矢野経済研究所
(画像=PIXTA)

2018年度の国内スマホゲーム市場規模は前年度比5.4%増の1兆850億円

~有力IPタイトルの充実や海外メーカーの本格参入が成長を牽引~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内スマホゲーム市場を調査し、市場における最新動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

国内スマホゲーム市場規模推移・予測

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1.市場概況

2018年度の国内スマホゲーム市場(メーカー売上金額ベース)は、前年度比5.4%増の1兆850億円と推計した。有力IP(Intellectual Property)を搭載した複数のゲームタイトルが常にアプリストアのランキングで上位に位置し、長期に渡って人気を持続させているほか、海外メーカーや家庭用ゲーム市場を主戦場としてきた任天堂など国内メーカーも本格的に参入したことでマーケットが刺激され、市場の拡大に繋がった。
一方で、競争の激化によって新規タイトルでのヒット創出の難易度は高まり、新規参入が難しい市場環境となりつつある中で、これまで高い支持を得てきた有力既存タイトルであっても、収益性が低下しているタイトルも多い。
スマホゲーム環境がリッチ化して、家庭用ゲームと同等の開発技術が求められるとともに、IPによる認知度の高さに加えて、新規性のあるゲーム環境によってユーザーを惹きつけることが急務となっている。スマホゲームでは、多くのユーザーが市場の黎明期から大人気となった一部のタイトルや、リリースから数年が経過しているタイトルを現在に至るまで継続的にプレイしている傾向にあり、新規タイトルでユーザーの限られたプレイ時間を如何に確保するかが課題となっている。対策としては、これまでの既存タイトル以上に有力なIPを使用する、あるいは新規性のあるゲーム性で注目を集めなければ、ユーザーの新たな獲得が難しい状況となっていると考える。

2.注目トピック

eスポーツが注目を集めるが、スマホゲーム市場への影響は限定的

2018年に日本におけるeスポーツの普及を目的として、一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)が設立されて以降、日本国内では徐々にeスポーツが認知され始め、注目を集めている。プロライセンス認定タイトルとして、一般的なアーケード向けゲームや家庭用ゲームのほか、スマホゲームの「パズル&ドラゴンズ」や「モンスターストライク」といったタイトルが認定されており、そのすそ野はゲーム産業全体に広がりを見せている。
eスポーツが注目される要因の一つとして、大会にて高額の賞金が提供されることが挙げられる。海外では以前から賞金制の大会が開催され、1億円を超える賞金が用意される大会もある。国内でも同連合が主導してプロライセンスの発行、正規種目の認定などを経て、一部では賞金制の大会が開催され始めており、2019年1月にはアジアeスポーツ連盟(AeSF)との共催で賞金総額1,500万円となる「国際チャレンジカップ ~日本代表 VS アジア選抜」が開催された。一方で、純粋な競技としての発展を目指す取り組みも行われており、2019年秋に開催された「いきいき茨城ゆめ国体(第74回国民体育大会)」と合せて、「都道府県対抗eスポーツ選手権」が実施されるなど、スポーツとしての認知拡大が推進されている。

このように、eスポーツについて国内で様々な取り組みが行われている状況にあるが、現状ではスマホゲーム市場への影響は限定的と見られる。スマートフォンでの操作性や、対象ゲームタイトル数の少なさ、世界的にみた場合のスマホゲームでのeスポーツ人気はまだ他のデバイスと比較して発展途上であること等が理由に挙げられ、マネタイズの仕組みの構築を含めて、明確で分かりやすい環境を整えたうえで、プロスポーツとしてのさらなる認知向上が必要な状況にあると考える。

3.将来展望

2019年度の国内スマホゲーム市場(メーカー売上金額ベース)は、前年度比4.9%増の1兆1,380億円へと拡大すると予測する。スマホゲーム市場は、今後も成長が持続するものの、成長率は鈍化していき、限られたパイを多くのゲームメーカーで奪い合うという構図が深化していく見通しである。
なお、現在のスマホゲーム市場は幅広いユーザー層にサービスを提供しながらも、約2割の課金ユーザーが収益を支えている。今後も継続してスマホゲーム市場が成長していくためには、現在の〝狭く深く〟の収益体質をより深化させていくことも必要だが、スマホゲームユーザーの約8割を占める無課金ユーザーをターゲットに、〝広く浅く〟収益を確保していくための仕組みを構築することが重要になると考える。