※本稿は寄稿者の個人的見解に基づく原文を掲載したものであり、THE OWNERの見解を示すものではありません。
経営者であればお酒や釣り、ゴルフなど多くの趣味を楽しみ、自分磨きに励んでいるかと思います。かくいう私は弁護士法人の代表として経営者の末席におりますが、ここ数年間は「ゴルフ」に励んでおります。特にコロナ禍のためリアル会合等が皆無となったここ3年間ほどはどっぷりと頭までゴルフライフに浸かっております。
ゴルフは失敗の積み重ね
一般的にゴルフは紳士淑女のスポーツと言われており、ラウンドする時にはプレーヤーその人の『人間性』が良くも悪くも強烈に発現されます。
ゴルフは賽の河原で石積みをするが如く、日ごろの練習怠慢を悔やみながらひとつひとつ失敗をうず高く積み重ねていくスポーツです。
10球打っても思ったとおりにまっすぐ飛んでいくことはせいぜい1、2球程度。それ以外の8球は大なり小なり失敗します。1打ごとに成功する確率はわずか20%にも届きません(私のへたくそな腕前が前提ですが…)。つまり、ゴルフでは上手く打てることを想定するのではなく、失敗することを前提にその後のコース戦略を考えていく必要があります。失敗自体はプロでも絶対に避けられません。
だからこそ失敗を当然のこととして受け入れ、そのうえでいかに即死級の致命傷を避けて小さな失敗で食い止めていくかを考える。失敗した直後にこそプレーヤーの『人間性』は如実に表れます。
一発逆転のウッドで大きな飛距離を狙っていくか、距離は期待できないが成功率の高いアイアンで手堅く刻んでいくのか。それをラウンドしながら一打ごとに真剣に頭の中で組み立てていくのがゴルフの醍醐味です。
個人プレーでもチームプレーでもない難しさ
また、ゴルフは自分自身との戦いではありますが、決してひとりだけでするものではありません。ともにラウンドしてくれる同伴プレーヤーの動向にも配慮しなければなりません。自分が気持ちよくゴルフを楽しむことばかりを考えて、同伴者を含むそのゴルフ場にいる他の人たちの気分を害して意にも介さない人はその『人間性』を強く疑われても仕方ないでしょう。
かように、ゴルフは自らの『人間性』をその場にいる同伴者たちに露呈させるスポーツであることから、公私にわたりその人脈形成にも絶大な効果を発揮します。一度でもともにラウンドすれば、その人の人間性や人柄、窮地に追い込まれた時に果たしてどのような思考過程をする人なのかが手に取るように分かります。
自分が打つ番で失敗してしまった時に舌打ちして明らかに不機嫌そうな態度をとる人、同伴プレーヤーには丁寧だがその一方でキャディーさんに対しては上から目線で横柄な態度をとる人、自分のボールの行方だけを気にして同伴者のボールを探そうともしない人、林に打ち込んだときに1打犠牲にしてでも確実に横に出す安全策を取るよりも一か八か木々の隙間を狙ったギャンブルショットばかりを選ぶ人、等々。
遊びのなかにも、いや遊びだからこそ、その人の本質的な部分が剥き出しになる。だからこそ興味深い。ビジネスの場において「1回の会食は10回の打ち合わせに勝る。1回のゴルフは10回の会食に勝る」と言われるゴルフ交流の所以です。
ゴルフという遊びを通じていかに自分の『人間性』を磨きあげていくか。ゴルファーにとって生涯の課題です。 ゴルフは「時間」と「お金」がかかる遊びですがそれだけでは遊べません。ともに楽しんでくれる「友」(=人脈)がなければ長くは続けられないスポーツです。
どんなに自分が失敗して悔しくても、いつもニコニコしながら「これが実力だから仕方ないよね!」と笑い飛ばし、自分のボール以上に同伴者のボールを土にまみれて率先して探し、同伴者のナイスショットを大声で喜び褒め称え、キャディーさんにも笑顔で接してその場にいるみんなと楽しい時間を共有することを最優先に考える。私は、日々ラウンドをご一緒させて頂く企業経営者の諸先輩方の一挙手一投足からこういったゴルフスタイル、ひいては『人間性』の磨き方を目の前でたくさん学ばせて頂きました。
「人生の最後にいくらの財産を得たか、ではない。何人のゴルフ仲間を得たか、である」という球聖ボビー・ジョーンズの言葉があるように、いつの日かそういうプレーヤー、ひいては経営者になれるよう仲間たちとともに日々『人間性』を磨き研鑽を重ねていくことが大切なのだと思います。
ちなみに、ゴルフで人間性をピカピカに磨いたからといってどうやらスコアが良くなるわけでは無さそうだというのが最近までの実体験に基づく私の研究結果です。
・弁護士法人 永 総合法律事務所HP:https://ei-law.jp/
・寺社リーガルディフェンス:https://ei-jishalaw.com/