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香川県高松市にある瑞光山妙楽寺の住職であった曽祖父が、地域の子どもたちのために創設した青空幼稚園。70年を経た今、その意志を継ぐ曽孫の喜岡俊行副園長は、少子化時代の幼児教育のあり方に真正面から取り組んでいる。(TOP写真:職員がホームページの紹介をしてくれた)
1953年に寺の私塾として創設された青空幼稚園。開放的な教室から園児たちが大声で挨拶してくれた
1953年、まだ近隣エリアに幼児教育の場がなかった時代。瑞光山妙楽寺の住職であった喜岡信雄氏は、地域で働く若い世帯の子どもたちを預かる幼稚園を境内に開設。それから70年を経た今、香川県の私立幼稚園数は35園にのぼるが、個人事業として運営しているのは青空幼稚園だけだ。一般人から見れば学校法人にした方が国や県からの優遇措置を得られるのではと思うのだが、生前の住職は頑として個人経営でいくという方針を曲げなかったという。これには様々な理由があったと推察されるが、孫にあたる喜岡俊行副園長の取材を続けるうちに、喜岡信雄氏が開園した当初から、地域の子どもたちの将来のために独自の教育方針を守るという信念があったからではないかと推察される。
現在、妙楽寺の住職は喜岡副園長の実父である喜岡信行氏で、幼稚園と隣接の保育園を実際に動かしているのは喜岡俊行副園長だ。笑顔の職員の方々に迎えられ喜岡俊行副園長の案内で2階に上がると、開放的な教室から園児たちが大声で挨拶してくれる。それだけでこの幼稚園の健康で快活な様子が伝わってきた。取材を始めてすぐに、この幼稚園の開放的な明るさは、先代からの真摯に子どもたちに向き合う姿勢と、屈託のない笑顔で応じてくれる副園長の朗らかな性格が浸透しているからだと納得した。
開園当初から最も大切にしてきた園児の自律性と協調性、職員も園児全員の名前を把握しコミュニケーションの良さもうかがえる
毎日約120人から150人が通うこの幼稚園の教育方針は開園当時から変わらず、自律性と協調性を柱にしている。プログラムの中には体操教室やスイミング、英語で遊ぼう等、普段の園庭や園内での一斉保育や自由保育に加え様々な取り組みも行われている。その全てのプログラムの中で、子どもたちが自分で考え、工夫し、表現していく力を育むこと、先生や友達との関わりの中で豊かなコミュニケーション能力を獲得していくことに最も力を注いでいるという。
子どもたちには遊びから始まる楽しい時間を過ごしてもらうことをモットーに、子どもたち一人ひとりを全ての職員が把握し、名前で呼びながら人格形成の手伝いをしている。小学校のように子どもへの評価基準がない幼稚園だからこそ、全員の顔が見えるきめ細かな対応で子どもたちの豊かな成長を支えている。実際にどの先生も園児をごく自然に名前で呼び、コミュニケーションが取れていることが伝わった。また職員も長く勤めている方が多く、穏やかな空気感は子供たちにも安心感を醸成しているようだ。
自律性と協調性という、社会人になってからも重要な意味を持つ人間としての価値を、園児たちに楽しく学ばせようとする青空幼稚園の取り組みは大きな意味を持っている。
ここでは共働き世帯の需要を受け入れるため、2022年に「おひさま保育園」という小規模保育園も敷地内に開園。0歳から2歳児までを受け入れる認可保育園として運営しているが、通ってくる幼児一人ひとりへの対応は、幼稚園と同じ精神で行われている。
お寺の住職が始めた幼稚園らしく、月に1回、隣のお寺で礼拝の時間があるそうだが、園児にとって、精神的な安定につながっていると想像される。
本格的な少子化の時代。青空幼稚園の良さを広く知ってもらうために2019年からホームページを活用
青空幼稚園では、できるだけ多くの保護者たちに情報を届けるために、システム支援会社の協力のもと、2019年からホームページの活用を開始した。
その効果は一目瞭然で、スマートフォンでの閲覧も可能な事や、ホームページ内に園児募集の詳細情報を載せたことにより、電話での問い合わせが減り、電話対応の煩雑さが緩和された。また、どのページがよく見られているかのアクセス解析によって改良もできるし、ブログ内のカタログ作成機能を使うことでそれまで外注してきたカタログ印刷が満足のいく品質で内製できるようになり、コスト面でも非常に助かっているという。
カタログは、ホームページを通じて問い合わせしてくる県外からの移住家族に送ったり、説明会などで配布する目的で作成しているが、ホームページの充実と共に、情報の発信力がより高まることは十分に期待できる。
一人ひとりを見守る保育と保護者のために、業務&保護者支援アプリを活用
青空幼稚園では、業務&保護者支援アプリを積極的に活用している。幼稚園や保育園職員の出退勤管理ができることも使い勝手の良さの一つだが、このアプリは園児の保護者のスマートフォンにも入れることができ、通園バスの運行状況を見ることもできるので、送り迎えの待ち時間軽減にも役立っている。また、このアプリを使った保護者とのメールのやり取り、特に園児の出欠確認や、保育中に撮った子どもたちの写真の閲覧など、情報交換のツールとしても活用されている。
保護者にとっても職員にとっても、通園時の安全や出欠の確認は最も気を使うべきことでもあり、双方向の情報交流が可能なICTシステムは今後ますます教育現場の業務補完ツールとして浸透していくであろう。
企業概要
事業所名 | 青空幼稚園 |
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所在地 | 香川県高松市三条町498 |
HP | http://aozorayo.jp/ |
電話 | 087-869-4141 |
設立 | 1953年3月 |
職員数 | 19名 |
保育内容 | 全日保育、午前保育、預かり保育 |