度重なる環境変化!その度に事業転換。情報システムをベースに生産性を高め、変化対応力を強化 ヤマグチコーポレーション(群馬県)

目次

  1. 廃タイヤの輸出で独立。「東日本は廃棄品が出やすい」
  2. 輸入規制で廃タイヤの輸出が困難に。国内のセメントメーカーに販売
  3. 鉄・非鉄金属の扱いも始めるが、またもや輸入規制。廃プラスチックの扱いに転換
  4. 県内2ヶ所で太陽光発電所設置。群馬県の環境GS事業者認定を取得
  5. 2023年には食用コオロギの養殖を開始。食品やサプリメント向けにも販売
  6. セキュリティ対策強化と高性能パソコンを増設。太陽光発電所の遠隔監視も実現
中小企業応援サイト 編集部
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廃プラスチックなどの引き取り・リサイクルをメインとする商社の株式会社ヤマグチコーポレーション(群馬県館林市)。時代に合わせて取り扱う商品を変える柔軟性を発揮し、2023年には、食用コオロギの養殖という新規事業に乗り出した。さらに社内の情報システムを更新し、セキュリティ強化と、太陽光発電所の遠隔監視などを実現し、新事業にも役立てる計画だ。(TOP写真:物流センター内にあるロール状の廃プラスチック)

廃タイヤの輸出で独立。「東日本は廃棄品が出やすい」

株式会社ヤマグチコーポレーションの山口正明代表取締役は、運送会社を脱サラし、1988年に廃タイヤを輸出するサンコー貿易株式会社を設立した。運送会社勤務時には修理業務や貿易も担当し、海外視察なども経験。その時に、海外で日本の廃タイヤやパソコンソフトなどの需要があることがわかったという。そこで休日を利用して韓国に渡り、ソフトなどを販売していたというから、独立への関心は高かったようだ。

廃タイヤについては、大型タイヤはアメリカやオーストラリア、小型タイヤは香港経由で中国への輸出が多かった。群馬県周辺には廃タイヤが豊富にありビジネスとして成立すると思い、1992年に有限会社ヤマグチコーポレーションを設立してサンコー貿易を吸収合併した。山口社長によると、廃タイヤの扱いは静岡県から北海道までが盛んだという。北海道を含めた東日本は、降雪のため冬の間はスタッドレスタイヤを使用することから、再利用しやすいノーマルタイヤの廃棄品が出やすいためだ。

そこでコンテナトラックで東日本を回り、中古タイヤを回収する中間処理業者などから買い付け、検品した上で再利用できそうなものを輸出。輸出先でタイヤの溝を掘って販売するという仕組みだ。

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創業の経緯などを語る山口正明代表取締役

輸入規制で廃タイヤの輸出が困難に。国内のセメントメーカーに販売

その後、新品タイヤの輸出も始めるなどしたことから社員も増やしていったため、1999年には株式会社化した。ただ、「事業というのは、だいたい5年くらいで変わっていく」という山口社長の言葉通り、廃タイヤの需要も変わっていく。

自動車本体の軽量化、燃費向上、さらには廃棄タイヤを減らすという環境意識の高まりもあって、緊急用のスペアタイヤを搭載しない車種が増えて廃タイヤの需要が減っていく。加えて、2007年には中国が廃タイヤの輸入禁止を打ち出したことなども相まって、輸出が困難になっていく。そこで廃タイヤについては切断して、原燃料として使う国内のセメントメーカーに販売する方向に転換していった。

鉄・非鉄金属の扱いも始めるが、またもや輸入規制。廃プラスチックの扱いに転換

廃タイヤの輸出だけでなく、同社は2000年ごろから鉄や非鉄金属、プラスチックなどの買い取り、輸出も始めた。特に鋳物やモーターなどの金属類は、日本ではコスト高のため分別できない。そこで、鉄や非鉄金属の分別拠点がある中国に輸出。銅や鋳物などは現地で溶かして再利用していたという。ところが、中国は2017年には廃棄物の輸入を禁止したため、鉄や非鉄金属スクラップの輸出は、「現在ではほとんどゼロの状態」(山口社長)という。

この事態を救ったのが、現在も残る廃プラスチックの買い取り事業だ。ラップ製品などを製造する上場企業などの工場から、製造ロス品や不良品を買い取ってベトナムなどに輸出しており、現在はこの事業が同社のメインとなっている。

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廃プラスチックをメインに扱うヤマグチコーポレーションの外観

県内2ヶ所で太陽光発電所設置。群馬県の環境GS事業者認定を取得

新規事業として、再生可能エネルギー事業にも乗り出している。国による再生可能エネルギーの電力買い取り制度が始まった2013年には、いち早く県内に500kWと1,000kWの太陽光発電所2ヶ所を設置した。

これら廃棄製品の買い取りや再利用、太陽光発電などの事業展開により、同社は群馬県の環境GS(グンマ・スタンダード)事業者の認定を受けている。この制度は、温室効果ガス排出量削減のために自社の環境マネジメントシステムを整備し、組織的に運用する事業者を認定・支援する県独自の施策だ。

2023年には食用コオロギの養殖を開始。食品やサプリメント向けにも販売

山口社長のアイデアで2023年から新たに始めたのが、食用コオロギの養殖事業だ。コオロギは高タンパクとして知られており、「厚生労働省も推奨している」(岩田幸夫執行役員)ほどだが、現在は農家などで飼育している程度で、企業として取り組むところは少ないという。

群馬県明和町にある同社の物流センターにコンテナを置き、現在は約6万匹を養殖している。コオロギは年間4回、1匹で1回200個の卵を産むため量産に向いており、「まずは50万匹に増やして、ペットショップなどに餌用として売る」(山口社長)。このほか、粉末状にして食品やサプリメントとして商品化する計画だ。担当する国際部の飛鳥美奈子氏は「すでに相手先の企業と商談を進めており、早ければ数ヶ月後には話がまとまる」としている。

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物流センター内で食用コオロギを飼育するコンテナ
度重なる環境変化!その度に事業転換。情報システムをベースに生産性を高め、変化対応力を強化 ヤマグチコーポレーション(群馬県)
コオロギ飼育のコンテナ内部

コオロギは高タンパクだけでなく、ビタミンやミネラル、動物性脂肪などの成分も多く、世界的な人口増加や食料不足などの観点から注目を集めている。現在考えている用途以外にも需要がある可能性もあり、「どんな要望にも応える体制を整えていきたい」(岩田執行役員)と意気込む。

セキュリティ対策強化と高性能パソコンを増設。太陽光発電所の遠隔監視も実現

一方、社内の情報管理については、ネットワーク担当者が退職したことから、セキュリティ面などに不安を抱えていた。そこで2023年にはデジタル複合機の入れ替えと同時に、統合型セキュリティシステムを導入。食用コオロギや太陽光発電所の管理などでパソコンの性能を上げる必要もあり、3台の高性能パソコンを増設するなど抜本的な更新を断行した。

度重なる環境変化!その度に事業転換。情報システムをベースに生産性を高め、変化対応力を強化 ヤマグチコーポレーション(群馬県)
セキュリティシステムやパソコンなどを増設したオフィス

これにより、「社内の情報共有化が図れるようになった」(山口社長)。太陽光発電所の管理も従来は定期的に見回っていたが、現地に出向かなくても稼働状況や機器の異常、さらには監視カメラによる配線の盗難対策などにも対応できる遠隔監視システムも実現した。今後は、食用コオロギの生育状況や雄雌の判別などの詳細な飼育システムの導入なども検討している。

これまでの事業内容の変遷を振り返り、山口社長は「変化が激しい現在では3年程度で事業を変えていかないとやっていけないと思っているが、今はコオロギの養殖事業の将来性を見極めることで精一杯」と語る。ただ、同社は産業廃棄物処理業、古物商などの免許を取得しているほか、これまで培った貿易のノウハウもあることから、これからも新たな事業への挑戦が続きそうだ。

企業概要

会社名株式会社ヤマグチコーポレーション
住所群馬県館林市苗木町2497-7
HPhttp://www.yamaguchi-corporation.com
電話0276-72-8268
設立1992年4月
従業員数7人
事業内容 鉄・非鉄金属スクラップ、プラスチック原料の買い取り、販売、輸出入、太陽光発電所による発電・電力販売など