P.A.I.(パーソナル人工知能)をはじめ、AIクローン技術でつくり出すパーソナルAIの開発および実用化を行うオルツは、3月28日に新サービス発表会を「オルツカンファレンス2024 ZEROの衝撃 ~AIと人。変革か隷属か。~」の会場で開催した。オルツは、AIクローン技術の活用を通して深刻な労働力不足問題の打開を目指しており、クローンに人間の労働を補助・代替させることで、個人だけでなく社会そのものの生産性向上の実現を推し進めている。今回、オルツ発のパーソナライズに特化した汎用LLM(大規模言語モデル)を活用し、未来の労働市場でAIが果たす役割と人類にとっての新たな価値創造に焦点を当てた、革新的な新サービスを発表した。
「当社はP.A.I.の世界を広げるべく、2014年に設立。“世界の人々が手放すことができないサービス”を提供することをモットーにしている」と、オルツ 代表取締役 米倉千貴氏が自身のクーロンを通じて紹介する。「現在、7000社が当社のプロダクトを利用。今回、コンピュータをユーザーに代わって操作する『alt Polloq(オルツポロック)』と『CloneHR』を発表する」と新サービスをリリースするとクローンを通じて述べていた。
「オルツポロック」についての説明は米倉氏自身が行った。「オルツポロックは、OSと、GoogleChromeやEメール、Slackなどのソフトウェアの間に位置付く存在となっている。ユーザーの動作や状況を判断してユーザーの代行エージェントとなり、OSとソフトウェアを必要なタイミングでつなぐ役割を担う。さらに、常時命令を必要とする現行のLLMをさらに進化させたシステムのため、LLM自体が状況に応じて自らプロンプト(命令文)を生成し、コンピュータをユーザーに代わって操作することが可能になる」と、デモンストレーションを行いながら解説。「ユーザーがキーボードで特定の操作を入力すると、オルツポロックがその内容を解析し、必要なアクションを自動で実行する。これらの動作の履歴は、パーソナルメモリーに記録され、ユーザー一人ひとりの特性に応じて、LLMがよりパーソナライズされた結果を出力していくように成長。ユーザーからの直接の依頼がなくても、実行を自律的に起こせるように成長していく」という。「ユーザーの日々のパソコン操作に関してもAIが継続して学習を続けるため、推論の向上と強力なパーソナライズが同時に実現され、賢く自走できるツールになっていく」と、コンピュータの操作をAIが学習していくのだと教えてくれた。「オルツポロックは、6月頃の正式ローンチを予定している。現在、ウェイティングリストの募集受付を開始しており、登録した人に優先して案内をしていくので、ぜひ登録してほしい」と語っていた。
「『CloneHR』は、求人側の企業と求職側のユーザーがそれぞれのデジタルクローンを生成し、クローン同士の仮想対話やAIエージェントとのコミュニケーションによるマッチングによって、これまで人による対応が必須だった仲介者による情報確認や面接・面談工程をクローン同士のデジタル上の対話によって実現し、時間や場所に制限されることなくお互いの相性を導き出すことができる、革新的なマッチングシステムとなっている」と、LLM(大規模言語モデル)を活用した人材マッチングシステムなのだという。「このシステムでは、365日24時間利用可能なため、本人が実際に足を運んだり、打ち合わせの時間を設けたりせずに、より定性的なやりとりを踏まえた相性を調べることが可能になり、HR領域の複雑なニーズに応えることを目指している」と、HR業務にかける時間を最小限にしてくれるシステムなのだと力説する。「また、AIエージェントが個人の情報を深掘りするため、限られた時間の中での会話では引き出せなかった情報や、考慮されなかった定性的な情報も取り込むことが可能になる。そのため、人間(従来の採用エージェント)が行うのは難しい、精度の高いマッチングを実現でき、ユーザーは安心してマッチング確率の高い企業の採用に応募ができるようになる」と、求める人材を探し出すことができると話していた。「HR業務には9つのレイヤーが存在するが、『CloneHR』では、これらの7つのプロセスをAIで処理する。まず、スカウトすべき人材をAIが選び、スカウトメールを送信。メールの自動生成もAIが行う。そしてクローンが面接を担当。面接結果までもAIが判断してくれる」と、デモンストレーションを交えながらシステムの活用法について解説した。「『CloneHR』を活用することで、人事に関する業務を70%削減し、人件費も70%以上抑えることが可能となっている。今後は営業に貢献するAIなども開発し、時間や場所、人的リソースといった制約を超える次世代のマッチングシステムとして紹介していく」と、さまざまな可能性を秘めたこのシステムに期待してほしいと訴えた。
次に、同 CTO 西村洋一氏が「計算リソースの解放/EMETH GPU POOL」を発表した。「GPU計算リソースは、AIモデル開発はもちろん、VRやAR、仮想空間などを開発するために活用され、AI時代のインフラを担う重要なリソースだが、需要の高まりを受けて不足が懸念されている。AIの利用シーンが激増する中、当社では、インフラへの投資や費用を極力抑えて研究・開発を行う方法を模索してきた。大手インフラプロバイダが、増加する需要に応じてサービス提供価格を上げる一方、未使用のGPUマシンが多数存在するという事実に気付き、これらのリソースを活用し、可能な限り多く実用化するためにはどうすればよいかを検討した」という。「単体では非力なリソースでも、数を組み合わせれば十分な計算能力が得られ、多くの需要に応えることが可能になる。当社が分散演算基盤『EMETH(エメス)』プロジェクトで目指している完全な分散コンピュータを作るためには、これらのリソースを集めて活用することが必要不可欠となる。そこで、Web2側に大きな集合体(POOL)を作り、GPUの集合体を作ることにした」と開発の経緯について紹介した。「『EMETH GPU POOL』は、日本初の個人のGPUリソースをホスティングするサービスであり、GPUリソースの時間貸しも可能となっている。一元化したプラットフォーム上で、借りる側と貸す側がさまざまな機能を活用可能になる」とデモンストレーションを行いながら解説。「ユーザーは、登録後すぐに利用開始でき、インスタンスを立ててVMを時間単位で借りることが可能となっている。従来のWeb2サービスと同様に、利用しやすいプラットフォームを提供し、企業の利用に耐えうるクオリティを支援する」と、AIサービスや基礎技術の提供と、それらを支える基盤として欠かせないGPU計算リソースなのだと話していた。
同 AI M&A Managing Director 井上正貴氏が「Clone M&A」について発表した。「近年、経営者の高齢化にともなう事業承継問題が大きな社会課題となっている。後継者不在を理由とした黒字廃業リスクを抱える企業は現在、全国で60万社を超え、約22兆円のGDPが失われるリスクがあると指摘されているが、直近の年間M&A件数は4000件程度(3月28時点、同社調べ)にとどまっており、需給が不均衡となっている」と現状について語る。「また、売手となる企業がM&Aを検討する際の障壁として、心理的な要因と同水準で、買手となる相手先企業が見つからなかったり、判断材料となる情報が不足していたり、期待している提携効果が得られるかわからない--といった、マッチングに関連する課題が上位を占めていることも明らかになっている」とのこと。「こうしたM&A領域の課題を根本解決するために、当社は今回、『Clone M&A』を開発した」と、事業継承問題などを抱える中小企業をターゲットにしたシステムを提供するという。「『Clone M&A』では、AIエージェントとの対話やこれまでの商談データ、事業資料などを元に、売手企業のクローンを生成する。そして、公開情報や商談データなどから生成した、大量の買手企業のクローンと仮想面談を行うことで、売手企業にとって最適な買手企業をマッチングスコア順に提示する」とデモンストレーションを行いながら説明。「『Clone M&A』はクローンと自然言語処理を用いて膨大な数のマッチングを可能にするため、すべての買手企業とのマッチング理由や提携シナジーを売手企業に明確に示すことができ、検討の初期段階から納得感のあるM&Aが実現可能となっている」と、最適なM&Aマッチングを実現すると述べていた。
オルツ=https://alt.ai