適材適所のICT活用で業務効率化を推進 脱炭素化の潮流を捉え、シップリサイクル事業の進化に取り組む 宮地サルベージ(香川県)

目次

  1. 交通の要衝 多度津町の臨海部に本社・工場を構える
  2. 約2万5000平方メートルの敷地で船舶を解体して鉄資源を回収する
  3. リサイクルによって再生された鉄資源は、鉄鉱石から作るよりも二酸化炭素の排出量が少なく、環境にやさしい
  4. 2014年にグループウェアを導入して従業員のスケジュールを共有
  5. 従業員はICカードで出退勤時間を記録
  6. コロナ禍をきっかけにWeb会議システムを導入 会議や研修などに機動的に活用
  7. 紙書類中心からデジタル化への移行を進めて正確性と効率性の両立を図る
  8. 2025年6月のシップリサイクル条約の発効を見据え、新しい取り組みを進める
中小企業応援サイト 編集部
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海事産業が盛んな瀬戸内海に面する香川県仲多度郡多度津町に本社を構える株式会社宮地サルベージが、ICTを活用しながら良質な鉄資源を回収するシップリサイクル事業の進化に取り組んでいる。脱炭素化の世界的な潮流を受け、シップリサイクルはカーボンニュートラル社会の実現に向けた事業として注目を高めている。その中で、労働人口減少に伴う人手不足を見据え、適材適所でICTを導入することで業務効率化と省力化を図り、現場に経営資源を集中する体制を整えている。 (TOP写真:解体する船舶をクレーン船で陸揚げする様子)

交通の要衝 多度津町の臨海部に本社・工場を構える

適材適所のICT活用で業務効率化を推進 脱炭素化の潮流を捉え、シップリサイクル事業の進化に取り組む 宮地サルベージ(香川県)
陸上で作業を行うなど海洋汚染防止に配慮して解体を進める
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慎重に船舶を陸上に降ろす様子

江戸時代に海上と陸上の交通の要衝(ようしょう)として栄え、現在も企業の工場が数多く集積する香川県多度郡多度津町。その臨海部の工業地帯に本社・工場を構える宮地サルベージは1926年の創業以来、100年近い歴史の中で船舶解体に取り組み、あらゆる鉄資源のリサイクルを目指してきた。

長年にわたって蓄積した技術とノウハウで、海洋汚染防止に配慮した解体と廃棄物の適正な分別処理を実行している。過去に多度津商工会議所の会頭を輩出するなど地域経済界で強い存在感を放つ。2012年に兵庫県神戸市に本社を置く鉄資源リサイクルの専門商社、株式会社シマブンコーポレーションの完全子会社となり、グループ内で大きな役割を果たしている。

約2万5000平方メートルの敷地で船舶を解体して鉄資源を回収する

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上空から撮影した宮地サルベージの本社・工場の敷地

宮地サルベージは、海洋環境の保護、再資源化の推進、安全な作業環境の確保を社の方針として掲げる。約2万5000平方メートルにわたる宮地サルベージの本社・工場の敷地からは終日、活気あふれる作業音が響く。

本社・工場では長さ160メートルの解体専用の岸壁と架船台を構え、大小の船舶などの解体を行っている。解体する船体は岸壁に係留して内装及び機器類を全て撤去した後、海上クレーン船(250トン吊り)を使って陸揚げする。解体作業は陸上のヤードで行うので、海洋汚染を最大限防止することができるという。造船所の発生材や陸上解体物などの鉄スクラップを収集、選別、加工して鉄鋼メーカーに出荷している。船舶や大型構造物を解体する時に機械の活用は欠かせないが、機械だけではなく、人の手による作業も重要なポイントだ。

適材適所のICT活用で業務効率化を推進 脱炭素化の潮流を捉え、シップリサイクル事業の進化に取り組む 宮地サルベージ(香川県)
本社・工場の敷地内では鉄スクラップを処理する様々な作業が行われている

リサイクルによって再生された鉄資源は、鉄鉱石から作るよりも二酸化炭素の排出量が少なく、環境にやさしい

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宮地サルベージの渡邉尚生代表取締役社長

船舶には高品質な鉄資源が大量に含まれている。適切な解体処理によって船体や設備の9割以上を再資源化できるという。「リサイクルによって再生された鉄資源は鉄鉱石から鉄を作るよりも二酸化炭素の排出量が少なく、環境にやさしい点から需要が高まっています。シップリサイクルの最前線を牽引(けんいん)する企業として事業を拡大することで、地域の活性化にも貢献していきたいと考えています」と渡邉尚生代表取締役社長は力強く語った。

渡邉社長はシマブンコーポレーションの出身。宮地サルベージがシマブンコーポレーションのグループ企業となった2012年から2018年まで部長職で宮地サルベージに在籍し、一度シマブンコーポレーションに戻った後、2022年6月に代表取締役社長に就任した。

「宮地サルベージとはグループ会社になる以前から取引を担当していたので、本当に長いつきあいになります。地域の名門企業の舵取り役を担うことへのプレッシャーはありますが、それ以上のやりがいを感じています」と渡邉社長は快活に語った。船舶を解体することによって得ることができる鉄スクラップは日本にとって貴重な資源になる。国内船舶の解体需要をしっかりと確保していきたいという。

2014年にグループウェアを導入して従業員のスケジュールを共有

適材適所のICT活用で業務効率化を推進 脱炭素化の潮流を捉え、シップリサイクル事業の進化に取り組む 宮地サルベージ(香川県)
グループウェアを使ってスケジュールを確認する様子

宮地サルベージは業務の効率化、省力化を図るために十数年前から適材適所でデジタル技術を活用してきた。2014年5月には個人の予定管理やチーム単位の予定共有ができるスケジュール機能を備えた中小企業向けグループウェアを導入した。導入前、従業員個々の予定は本人に確認しなければわからなかったので、複数が参加する取引先との打ち合わせや会議の日程を調整する際に時間と手間がかかっていた。複数の従業員が重複して取引先に訪問のアポイントを入れてしまうこともあったという。

「グループウェアのおかげでスケジュール表を一目で確認できるようになったので、従業員同士の連携が取りやすくなりました。情報を共有しているのとしていないのでは大きな違いがあります。互いのスケジュールを把握することで、効率的に取引先を訪問することができるようになりました」と経理担当の原村さんは振り返った。

スケジュール表はスマートフォンからアクセスできるので、常にリアルタイムで予定を更新できる。「複数の従業員が参加する取引先との会議も、お待たせすることなくすぐに日程を決めることができます。経費や承認の締切は、それぞれの担当者に意識してもらえるようにスケジュール表に入力するようにしています」と原村さんは話した。

従業員はICカードで出退勤時間を記録

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出退勤時間を記録するためのカードリーダー

従業員の出退勤時間の記録は、十数年前から勤怠管理システムを活用し、従業員がカードリーダーにICカードをかざせば出退勤の時間がシステムに記録できるようにしている。「導入前は、紙のタイムカードに記録した数字を元にシステムに手入力しなければならなかったのですが、その手間から解放されました。データは給与計算システムに転用できるので、作業が一気に楽になったことを覚えています」と原村さん。

コロナ禍をきっかけにWeb会議システムを導入 会議や研修などに機動的に活用

2020年に新型コロナウイルスが全国に蔓延したことをきっかけにWeb会議システムを導入した。シマブンコーポレーションの会議や取引先との打ち合わせに活用している。出張の回数を減らすことができたのでコストの削減にもつながっている。「これまでは距離が遠いことで参加を諦めていた会議、研修やセミナーに参加しやすくなりました。緊急の打ち合わせの時ほどオンラインは大きな効果を発揮してくれています。一方で、重要な局面でより深いコミュニケーションが必要な場合は対面の方が高い効果が見込めるので、メリハリを付けながら対面とオンラインを使い分けています」と渡邉社長は話した。

紙書類中心からデジタル化への移行を進めて正確性と効率性の両立を図る

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宮地サルベージのオフィスの様子

毎月受け取る請求書を電子化するサービスの導入も検討している。現在は紙の伝票を使って対応している仕事の進め方をデジタル化することで、正確性と効率性の両立を図りたいという。紙書類をデジタル化することで、これまで紙書類を保管していたスペースの有効活用も可能になる。「社会のデジタル化は進んでいくのでしっかりと対応しなければなりません。デジタル機器やICTを活用することで、仕事の属人化解消や情報共有による仕事の分担、ベテランから若手への技術の伝承をこれまで以上にスムーズに進めていきたい」と渡邉社長は先を見据える。

2025年6月のシップリサイクル条約の発効を見据え、新しい取り組みを進める

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宮地サルベージの本社の外観

資源確保のために、世界中で良質な鉄スクラップの需要が高まり、鉄資源リサイクル業界をめぐる環境は大きく変化している。2025年 6 月には、国際的な船舶解体における労働安全の確保と環境保全を目的とした「シップリサイクル条約」が発効する。条約の発効によって環境への負荷が大きい老朽船から新造船への代替が加速し、船舶解体の需要増加が期待できる。この動きに対応するため、大型の設備投資を検討しているという。生産性を高める上でICTやデジタル機器の活用も大きなポイントになる。

新たな技術の導入を図る宮地サルベージの一連の取り組みは、地域活性化や政府が掲げる2050年のカーボンニュートラル達成に多大な貢献を果たすに違いない。

企業概要

会社名株式会社宮地サルベージ
本社香川県仲多度郡多度津町堀江五丁目7番地
HPhttp://www.miyajisal.co.jp
電話0877-32-4151
設立1976年9月(創業1926年)
従業員数25人
事業内容シップリサイクル、金属リサイクル