「挑戦と和」の精神でDXを推進。高度な熱処理技術を軸に日本のものづくりを支える。DX推進会議で次のステップへ フクネツ(福岡県)

目次

  1. 「熱処理の総合百貨店」として高い評価 熱処理分野で九州最大級の工場を運営
  2. 日本のものづくりに欠かせない金属に改めて命を吹き込む
  3. 先を見据えて積極的に設備投資 熱処理から切削、研削、表面加工、検査まで一貫対応
  4. 環境に配慮して省エネ機能が高い設備を継続的に導入
  5. 「企業は人なり」を信条に健康経営と人材育成を推進。心身ともに健康だからこそ生き生き働いて成長できる
  6. 経産省の健康経営優良法人ブライト500に認定。海外人材の在留期間が大企業並みの「カテゴリー1」なので安心して働ける
  7. 増員に伴って増加するバックオフィス業務を効率化するため勤怠管理システムを導入。集計時間が1/4以下に
  8. 複合機のスキャン機能を活用してデータ化することでペーパーレス化を推進。保存場所不要で、探したい時にすぐ探せる
  9. ホームページを通じて従業員に健康に関する情報を提供し、常に従業員の健康に配慮している
  10. 更なるデジタル改革を目指してDX推進会議を設立。工程の見える化や技術伝承の話が出ている
中小企業応援サイト 編集部
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熱処理を軸に日本のものづくりを支える福岡県の株式会社フクネツが、バックオフィス業務や情報発信でICTとデジタル機器を積極活用している。2023年6月には社内でDX推進会議を立ち上げ、DXの機運醸成とともにデジタル技術の新たな活用方法を探っている。(TOP写真 真っ赤に熱した金属表面のTD処理~拡散表面硬化法)

「熱処理の総合百貨店」として高い評価 熱処理分野で九州最大級の工場を運営

「挑戦と和」の精神でDXを推進。高度な熱処理技術を軸に日本のものづくりを支える。DX推進会議で次のステップへ フクネツ(福岡県)
フクネツの工場に設置されている熱処理設備の一つ(中性塩浴炉)

熱処理は金属材料に加熱と冷却を加え、その機械的性質を向上させる加工技術。耐久性、耐摩耗性など高い安全性が要求される機械部品に施される。強度や靭性といった金属が持つ性質を最大限に引き出すだけでなく、寿命を延ばすこともできる。

1969年設立の株式会社フクネツは、熱処理を中心に材料の仕入れから表面処理、切削加工、研削加工、検査までを一貫対応する「熱処理の総合百貨店」として高評価を得ている企業だ。福岡都市圏を形成する糟屋郡篠栗町内に広がる約1万3000平方メートルの敷地で、熱処理分野では九州最大級の6つの工場を運営。高度な熱処理に加え、1ミクロンレベルの正確な仕上げを行う研削加工技術を武器に、大企業から個人経営の会社まで約500社と取引している。

各工場には真空炉、ピット炉、ソルト炉といった熱処理設備に加え、円筒、内面、平面といった様々な加工に対応する約30台の研削加工設備、3次元測定装置、金属顕微鏡を導入している。受注案件は近年、従来の自動車関連部品から工作機械、半導体検査装置、医療機器、航空機に使用する高付加価値部品にシフトしているという。

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フクネツの工場の様子

日本のものづくりに欠かせない金属に改めて命を吹き込む

「日本のものづくりに欠かせない金属に改めて命を吹き込むのがフクネツの役割です。金属材質に適した熱処理方法、部品の形状や大きさに応じた焼き入れ、温度と時間のバランスなど、蓄積した豊富な経験とノウハウを駆使して取引先のニーズに応えています。日本の企業が世界で勝負できるように、これからも縁の下の力持ちとしてしっかり貢献していきたい」と創業家出身で2018年9月に就任した永島誠一郎代表取締役は穏やかな表情で話した。

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フクネツの永島社長

先を見据えて積極的に設備投資 熱処理から切削、研削、表面加工、検査まで一貫対応

フクネツは「挑戦」を事業のキーワードにしている。6つの工場の半分は、世界中の企業が打撃を受けた2008年のリーマンショック以降に建設したものだ。多くの企業が需要の減少を受けて後ろ向きになる中、フクネツは将来の礎となる設備投資を控えることなく前に進めた。リーマンショック以降に新規開拓した案件が現在、売上高の半分を占めるまで成長している。2017年には熱処理だけでなく、切削、研削、表面加工を一貫して社内でできるように大量の工作機械を導入した。「常に前向きにフクネツだからこそできる難度が高いものづくりを追求していきたい」と永島社長は力を込めた。

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フクネツが導入している工作機械の一つ(複合旋盤)

環境に配慮して省エネ機能が高い設備を継続的に導入

環境に配慮した取り組みにも力を入れ、省エネ機能が高い新しい設備を継続的に導入している。その結果、エネルギー価格が高騰する中でも当初の想定より燃料コストを抑えることができているという。熱処理ほどのエネルギーを消費しない切削や研削といった加工の仕事の割合を増やしていることも、コストの抑制に寄与している。また、全ての工場の照明を水銀灯から消費電力が少なく寿命が長い無電極ランプに切り替え、事務所内の照明についても全てLEDにしている。

「企業は人なり」を信条に健康経営と人材育成を推進。心身ともに健康だからこそ生き生き働いて成長できる

フクネツは「挑戦」とともに「和」をもう一つのキーワードにしている。「企業は人なり」を信条に、従業員の心と体の健康とチームワークを何より重視している。

「優れた品質の製品づくりには、従業員一人ひとりが生き生きと働いて成長することが必要不可欠です。そのための環境と仕組みを整えることが経営者の役割と考え、長期的な視野で取り組んでいます」と永島社長は話す。

従業員全員が受診する定期的な健康診断はもちろん、メンタルヘルス診断のほか、1日2回のラジオ体操、インフルエンザの予防接種を会社負担で行うなど健康管理に対する取り組みに力を入れている。喫煙者を減らすための禁煙外来の全額補助も行っている。従業員教育も重視し、従業員に熱処理技能や機械加工技能の資格取得を奨励し、費用を会社が負担するなど全面的にバックアップしている。

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フクネツのオフィスの様子

「製造業ではわずかなミスが重大な事故につながりかねません。ミスの発生を未然に防ぐには、従業員に心身ともに健康な状態で仕事に従事してもらうことが何より重要と考えています」と永島社長。従業員が技能や知識を身に着けて成長することが生産性の向上につながり、やりがいを感じることが定着率の向上につながっている。従業員を大事にすることが事業の発展に大きなプラス効果を生み出している。

経産省の健康経営優良法人ブライト500に認定。海外人材の在留期間が大企業並みの「カテゴリー1」なので安心して働ける

フクネツは2021年に福岡県の「健康づくり団体・事業所宣言」に登録。2022年から2年連続で経済産業省の健康経営優良法人の認定を受け、特に優良な法人を対象にしたブライト500にも認定されている。

海外人材の活用にも積極的だ。2017年から大学卒のベトナム人を定期採用し、現在7人が在籍。技能実習生も2人受け入れている。健康経営優良法人の認定を受けているフクネツは、海外人材の在留期間が大企業並みに認められる「カテゴリー1」の企業として扱われるため海外人材も安心して働くことができる。

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健康経営優良法人ブライト500の認定証

増員に伴って増加するバックオフィス業務を効率化するため勤怠管理システムを導入。集計時間が1/4以下に

フクネツの従業員は2017年以降、約20%増加している。事業拡大と増員に伴って増加するバックオフィス業務を効率化するため、ICTとデジタル機器を積極的に活用している。2019年3月には勤怠管理システムを導入した。従業員が出勤時と退勤時に個人のICカードをカードリーダーにかざすと自動的に本社事務所のシステムにデータが転送され、勤務時間を集計する仕組みになっている。以前は紙のタイムカードで勤怠状況を管理していたため、カードを回収して個々の従業員の勤務時間を集計するのに2日以上かかっていた。現在は、システムのおかげで半日程度確認作業に専念するだけで済むようになったという。

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勤怠管理システムを活用する様子

複合機のスキャン機能を活用してデータ化することでペーパーレス化を推進。保存場所不要で、探したい時にすぐ探せる

2020年9月から複合機を更新し、スキャン機能を活用して各工程の作業指示書をはじめとする紙文書をデジタル化する作業を進めている。デジタル化しておけば、検索機能を使うことで必要な作業指示書を時間をかけずに見つけることができる。紙資料と違って保管場所が不要なのでスペースを有効活用することもできる。「様々な部署で紙資料が中心になっている現状を変えていきたいと考えています。ICTやデジタル機器を使って効率化できる業務を増やして、働きやすい環境を進化させていきたい」と永島社長は話した。

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複合機を活用して紙文書のデジタル化を進めている

ホームページを通じて従業員に健康に関する情報を提供し、常に従業員の健康に配慮している

2021年6月からは企業向けのホームページ作成システムを導入し、ホームページを一新した。ホームページでは、対外的に企業理念を紹介する動画や会社の技術、設備の説明を掲載する一方、従業員だけがログインできる専用ページを設けて、健康診断のお知らせや定期的に開催している健康セミナーの過去の内容を掲載するなど様々な情報を配信している。

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ホームページを編集する様子

更なるデジタル改革を目指してDX推進会議を設立。工程の見える化や技術伝承の話が出ている

永島社長は、ICTやデジタル機器を活用する機運を社内全体で醸成することを目的に2023年6月、DX推進会議を立ち上げた。毎週月曜日に約1時間、役員や各部署から選抜されたメンバー約20人が集まり、費用対効果を考えながら各部署で今後導入を図るべきデジタル技術について意見や情報を交換している。デジタル技術を活用した工程の見える化や技術伝承など様々なアイデアが浮上しているという。

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フクネツの本社の外観

「生産現場のさらなる自動化やICT、デジタル機器を使うことで生み出した時間を、技術開発や取引先の新規開拓といった創造的な取り組みに振り向けていきたい」と先を見据える永島社長。可能性は大きく広がっている。熱処理を軸にしたものづくりとデジタルが組み合わさることで生まれる技術革新に注目したい。

企業概要

会社名株式会社フクネツ
本社福岡県糟屋郡篠栗町和田5丁目2番14号
HPhttps://kkfukunetsu.co.jp
電話092-947-5652
設立1969年7月
従業員数113人
事業内容金属処理、表面処理、機械加工