のぼり旗など布へのデジタル印刷技術で高い評価 得意先の紹介のみで受注拡大 ICT活用で生産性2割向上へ 納期厳守に磨きを 堀江織物(愛知県)

目次

  1. 石油ショックを機に合繊織物からのぼり旗製造に事業転換
  2. 2015年に2台目のシルクスクリーン印刷機導入を機に、売上高に匹敵する投資を決断し新工場を建設
  3. 印刷、縫製、出荷までの一貫体制を本社周辺に集約し、強みの納期厳守を徹底する
  4. 営業担当者なしで年商10億円、顧客からの信頼が紹介受注の輪広げる
  5. ICT活用での業務改善に創業者の孫二人が挑戦
  6. 受注書のデジタル化と作業情報一元化で「働きやすくなった」
  7. クレーム対応も5分で解決、顧客の信頼増す
  8. 新システム導入2ヶ月で、リピート受注時の対応で2時間短縮、全体では生産性1割向上、さらに進化目指す
  9. 今後は業務の進捗管理も加え、生産性2割向上へ
  10. 「出来ない理由を並べるのではなく、できる可能性と方法を考える」精神と結果が評価され、2021年12月経産省の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選出
  11. デジタル印刷技術と生産管理システムの進化で納期厳守に磨きをかけ、アパレル業界を強化
中小企業応援サイト 編集部
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古くから伝統ある繊維の街として栄えてきた愛知県一宮市に、布への印刷技術で高い評価を確立している企業がある。シルクスクリーン印刷とデジタルのインクジェット印刷の技術を組み合わせ、のぼり旗や横断幕などの広告宣伝幕を一貫製造し、全国に販売する堀江織物株式会社だ。得意先の目的に合わせた多様で緻密な印刷技術と納期厳守の誠実経営で成長路線を歩むが、業容拡大や将来の人手不足をにらみ、ICT活用による生産性向上への挑戦を始めた。その実績が評価され2021年12月中小企業庁の「はばたく中小・小規模企業300社」に選ばれた。(TOP写真:生産情報の書類のデジタル化、集中管理で仕事がやりやすくなった)

石油ショックを機に合繊織物からのぼり旗製造に事業転換

のぼり旗など布へのデジタル印刷技術で高い評価 得意先の紹介のみで受注拡大 ICT活用で生産性2割向上へ 納期厳守に磨きを 堀江織物(愛知県)
「のぼり旗のつくり方を教えてくれた岐阜の会社は大恩人」と語る武田浩志社長

堀江織物は、元は毛織物の会社だった。合成繊維の将来性に着目した初代社長の堀江宏史氏が1950年、家業の撚糸業を引き継ぐ形で合繊織物製造を個人創業。1969年に株式会社として法人化した。法人化と同時に大型合繊織機を導入したが、1973年の石油ショックによる不況で打撃を受け、1974年に合繊織物から撤退。当時景気の良かった家具小売業に事業転換し、家具店で使っていた婚礼家具配送用の紅白幕や店頭に掲げるのぼり旗などの製造にも参入した。

のぼり旗製造にあたっては、同社がのぼり旗などを発注していた岐阜の会社が製造方法を教えてくれたという。「私と社長(現・堀江克見会長)が2日間習いに行きました。それまで仕事を受けていた会社がライバルになるというのに、ですよ。その会社の経営者は『業界が発展すれば良い』という方で、大恩人です。あの時教えてもらわなかったら、当社の今はありません」。創業者・宏史氏の女婿(じょせい)である武田浩志代表取締役社長は当時を振り返り、感慨深げに話してくれた。

2015年に2台目のシルクスクリーン印刷機導入を機に、売上高に匹敵する投資を決断し新工場を建設

のぼり旗など布へのデジタル印刷技術で高い評価 得意先の紹介のみで受注拡大 ICT活用で生産性2割向上へ 納期厳守に磨きを 堀江織物(愛知県)
大量生産に適しているシルクスクリーン印刷工場

その後、綿生地でつくられていたのぼりを、大量生産できるポリエステルでできないかと発想。1988年にシルクスクリーン捺染機(4色タイプ)を導入、のぼり旗などの印刷業に本格参入した。5年後の1993年には2台目のシルクスクリーン(6色タイプ)を導入し、外注していた型の製作も内製化した。同時に家具小売は止めて、印刷業に専念する体制を整えた。

2000年頃には「今後はインクジェット印刷の時代が来る」と言われ、同社は2000年秋にいち早くインクジェットプリンターを導入し、ダイレクトタイプを含めて台数を増やした。「インクジェットが伸びてシルクスクリーンはなくなるかなと思ったが、インクに顔料を使うシルクはポリエステルの薄い生地を使うのぼり旗に適していた」(武田社長)ため、需要は衰えず、2015年に2台の設備を更新。年間売上高に匹敵する8億円の大型投資を決断し、設備更新を機に新工場を建設した。

印刷、縫製、出荷までの一貫体制を本社周辺に集約し、強みの納期厳守を徹底する

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本社前に移転したオンデマンド新工場

2021年5月には、インクジェット印刷のオンデマンド事業部の新工場を本社前に新設し、移転した。コロナ禍での操業開始となったが、新工場で製造した高級タイプのプリントマスクがヒットして年間約1億5000万円を販売、コロナの影響による売上減少をカバーした。

同社の強みは、それぞれ特徴のあるシルクスクリーンとインクジェットという2タイプの印刷機を持ち、製造工程を本社周辺の1ヶ所に集約。しかも、受注から印刷、縫製、出荷までの一貫体制を整えていることだ。

布に印刷する際の色出しや緻密さなどの印刷技術はもちろん、納期厳守も大きな強みだ。「シルクスクリーンは全国に20台もない。そのうち2台が当社にあり、インクジェットと両方やっているところは少ない。愚直に品質の良い商品を、納期を守って製造し納品することが最も大事であり、当社はそれをやり続けている」と、武田社長は納期厳守の重要性を強調する。

営業担当者なしで年商10億円、顧客からの信頼が紹介受注の輪広げる

営業担当者がいないのも、同社の大きな特徴だ。一応営業部はあるものの、外回りの担当者はいない。顧客からの問い合わせに対応する窓口機能があるだけだ。布への印刷事業を始めてから、注文はすべて既存顧客のリピートか紹介だけという。いくら「隙間産業」とはいえ、紹介でスタートした事業が紹介の連鎖で顧客の輪を広げ、今や年商10億円規模に成長したというから、驚きだ。同社の技術力や納期を守る誠実さに対する顧客からの大きな信頼が最大の強みなのだ。

ICT活用での業務改善に創業者の孫二人が挑戦

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ICTを活用した業務改善について話す堀江航司取締役㊧と武田裕哉取締役

納期厳守の上で業務効率を高めるには、製造工程での作業の正確性が重要になる。そのためには、受注部門から工場に送られる受注書の情報伝達のスピードと内容の判別性向上が求められていた。

ICTを活用して、それらの業務改善に取り組んだのは、創業者・宏史氏の孫にあたる二人の若き取締役。インクジェットプリンター印刷のオンデマンド事業部長の堀江航司取締役と業務管理部長の武田裕哉取締役だ。業務改善はオンデマンド事業部での作業工程のすべてに関わるもので、情報の集約とデジタル化による生産性向上への挑戦となった。

受注書のデジタル化と作業情報一元化で「働きやすくなった」

「従来はA4サイズのFAXで送られてきた受注書をB5サイズに縮小して、デザイン以降の9工程に回していたが、FAXは白黒なので色の識別ができないのとFAXでつぶれた数字などで判別しにくいケースがあった。今はPDFファイルにして工場の複合機にメールで送られ、自動的にA4カラーでプリントアウトされる。格段に見やすくなり、間違いがなくなった」と、堀江取締役は手放しで歓迎する。

受注書は製作現場にとって最も重要な情報源だが、従来は前工程の情報が複数の文書にバラバラに記入されていたり、作業終了後は紙保管であるため、リピート受注やクレーム対応の際に探し出すのは大変な作業だった。今は工程ごとの情報記入を集約しデジタル化した受注書を電子保存しており、すぐに検索して取り出せる。「仕事がやりやすくなった。働きやすいと、現場での評判は上々だ」と、堀江取締役は目を細める。

クレーム対応も5分で解決、顧客の信頼増す

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クレーム対応での効果を説明する堀江航司取締役

最近のクレーム対応でこんなことがあった。「寸法が違うとクレームの問い合わせをいただいた時、従来は現場で書類を探すために30~40分作業を中断していたが、今は5分程度で検索できる。発注時の指示間違いがすぐに判明して、お客様にも納得いただけた」(堀江取締役)という。

武田社長も「このビジネスでクレームゼロはあり得ない。いかに素早く対応できるかが重要だ。事情がすぐに判明すれば、それだけ速く、的確に対応できることになる」と、デジタル化の効果に感心する。

のぼり旗など布へのデジタル印刷技術で高い評価 得意先の紹介のみで受注拡大 ICT活用で生産性2割向上へ 納期厳守に磨きを 堀江織物(愛知県)
どの工程からも受注書を確認できる

新システム導入2ヶ月で、リピート受注時の対応で2時間短縮、全体では生産性1割向上、さらに進化目指す

のぼり旗など布へのデジタル印刷技術で高い評価 得意先の紹介のみで受注拡大 ICT活用で生産性2割向上へ 納期厳守に磨きを 堀江織物(愛知県)
システムの進化を目指す武田裕哉取締役

経営上の実際の効果はどうなのか。武田取締役が数字をはじき出す。「リピート受注の場合、書類を探し出す時間で約1時間、工場にカラーコピーを届けていた時間が合計20分、寸法問い合わせなどによる作業中断が平均30分。その他作業効率改善を加えれば、1日あたり2時間程度作業時間が削減されており、リピート受注以外も含めた工場全体では約1割の生産性向上につながっている」。2023年10月からまだ2ヶ月間の運用での成果だ。

武田取締役には、今回の生産管理システムをさらに進化させるプランもある。「せっかく受注書1枚で情報を集中管理できるようになったので、無線通信で情報伝達が可能になるRFIDのタグを付けて運用し、センサーで読み取りながら業務の進捗管理を行っていけば、さらに生産性は向上すると思う」(武田取締役)

このプランを受けて、堀江取締役は「今は受注書がどの段階にあるかわからないが、それがわかるようになれば、作業対応がスムーズになる」と歓迎する。

今後は業務の進捗管理も加え、生産性2割向上へ

「私がそうだったように、このシステムの意義をまだ理解していない人もいる。難しいものと思っている人もいる。システムの意義と改善効果を皆に伝え、全社に浸透すれば、さらに生産性は上がる」。取締役二人の説明でシステムへの理解を深めた武田社長は、生産性向上2割の新たな目標を提案する。

「生産性が2割向上すると、現状の人員と設備で2割仕事を増やせることになる。人手不足も深刻化しており、人手を増やさずに対応していける意味は大きい」(武田社長)という。

「出来ない理由を並べるのではなく、できる可能性と方法を考える」精神と結果が評価され、2021年12月経産省の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選出

2021年12月22日、デジタルによる布印刷の長年の技術の蓄積とWeb連携した生産管理システムとオンデマンドプリントが生産性向上に大きく寄与したことが認められ、経産省の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選ばれた。「はばたく中小企業・小規模事業者300社」は、革新的な製品・サービス開発、地域経済の活性化、多様な人材活用の観点から、優れた取り組みを行っている中小企業・小規模事業者を表彰する制度だ。

武田社長のメッセージの「毎日商品を作り出していくなかで、難しい課題や取り組むべき問題が起こる時もあります。そんな時に出来ない理由を並べるのではなく、できる可能性と方法を考える。そのためのチャレンジ精神を忘れずに仕事に取り組んでいきたいと思っています」この精神が、経産省の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選ばれた背景にある。

デジタル印刷技術と生産管理システムの進化で納期厳守に磨きをかけ、アパレル業界を強化

堀江織物は、今後の成長戦略として、絵柄や写真を印刷したTシャツなどアパレル分野の強化を考えている。「売上高の9割以上を占めるのぼり旗など広告宣伝幕の国内需要は400億~500億円の世界。アパレルの市場規模は比べ物にならないくらい巨大だが、可能性はある」と武田社長は見ている。

「ルーズなところがあるアパレル業界で納期を守るのは大変なことだが、当社の納期厳守は絶対で、納期を守っていけば新たな道も開ける」(武田社長)として、今回導入した生産管理システムの進化に期待している。

のぼり旗など布へのデジタル印刷技術で高い評価 得意先の紹介のみで受注拡大 ICT活用で生産性2割向上へ 納期厳守に磨きを 堀江織物(愛知県)
堀江織物の本社

企業概要

会社名堀江織物株式会社
本社愛知県一宮市高田字七夕田28
HPhttps://horieorimono.co.jp/
電話0586-53-2525
設立1969年7月
従業員数86人
事業内容  ポリエステルを中心とした布への印刷全般、のぼり旗など広告宣伝幕の製造・販売、デシタルテキスタイルの製造・販売、紅白幕・のぼり設置器具の販売など