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株式会社ブロスは、福島県郡山市で住宅設備機器、太陽光発電の施工から住宅・店舗の設計、施工、リフォーム工事まで幅広い領域を手掛ける建設事業者だ。提案から設計・施工・メンテナンスまですべて自社社員で100%責任対応できる点を強みとし、より良い暮らし、職場環境の提供に取り組んでいる。一方で、ペットとともに楽しく快適に暮らせる住環境を実現する愛犬家共生住宅へのリフォームを提案し、ドッグランやカフェレストラン、RV(リクリエーショナル・ビークル)パークを併設した愛犬と楽しめるコンセプトパーク「DOGLAND Bros」を新設・運営するなど、ユニークな事業を展開している。(TOP写真:2023年3月に福島県郡山市内にオープンした愛犬と楽しめるコンセプトパーク「DOGLAND Bros」。愛犬家共生住宅へのリフォームを提案する情報発信基地に位置づける)
東日本大震災を契機に会社設立 太陽光発電設置に高い施工技術と実績
ブロスは、坂田和夫代表取締役が神奈川県横浜市に本社を置く建設会社から独立して2014年に立ち上げた。坂田社長はその会社の東北支社に在籍していたものの、2011年の東日本大震災以降、東北支社は震災の復興事業が多くなり本社サイドの事業内容と大きく異なってきた。そのため、本社から東北支社の従業員や顧客を引き継ぎ独立することを勧められ、会社設立に踏み切った。
設立から10年を経て、ブロスの現在の事業構成は売上高ベースで太陽光発電・蓄電池関係、住宅設備機器、リフォーム工事がそれぞれ3割程度で均衡している。特に太陽光発電・蓄電池関係は「郡山周辺で早い時期から施工実績を重ねてきたこともあり、難しい案件を頼まれることも多い」と坂田社長は実績に裏付けされた自信をのぞかせる。
ブロスの立ち上げ時は坂田社長夫妻と前の会社から引き継いだ社員3人の5人でスタートした。事業は福島県全域と隣接県で展開し、事業拡大に伴い、現在は16人に拡大している。
元請けからの協力工事でも評価される自社完結型 トラブルへのスピード対応を重要視
事業面で売りにしているのは施工面を分業化せず、自社完結型に徹している点にある。坂田社長は「当社は多能工も多く電気工事から給排水工事まで一手に引き受けられる。それは施工のスピードにもつながっている」と語る。この強みは、売上の半分を占める協力工事に反映されており、大手家電量販店やホームセンターも多い元請け企業から自社完結型の施工が高く評価され、受注につながっている。
この点について坂田社長は「工事を頼む側からすると、ブロスに任せれば自ら電気工事、水道工事や建築業者を探して手配する必要はなく、すべてブロスの正社員で完結してくれる。そこは発注元から重宝されている」と言う。
一方で、社員に対しては「礼儀」「礼節」「スピード対応」の徹底を図っている。また、電気、上下水道といったライフラインにかかわる事業のため、会社自体としては365日24時間対応を取っており、「トラブルへのスピード対応を重要視している」(坂田社長)という。
愛犬家共生住宅リフォーム直接受注のため愛犬と楽しめるコンセプトパーク「DOGLAND Bros」を開設
設立時に株式会社ブロス住宅設備だった社名は2022年に「住宅設備」を外し、現社名に変更した。「社名に住宅設備が入っていることで、お客様から店舗の施工はやらないのかと勝手に決めつけられることもあった。そこで、住宅設備だけでなくいろいろな領域に対応できるという意味合いを込めて社名を変更した」と坂田社長はその理由を語る。
そこには、エンドユーザーからの直接受注を増やすことを経営上の課題に据えていた背景がある。ブロスは現在、経営目標として売上の半分を占める協力工事を減らすことなく直接受注の増加を図り、売上全体を伸ばすことを目指している。それが愛犬家共生住宅へのリフォームの提案であると同時に、新規事業として始めた「DOGLAND Bros」の運営につながってくる。「同業他社が手掛けていない愛犬家共生住宅へのリフォームで差別化ができれば、直接受注の増加につながる」(坂田社長)との考えからだった。
しかし、愛犬家共生住宅へのリフォームも単にショールームを設けイベントを開き、テレビコマーシャルを流しても簡単に受注にはつながらないと考えた。独自の誘客の仕掛けとして設けたのが客と愛犬が自由に遊び、楽しめる「DOGLAND Bros」であり、用地確保で苦労したものの、2023年3月にオープンにこぎつけた。
施設丸ごと愛犬家のためのショールーム ドッグランは県内トップ級 利用客からリフォーム依頼も増えている
坂田社長は元々、犬との生活が長く、キャンピングカーを運転し楽しんできたこともあって、ドッグランやカフェレストラン、RVパークを併設したような施設を提供すれば客を呼び込めると考えた。「初めて訪れた愛犬家は、ドッグランに5、6回来てくれて、気心が知れるようになってリフォームの声をかけてくれる。引き合いは想定以上です」と坂田社長は話す。
「DOGLAND Bros」の評判は上々だ。天気が良い休日には約500坪(約1,650平方メートル)の広さのドッグランには100頭程度が訪れ、県内に数ヶ所あるドッグランの施設の中では知名度も集客数もトップ級だ。さらに、オープンして1年に満たないにもかかわらず、LINEに登録した会員は2,500人を数え、隣接する新潟県や宮城県から訪れる愛犬家もいる。
また、施設内には人工芝、愛犬のための洗面化粧台、屋外水栓や愛犬が滑らない床などの実物を使用しており、本社事務所を含めて丸ごとショールームとし、愛犬家共生住宅の情報発信基地と位置付ける。カフェレストラン「Café B´(ビーダッシュ)」はもちろん愛犬同伴で利用できる。
坂田社長は「DOGLAND Bros」をオープンした狙いについて「収益面はドッグランと飲食で差し引きゼロになっていれば良く、リフォームや住宅設備の仕事につなげるのが目的」と本業である設備事業、設計施工への副次効果に期待する。
オンデマンド印刷機の導入で訴求力アップ オリジナルプリントグッズを提供 外注費の削減と様々なアイデアが即反映される
ブロスが差別化戦略に位置づける愛犬家共生住宅へのリフォームを拡大するには、「DOGLAND Bros」を含めてブロスの取り組みをより広く訴求していく必要がある。そこで2023年6月に導入したのが製版作業の必要なくデジタルデータを直接プリントできるオンデマンド印刷に対応したオンデマンド印刷機だ。
「DOGLAND Bros」の運営に当たっては、集客力アップのためイベントの参加者らに無料で画像プリントグッズなどをプレゼントしている。具体例を挙げると、2023年11月末にはSNSに好きな画像を送信してもらいオリジナルカレンダーをプレゼントする企画を実施した。短時間で1枚からの印刷が可能なオンデマンド印刷機の特徴を生かし、あらかじめ指定していた日に来店すると客が帰るまでに作成し手渡しする。
また、定期的なイベントでは愛犬の写真をプリントしたオリジナルのクリアファイルをドッグラン中に作成し、客にプレゼントしている。こうした企画を続けていくことによってリピーターや新規来店者の増加につなげており、今後も愛犬の写真の入った缶バッジなど新しい企画を考えている。
このほか、「Café B´」では写真入りのメニューを作成したり、ドッグランのメニューには屋外で水に濡れても大丈夫なハードタイプの紙を使用するなど工夫を凝らしている。また、本業の設備事業、設計施工の面でもオンデマンド印刷機は施設や商品の販促材の作成に利用しており、住宅イベントに出展する際の独自ツールの作成にも活用する。
従来の複合機での印刷ではどうしても画像が粗くなっていたが、オンデマンド印刷機の導入によりこの課題は解消され、クリアな画像で作成できるようになった。また、従来は広告事業者や印刷業者に依頼していたPOPやチラシなどの外注の減少につながっている。さらに。従来の複合機でできなかったことが社内で可能になり、導入してまだ半年程度ながら効果を出している。
一方、業務面においては導入したオンデマンド印刷機にはスキャナー機能が備わっており、領収書や伝票類を読み込み電子保存する設定を2024年1月下旬にオンデマンド印刷機の機能に取り込んだ。これは電子帳簿保存法の改正によって電子取引で扱った電子データを紙に出力し保存できなくなり、2024年1月1日からは電子保存が義務化されたことに対応したもので、これにより経理業務の軽減につなげる。
社名のブロスは英語で兄弟を表す「Bros」から取った。坂田社長は「社員同士、あるいはお客さんたち、さらに外注さんとも仕事だけにとらわれずに深い絆でつながっていればという思いでブロスとした」と語る。信用と信頼に裏付けられた〝つながり〟を大切にする姿勢は、「DOGLAND Bros」を通じた愛犬家共生住宅へのリフォーム受注へのアプローチからも見て取れ、さらなる成長への踏み台となるか注目される。
企業概要
会社名 | 株式会社ブロス |
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住所 | 福島県郡山市大槻町字城ノ内3 |
HP | http://bros-j.com/ |
電話 | 024-952-0809 |
設立 | 2014年 |
従業員数 | 16人 |
事業内容 | 省エネ電化設備、太陽光発電、住宅・店舗設計、施工、住宅店舗リフォーム、ペットリフォーム |