最新の設計データをクラウドで共有する事で 情報の誤りを防ぎセキュリティも確保 バロンアーキテクツ(群馬県)

目次

  1. 滋賀県のプール施設で構造設計を担当し、大型の倉庫や工場の構造設計も手がける
  2. ゲーミングチェアを導入して長時間の作業でもスタッフが疲れないよう配慮
  3. 打ち合わせはオンラインを利用し移動の時間を節約
  4. 作業はパソコン上で行いデータはすべてクラウド上のストレージにアップする
  5. クラウドストレージを使用することでどこからでもアクセス可能になり、古いデータと間違えることもなくなった
  6. データを持ち出される懸念をなくしバックアップも実現したクラウドストレージ利用
  7. 新しい仕事をより多く取るためにスタッフ数を増やしていく準備を進める
  8. フレキシブルな働き方を簡単に集計できる勤怠管理システムを模索
中小企業応援サイト 編集部
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群馬県前橋市にある株式会社バロンアーキテクツは、主に建築の「構造設計」とよばれる分野の設計を手がける建築設計事務所だ。建築家と呼ばれる人がデザイン性の優れた建物を設計したとしても、重力・地震・風・雪といった力に対して安全な建築物とするためには様々な計算が必要である。建築物として成り立たせるためにどのような骨組みとするか、どの建材を使用するかを選定する必要があり、そこを担い、手掛けるのが構造設計の醍醐味だ。(TOP写真:バロンアーキテクツが構造設計を手がけ2024年に滋賀県にオープンするプール施設の図(バロンアーキテクツのHPサイトより))

滋賀県のプール施設で構造設計を担当し、大型の倉庫や工場の構造設計も手がける

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バロンアーキテクツは倉庫や工場、商業施設といった多種多様な建物の構造設計を主に手がけている

「物流倉庫や事務所、工場、ショッピングセンターといった大規模な商用施設の構造設計を多く手がけています」と話すバロンアーキテクツ代表取締役の栗原修氏。最近も滋賀県で、国体の水泳競技を開催できる大きさのプールが入ったスポーツ施設の構造設計を手がけた。

大学で土木工学を学び、大学院で建築を学んでゼネコンの前田建設工業に入り、工事現場の現場監督を経て構造設計を担当する本店に配属された栗原社長。2012年に独立して実家のある前橋市にバロンアーキテクツを設立した。今は古巣の前田建設工業から依頼を受けながら、全国にある様々な建築物の構造設計を行っている。

何十本、何百本もの柱や梁(はり)を組み合わせ、力の流れなどを考えながら設計していく構造設計の仕事は、設計の才能や計算の力に加えて、何が最適かを探り続ける根気や発想力が求められる。「直接的ではありませんが、建物の安全性というのは人の命に関わります。慎重で責任感があり、長く続けることができる人に向いている仕事です」(栗原社長)。スタッフは勤務時間中、ずっと椅子に座って設計用のCAD(コンピュータ支援設計)ソフトや専門の解析ソフトを動かしながら、パソコンのモニターや図面を見続けることになる。

ゲーミングチェアを導入して長時間の作業でもスタッフが疲れないよう配慮

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栗原修社長をはじめスタッフ全員がゲーミングチェアに座って作業している

そこで重要なのが椅子の座り心地だ。同社ではゲームで競い合う「eスポーツ」の選手が座っているようなゲーミングチェアを社長自身も含めて使っている。「体を包み込んでくれるのであまり疲れません。リクライニングすれば休憩時間に横になって休むこともできます」(栗原社長)。オフィスだからといってオフィス用品にこだわらず、最適な道具を取り入れることで誰もが働きやすい環境に仕立て上げている。

コロナ禍前と比べ、栗原社長が取引先を訪ねたり施工の現場を見に行ったりする機会が少なくなった。代わりに使うようになったのが、web会議だ。「以前は簡単な打ち合わせでも顧客のところを訪ねていましたが、今は対面が必要な特別な場合を除くと、web会議で済ませることが多いです」(栗原社長)

打ち合わせはオンラインを利用し移動の時間を節約

群馬県内の仕事よりも他都道府県での仕事が多く、以前はよく出張していた。「愛媛へ日帰り出張したこともありました」(栗原社長)。今は、会議への参加要請があれば、事務所のパソコンからアクセスし、ZoomなりTeamsといったweb会議のシステムに入っていく。資料などをあらかじめメールやクラウドで共有しておき、画面上でも共有しながら案件の打合せをしていく。出張時の移動にとられていた時間を大いに節減でき、生産性が向上した。

建築事務所や設計の現場で、ドラフターと呼ばれる製図機械が使われていたのは遠い昔。今はパソコンに入れた専門のソフトやCADソフトを使い、材料の強度や荷重など膨大なパラメーターを計算しながら設計していく。設計情報や図面はすべてパソコンの中で、紙にプリントアウトして積み上げておくようなことはしない。「様々な情報を並べて検討する時などにプリントアウトして眺めることはありますが、設計の途中で資料や図面をいちいち紙にプリントするようなことは大分少なくなりました。」(栗原社長)。ペーパーレス化が強く進んだ現場だとも言える。

作業はパソコン上で行いデータはすべてクラウド上のストレージにアップする

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作業はパソコンの中で完結させペーパーレス化を実現した事務所

加えて同社では、設計途中の図面を記録する場合、すべてクラウド上のストレージにアップすることにしている。「現在は従業員がそれぞれに使っているパソコン内にデータを残していくことはしていません」(栗原社長)。以前はNASと呼ばれるネットワーク上に接続されたハードディスクにもデータを保管してバックアップを取っていたが、クラウドを使用するようになってからは各自のパソコンへの記録だけでなく、事務所内のパソコンにつないでデータを集約しておくNAS(ネットワーク・アタッチ・ストレージ)の使用も止めてしまった。

クラウドストレージを使用することでどこからでもアクセス可能になり、古いデータと間違えることもなくなった

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ゼネコンの前田建設工業で構造設計の仕事を手がけ独立した栗原修社長

クラウドストレージ利用の理由は、「ひとつが情報の共有化実現です。スタッフがそれぞれに手がけた案件や設計情報をクラウド上に集約しておくことで、他のスタッフでもアクセスして閲覧できるようになりました。外出先でも、クラウドから必要なデータを手元のパソコンやタブレットから閲覧できるようにもなりました」(栗原社長)。データの共有化はNASでも可能だが、ローカルネットワークの範囲以外からアクセスしようとするとセキュリティの構築が必要で、手間もかかる。クラウドならそうした手間を省くことができる。

「もうひとつが、常にリアルタイムで最新のデータにアクセスできることです」(栗原社長)。スタッフは作業途中にある設計図面等のデータを、都度クラウドへとアップして最新のデータに置き換えていく。ローカルのパソコンにデータを古い順から記録していくやり方では、データ整理のスキルがないと間違えて古いデータを取り出してしまうこと起こる。クラウドに最新のデータだけを残すようにすることで、古いデータを間違えて引っ張り出してしまい、手戻りや取引先に迷惑をかけるようなミスを防ぐことができる。

データを持ち出される懸念をなくしバックアップも実現したクラウドストレージ利用

「事務所などに侵入した誰かによって、データが持ち去られることもありません」(栗原社長)。火災などで事務所が焼けても、データはクラウド上にしっかりと保管されている。セキュリティの面やBCP(事業継続計画)の観点からも、クラウドへの完全な移行を推進した格好だ。

こうしたクラウド化は、リモート環境での仕事も可能にした。同社にはひとり、愛媛県に居住しながら構造設計を行っているスタッフがいる。栗原社長が以前に勤務していた前田建設工業で働いていた人で、退社するにあたってバロンアーキテクツで仕事をしてもらうことになった。遠隔地でも打ち合わせはオンラインで行うことができる。データもクラウドを介して共有している。デジタル時代ならではの働き方と言える。

ただ、こうしたサテライトオフィスを幾つも作る考えは当面持っていないという。「長い付き合いで信頼できる人だったので、地元にいながら仕事を手伝ってもらうことにしました。建築物という顧客の大切な財産に関わるデータを取り扱うことになるので、信用のない人には頼めません」(栗原社長)。逆に信頼が得られさえすればこうしたオフィスのサテライト展開も可能ということ。しばらく本社で働いてもらった上で、希望する地域で働くことを認めるような展開も今後はありそうだ。

またバロンアーキテクツではITリスク対策としてオールインワンのIT資産管理ツールも導入している。「設計情報というのは技術であり、顧客の財産でもあり会社の財産でもあります。情報漏洩対策は重要です」(栗原社長)。

新しい仕事をより多く取るためにスタッフ数を増やしていく準備を進める

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赤城山が望める場所に立つバロンアーキテクツの事務所

何しろ、構造設計の仕事は今も途絶えることがなく、むしろ増加する傾向にある。例えば倉庫。ネット販売の普及が、巨大な物流倉庫から商品を配送する形態に変化している。巨大化するこうした物流倉庫の需要は今でもなお多い。あるいはスポーツ施設、バスケットボールのプロリーグがそれぞれのチームにアリーナの保有を義務づけたことで、各地で建設ラッシュが起こっている。同社が構造設計も手がけて2024年中に開業する滋賀県のプールのような施設の建設も堅調だ。

「こうした仕事を新しく獲得したいと考えても、今はスタッフの人数が足りず獲得できずにいます。可能ならもう少しスタッフを増やして、全体の仕事量を増やしていきたいと考えています」(栗原社長)。スタイリッシュなホームページを作り、どのような建物を手がけているかを紹介して関心を引いているのも、新しい人材にアピールすることが狙いだ。「タワーマンションのような超高層建築にも取り組んでいければと思っています」(栗原社長)。赤城山を望む自然豊かな前橋市の一角で、クールなゲーミングチェアに座ってパソコンを駆使し、世界が注目する建物の構造設計を手がけるという働き方に、関心を持つ人が集まってきそうだ。

フレキシブルな働き方を簡単に集計できる勤怠管理システムを模索

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バロンアーキテクツ本社前に立つ栗原修社長。以前は隣にある自宅で作業していた

働き方では、就業時間内に数時間途中で抜けてまた戻ってくるようなフレキシブルな勤務も認めている。「オンラインのカレンダーに出勤から退勤まで入れてもらい、途中で抜けたことも記録してもらっていますが、そこから勤務時間を自動的に計算することはできません」(栗原社長)。スタッフ数も少ないため、今は手作業で集計できるが、人数が増えてくればそれも手間となる。将来を見越してどのような仕組みが最適か、これから検討していくそうだ。

企業概要

会社名株式会社バロンアーキテクツ
住所群馬県前橋市西片貝町3-295-1
HPhttps://barron.archi/
電話027-289-2650
設立2012年9月
従業員数5人
事業内容事業内容 構造設計、確認申請(構造)、工事監理(構造)