異業種連携に積極的に取り組み、ICT活用と柔軟な発想で「型にとらわれない型枠企業」 成和建設(岡山県)

目次

  1. 企業理念は「和をもって成す」 設立2018年の会社
  2. 挑戦する意欲と柔軟な発想を重視 会社のキャッチコピーは「SAY WHAT?」
  3. コーポレートマークやノベルティグッズ 異業種連携で様々なアイデアを具現化
  4. 蓄積した知識と技術が競争力の源泉になる。型枠大工の仕事は奥深い
  5. デジタル機器の操作に不慣れなベテラン職人に負担がかからないように社長自ら積極的にフォロー
  6. 社長自身がエクセルで原価管理や見積資料を作成していたが2023年建設業向け原価管理システム導入 お金の流れが見える化出来、社長自身の戦力増強実現
  7. 原材料費や人件費高騰の中、原価管理システムによりコスト分析結果を材料に顧客との価格交渉もしやすくなった
  8. 型枠展開図の3Dの作成システムを使って業務のスピード化と正確さが向上した
  9. 金融機関の担当者とのコミュニケーションを通じて、常に数字を意識する習慣が身についた アドバイスを生かしてICT導入を推進
  10. 原価管理システムの導入に地元の金融機関、備前日生信用金庫が大きな役割
  11. 高度外国人材がこれまで以上に日本で活躍できるように取り組みたい
  12. SDGsの精神を企業活動に反映
  13. 若手と海外人材の採用・育成に力を入れる 夢の実現を全力でサポート
中小企業応援サイト 編集部
全国の経営者の方々に向けて、経営のお役立ち情報を発信するメディアサイト。ICT導入事例やコラム、お役立ち資料など「明日から実践できる経営に役立つヒント」をお届けします。新着情報は中小企業応援サイトてお知らせいたします。

ビル建設や土木などコンクリートを使う工事で設置される型枠は、コンクリートの性能と堅牢さを計算通りに実現する上で重要な役割を担っている。型枠工事を主力事業とする岡山県岡山市の株式会社成和建設は、型にとらわれない柔軟な発想で、型枠の新技術導入と異業種連携を積極的に進め、地域での存在感を高めている。ICTとデジタル機器を活用することでそのポテンシャルを更に拡大しようとしている。(TOP写真:型枠展開図作成システムを活用して図面を確認する様子)

企業理念は「和をもって成す」 設立2018年の会社

異業種連携に積極的に取り組み、ICT活用と柔軟な発想で「型にとらわれない型枠企業」 成和建設(岡山県)
型枠を設置する作業の様子
異業種連携に積極的に取り組み、ICT活用と柔軟な発想で「型にとらわれない型枠企業」 成和建設(岡山県)
竹を用いた化粧型枠を使って美しく整えられたコンクリート

株式会社成和建設は社名に反映した「和をもって成す」を企業理念としている。創業10年未満の若い会社だが、大手ゼネコンの一次下請けを担うなど地元の建設業界で存在感を高めている。主力の型枠工事以外に、住宅、公共工事にも事業領域を拡大。扱いが難しい素材である竹を用いた化粧型枠の施工を岡山県内で初めて実施するなど新しい取り組みにも積極的だ。

挑戦する意欲と柔軟な発想を重視 会社のキャッチコピーは「SAY WHAT?」

異業種連携に積極的に取り組み、ICT活用と柔軟な発想で「型にとらわれない型枠企業」 成和建設(岡山県)
若者への訴求を狙って制作したパンフレット。キャッチコピーを強く打ち出している

従業員の平均年齢は35歳。ベテランから若手まで幅広い年齢層が在籍し、ベトナム、インドネシア出身の技能実習生も活躍している。「大事にしているのは常に前向きに挑戦する意欲と柔軟な発想です。型にとらわれない型枠工事会社を目指しています」。小橋亮代表取締役は明るい表情で話した。

会社のキャッチコピーは「SAY WHAT?(セイワット=何て言ったの?)」。英会話で相手の発言に驚いた時に返す表現と社名の成和(せいわ)を掛け合わせている。従来の建設会社にない斬新なイメージを打ち出そうと小橋社長の知人が勤める東京都内のエンターテインメント企業に考案してもらったという。2021年3月に若い人材に訴求するために制作した企業パンフレットの表紙にも大きく打ち出している。

コーポレートマークやノベルティグッズ 異業種連携で様々なアイデアを具現化

異業種連携に積極的に取り組み、ICT活用と柔軟な発想で「型にとらわれない型枠企業」 成和建設(岡山県)
「W」と「A」を組み合わせたコーポレートマーク

エンターテインメント企業との連携によって具現化したアイデアは他にもある。会社を象徴する漢字、「和」のアルファベット表記、「W」と「A」を組み合わせたコーポレートマークは、レオナルド・ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」をモチーフにデザインしているという。

異業種連携に積極的に取り組み、ICT活用と柔軟な発想で「型にとらわれない型枠企業」 成和建設(岡山県)
ノベルティグッズとして制作した「#ごあんぜんに」とデザインしたメタリックステッカー

建設業界の現場で交わされている挨拶「ご安全に」を幅広く普及させようと「#ごあんぜんに」とデザインしたメタリックステッカーをノベルティグッズとして制作し、配布する取り組みも進めている。「積極的に異業種と連携することで建設業界に新しい風を吹き込み、その可能性を広げていきたいと思っているんです」と小橋社長は微笑んだ。

蓄積した知識と技術が競争力の源泉になる。型枠大工の仕事は奥深い

異業種連携に積極的に取り組み、ICT活用と柔軟な発想で「型にとらわれない型枠企業」 成和建設(岡山県)
株式会社成和建設の小橋亮代表取締役

小橋社長は約20年前に型枠大工の世界に入った。子どもの頃から工作が好きで大工は憧れの仕事だったという。ビルや土木などの工事で打設されるコンクリートの鋳型となる型枠は、ミリ単位の寸法が記入された図面をもとに組み立てられる。この重要な工程を担う型枠大工には体力はもちろん、二次元の図面から立体にした時の状態を細かく想像できる空間認識能力、緻密な設計・施工能力が求められる。型枠大工の仕事は時間をかけて蓄積した知識と技術が競争力の源泉になる。その奥深さに魅力を感じているという。

駆け出しの頃は、親族の型枠工事会社で修業し、その後、一人親方として無我夢中で働いて技術を習得していった。2015年、29歳の時に成和建設を創業し、2018年に株式会社化を果たした。「事業を軌道に乗せることができたのは支えてくれている周りの人たちのおかげです。『関わる人全てを大切に』『安全第一』『工期を確実に守る』、この3つの信条を大切にして技術力にさらなる磨きをかけていきたい」と小橋社長は話す。

デジタル機器の操作に不慣れなベテラン職人に負担がかからないように社長自ら積極的にフォロー

成和建設は将来を見据えた取り組みの一つとしてICT、デジタル機器の活用を継続的に進めている。「社会全体で進むデジタル化への対応は企業にとって必要不可欠です。業務に役立つICTやデジタル機器があれば積極的に導入していきたい」と小橋社長は意欲的に語った。

大手建設会社の工事現場では、工事の従事者登録に顔認証システムを導入するケースが増えている。その中で、デジタル機器の操作に不慣れなベテラン職人に負担がかからないように、システムへの登録に必要な作業は小橋社長が代理で行うなどフォローしているという。「デジタル化が現場の負担になる事態は避けなければなりません。ベテランの皆さんが、長い時間をかけて磨いてきた技術を100%発揮できる環境を作る。そのための対応を最優先にしています」と小橋社長は話した。

社長自身がエクセルで原価管理や見積資料を作成していたが2023年建設業向け原価管理システム導入 お金の流れが見える化出来、社長自身の戦力増強実現

異業種連携に積極的に取り組み、ICT活用と柔軟な発想で「型にとらわれない型枠企業」 成和建設(岡山県)
原価管理システムを活用する様子

成和建設は、事業拡大に伴って増える一方だった財務管理業務を効率化するために2023年2月、建設業界向けの原価管理システムを導入した。「以前は私自身が財務管理の業務を担い、エクセルを使って原価管理や見積の資料を個別に作成していたので非常に手間がかかっていました。財務に関するすべての数字を把握するのは結構大変なこともあって、私以外の従業員に業務を分担してもらうのは難しい状態でした」と小橋社長は振り返る。

新しいシステムを導入することで原価管理、見積、請求、入金管理の数字の連携が簡単にできるようになり、入力作業も楽になった。そのおかげで、小橋社長に属人化していた財務管理業務を他の従業員でも担えるようになったという。「お金の流れが誰にでもわかりやすくなったので安心して業務を委ねることができるようになりました」と小橋社長はうれしそうに話した。

小橋社長は新たに確保した時間を営業や新卒者の採用活動、新規事業の策定といった業務に活用している。小橋社長が、事務作業から解放され、社外で活動できる時間を増やせたことは、成和建設にとって何より大きな戦力増強になった。

原材料費や人件費高騰の中、原価管理システムによりコスト分析結果を材料に顧客との価格交渉もしやすくなった

効果はそれだけではない。以前よりも厳格な原価管理を通じて経営状況をリアルタイムで細かく把握できるようになった。コスト分析も詳細にできるようになったので、原材料費や人件費が高騰する中、取引先との価格交渉も行いやすくなったという。今まで時間がないため外部に頼んでいた補助金や助成金の申請も内製化できるようになったので、コストの削減にもつながっている。

型枠展開図の3Dの作成システムを使って業務のスピード化と正確さが向上した

汎用CADと連動した型枠展開図の作成システムも活用している。施主から受け取ったCADの図面データをそのまま利用することが可能で、作業中の3D画像での確認も簡単にできる。入力した数値を展開図に反映する機能も備えている。操作性に優れ、展開図を短時間で正確に加工できるので、顧客の信頼感に大きな効果を発揮しているという。

金融機関の担当者とのコミュニケーションを通じて、常に数字を意識する習慣が身についた アドバイスを生かしてICT導入を推進

異業種連携に積極的に取り組み、ICT活用と柔軟な発想で「型にとらわれない型枠企業」 成和建設(岡山県)
成和建設のオフィスの様子

成和建設は、備前日生信用金庫など地元の金融機関からのアドバイスを積極的に取り入れている。金融機関のアドバイスによって導入を決断したICTもあるという。「金融機関の担当者とのコミュニケーションを通じて、常に数字を意識する習慣が身につきました」と小橋社長。異業種との連携を重視する姿勢はここにも現れている。

原価管理システムの導入に地元の金融機関、備前日生信用金庫が大きな役割

異業種連携に積極的に取り組み、ICT活用と柔軟な発想で「型にとらわれない型枠企業」 成和建設(岡山県)
備前日生信用金庫の青山訓久・長船支店長(右)と島本大輝・営業統括部営業推進課長代理

原価管理システムの導入にあたっては、成和建設が創業当初から取引している備前日生信用金庫の支援が大きな役割を果たした。

当時、成和建設を担当する平島支店の副支店長を務めていた青山訓久・長船支店長は毎月、成和建設を訪問し、小橋社長からの相談に応じていた。様々な手段を検討する中で、原価管理システムを導入すれば工事案件ごとの収益の明確化が可能になり、利益率向上に大きな効果が見込めると判断。ICTやデジタル機器を扱っている企業との橋渡し役を務めた。また、青山支店長は、政府のIT 導入補助金の活用についてもアドバイスした上で、申請業務に詳しい本部の島本大輝・営業統括部営業推進課長代理と連携を取りながら積極的にサポートした。小橋社長は「備前日生信用金庫には創業以来、大変お世話になっています。補助金だけでなく、求人のノウハウなど幅広い相談にも応じてもらえ助かっています」と話した。

高度外国人材がこれまで以上に日本で活躍できるように取り組みたい

今後、有料職業紹介を新規事業として展開することを考えている。新規事業を通じて専門的な知識や技能を持つ高度外国人材がこれまで以上に日本で活躍できるようにしたいという。今後、生産年齢人口が急減する日本は、海外人材に活躍してもらわなければ経済活動が維持できなくなっていく可能性が高い。その一方で、経済成長する国々との間での人材獲得競争は激しくなっている。日本を働く場所として選んでもらえるように海外人材が働きやすい環境を整えていかなければならないとの思いは強い。

SDGsの精神を企業活動に反映

異業種連携に積極的に取り組み、ICT活用と柔軟な発想で「型にとらわれない型枠企業」 成和建設(岡山県)
SDGs宣言などSDGsへの取り組みを積極的に行っている

2023年1月にSDGs宣言を行うなど企業活動を行う上でSDGsの精神を大事にしている。防災インフラの整備、快適な住まいの実現、多様な人材の雇用、地域社会への貢献、環境への配慮を具体的な取り組み事例として挙げている。「一度使った型枠の再利用や転用は、業界全体が長期的視野で対応していかなければならないテーマです。地域社会に根差した企業として身近なところからSDGsの機運醸成に貢献していきたい」と小橋社長は力強く語った。ホームページやインスタグラムを活用した自社の情報発信にも力を入れている。「和気あいあいとした雰囲気を伝えていきたい。会社のありのままの姿を知っていただけたら」と小橋社長は話した。

異業種連携に積極的に取り組み、ICT活用と柔軟な発想で「型にとらわれない型枠企業」 成和建設(岡山県)
公式インスタグラムでは、社内の活動や従業員の発信が自由に行われている(上記QRコードで成和建設のインスタグラムにリンクできる)

若手と海外人材の採用・育成に力を入れる 夢の実現を全力でサポート

事業の拡大を見据え、今後、若手と海外人材の採用・育成に力を入れる方針だ。勤務時間インターバル制度や時間単位での有給休暇取得制度の導入、資格取得の支援などを通じて働きやすい環境づくりに努めている。今後、研修内容の更なる充実も図っていきたいという。求人用ホームページにアクセスできるQRコードを名刺に印刷することも検討している。「従業員一人ひとりのワークライフバランスの向上とキャリア形成、夢の実現を全力でサポートしていきたい」と小橋社長は話した。従業員満足度の向上を通じて更なる技術力、対応力の強化を図り、顧客満足度の向上につなげる好循環を生み出していきたいという。

型にとらわれない発想と行動力で地域社会の中で存在感を高めている成和建設。働きやすい環境づくりや業務効率化にICTやデジタル機器を活用することで、更なる前進を続けていくはずだ。

企業概要

会社名株式会社成和建設
本社岡山県岡山市東区西大寺東2丁目1-62
HPhttps://seiwa-cnst.com
電話086-952-3223
設立2018年3月
従業員数9人
事業内容型枠工事業、土木工事業、リフォーム工事業