食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

11月の鶏肉需給は、朝晩の冷え込みが厳しくなったことで、ようやくモモの動きも本格化した。相場も週を追うごとにジリ上げとなり、最終日(30日)には日経加重平均で680円を付けた。そうはいっても、前年同月には最終週で700円の大台を突破していたことを考えると、ことしは月間を通して20円弱の上げ幅にとどまり、需要期に入ったとはいえ、盛り上がりに欠ける展開となった。この要因として、各社、夏場以降、冷凍品在庫を多く抱えており、年末に向けてこれを売り切ろうとする動きが強まった結果、生鮮品の相場上昇にブレーキがかかったためとみられる。一方、ムネは本来であれば需要が一服する時期となるが、ことしはその価格優位性から堅調な動きが続き、相場も月末にかけて上げ基調となった。

この結果、11月の月間平均相場は、日経加重平均でモモが674円(前月650円)、ムネが375円(370円)となり、正肉合計で1,049円(1,020円)となった。モモ、ムネともに前月から上げたものの、前年比ではモモ56円安、ムネ22円安と引続き前年価格を下回って推移している。

〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめたブロイラー生産・処理動向調査によると、12月の生体処理羽数は前年同月比1.8%増、処理重量が0.7%増と順調な生産が続くとしている。地区別にみると、北海道・東北地区は羽数2.0%増、重量0.7%増、南九州地区で羽数1.1%増、重量0.6%増といずれも前年を上回る見通しだ。ただ、先月25日に佐賀県の採卵鶏農場で今シーズン初の高病原性鳥インフルエンザが確認され、今月3日時点で4例の発生が確認されている。昨シーズンは過去最多の発生件数に上ったが、ことしは発生時期が遅いことに加え、現時点ではいずれも採卵鶏農場での発生となり、影響はほぼみられない。しかし、この先、肉用鶏や大規模農場で発生することがあれば、相場にも影響を及ぼす可能性がある。

一方、農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によると、12月の鶏肉輸入量は4.6%増の4万6,300tと予測している。9~11月にかけては、ブラジル産の輸入量減の影響で前年を下回るボリュームが続くものの、12月以降回復に向かうものとみられる。また、ブラジル産の減少の影響でタイ産の輸入量が増えるなか、今後の動向によっては、輸入品へシフトしていくことも考えられる。

〈需要見通し〉
量販店などでは鍋物提案が目立ち、モモの荷動きは活発化している。ただ、荷動き自体は良いものの、前述の通り、潤沢な供給量や冷凍品在庫の多さから、不足感はみられない。一方、依然として消費者の節約志向が高まるなか、モモをはじめ、他畜種と比べても比較的安価なムネや手羽元への引合いは強い。いずれも冷凍品の在庫が薄く、タイトな状況となっている。

〈価格見通し〉 12月の日経加重平均はモモ679円、ムネ374円でスタートし、週明け4日にはモモ685円、ムネ377円と一段上げに。モモはここから年末の最需要期に向けてさらに上げていきたいところだが、ことしは前述の要因から、上げても小幅な上昇にとどまることが予想される。このため、12月の月間平均も、業界では「700円に届けば良いのでは」との見方が多い。一方、ムネは引続き堅調に推移することが予想されるため、下げ要因は少なく、横ばいでの展開が見込まれる。

これらを勘案すると、12月は日経加重平均でモモが690~700円程度(農水省市況710~720円)、ムネが370~380円程度(380~390円)と予想する。いずれにせよ、年末に向けてモモ需要がどこまで伸びるかがカギとなりそうだ。

〈畜産日報2023年12月8日付〉