「ikka(イッカ)」や「LBC(エルビーシー)」といったファッションブランドを展開しているイオングループの株式会社コックス(本社東京都)。イオンモールを中心に約210店舗を展開している同社は、買い物の利便性を高めるために、ECと実店舗の連携を進めています。その一環で推進している「店舗受取」は、EC売上高の1割以上を占め、直近1年間における利用件数が前年比130%以上に伸びるなど大きな成果を上げています。店舗受取を推進している理由や成果が出ている要因について、デジタル推進本部の安井大午さまと小嶌和之さまにお話をうかがいました。
(聞き手:株式会社フューチャーショップ E-Commerce Magazine編集部)
目次
株式会社コックスが手がけているEC事業の現状
株式会社フューチャーショップ(以下、fs):まずは、コックスさまが手がけている事業について教えてください。
安井さま:弊社はファッションブランド「ikka(イッカ)」や服飾雑貨ブランド「LBC(エルビーシー)」など、8つのブランドを展開しているメーカーです。イオンモールを中心に「ikka」は約180店舗、「LBC(エルビーシー)」は約30店舗を出店しています。その他に「VENCE(ヴァンス)」、「notch.(ノッチ)」、「NONEED(ノーニード)」などEC専用ブランドを展開しています。
fs:EC事業を開始した時期や、EC事業の現状について教えていただけますか?
小嶌さま:2011年にEC事業を本格的に開始しました。自社ECサイト「TOKYO DESIGN CHANNEL」を中心に、ZOZOTOWNを中心としたファッションECモールへの出店もしています。会社としてもEC事業は成長分野と捉えており、売上拡大を図っています。
店舗受取を推進している理由とは?
fs:EC事業を開始した当初から、店舗受取を導入しているそうですね。
小嶌さま:はい。2011年に自社ECサイトを立ち上げてほどなく、店舗受取を開始しました。
fs:当時は店舗受取を導入している企業が少ない時代でした。なぜ、店舗受取を始めたのでしょうか。
小嶌さま:店舗受取は、O2O推進の取り組みの1つです。店舗とECサイトにおける相互送客によって、買い物の利便性を高めたいという思いがありました。店舗受取を導入すれば、お客さまの受取手段の選択肢が増えて便利ですし、オンラインでの買い物体験をオフラインでも感じていただけるようになります。また店舗受取の送料を無料にし、お客さまがECサイトを利用しやすくしました。
2011年前後は、日本でアパレルECが本格的に普及し始めた時期です。海外ではオムニチャネルという言葉がトレンドになっていたと記憶しています。約210店舗の実店舗を持つ強みを活かし、ECと実店舗の連携を強化することが、ブランド価値の向上につながると判断しました。
2011年に店舗受取を導入したことに続き、2014年にはECと実店舗の会員基盤を統合し、ポイントも共通化しています。
fs:店舗受取の利用者が増えると、オンラインから実店舗にお客さまを誘導する効果も期待できそうです。
小嶌さま:おっしゃる通りです。商品を受け取りに来たお客さまによる “ついで買い”が期待できるなど、店舗側のメリットも少なくありません。
fs:店舗受取のご利用状況は、いかがですか?
小嶌さま:直近では、EC売上高の1割以上を店舗受取が占めています。
店舗受取オプションの導入メリットと成果
fs:2022年9月からfutureshop omni-channelの「店舗受取オプション」をご利用いただいています。「店舗受取オプション」を導入したことで、どのような効果がありましたか?
小嶌さま:店舗受取でクレジットカード決済が使えるようになり、お客さまにとって利便性が高まりました。また、注文処理のフローの大半が自動化され、EC担当者の作業負担が減ったこともメリットです。
futureshop omni-channelを導入した2020年当時は「店舗受取オプション」がなかったため、「TOKYO DESIGN CHANNEL」の配送選択画面に「店舗受取」の項目を独自に追加し、店舗受取に対応していました。
ただ、当時は決済手段がコンビニ後払いしか使えないなど、利便性に課題がありました。また、受取データを目視で確認し、後払いの払込用紙を商品に同梱するなど、人手がかかる作業が多いことも課題でした。
「店舗受取オプション」を導入したことで、それらの課題は解決できました。コンビニ後払いは現在も利用できますが、クレジットカード決済の利用者が大半を占めるため、払込用紙を同封する業務負担も減っています。
fs:「店舗受取オプション」をご契約いただいてから、店舗受取の利用件数に変化はありましたか?
小嶌さま:直近1年間における店舗受取の利用件数は、前年同期比130%以上に伸びました。クレジットカード決済が使えるようになり、決済の利便性が高まったことが主な要因だと考えています。
店舗受取を従業員購入にも活用
fs:従業員購入にも店舗受取を活用していらっしゃるそうですね。
安井さま:はい。店舗スタッフが商品を購入する際、ECサイトで注文し、勤務先の店舗で商品を受け取っています。
「ikka」と「LBC」の店舗数は合計約200店舗あり、従業員の数も多いため、それなりの規模での注文があります。
fs:じつは最近、従業員購入に「店舗受取オプション」を活用したいという企業さまからの問い合わせが増えているんです。
安井さま:アパレルの店舗スタッフは自社商品を着用して接客することも多いので、従業員購入に店舗受取を活用する余地は大きいでしょうね。
「TOKYO DESIGN CHANNEL」さまもご利用中の「店舗受取オプション」はこちらをご覧ください
futureshopを利用するメリットと感想
fs:2020年11月にfutureshop omni-channelを導入してくださってから3年が経ちました。機能の使い勝手など、プロダクトに対する率直な感想をお聞かせください。
小嶌さま:futureshopは標準機能が豊富ですし、オプション機能を使えば外部サービスとも連携できるため、さまざまな施策を打つことができます。
ECパッケージなどを使用していると機能を追加するたびにカスタマイズが必要ですが、futureshop omni-channelならオプション機能を個別開発なしで簡単に追加できるので、新しい施策を素早く実行できます。オプション機能は月額数千円程度から利用できますから、コストパフォーマンスも高いと思います。
fs:機能の使い方などで、お困りのことはありませんか?
小嶌さま:分からないことがあったらサポートに質問できるので問題ありません。例えば新しい施策を検討する際、どの機能を使えば実現できるのか分からなければ、管理画面の問い合わせフォームで質問します。営業時間中であればすぐに回答がくるので助かっています。
私以外のメンバーは電話で質問することも多いようです。futureshopの使い方はマニュアルにも書いてありますが、電話で聞いた方が早いことも多く、重宝していると聞いています。
EC売上高を伸ばすために実店舗との連携を一層強化
fs:今後、自社ECサイトの売り上げを伸ばしていくために、どのような戦略を描いていますか?
安井さま:ECと実店舗の連携を一層強化していくことがポイントになると思います。コックスの売上高の約9割は実店舗が稼いでいます。実店舗で買い物をしているお客さまの中には、「TOKYO DESIGN CHANNEL」をまだ利用したことがない方もいらっしゃるでしょう。そういったお客さまに「TOKYO DESIGN CHANNEL」を知っていただくために、店頭でアプリをご案内するなど、実店舗とECの相互送客を強化していく方針です。
将来的にはPOSデータとECサイトのデータを統合し、行動データをマーケティングや商品開発に活かすなど、データ活用という点でも実店舗とECの連携を進めていきたいです。
fs:実店舗とECの連携を進める上で、店舗スタッフさんの協力も重要になりそうです。
安井さま:おっしゃる通りです。例えば、店舗受取において商品を渡す作業は店舗スタッフの仕事ですし、店頭でお客さまにアプリをご案内するなど、ECサイトの利用促進にも店舗スタッフの活躍が欠かせません。
重要なのは、お客さまにとって便利なサービスを提供するとともに、店舗スタッフがECにも関与しやすい仕組みを作ることでしょう。人事評価へのフィードバックも含めて、デジタルの力で店舗スタッフが働きやすい環境を整えていくことも、EC部門の役割だと考えています。顧客視点と従業員視点の両方を大切にして、やるべきことを一歩ずつ進めていけば、おのずとEC化率は上がっていくでしょう。
取材を終えて
実店舗を持つアパレル企業が自社ECサイトを持つことが当たり前になり、次のフェーズとしてECと実店舗の連携を強化する店舗さまが増えています。2011年に店舗受取を導入し、2014年にECと実店舗の会員情報を統合するなど、他社に先がけてオムニチャネルに取り組んできたコックスさまの事例は、示唆に富むものではないでしょうか。
店舗受取のメリットのおさらい
店舗受取はお客さまにとって便利なサービスです。自社ECサイトに導入すれば、消費者から選ばれる理由の1つになります。また、商品を受け取りに来たお客さまによる“ついで買い”が期待できるなど、実店舗にもメリットがあります。
そして、店舗受取は従業員購入にも活用できます。一般論として、従業員購入の決済を自社ECサイトで行い、EC在庫を引き当てれば、中間流通を介さず商品を従業員に販売することが可能です。商品の受け渡し場所を実店舗に限定し、倉庫から実店舗への定期輸送便に商品を混載すれば、従業員宅に個別配送する送料もかかりません。
店舗受取の売り上げをECではなく実店舗に計上する場合には、店舗売上に貢献していることを交渉材料とし、掛け率を優遇してもらうよう商業施設に打診しても良いでしょう。
このように、店舗受取は商品の受取方法の選択肢にとどまらず、事業の収益改善につながる可能性も秘めているのです。
futureshop omni-channel「店舗受取オプション」のご紹介
futureshop omni-channelの「店舗受取オプション」を使えば、個別開発を行うことなく自社ECサイトに店舗受取を導入することができます。「店舗受取オプション」の詳細はこちらのページで詳しく紹介しています。店舗受取を検討している企業さまは、ぜひご覧ください。
また、ECサイトの新規立ち上げやECプラットフォームの乗り換えを検討している企業さまは、下記のフォームよりお気軽にお問い合わせください。
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