生産管理システムでワイヤーハーネスを効率的に生産 内職先も生産管理システムで把握し、ミス発生時の迅速対応で品質向上 中村電線工業(群馬県)

目次

  1. 厳しい全数検査で不良品の発生を防ぎ取引先の信頼を得る 支えるのは生産管理システム
  2. 生産管理システムを使ってどの内職先が手がけたワイヤーハーネスかを把握しミスがあれば改善を求める
  3. 生産管理システムに受注登録を加えて二度手間だった入力作業を軽減
  4. 電子帳票類の保存には複合機を使ってスキャンしパソコンに記録していく
  5. ベトナムからの技能実習生が電線の切断加工や製品検査の現場で働いている
  6. 会社設立から約50年、今後も成長を続けていくために
  7. ワイヤーハーネスは、様々な部品の電子化に伴い、新たな需要が生まれる分野
中小企業応援サイト 編集部
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群馬県邑楽郡大泉町にある株式会社中村電線工業は、電線を束ねてコネクタを取り付けた「ワイヤーハーネス」と呼ばれる部品の製造を手がけている会社だ。電子部品や各種装置の間をつないで電気や信号を伝える役割を果たしているワイヤーハーネスは、自動車やエアコンなど身の回りにある電気が使われている機器なら必ず使われている。(TOP写真:電線を切断加工してワイヤーハーネス製造工程へと回す中村電線工業の工場)

厳しい全数検査で不良品の発生を防ぎ取引先の信頼を得る 支えるのは生産管理システム

信号を伝え電気を流して機器を正常に動作させるという意味で、人間の神経や血管と同じ役割を果たすワイヤーハーネスは、切れていたりコネクタとうまく繋がっていなかったりすれば電流が流れず動作しない。そうした不良品が出ないよう、高い品質管理が求められるワイヤーハーネスの製造を、中村電線工業では個人事業として1963年に開始し、1975年に法人化してからも半世紀近く手がけてきた。

安定した品質の製品を作り、取引先の要望に応え続けることができた背景には、「製造したワイヤーハーネスを全数検査しています」(中村電線工業取締役専務の中村辰也氏)という、同社の品質管理に対する厳しい姿勢がある。「製品ごとに検査表を作って、リード線の色・装着漏れのチェックなどを定められた検査項目を、一人ひとりの作業員がチェックしています。厳しい品質検査を通った製品だけが納品へと回されます」(中村専務)

生産管理システムでワイヤーハーネスを効率的に生産 内職先も生産管理システムで把握し、ミス発生時の迅速対応で品質向上 中村電線工業(群馬県)
一つひとつ丁寧に検査して不良品がないかを確かめる

何本もの電線を束ねてコネクタとつなぎ、圧着するワイヤーハーネスの製造工程はほとんどが手作業。こうした製造作業の多くを同社では、240件ほどの内職先に出している。内職先が、部材を組み合わせて部品を製造する。これを回収して一品一品検査をし、合格したものだけを出荷していく。不良品が見つかった場合、それらを抜き取るだけでなく、製造を手がけた内職先に対して指導を行い、次にミスが起こらないように改善を求めていく。こうした積み重ねによって全体の歩留まり率を上げていく。

ここで大切なのが、どこの内職先にどのような内容の仕事を、どれくらいの量依頼したのかを、しっかりと把握しておくことだ。同社では、受注管理や発注管理、外注管理、在庫管理などを行う生産管理システムを活用して、内職先とのやりとりを把握し、確認できるようにしている。「どの内職先にどのような作業の依頼を出しているのか、そこから戻ってきた製品がどれで、検査の結果どれくらいの不良が発生していたかがわかります」(中村専務)

生産管理システムを使ってどの内職先が手がけたワイヤーハーネスかを把握しミスがあれば改善を求める

生産管理システムでワイヤーハーネスを効率的に生産 内職先も生産管理システムで把握し、ミス発生時の迅速対応で品質向上 中村電線工業(群馬県)
内職先には切断加工した電線やコネクタ類をセットにして配送する。どこに何が送られたかは生産管理システムで把握する

内職先には何十年も同社から仕事を請け負って、作業をしてくれている人たちが大勢いる。「パートなどに出られない方々が、家でコツコツとワイヤーハーネスを作ってくれています」(中村専務)。それこそ熟練工のような腕前で、一つひとつは決して単価の高くない作業を積み上げて、何百何千にも及ぶ製品を作り出しているが、その過程では体調の変化などからミスが増えることもあるという。「慣れていない家族が手伝ったことで品質にバラつきが出ることもあります」(中村専務)

不良品が発生した場合、どこの内職先から納品されたものかが生産管理システムで把握できれば、原因を究明して改善につなげることができる。「内職先を回っている担当者も、品質管理についてのノウハウを勉強するようにして、お互いにクオリティアップに努めていこうとしています」(中村専務)。こうした活動を通して歩留まり率を高めた上で、全数検査という高い関門を置くことで、出荷時に100%の品質を保てるようにしている。「一つ不良品が出ると納品先に迷惑がかかります。会社の信頼にもつながるので、そこはしっかりと守るようにしています」(中村専務)

生産管理システムに受注登録を加えて二度手間だった入力作業を軽減

生産管理システムでワイヤーハーネスを効率的に生産 内職先も生産管理システムで把握し、ミス発生時の迅速対応で品質向上 中村電線工業(群馬県)
中村電線工業の中村辰也専務

生産管理システムは、内職先の把握だけに使っているわけではない。一つひとつが細かい上に、多量で多品種の電線やコネクタ類を使うワイヤーハーネスの製造に関して、必要となる材料をどれだけ在庫として持っているかが記録してあり、そこに注文を受けた製品の数や種類を入力すれば、生産が可能かどうかすぐわかるようになっている。以後、材料をピックアップした上で製造へと回し、納品されたものを記録していくことで、在庫数や生産数といった数字を逐次把握できる。

生産管理システム自体は20年近く使用しているものだが、最近手を加え、加工の指示を行った段階で受注の登録も行えるようにした。「以前は、受注は受注で加工指示とは別に登録する必要がありましたが、その作業を担当していた従業員が退職したため自分で手がけるようになったところ、二度手間になっているとわかりました」(中村専務)。

受注も加工も同じアイテムについての指示なら、加工の指示を行えばそれが自動的に受注としても登録されれば、作業の手間を省けると考えた。従業員の新規採用もなかなかおぼつかない状況で、決して多くはない人手を活用する必要がある中小企業にとって、こうした作業工程における工夫が効率化に不可欠だ。

電子帳票類の保存には複合機を使ってスキャンしパソコンに記録していく

生産管理システムでワイヤーハーネスを効率的に生産 内職先も生産管理システムで把握し、ミス発生時の迅速対応で品質向上 中村電線工業(群馬県)
オフィスに設置されている複合機

ICTの活用に関しては、電子帳簿保存法の改正に対応して、帳票類の電子化にも取り組み始めた。複合機を使って帳票類をスキャンすれば、自動的にフォルダにデジタルデータとなって保管される仕組みを活用している。今は手動で記録している出退勤も自動で管理できるようになれば、そうした事務に関わる担当者の負担を軽減できるとも考えている。空いた時間を他の作業に振り向けることで、自身も含めて効率的な人材活用を目指していく。

ベトナムからの技能実習生が電線の切断加工や製品検査の現場で働いている

どこの地域でもどのような業種でも人手不足の問題はついてまわるが、同社の場合はベトナムからの技能実習生を受け入れることでカバーしている。パートを含めて35人ほどいる従業員のうち、実に11人がベトナムから来た20歳から27歳の女性の技能実習生だという。「本社工場内の居住施設や近所のアパートに住みながら働いています。誰もがやる気を持って日本に来て仕事に取り組んでくれています」(中村専務)と働きぶりを高く評価する。

生産管理システムでワイヤーハーネスを効率的に生産 内職先も生産管理システムで把握し、ミス発生時の迅速対応で品質向上 中村電線工業(群馬県)
普段から整理整頓を心がけている職場で加工や検査の業務に励むベトナムからの技能実習生たち

品質管理の要となる検査も担当してもらっている。製造されたワイヤーハーネスに問題点がないかをチェックする仕事は、根気が何よりも必要となるが、ベトナムからの技能実習生はそうした仕事を就業時間内にきっちりとこなして、製品を見る目を養っていく。同社では近年、エアコンやアミューズメント機器といった従来からの製品向けに加え、医療用機器向けのワイヤーハーネスを多く手がけるようになっている。より高度で精緻な品質管理が求められるそうした部品の検査を、日本で学んだ技能実習生たちが行っている。

繁忙期には残業も発生するが、自由時間には本社の食堂に集まって歓談したり、休みの日は専務が車で東京観光に連れて行くなど、日本での日々を楽しんでもらっている。技能実習生の場合、勤め先からいなくなってしまうという問題が取り沙汰されるが、同社で働くベトナムからの技能実習生ではほとんど起こらないとのこと。「5年間の実習期間をしっかりと働いてくれます」(中村専務)。そうした働きやすさと過ごしやすさが口コミで伝わって、今のところ技能実習生の確保には困らない状況にあるという。

会社設立から約50年、今後も成長を続けていくために

生産管理システムでワイヤーハーネスを効率的に生産 内職先も生産管理システムで把握し、ミス発生時の迅速対応で品質向上 中村電線工業(群馬県)
数年前から実質的な社長として取引先や金融機関と話して経営に取り組む中村電線工業の中村辰也専務

戦力確保を進めながら事業の拡大を図ることで、1975年から続く同社をさらに息の長い会社にしていくことが目下の課題。コロナ禍が収まって、エアコンの製造や注文が回復しているように思われがちだが、在庫が積み上がって生産自体は停滞気味で、中に組み込むワイヤーハーネスへの注文も減っている。娯楽の変化で、パチンコやパチスロといったアミューズメント機器も、以前ほどの販売台数は見込めない。そうした状況を医療用機器への展開でカバーしている。

ワイヤーハーネスは、様々な部品の電子化に伴い、新たな需要が生まれる分野

生産管理システムでワイヤーハーネスを効率的に生産 内職先も生産管理システムで把握し、ミス発生時の迅速対応で品質向上 中村電線工業(群馬県)
株式会社中村電線工業本社

中村専務は、今後について自動車業界にも注目している。自動車業界は、今後も部品の電子化に伴ってワイヤーハーネスの需要は上昇すると見られているが、部品の電子化の流れは自動車業界に限らない。

特徴を持つ部品メーカーが行い成功しているように、展示会への積極的な出展や多様な設備を持つ中村電線工業のメリットをホームページで詳細に伝える事で、日本中で個別のワイヤーハーネス製造会社を探している会社とのマッチングの可能性があると感じた。BtoBでもWebで新たな企業との取引が始まる。今の時代の良さでもある。

企業概要

会社名株式会社中村電線工業
住所群馬県邑楽郡大泉町西小泉4-16-18
HPhttps://www.nakamura-densen.jp/
電話0276-63-3333
設立1975年9月1日(創業1963年3月)
従業員数31人
事業内容 弱電用電線販売/リード線、平行線、シールド線加工/端子各種販売/端子ハーネス加工/オーディオ関連部品加工販売