相続サポートセンター
(画像=相続サポートセンター)

相続が発生すると必ず相続税の申告をしなければならない、ということはなく、一定の控除額を超える場合に相続税の申告書を所轄の税務署へ提出しなければなりません。

一定の控除額とは、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)や、配偶者の税額軽減などさまざまありますが、小規模宅地等の特例を適用する場合などは、相続税がかからない場合でも申告の必要があります。

このように、相続税がかからない場合でも、一定の特例などを適用する場合には相続税の申告が必要な場合があるので注意が必要です。

相続税の申告、および納税の期限は、相続開始日(通常は死亡日)の翌日から10ヵ月以内となっています。

相続税の申告書の作成方法と概要

相続税の申告書を作成する場合には、国税庁のホームページから申告書様式をダウンロードし、作成します。

また、相続税の申告書を作成にするにあたって、法務局やさまざまな機関で証明書などの必要書類を集めなければならず、非常に手間がかかります

相続税の申告後においても、申告漏れの物件や不備が見つかると税務調査などの対象になるため、相続税の申告書を作成する際は慎重におこなうことが必要になります。

しかし、相続税の申告書等に不備がない場合でも、遺産総額が3億円を超えるような場合などは、確認の意味を含めて税務調査がある場合もあります。

必ず税務調査があるとは限りませんが、はじめから税務調査があるものと考え申告書を作成すれば、より丁寧に申告書を作成できるかと思います。

提出書類 相続税の申告書
提出先 被相続人の住所地の所轄税務署
提出期限 相続の開始があったことを知った日(通常は死亡日)の翌日から、10ヵ月以内
提出義務者 被相続人から相続、または、遺贈により財産をもらった人

相続税の申告書の記載順序

相続サポートセンター
(画像=相続サポートセンター)

相続税申告書は、第1表から第15表までの種類があり、さらに、それぞれ付表や別表などが存在するため、非常に多くの様式となっています

第1表は、以降の計算書や明細書のまとめのようなものになっており、そのため、自分が該当する資産などがない場合、その分に関する様式は記載する必要はありません。

相続税申告書を作成する流れについては、下記の表を参考にしてください。

順番様 式内   容
1第9表生命保険金などの明細書
2第10表退職手当金などの明細書
3 第11表の付表小規模宅地等、特定計画山林または、特定事業用資産についての課税価格の計算明細書
第11の2表相続時精算課税適用財産の明細書、相続時精算課税分の贈与税額控除額の計算書
4第11表相続税がかかる財産の明細書
5第12表納税猶予の適用を受ける特例農地等の明細書
6第13表債務及び葬式費用の明細書
7第14表純資産価額に加算される暦年課税
8第15表相続財産の種類別価額表
9第4表相続税額の加算金額の計算書・暦年課税分の贈与税額控除額の計算書
10第5表配偶者の税額軽減額の計算書
11第6表未成年者控除額・障害者控除額の計算書
12第7表相次相続控除額の計算書
13第8表外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書
14第1表相続税の申告書
15第2表相続税の総額の計算書
16第3表財産を取得した人のうちに農業相続人がいる場合の各人の算出税額の計算書

相続税申告書第1表の記載方法

第1表は、被相続人の現況や相続開始年月日などの、基本的な項目の他、他の様式で計算された相続税財産をまとめる様式になります

基本的には、申告書の指示どおりに計算をおこない、小計・申告納税額といった金額を写すだけの作業になります。

そのため、他の様式が完成しなければ第1表を完成させることはできず、作成手順で最後の方になっているのも、このためです。

相続税申告書第2表の記載方法

相続における遺産の課税価格(第1表⑥)の合計額を転記し、基礎控除額を計算して差し引き課税遺産総額を計算します

また、法定相続人の氏名や続柄、それぞれの法定相続分に応じた税額なども記載します。

相続税申告書第5表の記載方法

配偶者が被相続人から相続を受けた場合には、配偶者の税額軽減の適用ができます

記載項目は、ほとんどが他の様式からの転記になるので、様式の指示に従って記載していきます。

納税地の納税猶予の適用を受けない場合は、上部のみの記載となります。

相続税申告書第9表の記載方法

死亡保険金などがある場合に必要な様式となります

様式に沿って、保険会社等の所在地、保険会社等の名称、受取年月日、受取金額、受取人の氏名を記載します。

相続税申告書第11表の記載方法

相続財産をその種類ごとにそれぞれ誰に相続させるのかを記載します

死亡保険金などのみなし相続財産も記載漏れのないように注意しましょう。

また、相続財産を誰に相続させるのかがまだ決まっていない場合は、未分割財産として記載します。

相続税申告書第11・11の2表の付表1の記載方法

小規模宅地等の特例を適用する場合に記載する様式になります

小規模宅地等の特例を適用する場合には、この様式を必ず作成するようにしましょう。

申告書を作成し、提出しなければ、小規模宅地等の特例を適用することはできません

また、土地等を取得した人全員の同意も必要となるため、記載漏れがないよう注意が必要です。

相続税申告書第11・11の2表の付表1(別表)の記載方法

小規模宅地等の特例を適用する土地を共有で取得する場合などに添付する様式になります

そのため、1人にその土地を相続させる場合には記載する必要はありません。

相続税申告書第13表の記載方法

被相続人の葬式費用や債務がある場合に記載します

それぞれの種類ごとに、支出の内容や相手先、金額、負担者などを指示に沿って記載します。

葬式費用のなかには、香典返しの費用や仏壇などの購入費用は含めることができません。

相続税申告書第14表の記載方法

相続人が被相続人から生前に贈与を受けていた場合に、贈与があった日から相続が発生するまでに3年が経過していない場合は、贈与された財産も相続財産の一部として評価されます。

すでに贈与税を支払っている場合は、贈与を受けた人の相続税から贈与税額は控除されます。

ここでは、贈与を受けた人、贈与年月日など、贈与された当時の情報を記載します

相続税申告書第15表の記載方法

第11表と第13表に記載した種類ごとの相続財産の合計額を、被相続人ごとにまとめる様式になります

それぞれの区分ごとに項目が設けられているので、あてはまる区分に相続財産の合計額を記載します。

申告書の作成に必要な書類

相続税の申告書を作成するには相続財産を1つ1つ評価しなければならず、その評価には、さまざまな書類が必要となります。

必要な書類を大きく区分すると「財産」・「債務」・「身分」の3つに関連する書類が必要となります

財産に関する書類

土地や建物といった不動産などは、名義などの確認や所在地、評価額の計算などに必要な書類を、市区町村や法務局で取得しなければなりません。

具体的には、土地や建物といった不動産関係については、固定資産税の評価証明書や登記事項証明書、実測図などが必要です。

不動産以外では、預貯金の残高証明書や預金証書、預金通帳が必要です。

株式がある場合は、銘柄別一覧表や売買報告書、株主名簿が必要になります。

その他に、骨董品や美術品などがある場合は、専門家が発行する評価証明書などが必要になります。

債務に関する書類

被相続人に債務がある場合には、その契約書や残高証明書、請求書などが必要となります。

また、被相続人が、事業をおこなっていた場合は、準確定申告書の写しなどの書類も必要になります。

被相続人の葬式にかかった費用も債務として認められますので、葬式費用にかかった領収書なども必ず無くさないように保管しておきます。

身分関係に関する書類

相続が発生した場合には、被相続人や相続人の身分を確認したうえで、法定相続人が誰なのかを判断しなければならず、それには戸籍謄本や住民票といった、身分を証明することができる書類が必要になります。

具体的に必要となる書類は、被相続人と相続人全員の住民票や、戸籍謄本、除籍謄本、戸籍の附票、相続人全員の印鑑証明書や、運転免許証などの、身分証明書の写しなどです。

また、これら以外にも遺言書や相続放棄申述の証明書など、相続の状況により必要な書類の種類は増えていきますので、適宜、必要な書類を集めなければいけません。

まとめ

相続税の申告書を作成するにあたり、一番時間がかかるのは相続財産の評価です。

被相続人の財産が多ければ多いほどその手間は増え、時間がかかってしまいます。

相続税申告書は、相続財産の評価が終わっているのであれば、その評価額の記載や控除額の計算などをおこなうだけです。

相続が発生すれば、実際には相続税のことだけでなく、法要の準備など、さまざまな作業が待ち構えています。

相続税の申告期限は10ヵ月と、余裕があると考えている方も多いと思いますが、これらの作業をおこなってみると、10ヵ月というのはあっという間に過ぎるということがよくわかると思います。

そのため、空いた時間を使って早めに財産評価などを進めていくことが、相続税の申告をスムーズにおこなえる一番のポイントです。

これらの作業が難しいと感じるのであれば、相続税の申告を専門とする税理士に依頼することが、最善の策だといえます。
(提供:相続サポートセンター