株式会社TOMUSHIは、秋田県を拠点に全国各地で活動する昆虫バイオスタートアップ企業です。カブトムシなどの昆虫を通じて、有機廃棄物問題と食料不足問題の解決に取り組んでいます。カブトムシの特性を活かして、持続可能な循環型社会の実現を目指す彼らに、活動の原点や、今後の展望について伺いました。 |
大好きなカブトムシを事業にしたい
今の会社を立ち上げる前、私は何も働いていないニートの状態でした。ある日、暇を持て余していた私は、昔の思い出にふけり、「カブトムシを採りに行こう!」と山へ向かいました。しかし、カブトムシを一匹も捕まえられず、その悔しさが今も鮮明に残っています。
そこからネットオークションで購入したカブトムシを自分で育てて販売し、「こんな面白いことやって生活できたら」と思い、それが現在のビジネスにつながっています。
このビジネスを本格的に始めるため、最初に相談したのが祖父母です。そして先祖代々残してきた大切な土地を売却し、多くの失敗を重ねながら研究を続けました。
そんな中で銀行からビジネスコンテストの出場の依頼を受け、最優秀賞を受賞しました。銀行から融資を受けることができたのですが、そのチャンスを活かせず、多くのカブトムシを犠牲にしてしまいました。
倒産の危機に直面して悩み抜いた末、カブトムシの餌代の高さがあまりにも高いことに気づきました。そこで、原価のかからない廃棄するゴミに着目。このアイデアにより、カブトムシの餌代をほぼゼロに抑え、同時にゴミ処理もできるようになりました。
この循環型ビジネスモデルは、環境にも優しく、経済的にも効果的でした。事業は急速に拡大し、約1年で全国に30カ所でやれるようになるまで成長しました。
ゴミの処理問題とタンパク質不足を解決する画期的サイクル
現在、世界中でゴミの処理問題とタンパク質不足の問題が深刻化しています。私たちのビジネスでは、本来廃棄される木質や有機廃棄物をカブトムシに食べさせることで、人間が処理に時間をかけている有機廃棄物をカブトムシ自身のタンパク質に変換します。それが今度は魚の餌になり、最終的に人間の口に入るという循環を生み出しています。
カブトムシに与える餌は、微生物の粉末を加えて水分調整し、発酵させた有機廃棄物です。現在、このサイクルを実現するプラントがあり、年間約2,000トンの廃棄有機物を処理しています。
処理された廃棄物の多くは、カブトムシのふんとして排出され、これはペレット状の肥料として再利用されます。結果として、タンパク質と肥料が廃棄物から生み出されることになります。
日本は現在、水産飼料や農業肥料、燃料油などの多くを輸入に頼っていますが、この新しいサイクルにより、魚粉代替剤、肥料、油の3つを国内で生産することが可能になります。この画期的サイクルが着目され、最近は行政や国から支援を受けながら事業を展開しています。
カブトムシの素晴らしさを世界に広める
創業当初から、信念は変わりません。カブトムシやクワガタは、単に見て楽しむためのものではないと私は信じてきました。最初は否定的な意見も多かったですが、カブトムシが世界に必要な資源になるというのがわかり、その価値が徐々に認められるようになってきました。
日本では少しずつ注目されてきていますが、海外での認知はまだ進んでないのが現状です。カブトムシは、ただ角が生えていて立派なだけじゃありません。とにかくカブトムシの素晴らしさを世界に広げていきたいです。
私たちの使命は、カブトムシを通じて、世界のタンパク質危機とゴミ問題の解決に貢献することです。カブトムシが世界に必要な資源であることを広め、人々の認識を変えていくことが私たちの目標です。そして、昔から大好きだったカブトムシが、本当の意味での”ヒーロー”になるために尽力していきます。