食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

11月の牛肉需要は、気温の暖かい日が多かったことや消費者の生活防衛意識の高まりから、鍋物商材の動きが弱く、切り落としや煮込み系が中心となった。外食ではインバウンド需要や接待需要の回復が見られたものの、これらに関係するところと、そうではないところで販売・客数の状況が異なるなど、業態・エリアによってマチマチとなった。11月後半になると気温の低下が進み、野菜価格も落ち着いたことでスライス関係の動きも好転してきた。こうしたなか、牛枝肉相場は、共励会などもあり和牛5等級は前年並みの価格を維持したものの、それ以下の等級は前年を下回って推移し、去勢4等級は2,250円前後と、11月としては過去5年で最安値の価格帯で推移した。

12月は例年通り、中間流通にとっては、今週の2週目から3週目前半までが枝肉の手当てのピークとみられる。ただ、量販店など年末ギリギリまで情勢を見極めてから発注に動くケースも考えられる。とはいえ、問屋サイドもなるべく在庫を持ちたくなく、「(見込みで買うなど)あまり深追いはしたくない」(関東の問屋筋)のがホンネだ。このため、最終週に若干の反発があっても、基本的には3週目を境にジリ安の展開と予想される。したがって、12月の月間平均相場(東京市場)は和牛去勢A5で2,650円前後、A3で2,050円前後、交雑種去勢B3で1,550~1,600円程度、ホルス去勢B2で850円前後と予想される。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、12月の成牛出荷頭数は10万5,400頭(前年同月比8.1%増)で、このうち和牛が5万2,400頭(11.8%増)、交雑種2万4,700頭(7.7%増)、乳用種2万6,800頭(2.8%減)と予想している。前述の通り、出荷頭数は今週がヤマだが、3週目の相場のダレ方次第では出荷が見送られる可能性もある。また、輸入品はチルドが1万5,700t(1.7%増)、フローズンが2万700t(5.8%減)の予想だが、チルドは豪州産の入船遅れの影響で、末端もクリスマス商戦に向けて在庫の確保に苦労している状況にある。

〈需要見通し〉
今月の流通各社の施策は、ボーナスが出る月前半の週末は焼肉やステーキなど、クリスマスから年末年始に向けてはローストビーフ、すき焼きを提案するもようだ。概ね前年並みの売上げを計画しているものの、いまの経済事情を反映してどこまで買上げ点数が伸びるか、各社バイヤーも情勢を見極めている状況だ。このため、今月中旬から年末ギリギリになって手当てが入る可能性もある。これに対して中間流通では、凍結回しを含めて極力在庫を持つことを敬遠するため、「無理に買わない。15日以降は相当慎重に手当てするしかない」「末端は後半にキリングの古い玉を拾うことを期待しているかもしれないが、ないものはない」と慎重な姿勢だ。

畜種・パーツ別では、交雑種が堅調で、カタロース、ロースを中心に引合いが良い。また例年ならばクリスマス明けから年末年始にかけては和牛に集中するが、ことしは利益確保のため交雑種も併せて品揃えし、和牛との比較販売を行う企業も多いようだ。その影響からか、輸入牛に入船遅れが生じているにもかかわらず、ホルスの引合いはあまり改善しないまま終わりそうだ。

〈価格見通し〉
枝肉の手当ては2週目から3週目前半がヤマのため、前半の枝肉相場は堅調に推移するとみられる。とくに指定の強い特定銘柄や産地、和牛雌などが加重平均を下支えするが、4週目以降は例年通りダレてくる流れとみられる。この結果、12月の月間平均相場では、和牛去勢A5で2,650円前後、A4で2,250~2,300円程度、A3で2,050円前後。交雑種去勢B3で1,550~1,600円程度、B2で1,350円前後、ホルス去勢B2で850円前後と予想される。

〈畜産日報2023年12月7日付〉