人が亡くなった場合、その亡くなった方(被相続人といいます)が所有していた財産(相続財産といいます)は、相続人が承継することになります(民法第896条)。
そして、その相続財産の評価額が、法令で定められた方法によって計算された基礎控除額を超える場合には、相続税が課せられることになります。
そこで、本稿では、相続についての基本的な仕組を確認するとともに、実際に相続税の申告の手続き、必要となる書類について整理してみたいと思います。
相続税の基礎
1-1. 相続税が課税される場合
相続税が課税されるのは、相続財産の評価額が基礎控除額を超える場合です。
相続財産の額が基礎控除額以下の場合には、相続税は課税されません。
したがって、相続税の申告も必要ありません。
基礎控除額は、以下の算式で計算します。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)
例えば、相続人が配偶者と子供2人(合計3人)の場合の基礎控除額は、
基礎控除額=3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円
となります。
その結果、相続財産の額が4,800万円以下の場合には、相続税はかからず、したがって、相続税の申告も必要ありません。
1-2. 相続税計算の実際
相続財産の額が基礎控除額を超える場合、具体的に相続税の額がいくらになるのかを計算する必要があります。
相続税の計算は、以下のような段階を踏んで行います。
①相続財産の評価
ここでは、プラスの財産のみならず、債務などのマイナスの財産も評価して、差し引きの金額を算定します。
例)相続財産の総額が1億2,000円とします
②課税遺産総額を算出
例)相続人が配偶者と子供2人とした場合基礎控除額は4,800万円となります。
その結果、課税遺産総額は1億2,000万円-4,800万円=7,200万円です。
③遺産を相続した場合に取得する金額を算定
例)配偶者の相続割合は1/2なので、法定相続額は3,600万円
子供2人の相続割合はそれぞれ1/4なので、法定相続額はそれぞれ1,800万円
となります。
④法定相続分に従った場合の相続税額を算出
例)配偶者の相続税率は20%、控除額は200万円となりますので、相続税額は、
3,600万円×20%-200万円=520万円となります。
子供の相続税率は15%、控除額は50万円となりますので、相続税額は、
1,800万円×15%-50万円=220万円となります。
⑤相続税の総額を算出
例)相続税の総額は、配偶者の相続税額520万円、子供の相続税額220万円×2の合計、960万円となります。
⑥各相続人が実際に負担する相続税額を算出
例)遺産分割協議により、配偶者が7,000万円を相続し、長男が3,000万円、次男が2,000万円を相続することとなった場合
配偶者の相続税は、7,000万円/1億2,000万円×960万円=560万円
長男の相続税は、3,000万円/1億2,000万円×960万円=240万円
次男の相続税は、2,000万円/1億2,000万円×960万円=160万円
となります。
⑦最終的な納税額を算出
例)上記例の場合、配偶者の取得する財産の課税価格が7,000万円ですので、配偶者の税額軽減措置を受けることができ、最終的には配偶者は相続税を納める必要がなくなります。
その結果、実際に納める相続税は、配偶者はゼロ、長男は240万円、次男は160万円、となります。
1-3. 相続税の申告
①申告者
相続財産が基礎控除額を超える場合には、相続によって財産を取得した相続人は相続税を申告する必要があります。
上記の例のように、配偶者の税額軽減措置によって最終的に納める相続税がゼロとなった場合でも、申告は行わなければなりません。
②申告時期
相続税の申告は、相続が開始されたことを知った日の翌日から10ヵ月以内とされています。
③申告場所
被相続人が亡くなった時に住んでいた土地の税務署です。
各相続人の住所地ではありませんので注意が必要です。
④申告方法
申告書に必要書類を添付して、税務署に提出します。
申告は、各相続人が別々に行うことも可能ですが、一通の申告書に相続人全員が署名・捺印をして、その下に各人の納税額を計算・記載して行うのが一般的です。
相続税の申告書
2-1. 申告書の構成
相続税の申告書は、第1表から第15表まであります。
このうち、第1表が申告書で、第2表から第15表は、第1表による申告を行うための計算を行う資料や、その明細書等となります。
第2表は相続税の総額の計算書
第3表は農業相続人がいる場合の計算書
第4表は相続税計算に際して相続財産に加算する財産の計算書
第5表から第7表は相続人について認められる軽減措置や控除の計算書
第8表は外国税の控除や農地の納税猶予等の計算書
第9表は生命保険金の明細書
第10表は退職手当金の明細書
第11表は相続税がかかる財産の明細書
第12表は納税猶予を受ける特例農地等の明細書
第13表は債務および葬式費用の明細書
第14表は純資産に加算される暦年課税分の贈与財産や、社団法人などに遺贈した財産等の明細書
第15表は相続財産の種類別価額表
申告書は、第1表から第15表まであるとしても、全てを記載しなければならないわけではありません。
農業相続人がいない場合には第3表や第12表は必要ありませんし、外国税の控除がなければ第8表も必要ありません。
2-2. 申告書の作成順序
申告書は第1表から順番に記載していくものではなく、以下の順番で記載していくこととされています。
①第9表から第11表の付表を記入
②第9表から第11表の付表に記入されたものに基づいて、第11表で課税財産を集計
③第12表から第14表を記入し、マイナスの財産、相続財産に加算される相続開始前3年以内の贈与等を計算
④第11表の課税財産に、第12表から第14表の結果を加減して、相続財産種類別の価額を算定
⑤これらに基づき、第1表の課税価格を記入し、第2表に基づいて相続税の総額を計算
⑥第4表から第8表による税額控除を計算
⑦第4表から第8表によって計算された税額控除を第1表の税額控除の欄に転記し、差し引きの税額を計算
2-3. 添付書類
申告書はこのように、順番に記載していくことになりますが、その記載内容が正確であることを担保するために、それを証明するための資料を申告書に添付する必要があります。
添付書類
相続税の申告のためには、相続財産に関する情報や、控除等を受けることができることを証明するための資料が必要となります。
また、相続人が誰か、何人いるかも、基礎控除額を算定したり、法定相続分を計算する際に重要な資料となりますので、被相続人や相続人に関する情報も必要となります。
さらに、相続税の申告納付は、実際に相続財産について遺産分割がなされ、相続人が具体的にどの財産を取得したのかが確定していることが前提となります。
したがって、相続人が具体的に取得した財産を証明する資料も必要となります。
このように、相続税の申告に際しては、各種の資料・情報を申告書に添付する必要があるのです。
以下、具体的に見ていきます。
なお、相続税の申告については、国税庁が、「相続税の申告の仕方」という手引きを作成するとともに、「相続税の申告のためのチェックシート」を定めていて、申告書の書き方や、相続税の申告に際して確認が必要なポイントや、必要書類について説明しています。
必要に応じて、これらの手引きやチェックシートを利用してください。
3-1. 被相続人・相続人に関する資料
①マイナンバーカード、または、マイナンバー通知書および身分証明書
相続税の申告を行う相続人の本人確認のための資料として、マイナンバーカード(表面および裏面の写し)の提出が必要です。
また、マイナンバーカードを持っていない場合には、マイナンバーの通知書かマイナンバーの記載のある住民票の写しと、運転免許証・パスポート・健康保険証等の身分証明書の写しが必要となります。
②被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍(被相続人が亡くなってから10日以上経過してから作成されたもの)
これによって、被相続人の配偶者の有無、子供・養子等の有無を確認し、相続人の範囲を明らかにします。
③相続人全員の戸籍謄本
相続人を確認するとともに、相続人がすでに亡くなっている場合には、代襲相続人の有無を確認し、相続人を確定します。
なお、被相続人の戸籍謄本等、相続人の戸籍謄本等に代えて、「法定相続情報一覧図の写し」を提出することも認められています。
これは、戸籍関係の書類を元に被相続人と相続人の関係を図示した書面を法務局に提出し、法務局から認証付の写しを交付してもらったものです。
ただ、その作成のためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等、相続人の戸籍謄本等をそろえることが必要となります。
④相続人に未成年者がいる場合には、特別代理人選任の審判の証明書
被相続人の子供が未成年者である場合等には、
被相続人の配偶者と子供との利益が相反することとなるため、配偶者が未成年の子供の法定代理人として遺産分割協議を行うことができません。**
そこで、未成年者の子供のために特別代理人を選任する必要が生じます。
3-2. 遺産分割に関する資料
①遺言書
被相続人が遺言書を遺していた場合には、その写しを提出することになります。
これによって、遺言による遺産の帰属(相続人のうちの誰がどの財産を取得したのか、または、相続割合等)を明らかにするためです。
遺言書については、公正証書遺言以外の場合には、家庭裁判所に遺言書を提出して検認を受ける必要があります。
②遺産分割協議書の写し
遺言書がない場合や、遺言書があっても全ての遺産についての遺産分割方法の指定がない場合などには、相続人間で遺産分割協議を行い、遺産の帰属を決定することになります。
そこで、その内容を明記した遺産分割協議書を遺産分割の証拠として提出することになります。
なお、遺産分割協議書には、全ての相続人が実印を押印し、あわせて、印鑑証明書を添付する必要があります。
これは、遺産分割協議書が相続人の真意に基づいて作成されたものであることを保証するためです。
③死因贈与がなされている場合にはその旨の契約書など
死因贈与契約がなされている場合において、その旨の書面が取り交わされている場合には、その事実を証するために、契約書等の書面を提出することが必要となります。
3-3. 相続財産に関する資料
①不動産の登記事項証明書
被相続人の所有不動産であることを証明する資料として、被相続人名義の不動産の登記事項証明書が必要となります。
なお、添付資料とはされていませんが、亡くなった方が所有していた不動産を一括して調べるためには、名寄帳を取得することが合理的です。
これは亡くなった方が当該市区町村内に所有していた全ての不動産の一覧表です。
固定資産税が非課税の土地や、未登記の建物などについても記載されているのが一般的です。
これによって、被相続人が所有していた不動産のリストを確認することができます。
②不動産の固定資産評価証明書
相続財産中の建物の評価額は固定資産税評価額によって算定されます。
また、土地の場合でも路線価が設定されていない土地については、固定資産税評価額評価額に倍率票記載の倍率を乗じて評価額を決定するため、提出が必要となります。
③賃貸借契約書・地上権設定契約書等
被相続人が所有する土地や建物を賃貸していた場合には、その土地・建物の評価額が、自己使用であった場合と異なってきます。
また、被相続人が、土地を賃借していた場合には、その土地の所有権は有していなかったとしても、借地権が財産的価値を有するものとして評価されます。
したがって、その土地・建物を賃貸している事実を証明するため、または、借地権の財産評価をするためにも、被相続人が締結していた賃貸借契約や、地上権設定契約等の写しを提出する必要があります。
④事業用財産がある場合における資料
相続財産の中に事業用財産がある場合には、それを証明するために、被相続人の直近の所得税青色申告書等の提出が必要となります。
なお、青色申告をしていない場合には、収支内訳書を提出することになります。
⑤有価証券に関する権利を証する書類
有価証券、通帳または預かり証、残高証明書等、および、株式配当等に関する配当金支払通知書等の書類が必要となります。
⑥預貯金
相続開始日時点における残高証明書、預金通帳等により、相続開始時点における預貯金の金額を確認する必要があります。
また、相続開始前における預貯金の動きを確認するために、5年前位まで遡って通帳の写しを準備しておくことが好ましいでしょう。
⑦定期預金の場合における経過利息の計算明細書
定期性預金の場合には、相続開始時までの間に発生した利息を考慮する必要があるため、相続開始時における既経過利息の計算明細書を準備しておく必要があります。
⑧生命保険金・死亡退職金の書類
生命保険金の支払や、死亡退職金の支払いがあった場合には、それらを証明する書類として、保険証券、支払保険金の計算書、退職金の支払調書、退職金支払いのための取締役会議事録等の書類を提出する必要が生じる場合があります。
また、被相続人が加入していた保険契約等における解約返戻金等の保険契約に関する権利がある場合には、その証明書類として保険証券や、支払済保険料計算書、解約返戻金相当額等証明書等の書類が必要となる場合があります。
⑨その他の財産を証明する書類
・親族や知人等に対する貸付金債権などがある場合には、金銭消費貸借契約書
・車、バイク等の動産類の場合には登録証がある場合にはその登録証
・書画、骨董等がある場合において鑑定書などがある場合にはその鑑定書など
・死亡後に受け取った給与・賞与などの給与明細書
・高額療養費や傷病手当金などの支給決定通知書等
・老人ホームなどの入居金・保証金・預け金等の返金明細、領収書等
・ゴルフ会員権などの証書、預託金領収書等
3-4. 債務等に関する資料
①借入金についての金銭消費貸借契約書・残高証明書
被相続人が借り入れをしていた場合には、その債務額を証明する書類として、金銭消費貸借契約書や、残高証明書等を提出することになります。
②被相続人が賃貸人の場合における敷金等の証明書類
被相続人が賃貸人として、賃借人から敷金や保証金の預託を受けていた場合には、その返還債務を負担することになります。
その証明のために、賃貸借契約書を提出する必要が生じる場合があります。
③葬式費用等
葬式費用等も相続財産から控除することが認められています。
具体的には、通夜・告別式等の費用、お寺への読経料・戒名料・お布施・車代等、火葬の費用、納骨の費用などです。
これらのうち、領収書があるものについてはその提出が必要となります。
また、お寺への支払をはじめとする領収書のないものについては、個々の金額をリスト化したものなどを提出することになります。
なお、香典返し、お墓・仏壇の購入費用、四十九日法要等の費用は、葬式費用として相続財産から控除することはできませんので、注意が必要です。
3-5. 生前贈与財産の加算
相続開始前3年以内に暦年課税方式でなされた贈与、相続時精算課税方式によってなされ贈与は、相続財産に加算して相続財産を計算することになります。
①相続開始前3年以内になされた暦年課税による贈与
その贈与額等を確認するために、贈与契約書、贈与税申告書等を提出することになります。
なお、贈与税の申告書については、過去6年分程度を準備する必要があります。
これは、贈与税の時効は申告期限から6年であるため、少なくとも6年前まで遡って贈与税の申告漏れがないことを証明する必要があるためです。
②相続時精算課税制度を利用した贈与
相続時精算課税選択届出書、贈与税の申告書の提出が必要となります。
また、あわせて、相続開始後に作成された、被相続人および受贈者の戸籍の附票の写しも提出する必要があります。
3-6. 不動産の評価
相続財産については、その財産の有無の問題とは別に、その財産の評価額をどうするかという問題があります。
財産の評価において最も問題となるのが不動産、特に土地です。
土地について、登記事項証明書、固定資産税評価証明書は、財産の確認のところですでに提出書類として掲げていますが、そのほかに、土地を評価するための資料として、国税庁が定めている「土地及び土地のうえに存する権利の評価明細書」を作成して、提出することになります。
あわせて、以下の資料が必要となります。
なお、建物については、基本的に固定資産税評価額がその評価額となりますので、特に難しい問題はありません。
正確には、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて算定するとされていますが、現在は、この倍率は全国全て1.0倍とされていますので、結果、固定資産税評価額が建物の評価額と一致することになります。
①路線価図または評価倍率表
土地の評価額は原則として路線価によって算定しますので、路線価図が必要となります。
ただ、路線価が設定されていない道路に面した土地については、固定資産税評価額に対して一定の倍率を乗じて評価額を決定します。
そのため、路線価が設定されていない土地を評価するためには評価倍率表を準備する必要があります。
②公図・地積測量図・現地の写真など
土地の具体的な形状等を示す資料として必要になります。
土地の形状によっては、路線価等によって算定した評価額を元にして、さらに、奥行価格補正、側方路線影響加算、二方路線影響加算、不整形地補正、間口狭小補正、奥行長大補正、がけ地補正などの補正や修正を行うことになります。
そのため、その土地の具体的な形状や周囲の状況を示すための資料として、公図・地積測量図・現地の写真等が必要となります。
③賃貸借契約書
土地、建物については、それを被相続人が自ら使用していたものか、それとも賃貸していたものかによって評価額が変わってきます。
そのため、賃貸していた場合にはそのことを証明するために賃貸借契約書が必要となります。
路線価方式や倍率方式で算定された評価額は、基本的に被相続人が自ら使用する自用地としての評価額になります。
この土地を他人に賃貸している場合(貸宅地といいます)には、路線価図または倍率表で定めている借地権割合を乗じてその土地の評価額を計算することになります。
また、被相続人が所有している土地上に自ら建物を建てて、これを賃貸している場合には、土地の賃貸ではありませんが、一定の範囲でその土地の利用も一定の範囲で建物の賃借人に提供されているとことから、貸家建付地として、自用地の評価額から借地権割合と借家権割合を乗じた額が減額されることになります。
また、建物を賃貸している場合には、借家権割合として本来の評価額の70%として評価されます。
④市街農地等の評価明細書
土地が市街地に近接していて、概ね宅地への転用ができる農地の場合には、市街地農地としての評価額の80%相当額として評価されます。
そのため、国税庁が準備している、「市街地農地等の評価明細書」を提出することになります。
3-7. 上場株式の評価明細書
上場株式のように取引相場がある株式については、その取引相場の価格を元に評価額を決定します。
ただし、相続開始時の一時点の価格ではなく、以下の中の最も低い価額で評価されます。
・相続開始時の終値
・相続開始があった日の属する月の毎日の終値の平均値
・相続開始があった日の属する月の前月の毎日の終値の平均値
・相続開始があった日の属する月の前々月の毎日の終値の平均値
したがって、これらの情報を集めることになります。
これらをまとめるために、国税庁は「上場株式の評価明細書」なる書式を準備しています。
したがって、この「上場株式の評価明細書」を申告書に添付することになります。
3-8. 非上場株式の評価
非上場株式の場合には、その評価の方法が複雑です。
①株主原簿
非上場株式の場合には、誰がその株式を相続するかによって、評価方法が変わってきます。
そこで、まず、当該株式を相続するのが、同族株主であるか、それ以外の株主であるかを確認する必要があります。
そのための判断資料として、株主原簿を確認・提出する必要があります。
②取引相場のない株式(出資)の評価明細書
取引相場のない株式や持分会社の出資等並びにこれらに関する権利の価額を評価するために、国税庁は「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」という書式を定めています。
したがって、非上場株式を相続した者は、この書式に従って、必要事項を記載する方法でその評価額を算出することになります。
したがって、相続税の申告書にも、この「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」を添付する必要があります。
③法人税申告書等
類似業種比準方式によって評価する場合には、その基準とするために、当該会社の法人税申告書を提出する必要があります。
④法人の貸借対照表、賃貸借契約書
純資産価額方式で評価する場合には、当該会社の純資産を算定する必要があります。
その資料として、当該法人の貸借対照表を資料として提出する必要が生じます。
また、貸借対照表上の土地・建物が計上されていない場合には、それらの土地・建物を賃借していることになりますので、その賃貸借契約書等も資料として必要になります。
3-9. 立木の評価証明書
相続財産中に山林および森林がある場合、その立木の評価額を算定するために、国税庁が定めている「山林・森林の立木の評価明細書」に必要事項を記入して、その評価額を算出したものを作成し、これを申告書に添付することになります。
3-10. その他の明細書
国税庁は、その他にも、相続財産に含まれる各種財産の評価のための評価証明書を多数準備しています。
・一般道山及び船舶の評価明細書
・定期借地権等の評価明細書
・特許権、実用新案権、意匠権、商標権等の評価明細書等
必要に応じてこれらの明細書等を作成し、この明細書とその根拠となる資料を、申告書に添付することになります。
3-11. 配偶者の税額軽減
配偶者の税額軽減措置を受けるためには、以下の書類の提出が必要となります。
①被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本、又は、法定相続情報一覧図の写し、遺言書または遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書
3-12. 小規模宅地等の特例を受けるための提出書類
①被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本、又は、法定相続情報一覧図の写し、遺言書または遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書
②相続開始前3年間に、自己、自己の配偶者、自己の三親等内の親族及び自己と特別の関係のある法人の所有する家屋に居住していない者が取得する場合
・相続開始前3年以内に居住していた家屋が、自己・自己の配偶者・自己の三親等内の親族又は、自己と特別な関係がある法人の所有する家屋以外の家屋であることを証明する書類
・相続開始時に自己の居住している家屋を相続開始前のいずれの時期においても所有していたことがないことを証する書類
を提出することが必要となります。
具体的には、相続前に居住していた家屋の賃貸借契約書、及び、その家屋の所有者が自己・自己の配偶者・自己の三親等内の親族・自己と特別な関係があり法人の所有するものではないことを証明するための登記事項証明書等を提出することになります。
③被相続人が相続開始直前において老人ホームに入居するなどして、当該宅地等に居住していなかった場合において、特例の適用を受ける場合には、以下の書類の提出が必要となります。
・被相続人の戸籍の附票
・被相続人が要支援認定を受けていたこと等を証する書類
・被相続人が入居していた施設が老人福祉法や介護保険法等に定める施設であることを証する書類
④特定同族会社事業用宅地等に該当する場合
・当該会社の定款
・当該会社の発行済み株式の株式総数、被相続人の親族等が有する株式数等を記載した書類
⑤貸付事業用宅地等に該当する場合
・被相続人が相続開始前3年を超えて貸付事業等を行っていたことを証する書類
3-13. 特定計画山林の特例を受ける場合
①被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本、又は、法定相続情報一覧図の写し、遺言書または遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書
②市長村長の認定を受けた森林経営計画書の写し 等
まとめ
以上、相続税の申告の際の手続きの流れ、及び、相続税の申告の際に必要とされる主な書類の概要についてまとめてみました。
相続税については、その財産の算定、特に土地の評価や、非上場の株式の評価等において専門的な知識が必要となる場合があるなど難しい点がありますが、それ以外については、相続人自身でできる場合も少なくありません。
ただ、相続税については、各種の控除制度や特例制度が設けられています。
そして、それらの制度を利用するために、その適用を受けるための要件を満たしていることを証明する必要があります。
その結果、各種の書類の添付が必要となるわけです。
ここで特に注意が必要なのは、根拠となる書類については、一つ一つ正確に、かつ、もれなく準備するということです。
それらの根拠となる資料がしっかりしていないと、税務署もその正確性を疑うこととなりかねません。
必要な書類がもれなく添付されていると、税務署の印象も良くなるということは否定できないでしょう。
一方、先にも述べたとおり、相続税については各種の特例や控除制度が設けられています。
素人では気がつかない制度等もあり得るため、必要に応じて専門の税理士を活用することも必要となります。
その方が、控除や特例をうまく活用して、相続税が安く収まるということも十分に期待できるからです。
ただ、その際に注意しなければならないことは、税理士に依頼したとしても、各種の資料等を集めて適切に制度を活用するには、相応の時間がかかるということです。
申告期限ギリギリになって依頼したのでは、税理士も対応しきれない場合があります。
その意味では、相続税の申告については、ご自身で行う場合でも、税理士に依頼する場合でも、時間的に余裕を持って対応する必要があるということは、認識しておく必要があるでしょう。
(提供:相続サポートセンター)