使っているので、顧客に住宅を提案する時などは同ソフトで作製したカラーの3Dパース(透視図)を使うケースが多い。だが、「私の手書きのほうを欲しがる人もいます」と林社長はあくまで手書きにこだわる。

自然素材と伝統工法で、健康にこだわり、心地よい住まいづくり 顧客の住まい情報管理でアフターフォローも万全 林藤ハウジング(群馬県)
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林社長が鉛筆で書いた住宅の平面図と床の間の完成予想図

林社長の個人的な夢は、自分でリノベーションした古民家に住むことだそうだ。

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林藤ハウジングの本社社屋

企業概要

会社名株式会社林藤ハウジング
本社群馬県前橋市敷島町248-9
HPhttps://www.rindou.com
電話027-234-4060
設立1977年4月
従業員数35人
事業内容新築住宅の設計・施工、リフォーム、古民家再生、家具製作