木工・製材機械専門商社として循環型社会の一翼担う 社屋完成を機に基幹システムをクラウド化し、インターネット接続環境を刷新 巴産業(群馬県)

目次

  1. 戦時中に物資不足で大手企業の仕入れに困窮した経験を活かし、戦後まもなく循環型資源の木材に着目して創業
  2. 2024年1月には秋田県(能代市)に8ヶ所目の営業拠点を開設。輸入機械にも早くから注力
  3. 新本社完成を機に基幹システムをクラウド化。法令改正にスムーズに対応できるようになった
  4. 全営業拠点にUTM機能備えるルーターを設置。インターネット接続速度が飛躍的に向上
  5. リモートアクセスVPNも構築。外出先から共有フォルダの閲覧が可能に
  6. 会議がリアルでもリモートでも柔軟に対応でき、リモートでのセミナー受講や商談も可能
  7. 2024年から完全週休2日制へ。理想とする会社へ着実に歩を進める
中小企業応援サイト 編集部
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群馬県高崎市に本社を置く巴産業株式会社は東日本8ヶ所に営業拠点を配する木工・製材機械専門商社の大手だ。再生可能な資源である木材を加工する機械を扱うことで、持続可能な循環型社会の一翼を担うという理念のもと、「顧客にとって世界中で最も良い機械を選りすぐって提案する」ことを信条として成長してきた。2023年初頭に待望の新社屋が完成したのを機に、会計・販売管理・在庫管理を担う基幹システムをクラウド化するとともに、全営業拠点のインターネット接続システムも刷新し、業務効率の向上を実現している。(TOP写真:テレビモニターのある多目的空間)

戦時中に物資不足で大手企業の仕入れに困窮した経験を活かし、戦後まもなく循環型資源の木材に着目して創業

木工・製材機械専門商社として循環型社会の一翼担う 社屋完成を機に基幹システムをクラウド化し、インターネット接続環境を刷新 巴産業(群馬県)
創業者である祖父のことを語る龍神圭一郎代表取締役

「かつては木を切ることは悪いことだなどと言われた時代もありましたが、今はSDGs(持続可能な開発目標)が提唱されるようになり、木は切って、使って、植えて、育てる循環型資源として見直されています。実は当社の誕生した背景もそこに着目したためだと聞いています」。巴産業の龍神圭一郎代表取締役は、祖父の龍神正男氏が1947年に同社を創業した経緯を語る。

それによると、正男氏は東京の大学を出て司法省(現法務省)に勤務していたが、戦争が始まると中島飛行機(後のSUBARU、日産自動車)の関連会社に移り、仕入れの仕事を担当するようになった。戦火が激しくなるにつれ、石油などの燃料や鉄鋼製品といった物資の調達に困窮するようになり、仕入れ担当として相当苦労したようだ。その経験から終戦後、「『木は植えれば生えてくる。これから何十年、何百年と歳月を重ねても枯渇することはない』と考え、木材の業界で仕入れの知識と経験を生かして仕事を始めることにしたのです」(圭一郎社長)

SDGsの15番目の目標は「陸の豊かさも守ろう」である。土と水と空気と太陽があれば木は育つ。計画的な管理と適切な植林・伐採によって循環型の森林ができる。そうした森林で育った木材を住宅や家具などに使うことは、持続可能な社会の構築という目標に適っている。木材を削ったり加工したりする機械を販売する巴産業の創業者は、物資不足という戦時中の苦い経験から、この木材という物資が持つ循環性の大切さに気づいたというわけだ。

水が渦巻く形を模した日本の伝統的な文様である「巴」は、中でも三つの渦を配した「三つ巴(みつどもえ)」が有名だ。社名の巴産業には、「機械メーカーさんと機械ユーザーさん、その間にいる機械商社の三者が共に成長していけるようにという願いを込めたと聞いています」。ちなみに圭一郎社長は幼少の頃に祖父に抱かれている写真は残っているものの、祖父の記憶はないという。圭一郎社長は父親で取締役会長の龍神正彦氏の跡を継いで2015年に社長に就任した。

2024年1月には秋田県(能代市)に8ヶ所目の営業拠点を開設。輸入機械にも早くから注力

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伊ビエッセ社製木工機械の一つである「リアルタイムパネルマシニングセンター」=ホームぺージより

巴産業は1958年7月、有限会社から株式会社に改組。その前年の1957年に鹿沼支店(栃木県鹿沼市)を開設したのを皮切りに、新潟支店(新潟市)、水戸支店(茨城県水戸市)、小川支店(埼玉県小川町)、山形支店(山形市)、会津若松支店(福島県会津若松市)、仙台営業所(宮城県岩沼市)と本州の東地域で順次、営業網を拡げていき、2024年1月には8ヶ所目の営業拠点となる秋田営業所(能代市)を開設した。いずれも製材工場や家具、建材、建具などの木材加工メーカーが集積する地域だ。これら東本州地域では、巴産業は木工・製材機械専門商社として最大手の地位にある。

一方、1997年には海外事業部を立ち上げ、世界三大木工機械メーカーの一つであるイタリアのビエッセ社の日本代理店となった。イタリアは高級家具ブランドが多いことで知られる。「高級家具屋さんに行くと、イタリア製の高価だけど質が高くデザインも良い家具がよく置いてあります。あんな家具を日本でも生産できるようにしたいと思って輸入を始めたのです」(圭一郎社長)。ビエッセ社の木工機械はイタリアの高級家具ブランドの裏方なのだ。

これを端緒に、輸入機械にも早くから注力。現在、さまざまな国から輸入機械を仕入れており、「世界の中で一番良い機械を(顧客に)提案できる」(圭一郎社長)体制を敷いている。輸入機械は東本州に限らず、全国から注文が来るので、海外事業部の営業担当者は全国を飛び回ることになる。圭一郎社長も入社以来、海外事業部が長く、「輸入機械の営業も修理もやりました。大きな機械の据え付けともなると2週間くらいの出張仕事になります。日本全国にお客様がいますので、出張から帰ると、また次の出張が入るという繰り返しでしたね」と振り返る。

巴産業の扱う製材・木工機械は納入した顧客先で10年から20年、さらには30年以上と長期にわたり使用される。当然、納入先から部品交換をはじめとする修理の要請も多い。このため営業担当者は機械の修理も行えるように教育されている。また、群馬県安中市には倉庫も兼ねた修理拠点「碓氷川工場」がある。

新本社完成を機に基幹システムをクラウド化。法令改正にスムーズに対応できるようになった

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巴産業のDXを担当する仁藤淳一取締役総務部長

堅実経営の会社にありがちなように、巴産業もまた〝お金を生まない本社社屋〟の建て替えは後回しにされてきていた。それが全面建て替えに踏み切ったのは、国の事業再構築補助金が適用されたからだという。2022年12月に新本社が完工。翌年2月に業務を開始した。この機会を捉え、ICT関連も整備した。会計・販売管理・在庫管理を担う基幹システムをクラウド化するとともに、本社と全営業拠点のインターネット接続環境を刷新したのだ。

基幹システムをクラウド化した利点について、巴産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)担当でもある仁藤淳一取締役総務部長は「会計などのシステムは法令改正に対応して定期的にバージョンアップされますが、従来のオンプレミス(自社サーバー)だとクライアント側もバージョンアップ版を物理的にインストールする作業が必要でした。それが、クラウドの場合はクラウド上で自動的にアップデートされるので、手間がかからないしミスも発生しません」と語る。2023年10月にインボイス制度がスタートしたのに続き、2024年1月には改正電子帳簿保存法が施行されることから、「まさに、そうした法令に常に最新のシステムで対応していけるというところがメリットとして大きいですね」と仁藤取締役。

同社の基幹システムは同じメーカーの会計、販売管理、在庫管理の各ソフトを連携させたもので、仁藤取締役が経理担当者として入社した1998年にはすでに導入されていたという。使い慣れたシステムをそのままクラウド型に更新できたのもメリットの一つと言えそうだ。

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基幹システムのクラウド化でバージョンアップの手間もなくなった

全営業拠点にUTM機能備えるルーターを設置。インターネット接続速度が飛躍的に向上

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整然としたオフィス

インターネット接続環境については従来、各営業拠点からインターネットに接続する場合は情報セキュリティー対策として、UTM(統合型脅威管理)機能を備えた本社のルーター経由で接続していた。UTMは社内外から侵入しようとするウイルスなど複数の脅威を一つの機器でシャットアウトするデバイスだ。今回、新たに全営業拠点にUTM機能を持つルーターを設置。各支店から直接、インターネットに接続できるようにした。これにより、インターネット速度が飛躍的に高まったという。

リモートアクセスVPNも構築。外出先から共有フォルダの閲覧が可能に

同時に、パソコンやスマートフォンに専用のアプリをダウンロードすることで、本社や営業拠点との間にVPN(仮想私設網)を構築することができるリモートアクセスVPNも導入。営業担当者が顧客先での質問に対し、現場からクラウド上の共有フォルダに接続して確認し、即答できるような仕組みにした。仁藤取締役自身も出張先から基幹システムの会計ソフトに接続して、データを確認することもあるという。これらインターネット接続環境は一つのシステム会社のサービスを利用しているため、「何か障害が発生した場合でも、一つの窓口で相談できるので、とても安心です」と仁藤取締役は頬を緩める。

会議がリアルでもリモートでも柔軟に対応でき、リモートでのセミナー受講や商談も可能

木工・製材機械専門商社として循環型社会の一翼担う 社屋完成を機に基幹システムをクラウド化し、インターネット接続環境を刷新 巴産業(群馬県)
電子黒板を備えたミーティングルーム

新社屋には電子黒板を設置したミーティングルームや一人で外部の顧客とWeb会議をしたり外部のWebセミナーを聴講したりするリモート室、テレビモニターを備え休憩室にもセミナールームにもなる多目的空間などを設けた。

巴産業の扱う製材・木工機械は多種多様だが、共通するのはデジタル化。CNC(コンピューターによる数値制御)やCAD・CAM(コンピューターによる設計・生産)が相次ぎ導入され、日々進化していることだ。営業担当者らはそうした新しい技術を習得するため、外部の専門家らを招いて月1回会議を開いている。コロナ禍が始まってからはWeb会議システムも頻繁に活用してきた。新社屋完成によりミーティングルームやリモート室などができたことから、会議やセミナー受講により柔軟に対応できるようになったという。

木工・製材機械専門商社として循環型社会の一翼担う 社屋完成を機に基幹システムをクラウド化し、インターネット接続環境を刷新 巴産業(群馬県)
リモート室。外部とのWeb会議や商談に使用する

2024年から完全週休2日制へ。理想とする会社へ着実に歩を進める

木工・製材機械専門商社として循環型社会の一翼担う 社屋完成を機に基幹システムをクラウド化し、インターネット接続環境を刷新 巴産業(群馬県)
玄関に立つ龍神圭一郎代表取締役

龍神圭一郎社長はかねて、巴産業のあるべき姿として、「自分が入りたいと思える会社にしたい」と考えてきた。「誰しもが入りたいのは給料も休みも多くて、きれいな職場で働ける会社ですよね」。すでに、きれいな職場は実現した。続いて「2024年からは完全週休2日制にしようと思います」(圭一郎社長)と、目標達成に向けて着実に歩を進めている。

企業概要

会社名巴産業株式会社
本社群馬県高崎市問屋町3-5-7
HPhttp://www.tomoe-sangyo.com
電話027-361-2121
設立1947年2月
従業員数50人
事業内容木工・製材機械を専門とする販売商社