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東京・三田にある慶應義塾大学の正門に近いビルにオフィスを構える株式会社ソシアスは、情報ネットワークシステムの設計、構築、保守、運用のサポートサービスを中心に、エンジニアリングやソリューションの提案などを行う情報システム企業だ。2004年の設立で2024年が20期目となる。「専門学校を出てから情報システムの会社で2年ほどSE(システムエンジニア)として働いて、23歳の時にフリーランスとして独立しました」と、ソシアス創業者の出羽隆洋代表取締役は振り返る。(TOP写真:ソシアスの出羽社長_)
「エンジニアでしたが営業にも興味が湧いて、お客様先でSEの仕事をしながら営業に関するノウハウを学び、ネットワークも広げていきました。そのうち、働いていた会社が営業力を欲しがっていたので、自分に営業の仕事をさせてもらえないかと頼んで、任せてもらいました」(出羽社長)
フリーとなってからも、そうした営業力と技術力で仕事を請け負っていたが、「お付き合いをしていた企業から、法人化してもらった方が仕事を任せやすいと言われ、ソシアスを立ち上げました」(出羽社長)。以来、着々と事業規模を広げていって、今では社員数250人を有する中堅の情報システム会社に成長した。
クラウドサービスを導入して大手取引先とのデータのやりとりをスムーズに
間に元請けの大手情報システム企業が入る場合も含めて、取引先には金融機関や大手企業、官公庁などが並ぶ。そうした大手の取引先は多くがオフィスツールを利用していて、書類やデータのやりとりの際に、同じツールの利用を求められることが多かった。このため同社でも導入を推進。「企業向けクラウドストレージ(倉庫)サービスの機能を使って共有をかければ、データのやりとりが簡単に行えるようになって、お客様とのやりとりがスムーズにいくようになりました」(藤田和博サービス事業部部長)
こうして顧客先に合わせたツール環境を整えることは、実は新しい仕事先の開拓にもつながる。「同じツールの利用が取引条件になっているわけではありませんが、結果的に使用を求められるなら、最初から使っていればすぐに仕事を始められます」(藤田部長)。ほかにも、このシステムには、セキュリティ面が強いといった特徴がある。
「メールにパスワードを記載して送る方式が、セキュリティ面から時代遅れになっています。同じツールを使っていれば、そうしたやりとりもツール上で行えるようになれば、セキュリティを重視している取引先の仕事を手がけられるようになります」(出羽社長)
創業したころから同社では、金融機関のような万全のセキュリティを要求される顧客のシステム開発も手がけている。情報が漏洩(ろうえい)したら自社の信用が損なわれるだけでなく、顧客の信用にも大きな影響が出る。そうした懸念を与えない体制を強化していくことで、取引先や手がけられる事業の幅を広げていける。
社内で利用しているアプリケーションを統合してやりとりを楽にする
クラウドサービスの導入は、社内で利用しているアプリケーションの統合も促した。WordやExcelといったアプリケーションを、個人個人がインストールした上で利用していると、作成したドキュメントのやりとりが煩雑になる。「メールに添付して送るにしても、共有フォルダに入れてもらうにしても手間がかかります」(藤田部長)。Googleのスプレッドシートを使っていたこともあったが、関数の利用で制約があったり、共有する際に文字化けが起こったりする課題があった。「アプリケーションを統合にしたことで、誰もが同じ環境で作業できるようになって、そうした手間がなくなりました」(藤田部長)
クラウドサービスの利用で、社員のスケジュール管理も行いやすくなった。カレンダー上で全員のスケジュールを把握・管理できる上に、Web会議などの予定を参加者に送るとカレンダー画面に予定が表示され、そこから直接Web会議システムのTeamsに入っていける。これなら、ミーティング予定を見落としたり、アクセスするためのリンクが記載されたメールを探すのに手間取ったりといったトラブルを回避できる。
新たなWeb会議システムでミーティングを活発化、配信も簡単に行う
新たなWeb会議システムが利用できるようになったことで、Web会議を行う機会も以前より増えたという。これまで利用していた無料のWeb会議システムよりも通話できる時間が長いなどの利点があったからだ。「ミーティングを録画して、参加できなかった人と共有することも可能になりました」(出羽社長)
他のWeb会議システムでは、録画データをサーバにアップし直すような手間が必要となる。ドキュメントのやりとりで文字化けなどが生じて、それを手直しする手間を減らせることも含めて、新たなWeb会議システムの導入によって無駄にかかっていた時間を減らすことができるようになった。「そういったものにかけていた労力を、本業に振り向けてもらえるようになったのが最大の効果ですね」
専門家を招きスピーチトレーニングをしてコミュニケーション力をアップ
こうしたWeb会議の場では、同社が社員研修として行っているスピーチトレーニングの成果も出ているようだ。きっかけは、出羽社長自身が口下手を直そうと、スピーチトレーニングを受けたこと。話している時の表情まで意識するよう教えられ、改善に努めた結果、社員から「嘘みたいに変わりましたね」と言われるようになりました(出羽社長)。こうした効果を社員にも広めようと、自身が教えてもらった講師を招いてスピーチトレーニングを行った。
「SEといっても、人前で話す機会は往々にしてあります。Web会議もそうですし、電話に応対することもあります。営業ならもっと人前で話す力を求められます。そうした時、トレーニングを受けていると、ロジカルに考えて話せるようになります」(出羽社長)。話し方に自信が持てるようになれば、自然とコミュニケーションも活発になって社内的にも対外的にも好影響をもたらすというわけだ。
研修については、「技術研修」「ビジネス研修」の2つの柱で実施をしており、両研修ともに、その道で経験豊富なメンバーが専任で講師を担当。業界未経験でも安心して学べる環境を提供している。
また入社直後の研修期間だけでなく、研修が終わった後も所属する組織の部長や課長だけに委ねないで、教育チームがしっかりとケアを続ける。
社員の大半が、SEとして顧客先の事業所に常駐してシステム開発を行っている関係で、「本社での研修期間を過ぎると、上司とも直接顔を合わせる機会が減ってしまい、会社への帰属意識も薄れてしまいがちになります」(出羽社長)。そうならないよう、最初の研修で長く顔を合わせて信頼を得た教育チームがしっかりとサポートしている。
他が積極的にやらない汎用機向けシステム開発に商機を見いだす
情報システム業界では今、クラウド化の波が押し寄せてきて、クラウド上でサービスを展開するプラットフォーム企業に仕事が集まるようになってきている。同社のように金融機関や官公庁、大企業のシステム構築を手がけてきたところにも影響は出ているが、リソースのすべてをクラウドに傾けることはせず、旧来から使われている汎用機のシステムや、クライアント/サーバ環境で複数のOS(基本ソフト)を利用できるようにするシステムも引き続き手がけていく。
「汎用機を使う必要のある仕事はしっかりと残っていくと思います。そうした分野を手がけられるエンジニアがいないことが問題になってきています。そこに積極的に取り組むことで、当社のような中小企業は差別化を図れると考えています」(出羽社長)。
時流に乗って競争の激しいクラウドサービスに飛び込んでいくことは、成長には必要なことかもしれない。エンジニアにも新しい技術に触れたいという興味はあるだろう。
一方で、確実に稼ぐなら今が商機ともいえる汎用機の分野に取り組んで、その道の専門家になることも重要だ。見かけの華やかさや派手さではなく、堅実な道を選び確実に信用を得ながら取り組んできたからこそ迎えられた設立20年。この先さらに20年を積み重ねる上で、取引先に合わせたICT改革が貢献していくだろう。
企業概要
会社名 | 株式会社ソシアス |
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所在地 | 東京都港区三田3-2-8 THE PORTAL MITA 3F |
HP | https://socius-net.co.jp/ |
電話 | 03-6435-0722 |
設立 | 2004年2月 |
従業員数 | 250人 |
事業内容 | サーバ、ネットワーク設計・構築・運用保守/ソフトウェア設計・開発・運用保守/WEBデザイン/システムコンサルティング |